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しおりを挟むもういい加減、狭い牢屋内で男三人に囲まれるのも限界になっていた。
うざい、暑い!
なもんで。
「とにかく!三人とも出てください!私はこの牢屋に居るのは聖女への問題行動が原因なんですから!貴女がたには関係ないでしょ!?」
だから出てけ!
言外にそう匂わせたというのに。
「え~俺、勇者とは言っても庶民出身だからさあ。広い城内よりこういう狭い空間の方が落ち着くんだよねえ」
「俺はアイシャを守る(キリッ)」
「そもそも俺は魔法で簡単に出入りできるんだよねえ」
まったく!ぜんっぜん!出ようとしないから。
牢番をクイクイと指で呼ぶ。
なんだなんだと近寄って来たおっちゃんに。
無言で牢屋の鍵穴を指さした。ついで、牢番のおっちゃんが腰にぶら下げた鍵を指さす。
でもって、男三人を親指でクイッと差した。
それを見て、おっちゃんはコクコクと頷いて。
鍵を出して牢屋の鍵を開け始めた。
どうやら伝わったようだ、よし!
「おいこら、何を勝手に開けてるんだ!」
焦るのは、理解してない馬鹿ラルフ。
「そうですわ!魔女が出てきたらどうするんですの!?」
分かってないのは馬鹿聖女フィリア。
この二人、こんなに馬鹿だったっけ?
焦る二人を尻目にガチャリと小気味よい音を立てて、鍵は開いた。
ぎいい……と重々しい音と共に扉は開いた。
と、その瞬間!
ダッと走る!脱兎のごとく走る!
脱走じゃないよ!むしろ牢の奥に向かってるから!
男三人めがけて走った私は。
むんずとその首根っこを掴んで。
「ふんぬうう!!」
令嬢らしからぬ声を上げて三人引きずりましたよ!
予想外の行動で抵抗できなかったんだろうね。三人は、え?てな顔を共に素直に引きずられて。
「よいしょおお!!!」
ドーンと、その背中を押せば簡単に牢屋の外へと出てくれました!
「これでいいですわ!さあ鍵を!」
バッと牢番のおっちゃんに視線を向ければ。
大変息の合った感じで、大きく頷いて!
バーンッ!と扉閉めてくれました!ガチャンと鍵閉めてくれましたー!
「あああ、アイシャ、何を!」
「ふう、やれやれですわ!」
慌てて牢屋の格子を掴むベリアトだったけれど、時すでに遅し。
私は広々と一人になった部屋をグルリと見回して、額の汗を拭うのだった。
一人部屋最高!
「ラルフ様、フィリア、さっさとその三人連れて行ってくださいませ!」
ビシッと命じれば、ギョッとなった二人だったが。
慌てて動くのだった。
「よ、よしベリアト。お前は魔女に洗脳されたのだ。とにかく来い、作戦を練る必要がある!」
「え、ちょ……」
よし、ベリアトは任せましたよ、ラルフ王太子!
「リューランド様、さあこちらへ。魔王を倒すために少しわたくしとお話しましょ?」
「いや、俺は別に……」
「さあさあ!遠慮せずに!」
よし、フィリア。そのまま絡めた腕を離すなよ!
ベリアトと勇者はこれで大丈夫だろう。
残る一人は──
「だから無駄だってば」
「……うん、そうですよね」
シュンっと瞬時に牢屋内に瞬間移動してきた大魔法使いロビーを目にして。
私はがっくしと項垂れるのだった。
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