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89 ~ウェンリアインside~
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「殿下」
「本当、予想に違わない行動をしてくれて嬉しいよ」
護衛三人を連れて神殿に向かう途中。サリュアが逃げた。
人目を避けるように、普段通ることのない道を選んで神殿へ向かっていた。馬車も質素、護衛も最小限。これはもちろん、サリュアに勘違いをさせるためだ。処刑から逃れるための逃避行であると。
護送であってももう少しマシな馬車を使う。護衛がこれだけなんて、護送なら尚のことあり得ない。周囲は何故と首を傾げたが、増長しきった千年聖女にはお仕置きが必要だと言った。何でも大袈裟で、特別扱いをしないと癇癪を起こす千年聖女には、反対の特別扱いをしてあげようと。
私の護衛はこの国指折りの者たち。そして私は他の追随を許さない魔法の使い手。私が王太子であることに目を瞑れば、何の問題もない布陣。寧ろ過剰な護送と言えた。
「探すフリでいい」
「はっ」
ははっ。逃げろ逃げろ、サリュア。
逃亡は、罪を償うことを拒否した証。確定した刑に背を向けた。折角軟禁で済んだのにね。これで処刑は確定だ。もう誰も庇いきれない。
そして自滅しろ。
処刑をされると思い込んでいるサリュアは、国民を頼るだろう。もちろん、そう思ってもらうように私は伝えた。但し、私は嘘を言ったのではない。私が嘘を吐いて千年聖女を騙した、となると面倒だ。私は事実を述べたまで。そして、そこには言わない言葉が存在していた、ただそれだけ。無理があるだろうって?そんなことはない。我々王族は、あらゆる言葉の裏の裏まで考え、読み取り、言わない言葉の存在にまで思案する。話の相手が自分にどんな感情を抱いているのか、相手がどんな人物であるか、どんな状態であるか。それを加味して会話をする。サリュアに話をしながら、つい、その癖が出てしまっただけ。
国民には、千年聖女が国家転覆を謀ったと公表。案の定、国に激震が走るも、半信半疑。刑はまだ公表されていない。サリュアにもだ。父やあの場にいた者たちに、軟禁だと国民に公表し、何かの拍子にサリュアの耳に入ると、彼女は刑の軽さに安堵してしまうと伝えた。ずっとと言うわけにはいかないが、まだ刑は未確定だと怯えさせておくのも罰になると。そのため刑を知らない国民たちが、サリュアに、「処刑される、助けてくれ」と言われれば、千年聖女を慕う国民たちはこぞって逃亡の手助けをする。国民は、サリュア本人が刑を知らないなどと、思いもしないだろう。
例え市井にどんな噂が流れていても、あの見た目だ。誰もが庇護欲をそそられ、自分こそが千年聖女を助けたのだと思いたい者たちが、こぞって手を差し伸べるだろう。
千年聖女様がそんな恐ろしいことを企てるはずがない、何かの間違いだ、ほとぼりが冷めるまで安全な場所に逃げていただこう、と。
法に“聖女は国の許可なく国を出てはいけない、これを破った者は一億以下の科料及び終身刑、または死刑”という罰則がある。国外逃亡しようとしたとして、たまたま真白が発見し、神獣に処理をさせたという筋書きだ。実際に国外逃亡を謀ったかどうかなどどうでもいい。軟禁に難色を示して抵抗をするようであれば、処刑もやむを得ないと父上から承諾を得ている。
不可抗力で殺してしまっても罪には問わない、と国王陛下のお墨付きだ。
二度、殺し損ねている。
次こそは、真白の憂いを晴らさせなくては。
*つづく*
「本当、予想に違わない行動をしてくれて嬉しいよ」
護衛三人を連れて神殿に向かう途中。サリュアが逃げた。
人目を避けるように、普段通ることのない道を選んで神殿へ向かっていた。馬車も質素、護衛も最小限。これはもちろん、サリュアに勘違いをさせるためだ。処刑から逃れるための逃避行であると。
護送であってももう少しマシな馬車を使う。護衛がこれだけなんて、護送なら尚のことあり得ない。周囲は何故と首を傾げたが、増長しきった千年聖女にはお仕置きが必要だと言った。何でも大袈裟で、特別扱いをしないと癇癪を起こす千年聖女には、反対の特別扱いをしてあげようと。
私の護衛はこの国指折りの者たち。そして私は他の追随を許さない魔法の使い手。私が王太子であることに目を瞑れば、何の問題もない布陣。寧ろ過剰な護送と言えた。
「探すフリでいい」
「はっ」
ははっ。逃げろ逃げろ、サリュア。
逃亡は、罪を償うことを拒否した証。確定した刑に背を向けた。折角軟禁で済んだのにね。これで処刑は確定だ。もう誰も庇いきれない。
そして自滅しろ。
処刑をされると思い込んでいるサリュアは、国民を頼るだろう。もちろん、そう思ってもらうように私は伝えた。但し、私は嘘を言ったのではない。私が嘘を吐いて千年聖女を騙した、となると面倒だ。私は事実を述べたまで。そして、そこには言わない言葉が存在していた、ただそれだけ。無理があるだろうって?そんなことはない。我々王族は、あらゆる言葉の裏の裏まで考え、読み取り、言わない言葉の存在にまで思案する。話の相手が自分にどんな感情を抱いているのか、相手がどんな人物であるか、どんな状態であるか。それを加味して会話をする。サリュアに話をしながら、つい、その癖が出てしまっただけ。
国民には、千年聖女が国家転覆を謀ったと公表。案の定、国に激震が走るも、半信半疑。刑はまだ公表されていない。サリュアにもだ。父やあの場にいた者たちに、軟禁だと国民に公表し、何かの拍子にサリュアの耳に入ると、彼女は刑の軽さに安堵してしまうと伝えた。ずっとと言うわけにはいかないが、まだ刑は未確定だと怯えさせておくのも罰になると。そのため刑を知らない国民たちが、サリュアに、「処刑される、助けてくれ」と言われれば、千年聖女を慕う国民たちはこぞって逃亡の手助けをする。国民は、サリュア本人が刑を知らないなどと、思いもしないだろう。
例え市井にどんな噂が流れていても、あの見た目だ。誰もが庇護欲をそそられ、自分こそが千年聖女を助けたのだと思いたい者たちが、こぞって手を差し伸べるだろう。
千年聖女様がそんな恐ろしいことを企てるはずがない、何かの間違いだ、ほとぼりが冷めるまで安全な場所に逃げていただこう、と。
法に“聖女は国の許可なく国を出てはいけない、これを破った者は一億以下の科料及び終身刑、または死刑”という罰則がある。国外逃亡しようとしたとして、たまたま真白が発見し、神獣に処理をさせたという筋書きだ。実際に国外逃亡を謀ったかどうかなどどうでもいい。軟禁に難色を示して抵抗をするようであれば、処刑もやむを得ないと父上から承諾を得ている。
不可抗力で殺してしまっても罪には問わない、と国王陛下のお墨付きだ。
二度、殺し損ねている。
次こそは、真白の憂いを晴らさせなくては。
*つづく*
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