【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール

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7、

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 カチャカチャと食器の音が響く。三つの洋館の中でも一番大きな中央の建物に入った直後、迎え入れる大勢のスタッフ。
 なんだかそれにホッとしてるうちに通された、大広間の食堂。
 名前が書かれた札の席に着いてすぐに食事が運ばれて来た。
 のだが。
 なんというのかな……いきなり知らない人たちと一緒の食卓ってのもあるんだけど。
 どうにも大きな洋館で食事ってのは、非常にアウェイ感が否めない。そもそもこういう場に相応しいのはフォーマルな服装だろう。けれど到着して早々に食事ともなれば、誰も着替えてないわけで、非常にフラットな服装の集団。
 が、高そうな調度品に囲まれて、ナイフとフォークを使ったフォーマルな食事をするのだ。いっそ異様と言えよう。
 そんなことを考えたのは、私だけではないらしく、誰も何も言わず無言で食事が続いた。

「これ美味しいねえ!」

 そんな静寂を破るのは、唯一の子供の参加者である男の子。上手く使えないからだろう、彼にはお箸とスプーンが提供されていた。
 ソースで口元をベタベタにしながら、男の子は無邪気に笑っている。両親はそれに苦笑を返している。いえいえお気になさらずに、その無邪気さがこの緊張した空気に広がる、一服の清涼剤ですよ。
 と思ったのは私だけではなかろう。その証拠に、誰も男の子のことを注意する者はいないのだから。

 食後のデザートも終わり、コーヒーや紅茶、ジュースを飲んでいるところに渡部さんが再び登場した。
 自然と皆の注目が集まる。その視線に戸惑うことなく、渡部さんは私達を見まわして言った。

「お食事はお口に合いましたでしょうか?少し休憩した後、館内をご案内したいと思います。ですがもう外は夜ですので、今日のところはこの本館のみとなります。宿泊も今日はコチラになります。他の洋館は明日ご案内いたしますので、明日以降はお好きな館にご宿泊いただけます。ただ大勢でゾロゾロ歩くのも不便ですので、グループに分かれてご案内したいと思います」

 そう言って、渡部さんは参加者に紙を配布した。そこに分けられたグループが書かれているのだ。
 私と隆哉は当然同じ。そこに男の子がいる親子と、遅れてきた霧崎という人、それと女性の三人組が同じBグループとなった。

「Bグループの方は、こちらにお集まりください」

 渡部さんとは別の、案内スタッフである中年男性の前に集う私達。自然と自己紹介が始まった。

「今回ご案内を務めさせていただきます、ツアースタッフの真殿(まどの)と申します。どうぞ宜しくお願い致します」

 と、ガイドさんの挨拶を皮切りに

「あ、私達は広谷(ひろたに)と言います。こっちは息子の健太(けんた)。元気すぎてご迷惑をおかけしたらすみません」

 一家の代表としてお父さんが挨拶をした。奥さんが頭を下げ、息子の健太君はキョトンとしてる。ふふ、可愛いなあ。

「私は早苗。こっちは同じ大学の友人で杏子と結衣。私達は大学の卒業旅行で来たの」

 夏が終わればそれぞれ忙しくなるから、ちょっと早めのね、そう言って早苗と名乗ったその人はウィンクする。

 なるほど、女子大生かあ。なんとも派手で綺麗な人達だなあ。同じ女子大生とは思えない。

「同じ女子大生とは思えな……ふぐっ」

 たとえ私も思ってたとはいえ、人に言われると腹が立つのはなぜだろうか。摩訶不思議。私は思いきり隆哉の腹に肘鉄をくらわしてやった。

「俺は霧崎っす、宜しくっす。なんか面白そうと思って参加してみたっす」

 そんなキャラだったか?と突っ込みたくなるような軽い感じで、遅刻霧崎さんが手を上げて自己紹介した。なぜ遅刻を名前の前に付けるかって?人の名前を覚えるのが苦手なので、そういうの付けたら覚えやすいかと思ったんですよ。まあ霧崎さんの場合は、最初が印象的だったので、ゴロ付けなくても覚えてるけど。

 私と隆哉も自己紹介したらば

「婚前旅行かー?ヒュー、いいねえ若くて!」

 と、遅刻霧崎が、お前は幾つだというような事を言ってきたので無視しといた。ついでに脳内では敬称略決定だ。

「それではこれより館内をご案内いたします。とても広く複雑ですので、勝手な行動はせずけして離れないでくださいね」

 そんなことを真剣な顔で言われると、なんだか雰囲気が出て来るではないか。私達は全員無言で頷いた。それを確認して、真殿さんは歩き始めた。

 緊張と不安と期待が入り混じる、洋館散策スタートである。


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