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しおりを挟む「まあ、ここが今日から通う事になる王立学園ですのね!」
「さすがに立派ですわ、アイシャ様!」
「そうですわね、フィリア様!」
ここは王城かと見紛うほどに立派な学園。白を基調としたそこはとても美しい様相で私達を出迎えてくれた。
私こと、侯爵令嬢アイシャと。
同じく侯爵令嬢の、フィリアと。
「わたくし、淑女らしく卒業まで頑張りますわ」
「ええ、アイシャ様。わたくしも……家名に恥じぬように精進致しますわ」
校門の前でそう言って、私とフィリアは顔を合わせた。
しばしの沈黙……そして。
プッ……
どちらからともなく噴き出す。
「あっはっは!もう駄目!淑女なんてらしくないわ!」
「ちょっとフィリア、折角私がそれらしくしてみせたのに!ぶち壊しじゃない」
「な~に言ってるのよアイシャ、あなたこそが淑女なんて似合わないくせに!」
ケラケラひとしきり笑って、私達は学園内へと足を踏み入れた。勿論、誰にも今の様子を見られないように注意して。
「にしても、まさか異世界転生してまで理沙……じゃなかった、フィリアと同じ学校に通う事になるとはねえ」
「それはこっちのセリフよ、愛理……じゃないわね。アイシャ。貴女の名前、前世と似てるからややこしいのよ」
「私のせいじゃないもん」
そう、私と理沙。
記憶をもったまま同じ世界に転生したのだ。
それはつまり、あの事故で私同様に理沙も亡くなったってことなんだけど。
全てを最初から思い出してたわけじゃない。
貴族の子供の為の気楽なお茶会に初参加したその日。私は理沙の転生者であるフィリアと出会ったのだ。
出会ったその瞬間。
二人して大声で叫んで気を失ってしまったのは、記憶の波に襲われたから。
慌てた大人に運ばれて、お茶会提供者の屋敷内で横になっていた私達は、同時に目を覚ます事となる。
そして。
目を開けば。
一緒にベッドで横になっていた互いを見て。
『……理沙?』
『愛理……なのね?』
姿形は全く違う。というか、この世界は前世と何もかもが違った。
赤や緑や青に紫、もっと派手な色合いも。それらをまとった髪や瞳を持つ者がゴロゴロと存在し。
そして魔法というものが普通に存在する世界。
前世の全てを思い出した私達は、見事にファンタジーな世界へと転生を遂げたことに、ただただ感動した。
そして姿が違えど、互いが互いにそうであると分かった事に驚いた。
『どうしてかな、全然違う顔なのに、すぐに理沙だって気付いたよ』
そう私が言えば、私もと理沙も言う。
一緒に死んだからだろうか。
神の粋な計らいというやつなのだろうか。
しばらくは前世の家族の事を思ってしんみりした私達だったが。
それは長くは続かなかった。
だってだって!
魔法があって、精霊魔物も居るこんな凄い世界!
興奮しない方がおかしい!
同じ侯爵家であることもあって、仲良くする事を咎める声もなく。
私達はやっぱり親友だったんだ。
そして今日!
前世でよく読んでた異世界転生ものにつきものの!
学園生活が幕を開けたのだ!
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