乙女の憧れ、つまっています ~平凡OLは非凡な日常~

らがまふぃん

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最終話 それぞれの思い

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 「生きている世界が違うことは百も承知だ。トーコに生き方を変えて欲しいなんて思っていない。そのままでいい。私は、トーコの帰る場所になりたい」



 ウォン様に稽古をつけてもらった。

 この世界は、ウォン様に護られている。あの、誰よりも強く、大きく、優しい背中に。
 ウォン様の姿が視界に入るだけで、誰もがその顔から不安の色を無くす。

 私の体は護衛として、お世辞にも恵まれた体とは言い難い。どちらかというと華奢の部類。だから、みんなが不安になる。本当に大丈夫だろうか、と。その不安を払拭するには、言葉ではない、行動で示さなくてはならない。地道に、少しずつわかってもらうしかない。私が戦えることを。

 月日を重ねるごとに、私が戦えることを知る者が増えていった。

 そんな中、不可解なことが起こる。

 世界の四大財閥である人たちから、愛の告白なるものを受けた。
 我ながら随分偉そうだとは思うが、考えてはみるが期待しないで欲しいと言うと、それでいいと言われた。

 様々なアプローチを受ける中、自分の中の変化に気付く。

 稽古で限界を迎えた私は、目覚めると見知らぬベッドで寝ていた。
 途中、人の気配に一度目を覚ましたときに、ヴァンタイン様がいたことは覚えている。だからここは、ヴァンタイン様に関係した場所なのだろうと思う。そう思いながら両手の違和感に目をやると、なんと四人に手を握られていた。

 途中目覚めて、ヴァンタイン様だとわかって再び眠りについたこと、四人に手を握られても目覚めなかったこと。
 それは四人に対して、少なくとも害はないものと、認識していると言うことだ。眠っている姿を晒すなど、警戒している者に対して絶対にしない。

 手を動かすと起きてしまうかもしれないので、ゆっくり上体だけを起こし、眠る四人の顔を見る。
 以前にも思ったが、私が四人の周囲にいないタイプの人間だから目に止まったであろうことは、想像にかたくない。それが、なぜ恋愛の方向へ進んだのかはやはりわからないし、わかる日も来ないと思う。
 それでも、こうして私を案じてくれることを、ありがたいと思う。

 そんなことをつらつらと考えていると、アスカーノ様が目を覚ました。寝惚けているのに、開口一番私を呼んだことに、嬉しいと感じた。他の三人も次々目覚め、私を見るなり再びベッドに伏してしまった。私が目覚めたことに安堵してくれたようだ。それ程私を案じてくれていたのだろう。本当にありがたいことだ。


*~*~*~*~*


 透子が目覚めると一旦解散となり、各々支度を整えてから、みんなで朝食の席を共にする。

 「トーコ、体、ツラくない?」

 マリノが心配そうに透子を覗き込む。

 「ありがとうございます。何ともありません」

 全身筋肉痛など、自分が未熟なだけだ。痛い内にも入らない。
 そう思っている透子が何でもないと礼を言うと、四人は微妙な顔をした。四人は、何でもないことはないとわかっている。けれど、通常の人間であれば根を上げるようなことさえ、特Sの人間には日常だということも理解している。

 「トーコ」

 食事の手を止め、ジーンがカトラリーを置いて透子を見つめた。透子もカトラリーを置くと、ジーンを見る。

 「私はトーコを誇りに思う」

 透子は目を丸くした。

 「生きている世界が違うことは百も承知だ。トーコに生き方を変えて欲しいなんて思っていない。そのままでいい。私は、トーコの帰る場所になりたい」

 透子は驚きのあまり、何も言えない。

 自分たちの持つスペックを理解して欲しい。
 そして私の生きる世界も。
 私がそっちの世界で生きられるはずがないのに。

 そう思っていたのに。

 「トーコが、ただいまって言える場所になりたいんだ」

 マリノが柔らかく見つめている。

 「何かあったときに、帰る場所があれば、頑張れることもあるから。そういう存在になりたいんだよ、トーコ」
 「安心出来る場所というのはとても大切です。私はトーコにとって、安心出来る場所になりたいのです」

 エドガーもノーマも、穏やかに微笑んで透子を見つめている。

 「ありがとう、ございます」

 透子の心は、間違いなく温かかった。


*~*~*~*~*


 「絶対こっちの方がいい!」
 「そんなアスカーノの趣味満載は違う!トーコにはこれだ!」
 「ヴァンタインの色ではないですか。ありえませんね。愛らしいトーコにはこれ一択です」
 「何言っているの、ミュゲル。トーコはこういう方が似合うよ」
 「それこそロベロニアの趣味全開でしょ!もう、早くしないとトーコが戻って来ちゃうよ!着る服が決まらないと出掛けられないじゃない!」

 恋愛の意味で好意を持っているかと言われれば、違うと思う。
 けれど。

 「お待たせいたしました」
 「「「「トーコ!」」」」

 四人に名を呼ばれるのは、確かに嬉しいと感じている。




*おしまい*

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
セレブに言い寄られる見た目平凡少女のお話し、いかがでしたか。
乙女の憧れを無意識にすべて熟す男前な透子にメロメロになっていただけたら幸いです。
いつか誰かと結ばれるのかな。
透子には幸せになって欲しいです。
みなさまは、お気に入りのセレブはいらっしゃいましたか?
わかりづらかったり矛盾していたらすみません。
また別の作品でお会い出来ることを願って。

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