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第一話 裏

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 視点が変わると、こうも物語は変わるものなのですね。
 最初の印象とのギャップをお楽しみください。


*∽*∽*∽*∽*


 チッ。第二王子めんどくせぇのが来やがった。とっととお引き取り願うか。
 「やあシオン。何か困っていることはないかい」
 おまえの相手に困ってるよ。昼飯犠牲にしてさっさと離れるか。
 「殿下っ。あ、あ、大丈夫ですっ」
 あーサンドイッチもったいねぇ。
 「あたしの、お昼」
 この恨み忘れねぇからな。
 「急に話しかけてすまない。私も昼はこれからだ。良かったら一緒に食べてくれないか。いつも量が多くてね」
 苦笑しながら肩をすくめてみせる王子にイラつく。いいから、とっとと失せろや。
 「あの、ありがたいお話しですが、恐れ多いです。学食へ参りますので大丈夫です。お心遣いに、感謝申し上げます」
 頭を下げると、手を取られた。
 「あの、殿下っ?」
 マジか、コイツ。サンドイッチの犠牲が意味ないどころじゃねぇぞ。悪手になったわ。って言うか、僕の誘いに喜ばない人間なんていないよね☆的な行動だろ、これ。自惚れんじゃねぇぞ。
 「ほら、行こう」
 すげぇな、コイツ。断ってんだぞ、こっちは。誘拐だな。拉致だな。なんで、僕の誘いに以下略☆なんだ。
 「ここなら誰も聞いていないよ。シオン、一人で悩んでいないで、私にその悩みを聞かせて欲しい。二人で考えれば、きっと良案もあるよ」
 「殿下」
 なんか、偉い人しか使えないとか言うガゼボに連れて来られた。胡散臭い笑みを浮かべた王子よ、よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるな。勝手に手をヤツの両手で握られて腹立たしい。怒り故に手と声が震える。顔まで赤くなってないといいが。殴りたい衝動を堪える。
 「シオン。私では、頼りない?」
 YES。
 やめて。笑わせないで。あなた様が頼りになることなど、永遠に来ませんとのことよ勘違いヤロー様。笑い堪えてたら涙出て来た。肩も震えちゃうわうふふ。
 「お願いだ、シオン。一人で抱え込まないで」
 いいの?あなた様を指さして思い切り笑っていいの?それでもあなた様は、役に立てて良かった☆とか言ってくれるの?そもそもあなた様、婚約者様がいらっしゃいますとのことでごぜーますわよね。
 明らかに浮気じゃん。
 肩に触れたり顔近付けたり腰を抱いたり顔に触れたり。節操なしのゲスじゃんね。こっちの目的さえ果たせればまあ頑張って我慢するけど。我慢するけど、大丈夫かな、これ。気持ち悪くて手が出そうだけど、我慢出来るかな。
 「シオン」
 熱く目が潤んでいます。シオンさん、貞操の危機です。ドウシマスカ。
 ▶ナグリコロス
  ケリコロス
  ブチコロス
 うーん。三択すべて殺す選択しか出てこない。ゲスの顔が近付いて来た。
 キモ。
 仕方がない。テーブルを蹴り飛ばして意識をそちらに向けましょう。と思ったら。
 「殿下」
 護衛、グッジョブ。おまえにはあとでこっそり望むものを用意しよう。
 「ふふ。シオン、お昼、食べようか」
 何事もなかったようにするとか。すげぇメンタル。



*つづく*
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