本当は、愛してる

双子のたまご

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第九章

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琥珀さんは外見だけじゃなく、内面も綺麗な人みたいだ。
優しく話を聞いてくれた。
穏やかに、けれどしっかりと受け止めてくれる。
普段自分のことを話すのは苦手なのに、何故か話をしてしまう。
こういうところを、龍海さんも好きになったのだろうか。

「なんか…すみません。」

「何がですか?」

「見ず知らずの私の話をこんなに聞いてもらって…」

私にとって琥珀さんは見ず知らず、ではないけれど…

「…見ず知らずじゃないです。」

…え?

「…ほら!今日ここで知り合ったじゃないですか!」

あ…

「そう、ですね。」

「こちらこそ、話しづらいこともあったでしょう。
話してくれてありがとうございます。」

「いえ、妹の話をする相手なんて、いないから…」

「…そうでしたか。
少しでもお力になれたなら、良かったです。」

「…あ、もうこんな時間。
琥珀さん、時間大丈夫でしたか?
私、引き留めてしまって…」

「いえいえ!全然大丈夫ですよ。
…あの、この辺りに住んでいらっしゃいます?」

「え?」

「いや!えっと、良かったらまたお茶でもと思って!
いやなんか急に、ナンパみたいなこと言っちゃった!あはははは…」

なんだろう、急に琥珀さんが焦りだした。

「あ、いえ、そうですね…この辺り、ですね」

「そ、そうなんだ~」

「ふふっ…」

「翠さん?」

「あ、ごめんなさい。
琥珀さん、可愛らしい人ですね。
…紅の命日に笑顔で紅の話が出来るなんて思わなかった…
本当にありがとうございます。」

不思議な時間だった。
こんな素敵な人を好きになった龍海さん、見る目あるなぁ…
琥珀さんはまたお茶でも、と言ってくれたけど、このまま付き合いを続けてどこで龍海さんと会うか分からない。

「…お話、聞いてくれたお礼に、ここは私にご馳走させてください。」

「いえ、そんな…」

「まぁまぁ。」

「…」

「紅も一緒に話してたみたいで、楽しかった。
ありがとうございます。」

改めて琥珀さんにお礼をいい、席を立つ。

「…いえ」

「…また、どこかで、会えると嬉しいです。」

半分、嘘。
こんな優しい人に、ごめんなさい。

「…はい。」

何故か琥珀さんの方が、苦しそうな顔をしていた。
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