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315 今回の勇太も試合の合間が多忙を極める
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高校柔道冬の選手権、全国大会。
勇太の嫁ズナンバー3、カオルの初戦は茶薔薇学園の勝利に終わった。
今日は残り1試合。ここから次の試合まで時間がある。
朝、歌ったので午前の仕事は終わり。次は夕方に勝ち残ったチームのインタビューだ。だから今の勇太はフリー。
しかし、試合場から通路に出た勇太の前には1回戦を敗退したチームの面々が並んでいる。
「ハイビスカス学園のみなさん、最後まで頑張る姿勢が素敵でした」
「ありがとう、勇太君」
「夏のインターハイも勇太君の前に来れるように頑張ります」
そしてギャラリーがざわざわする前で、正選手、控え計7人のリクエストで、握手、ハグ、頬ふにふに、のいずれかをやった。
そしてクッキーの、あ~ん、ぱくをやった。
いいな~、キャ~と歓声が大きい。勇太の出現率が高いパラレル市でもいまだにざわつく現象。
すると、やっぱりこうなる。
「コットイ2年、ハラノフクエです。頬ふにふにでお願いします」
今日は47都道府県の代表が16チームまで絞られる。要するに、31チームが敗退する。
31チーム×7人で計217人。もれなく勇太の前に現れた。そして勇太はリクエストに応えていく。
本当は、クッキーだけ配るはずだった。柔道連盟の依頼で来る前に500枚焼いてきた。
選手と控えで7人×47チームで329枚を配ってほしいとも言われていない。とにかく500枚を会場に持ってきてほしいと依頼された。
ルナは勇太の横にいる。梓はカオルのところに行った。ふたりは、このあたりはブレない。
勇太はハイビスカス学園5番目の女の子に握手を求められた。手を握ったとき、ゴツゴツで傷だらけの感触があった。
少し表情が変わった勇太の顔を見た女の子は、右手を引っ込めようとした。
『・・ごめんなさい。気持ち悪いでしょ。離して下さい。手が汚いって男の人に言われたことあるし』
それを聞いた勇太は、会ったこともない男子に憤慨した。
「そんなことない。君の手は努力する人の手だ。それを汚いなんて言う男がダメだ」
そう言って、傷だらけの右手を両手で包み込んであげた。
勇太は意図してやっていない。パラ高柔道部員、茶薔薇柔道部員にも普通にやっている。
ただ、ここはパラレル熊本市。ギャラリーは勇太免疫ゼロ。
『やさしかとー』
『あぎゃん言われたか~』
『勇太君、熊本に引っ越してこんかねー』
パラレル熊本弁らしき言葉が飛び交っている。
そうすると、いつもの現象が起こる。
30人ほどの相手をした勇太は、やっと行列が途切れたかと思ったが甘かった。
列が再びできた。なんだか一般の熊本県民もいる気がする。
これは勇太の行為を見て、本当に優しい男子に触れてみたくなったから。
彼女らにもクッキーのあ~ん、ぱくをやった。
どんどん減るクッキー。
これを見た勝ち上がったチームの選手は、自分達にクッキーが回ってくるのだろうかと、余計な心配をしている。
ルナは「やっぱ勇太って優しい~」と笑顔を向けた。
茶薔薇陣営にいた梓は嫌な予感がしたからスマホを開いて、このリアルタイム配信を見た。
「ヤバい・・」
きょうも、そう呟いた。
◆◆
茶薔薇の試合が始まる。
勇太は周囲の人に言われて試合時間だと知った。急いで試合場に駆けつけた。
女の子達は勇太との『ふれあい会?』は続けたいけど、カオルは勇太の嫁ズのひとり。邪魔をしないのが不文律となっている。
対戦相手は取鳥県のサカイミズキ高校。注目校のひとつで、去年のインターハイ出場者が2人もいる。
ツバキ部長、ハラダヨシノが勝ったが、残り2人が負けてカオルに回った。
みんな勇太に激励してもらって、相手校の選手も素晴らしい動きだ。
大将戦。カオルが63キロの高校エースなら、相手のネコタ選手は66キロの超有望株。
前評判を覆し、茶薔薇を破る可能性もあると言われ出した。
しかし、そうはならなかった。
開始30秒。
右の内股を警戒するネコタをカオルが左にスイッチして、やっぱり内股を決めた。ネコタ1回転。
「1本!」
おおお~、の歓声。勇太までガッツポーズだ。
不知火マイコ直伝の技術だ。
「ぐっ、すごい腰のキレだった。勇太君、不知火さんと日々、ベッドの中で磨かれた腰の動きに負けたのね」
「あ、いや、そういうんじゃなくて…」
不知火マイコが勇太ファミリー入り確定ということは、マイコとカオルも女同士で籍を入れる。
性に肯定的な、この世界。カオルは『昼は柔道三昧、夜は●ックス三昧』と尊敬の念を込めて誤解されている。
ともあれ茶薔薇柔道部は勝ち残った。
勇太はカオルのところに行こうとしたが、試合を敗戦で終えた選手が、続々と勇太の前に集まってきた。
やっぱり、ねぎらい大会になってしまった。
予感はしていても戸惑う勇太の顔が、ルナのツボに入って吹き出してしまった。
ルナは勇太の背中をバンバンたたきながら「ドンマイ」と笑うばかり。
今日の勇太はまだ、カオルどころか茶薔薇柔道部の誰とも普通に喋っていない。
勇太の嫁ズナンバー3、カオルの初戦は茶薔薇学園の勝利に終わった。
今日は残り1試合。ここから次の試合まで時間がある。
朝、歌ったので午前の仕事は終わり。次は夕方に勝ち残ったチームのインタビューだ。だから今の勇太はフリー。
しかし、試合場から通路に出た勇太の前には1回戦を敗退したチームの面々が並んでいる。
「ハイビスカス学園のみなさん、最後まで頑張る姿勢が素敵でした」
「ありがとう、勇太君」
「夏のインターハイも勇太君の前に来れるように頑張ります」
そしてギャラリーがざわざわする前で、正選手、控え計7人のリクエストで、握手、ハグ、頬ふにふに、のいずれかをやった。
そしてクッキーの、あ~ん、ぱくをやった。
いいな~、キャ~と歓声が大きい。勇太の出現率が高いパラレル市でもいまだにざわつく現象。
すると、やっぱりこうなる。
「コットイ2年、ハラノフクエです。頬ふにふにでお願いします」
今日は47都道府県の代表が16チームまで絞られる。要するに、31チームが敗退する。
31チーム×7人で計217人。もれなく勇太の前に現れた。そして勇太はリクエストに応えていく。
本当は、クッキーだけ配るはずだった。柔道連盟の依頼で来る前に500枚焼いてきた。
選手と控えで7人×47チームで329枚を配ってほしいとも言われていない。とにかく500枚を会場に持ってきてほしいと依頼された。
ルナは勇太の横にいる。梓はカオルのところに行った。ふたりは、このあたりはブレない。
勇太はハイビスカス学園5番目の女の子に握手を求められた。手を握ったとき、ゴツゴツで傷だらけの感触があった。
少し表情が変わった勇太の顔を見た女の子は、右手を引っ込めようとした。
『・・ごめんなさい。気持ち悪いでしょ。離して下さい。手が汚いって男の人に言われたことあるし』
それを聞いた勇太は、会ったこともない男子に憤慨した。
「そんなことない。君の手は努力する人の手だ。それを汚いなんて言う男がダメだ」
そう言って、傷だらけの右手を両手で包み込んであげた。
勇太は意図してやっていない。パラ高柔道部員、茶薔薇柔道部員にも普通にやっている。
ただ、ここはパラレル熊本市。ギャラリーは勇太免疫ゼロ。
『やさしかとー』
『あぎゃん言われたか~』
『勇太君、熊本に引っ越してこんかねー』
パラレル熊本弁らしき言葉が飛び交っている。
そうすると、いつもの現象が起こる。
30人ほどの相手をした勇太は、やっと行列が途切れたかと思ったが甘かった。
列が再びできた。なんだか一般の熊本県民もいる気がする。
これは勇太の行為を見て、本当に優しい男子に触れてみたくなったから。
彼女らにもクッキーのあ~ん、ぱくをやった。
どんどん減るクッキー。
これを見た勝ち上がったチームの選手は、自分達にクッキーが回ってくるのだろうかと、余計な心配をしている。
ルナは「やっぱ勇太って優しい~」と笑顔を向けた。
茶薔薇陣営にいた梓は嫌な予感がしたからスマホを開いて、このリアルタイム配信を見た。
「ヤバい・・」
きょうも、そう呟いた。
◆◆
茶薔薇の試合が始まる。
勇太は周囲の人に言われて試合時間だと知った。急いで試合場に駆けつけた。
女の子達は勇太との『ふれあい会?』は続けたいけど、カオルは勇太の嫁ズのひとり。邪魔をしないのが不文律となっている。
対戦相手は取鳥県のサカイミズキ高校。注目校のひとつで、去年のインターハイ出場者が2人もいる。
ツバキ部長、ハラダヨシノが勝ったが、残り2人が負けてカオルに回った。
みんな勇太に激励してもらって、相手校の選手も素晴らしい動きだ。
大将戦。カオルが63キロの高校エースなら、相手のネコタ選手は66キロの超有望株。
前評判を覆し、茶薔薇を破る可能性もあると言われ出した。
しかし、そうはならなかった。
開始30秒。
右の内股を警戒するネコタをカオルが左にスイッチして、やっぱり内股を決めた。ネコタ1回転。
「1本!」
おおお~、の歓声。勇太までガッツポーズだ。
不知火マイコ直伝の技術だ。
「ぐっ、すごい腰のキレだった。勇太君、不知火さんと日々、ベッドの中で磨かれた腰の動きに負けたのね」
「あ、いや、そういうんじゃなくて…」
不知火マイコが勇太ファミリー入り確定ということは、マイコとカオルも女同士で籍を入れる。
性に肯定的な、この世界。カオルは『昼は柔道三昧、夜は●ックス三昧』と尊敬の念を込めて誤解されている。
ともあれ茶薔薇柔道部は勝ち残った。
勇太はカオルのところに行こうとしたが、試合を敗戦で終えた選手が、続々と勇太の前に集まってきた。
やっぱり、ねぎらい大会になってしまった。
予感はしていても戸惑う勇太の顔が、ルナのツボに入って吹き出してしまった。
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