吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

32、吸血鬼とメイド(3)

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 素敵!なんて響き、なんて美しい効果音!こんなにも耳に心地よく聞こえる音ってありません!

 そう思うくらいに気持ち良いビンタの音が部屋に響き渡りました。

 ええ、吸血鬼公爵がピンク女をビンタした音でございます。ビンタです、ビンタ!

 でもまだピンク頭は目覚めなーい!



パン!パン!……パパパパーン!



 え、何の音かって?そりゃもう、豪快なビンタの連打……往復ビンタの音ですよ!

 起きないピンクに苛立った公爵が、何度も何度もビンタする様は……いっそ哀れ、いえ心地よいと思ってしまう自分が恐い。

 そういえば先ほどピンクがボロボロの顔になってる夢見ましたけど、あれって予知夢だったんですねえ。私にそんな能力があるとは!と馬鹿な事を考えながら笑ってしまいました。

 あ、ヨシュさんが私に引いてる……違いますよ、ビンタされる様を笑ったのではなく、思い出し笑いですよー!……まあビンタされてる様に内心大笑いしてますけど。

 というか終わらないな、往復ビンタ。目を開けるどころか、永遠の眠りにつきませんかね、そのピンク。
 当然止めませんけど。
 永久にやっちゃって貰ってもいいですけど。

「ぶへ!?」

 そうこうしてるうちに、流石にピンクが目を覚ましました。

 わ~……ビンタの嵐のせいで、顔が凄い事になってるわあ。まあまあ見た目だけは良かったピンクはどこへ。

「エミリー、笑いが漏れてるよ」

 必死で笑いをこらえようとしてたんですけどね、バレましたか。

「そういうヨシュも……ぶふっ!……こほん、肩が震えてますよ、ふ、ぶーっ!」

 駄目だ、我慢できません!
 もうパンッパンに腫れた顔のピンクは、まるでアン〇ン〇ン……いえ、それはアン〇ン〇ンに失礼ですね。
 もう、何と言うか……

「すみません、あまりに面白すぎて……ぶふっふ……うぷぷ……」
「うぷぷて可愛いですね、じゃなくて。笑いすぎ……ぶっふ」

 お互いに必死で笑いをこらえようとするんですが、いかんせん目の前に笑いの元があるもので。

 笑いすぎて涙目になった私は視線を逸らすことで、必死に笑いを抑える事にしました。

 そうすると目に入るのが──鬼の形相の公爵。

すん……

 その怖い顔見たら一瞬で笑いが収まりましたよ。
 恐い。
 公爵様、完全に切れてるー!

「おい貴様、今の状況を理解してるか?」

 わ~公爵ってそんな低い声出せたんですね。

 いつもフィーリアラ様への甘い声しか出さないから、ヨシュへのしょっぱい声が貴重だと思ってたんですけど。
 それ以上にレアなドスの効いた声を初めて聞いちゃいましたよ。

「ふへ……こーひゃくさま?あれ、あらしどーしたんだろ。えっとぉ……たしかこーひゃくさまと、らぶらぶえっちぃになっへるはずなんれすけど~」

 何を言ってるかご理解いただけましたでしょうか。パンパン顔のピンクは、呂律がおかしくなってます。
 とりあえず盛大に勘違いしてるのだけは分かりました。

 はい、当然公爵様が右手を振りかざすー!
 振りかざして~、下ろされる!前にヨシュがその手をハッシと掴みました。

「ゼルストア様、ちょっとストップ。お怒りは分かりますが、これでは話が進みません。早くしたいならビンタちょっと待ってくださいね」

 話が終わればいくらでもビンタしていいですから。

 とか、ヨシュさんも結構怖いこと言いますねえ……。




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