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それは、運命
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明日から夏の長期休暇。王妃様のお茶会に呼ばれていたため、学園が終わると王城に向かった。詐欺師と隠れマッチョとなぜかいるクソホストたちとお城を歩いていると、偶然騎士団の訓練が行われていた。その光景に、私の目が、釘付けになった。
ああ、そう、これが。
「あのお方こそ、わたくしが求めていた方」
「「「は?!」」」
これが、運命というものなのね。
「詐欺王子様、あの方は、どなた?」
「呼び方がおかしいがまあそこはいい。あの一際大きな男のことか?彼ならルドルフ・ウォルガータ。第二近衛隊副隊長、私の近衛隊だな」
「まさかガーディニー嬢、ウォルガータ副隊長をっ?!」
隠れマッチョが青ざめ、詐欺王子が顔を引き攣らせ、ホストは顔が包帯でぐるぐる巻きなので反応がわからない。
「第二近衛隊副隊長、ルドルフ・ウォルガータ様」
隠れマッチョの二倍はあろう体躯に、鋭い眼光。腹に響く、低く地を這うような声。近衛たちを訓練するその姿は、まさに悪鬼羅刹、修羅の如きお方。あの丸太のような腕で殴られたら、一発で歯が粉々ね。ああ、顎も砕けるかも。
「あの拳で、語り合いたい」
「拳で語るなら私になさってください、ガーディニー嬢っ」
「同じ趣味だと思われているのか?ルドルフは。ガーディニー嬢、彼の見た目はあんな感じだが、キミが思っているような人物ではないぞ?」
「詐欺野郎に何がわかるのですか」
「少なくともガーディニー嬢よりは一緒にいるのだが」
「はんっ。それでマウントを取ったつもりかしら。ああ、わたくしに彼を取られると危惧しているのね」
「違うから。本当に彼はそういう人じゃないから」
「友人の恋を応援出来なくて国が背負えると思って?」
「え?友人?」
「あら。違いましたの?」
「殿下っ?!やはりガーディニー嬢のことを?!」
「違うからな?」
「もががっ?!もごふぉーっ!」
「喋るな。そこにいることを許されているだけでも地に伏して神に感謝を捧げるべきだろ。勝手に入ってくるんじゃねぇよクソゴミホストが」
「もふ」
排除しても排除しても湧いてくるサーティス・フレイネスにいい加減疲れたので、口を開かせないため、猿轡をすることを条件に近付くことを許可した。が、視界に入ることもウザキモイので、顔を包帯で覆うことにした。当の本人が喜んで受け入れていることに腹が立つ。
「とにかく詐欺野郎、明日からのスケジュールを教えてくださらないかしら」
「普段キミが私をどう思っているのかだだ漏れの呼び方だよね、さっきから。頼み事をする態度とは思えないのだが」
「そう、ですわよね。友人ですらないただの顔見知りに王族の予定など教えていただけるはずありませんでしたわね。失礼いたしました」
「殿下は人でなしです。女性を泣かせて国を背負えるとお思いですか」
「何でルドルフを援護するの?そしてガーディニー嬢だけでなくおまえまで何故私に国を背負わせる。国を背負うのは兄上だ」
「わかりましたわ。詐欺殿下の予定はどうでもいいので、第二近衛副隊長様の予定を教えてくださいまし」
「驚くほど反省の色無しだな。まったく。教えられる範囲で調べておくよ」
「まあっ。ありがとうございます、殿下っ」
淡く頬を染めて満面の笑みを見せたガーディニー嬢に、心臓の音がうるさくなった。
え。いやいやいや。会話が成立しない、鬼畜令嬢だぞ?落ち着け、心臓!断じて認めないからな?!
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
鬼畜のはずの攻略対象たちを封印し、自らが鬼畜となった悪役令嬢のお話、いかがでしたか。
人生、思うようになりませんよね。
でもみんなが幸せになれるといいですね。
この後、気まぐれに番外編を投稿する予定です。
それでは、またお会い出来ることを祈って。
ああ、そう、これが。
「あのお方こそ、わたくしが求めていた方」
「「「は?!」」」
これが、運命というものなのね。
「詐欺王子様、あの方は、どなた?」
「呼び方がおかしいがまあそこはいい。あの一際大きな男のことか?彼ならルドルフ・ウォルガータ。第二近衛隊副隊長、私の近衛隊だな」
「まさかガーディニー嬢、ウォルガータ副隊長をっ?!」
隠れマッチョが青ざめ、詐欺王子が顔を引き攣らせ、ホストは顔が包帯でぐるぐる巻きなので反応がわからない。
「第二近衛隊副隊長、ルドルフ・ウォルガータ様」
隠れマッチョの二倍はあろう体躯に、鋭い眼光。腹に響く、低く地を這うような声。近衛たちを訓練するその姿は、まさに悪鬼羅刹、修羅の如きお方。あの丸太のような腕で殴られたら、一発で歯が粉々ね。ああ、顎も砕けるかも。
「あの拳で、語り合いたい」
「拳で語るなら私になさってください、ガーディニー嬢っ」
「同じ趣味だと思われているのか?ルドルフは。ガーディニー嬢、彼の見た目はあんな感じだが、キミが思っているような人物ではないぞ?」
「詐欺野郎に何がわかるのですか」
「少なくともガーディニー嬢よりは一緒にいるのだが」
「はんっ。それでマウントを取ったつもりかしら。ああ、わたくしに彼を取られると危惧しているのね」
「違うから。本当に彼はそういう人じゃないから」
「友人の恋を応援出来なくて国が背負えると思って?」
「え?友人?」
「あら。違いましたの?」
「殿下っ?!やはりガーディニー嬢のことを?!」
「違うからな?」
「もががっ?!もごふぉーっ!」
「喋るな。そこにいることを許されているだけでも地に伏して神に感謝を捧げるべきだろ。勝手に入ってくるんじゃねぇよクソゴミホストが」
「もふ」
排除しても排除しても湧いてくるサーティス・フレイネスにいい加減疲れたので、口を開かせないため、猿轡をすることを条件に近付くことを許可した。が、視界に入ることもウザキモイので、顔を包帯で覆うことにした。当の本人が喜んで受け入れていることに腹が立つ。
「とにかく詐欺野郎、明日からのスケジュールを教えてくださらないかしら」
「普段キミが私をどう思っているのかだだ漏れの呼び方だよね、さっきから。頼み事をする態度とは思えないのだが」
「そう、ですわよね。友人ですらないただの顔見知りに王族の予定など教えていただけるはずありませんでしたわね。失礼いたしました」
「殿下は人でなしです。女性を泣かせて国を背負えるとお思いですか」
「何でルドルフを援護するの?そしてガーディニー嬢だけでなくおまえまで何故私に国を背負わせる。国を背負うのは兄上だ」
「わかりましたわ。詐欺殿下の予定はどうでもいいので、第二近衛副隊長様の予定を教えてくださいまし」
「驚くほど反省の色無しだな。まったく。教えられる範囲で調べておくよ」
「まあっ。ありがとうございます、殿下っ」
淡く頬を染めて満面の笑みを見せたガーディニー嬢に、心臓の音がうるさくなった。
え。いやいやいや。会話が成立しない、鬼畜令嬢だぞ?落ち着け、心臓!断じて認めないからな?!
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
鬼畜のはずの攻略対象たちを封印し、自らが鬼畜となった悪役令嬢のお話、いかがでしたか。
人生、思うようになりませんよね。
でもみんなが幸せになれるといいですね。
この後、気まぐれに番外編を投稿する予定です。
それでは、またお会い出来ることを祈って。
応援ありがとうございます!
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