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8、私は姉を信じたい
しおりを挟むバシャッと音が近くで聞こえたかと思えば、直後、冷たさを感じて驚いた。
驚いて、私は歩みを止める。
学園の裏庭で、私は足を止めた。
目線はそのままに、けれどこれまで無かった物が視界に入る。
ポタポタと、前髪から落ちて来る雫だ。
見上げれば澄み切った青空が広がっており、雨雲どころか雲一つ無かった。
そして見上げたままに、視界の隅にそれは見て取れた。二階の窓から、誰かが持つ花瓶が見えたのだ。それは見事に逆さまになっている。
つまり、その花瓶の中にあったであろう水が、私の上に降って来たのだ。
「誰!?」
思わず上げた誰何の声は、けれどその犯人が顔を出させるには不十分だったようだ。
その手の主は、顔を出す事はなく。
それどころか。
「──!!」
ガシャアン!!!!
大きな音を立てて、花瓶が粉々に割れた。
つい先ほどまで私が立って居た場所に。落ちて来る花瓶がスローモーションのように見えて、慌てて私は飛びのいたのだが、そうで無ければきっと頭に直撃していた。
私が避ける事が分かってて投げたか。
当たっても良いと思って投げたか。
どちらにしても許されない行為だ。
「誰なの!?顔を出しなさい!!」
もう一度叫んだけれど、聞こえたのはバタバタと走り去る足音だけだった。──複数の、それだけ。
私は誰も居ない窓を睨みつけ、ギュッと服の裾を握りしめた。噛み締めた唇から血の味がする。
濡れた体を気持ち悪く感じながら、私は地面に視線をやった。
割れてしまった花瓶が散らばり、その中心には無残に散った花弁。
「……花に罪は無いのに……」
誰かが用意した花瓶。
誰かが活けた花。
誰かの行為を無下にした行為に怒りを感じながら、私は片付けをすべく動くのだった。
保健室で借りたタオルと予備の制服に手早く着替えた私は、教室へと戻る。昼休みの息抜きに裏庭を散策していたのだ、午後からの授業がまだある。
どうにか間に合ったと教室に戻ったところで、息を呑んだ。
教室の自分の机。そこは確かに私の机。
その机の上には──
無残に破られた、教科書が置かれていた。
そっと手を伸ばす。その手は知らず震えていた。怒りなのか、悲しみなのか。
分からないまま私はそれを手に取って、確かに自分の教科書である事を確認し。
クスクスクス……
どこからともなく聞こえてくる笑いに言い知れる感情を抱きながら……教室を飛び出した。
入学して一ヶ月。まだ一ヶ月。
嫌がらせは毎日のように行われるのだった。
「ね、マリナ様に報告に行きましょうよ」
「そうね、きっと褒めてくださるわ」
「うふふ。喜んでくださるかしら」
背後から聞こえるクラスメートの会話を背にしながら。
その首謀者が誰か……信じたくない私は、聞こえないふりをして走るのだった。
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