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 うわあ。これ、その性格が兄にバレてないと思ってるでしょ。そんなわけないじゃん。同じ腹黒同士、兄の方が遙かに上行く腹黒なんだから、ちょい腹黒なんてすぐ看破だって。バレていないと思って聖女の仮面を被るアホサリュアを嗤って楽しんでるだけでしょ。どっちも頭おかしいって。バレバレの媚びを売る脳内花畑性悪仮面千年聖女に性格破綻者の王太子。この二人がくっついたらこの国どうなんの。ああ、そうなる未来なら、私はいないからどうでもいいか。私が生き残ったら仮面聖女はいないから、そうなる未来は来ない、と。私は影艶ともふもふライフするだけだから関係ない。
 千年聖女様は、兄が私を責め立ててくれると思っているんだろうな。そうなってもいいけど。でもたぶんならないね、あの顔。私に何を求めているんだ。ありのまましか伝えられないぞ、私は。
 「千年聖女様が私には理解出来ない言語を操るので、わかる言葉で会話を望んだまでです」
 聖女様たちも神官も、ほうけた顔をしている。兄は少し肩が揺れている。笑い堪えているね、あれ。
 「理解、出来ない、言語?」
 兄、声震えているよ。
 「はい。言語は同じに聞こえるのですが、意思の疎通が出来ませんので。ですから、千年聖女様の言う通り、私は悪くありません。千年聖女様が、私が理解出来る会話をしてくださればいいだけですので。お清めの途中なので、もう行っていいでしょうか」
 サリュアが凄い顔になって睨んでいる。仮面外れてるよ、聖女様。バレちゃうよ。愛しの王子様に、バレちゃうよ。
 「ひ、ひどいわ、シラユキさん。私、仲良くなりたくて、一生懸命、ううっ」
 兄の胸に顔を埋める。可哀相にと抱き締めてやりなよ、兄。片手は確かに聖女様の肩に添えてあげているけど、もう片方の手は何。その手で隠した顔、絶対笑ってるよね。
 「そうだったんですね。もっとわかりやすく且つ共感の持てる友情を示していただきたいです。千年聖女様の友情の示し方が難易度高すぎて理解出来ずにすみません」
 あーあ。兄、そんなに震えて。でもきっとバカ女サリュアは自分のために怒りに震えていると思っていることでしょう。神官様たちも聖女様たちも、笑っちゃいけないとあらぬ方向を向いて気を逸らしている。
 「それから、千年聖女様と仲良くだなんて恐れ多いので、最も遠い位置から千年聖女様を教師として勉強させていただきます」
 反面教師だけどな。
 「神官様、聖女様、お騒がせして申し訳ありませんでした。もっと千年聖女様のお言葉を理解出来るように努力いたします。お清めに戻っても?」
 握り締めた雑巾を顔の辺りまで掲げると。
 「ああ、いや、よくわからないな。少し向こうで話をしよう、シラユキ」
 何とか笑いを堪えた兄がサリュアから離れると、他の者はお務めの続きを、と兄が私の腰を抱いて別室に移動する。千年聖女の嫉妬を煽るのはやめろ、腹黒王子。


*つづく*
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