ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

文字の大きさ
61 / 188

61『霊薬』とは、ただの水

しおりを挟む
新しく冒険者登録をした私ことユリナ。
その話題が、ギルドで聞かれるそうだ。

「私、冒険者登録をした直後に、このダンジョンに来たの。だから、自分の話題といってもピンとこないね」

ガルと仲間たちが教えてくれた話はこうだ。

Fランクで冒険者登録をしたばかりの女性。名はユリナ。

街中で不良冒険者と一緒に、地元領主も持て余している、次女アイリーンの馬車に轢かれた。

その事故に女性が巻き込まれた。女性は瀕死。

ユリナは、不思議な「気功術」で女性を完治させた。

さらに、アイリーン付きの不良護衛を2人も制圧し、そのまま去った。

次の日、国に属する街の監察役がアイリーンの護衛、馬車の御者を任意同行。

横暴貴族に、釘を刺すためだ。

追加で冒険者ギルドで「ユリナ」を調査。ユリナの開示情報はレベル29。

しかしなんと、スキルゼロ、魔力ゼロ。

「ユリナさん、気を悪くしないでね。あなた自身が「劣等人」を公表しているのに、強烈な回復スキルを披露したでしょ」

「まあね。鑑定オーブに出てないから、開示できないだけ」

「レベル29は低くないけど、相手は「豪腕」と「剣技レベル2」を持ったレベル40、42の護衛2人」

「そうそう。その2人、一方的に制圧したでしょ。話にインパクトありすぎて、色んな人が探しているわ」

「以前、貴族絡みで嫌な思いをしたから、当分はフリーで動きたいの」

「そうなんだ・・。みんな不思議がっているよ。わざわざノースキルを公表しているのか、そこが分からないって」

「そこか・・」

スキルゼロ、いわゆる「劣等人」を公開しているのは私の意地。

『超回復』を得ても、冒険者ギルドの測定に何の反応もしない。

だったら、世間の評価は、一緒に頑張って生きていたナリス、アリサ、モナと同じ「劣等人」のまんま。

劣等人。

私の親友と同じ呼ばれ方を続けたい。
そしてそのまま、Bランク以上の冒険者になってみようと思った。

「鎖かたびらの上からシャツ1枚のソロ・・。その格好で、中級ダンジョンの35階。実力は本物か」

「戦いにも応用できる。オリジナルの気功術、自己回復が得意よ」

「ガルが治してもらった、気功ね。本当に1000ゴールドでいいの?」

「焼ラビットとエールのセットでも1100ゴールドするわよ」

上位冒険者になると決めてから、自重、という言葉が薄れている。

「今回限り。1人1000ゴールドで引き受けるわ」

ガルのほかは弟のダル、女性が3人いてメル、ハルナ、ミリー。なんと5人でまとめて結婚しているそうだ。

自由すぎる。

ダル、メル、ハルナは擦り傷だけ。

問題はミリー。見ると左手の小指がなかった。

まあ、いいか。

ぼそっ。「ミリーさん、左手、しばらく手袋で隠して欲しいな」

「え、なぜ?」
『超回復』バチイイ。

「あうっ。え、え、え?」

驚いた顔で私を見るミリーに、「何も言わない」のサイン。

みんなに別れを告げた。

ミリーが「聖女様」と不吉なキーワードで私を呼んでいる。

気にしちゃいけない。全力で立ち去った。

「あ、お金もらうの忘れた。まあいいや」


そこから3日間。ダンジョン38階に到達。

早いように感じるが、休憩なしのノンストップ72時間操業だ。

ターキーが2メートル、ダチョウが4メートル超えとなった。

「等価交換」封印で倒すのがきつくなったが、22回の戦闘を時間をかけてこなした。

相手の力を利用し、ミスリルソードを使えば、何とかなった。

38階セーフティーゾーン前の戦いなんて、ダメージ食らいまくり。

4・2メートルダチョウと2メートルターキーのセットが4組同時。

最初の1時間は、攻撃されるのみ。

体がガンガン縮んた。
敵6羽を倒しとき、地上から持ってきた木材、ゴブリンなど「等価交換」材料を使い切った。

戦闘時間は、体感で3時間。

「高く売れるウズラを優先して残すか」

32階のダチョウから等価交換で使うことにした。

38階セーフティーゾーン到着。ここでは、ゆっくり、2日間を過ごした。

出発直前、男子3人組がゾーンに飛び込んできた。

中の1人が右腕を骨折、1人が右胸陥没、重傷だ。

無事な1人が治療していたが、手持ちのポーションでは効果がない。

「くそう。すまん、そこの女の人・・・」
「緊急事態ね。助けられるわ」

「本当か!」

思いついた。

水を入れる革袋がある。入っているのは、もちろん水。

「私独特の技術。革袋に入っている薬と「気功」を同時に使うね。かなりの傷を治せるわ」

「すまん、それで頼みたい。謝礼は必ずする」

意識朦朧で胸がへこんだ男の人の口に、水を注いだ。

当然、盛大に吹き出した。驚く、無事な男性。

やべ・・。そう思いつつ、へこんだ胸に手を当てて唱えた。

「気功回復」。『超回復』ぱちっ。

「うえっぷ。げほっ、げほっ、なんだ、この水は!」

「ケイン、無事か!」

「あれ、胸の痛みがない・・」

「次は腕を骨折した人ね」
「俺?」

カップに水を注ぎ、傷にかけた。腕に手を置いて・・

『超回復』ぱちっ。

「へ、治った・・」

「特別サービス。「霊薬」は大量生産できないから、次はないよ」

「すまん、そんな貴重なものを・・」

うむ。こんな顔させると、本当は水です、とは言えない。

「謝礼はいくら払えばいいんだろうか」
「初回サービスで1000ゴールド」

「え?わずかエール2杯分だぞ」

「いいのよ。「霊薬」は長持ちしないの。使った方がいいでしょ」

彼は呆気にとられている。

「はい、あなたも傷があるわ。治すから「気功回復」」

水の霊薬ばしゃ、『超回復』でばちっ。一丁上がり。

「え、ダチョウにやられた肩の傷が・・。」

どうせ、川の水だ。
手を出して3人分、小銀貨3枚、3000ゴールドを徴収した。

「ありがとう。せめて名前くらい聞かせてもらえないだろうか」

「オルシマで登録したばかりのEランク冒険者、ユリナ。じゃあね」


劣等人と言われた過去がある。だから、人に感謝されるのがうれしい。

そんなテンションで39階をぶらぶらすること2日。とうとう最下層の40階に到達した。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...