319 / 320
319 ここって、今日は柔道の大会場だよね
しおりを挟む
高校柔道・冬の選手県は2日目の最終日を迎えた。
2月15日の試合は午前10時開始だけど、勇太達は仕事の準備がある。8時に水前寺にある武道館に到着した。
純子&風花、ルナ、梓、そして助っ人ギタリスト中戸明日香と一緒にタクシーに乗った。明日香は今日が、勇太からプレゼントされた曲のお披露目の日。
どんな曲か注目されているし、明日香自作の曲も聞く人が増えて少しずつ人気が出てきている。
柔道連盟会長・鬼塚一子が仲間を大事にする勇太に恩を売るため、明日香の仕事を新曲のお披露目のみでなく、それ以外の仕事もねじ込んだ。
今日は純子&風花と一緒に、夕方から地元テレビに出演。長崎、佐賀、福岡の仕事も一緒にやる。
◆
勇太は会場に到着して目を見張った。ギターを演奏したり、歌ったりする女の子がたくさんいる。
なんだか前日ともムードが違う。ちょっと予想外だ。
ここは武道館だけでなく、野球ほか色々な競技施設がある。だけど音楽堂はないと聞いている。
なのに、広い駐車場のスペースが、別のイベント会場のようになっている。
♪♬♩♪♬♩♬♪♬♪♪
「明日香さ~ん、聞いて下さ~い」
「勇太く~ん」
「いっきますよ~」
それぞれ楽器を手にした女の子達が演奏を始めた。これは周辺の音楽で有名になりたい女子達が口コミで集まった。
ポイントは中戸明日香。
勇太は歌を人に作ってあげているけど、ファミリー絡みで限定されていた。嫁ズでない風花も勇太の義母葉子と籍を入れる間柄。
それが、初の例外を作ったという話が聞こえてきた。曲を渡した理由も、ただ純子&風花が世話になったという程度。
アメリカで売れているABシスターズが直接勇太に曲の提供を頼みに来ても断った。なのに一介の助っ人を優先している。
明日香には同業者からの目が向いている。
勇太の心に響く演奏や歌を披露できれば、自分も曲を作ってもらえるんじゃないかと期待する子もいる。
また明日香が提供される曲がバンド形式にも向いていという噂がある。そこで勇太に起用してもらえないかと期待する。
情報は鬼塚一子のSNSから漏れた。新曲を中戸明日香が披露するとき、ルナが今回限定で最初の数秒間だけ前奏を演奏すると告知した。
音楽女子が『ルナさんもギターやるんですか?』と鬼塚に質問メールを送ると、鬼塚は答えた。
『いんや、ルナちゃんはキーボード。そういう曲だよ』と。
サプライズのはずの情報、だだ漏れ。
鬼塚は策略家の反面、うっかりさんでもある。
明日香は武者震いした。
「よ~し。演奏まで時間もあるし、知らない誰かと一緒にセッションして気持ちを高めてみるか」
「お、やる気ですね」
「もちろんですよ、勇太君。君にもらったチャンスを最大限に生かさないとね」
「ですね~」
「私達もサポート頑張ります」
「頑張って下さい」
「よっしゃ、その意気だね!」
勇太、純子、梓、風花が次々とエールを贈った。
「メンタル強い・・」
ルナが珍しく、青い顔になっている。
「どうしたルナ」
「ほんの少しキーボードを弾くだけだから気軽に引き受けたけど、思った以上に柔道女子以外からの注目が・・」
勇太が提供した前世パクリの『S』が作った曲。最初の導入部分の3秒だけ、今回限定でルナのキーボードが入る。
失敗しても柔道女子なら笑ってリスタートさせてくれると思ったが、ムードが違う。
柔道の大会だけど、閉会式まで一般客の観戦は自由。本気で音楽をやっている、この場に詰めかけている人が見に来る。
「大丈夫だよ、ルナ」
「な、なにが?」
「失敗しても、俺が一緒に謝ってあげるよ」
「ホント?」
「うん、本当に」
「じゃあ、頑張る」
これはこれで、ギャラリー女子を刺激した。
勇太自身は、この状況を楽しんでいる。色んな人の生演奏を聴ける。
その中で、ふと耳に入ってきたメロディがあった。
♩♪♬♪♪♪♩
サビの部分だけを思い出していた前世のヒット曲に似ている。思い出せなかった、前半部分そっくりのフレーズを3人組が歌っていた。
「♪♩♪♩そんなときは~!!!♬♪♪」
期待したサビが大きく違った。
トーンダウンした。聞き入っていたのに、盛り上がりに欠けていた。
思わず「惜しい!」と声に出した勇太。
喧噪の中なのに、パワーアップした女神印の響く声は相手に届いた。そのせいで演奏が止まった。
「え」「勇太さんがダメって・・」「ああ、やっぱり・・」
演奏を中断させてしまった。大学生3人も、何か足りないと感じているようだ。
「やべ・・」勇太は何か言わないといけない。
「いやあ、ケチつけてごめんなさい。みなさんの歌を聞いてたら、続くフレーズが勝手に浮かんだもので・・。中断させて申し訳ない」
バンド名を『cooL』と聞いて、勇太は驚いた。
歌が似ているはずだ。
勇太前世でも、その歌は『cooL』という3人組が作ったもの。目の前の3人は、その人達のパラレル人物だったのだ。
ぼそっ。「ある意味、作った本人の歌だもんな。似てて当たり前か」
結局、勇太は3人に、こんなフレーズもあるんじゃないかと提案しだ。
「このフレーズは3人の歌を聞いたからこそ浮かびました。なので、使えるなら遠慮なく使って下さい」
売り出すときに勇太の名前を出してもいいけど、利益に関しては勇太は主張しないと約束した。
ルナ達も、周囲の女の子達も拍手して、3人は大いに喜んでくれた。
勇太自身はパクリそうになった歌を、事故寸前で本人達に返した気分。そもそも8割方は完成していた。
むしろ、ほっとしている。
ぼそっ。「今回の歌を公表してたら、努力して作った人達に迷惑かけるとこだった・・」
勇太前世と色々なものの時系列が微妙にずれているパラレル世界。
前世の平成後期から令和の新しい歌は、今後のパラレル世界で生まれる可能性があると思うべき。
だからパクるのは古めの歌にしようと誓った。
ここで『cooL』の3人も閃き、曲は格段にレベルが上がった。勇太的には才能ある人だと確信しているから当たり前のことだけど、前世絡みの事情なんて誰も知らない。
勇太は人の才能を見いだすことに関しても、天才的だと勘違いされることになる。
2月15日の試合は午前10時開始だけど、勇太達は仕事の準備がある。8時に水前寺にある武道館に到着した。
純子&風花、ルナ、梓、そして助っ人ギタリスト中戸明日香と一緒にタクシーに乗った。明日香は今日が、勇太からプレゼントされた曲のお披露目の日。
どんな曲か注目されているし、明日香自作の曲も聞く人が増えて少しずつ人気が出てきている。
柔道連盟会長・鬼塚一子が仲間を大事にする勇太に恩を売るため、明日香の仕事を新曲のお披露目のみでなく、それ以外の仕事もねじ込んだ。
今日は純子&風花と一緒に、夕方から地元テレビに出演。長崎、佐賀、福岡の仕事も一緒にやる。
◆
勇太は会場に到着して目を見張った。ギターを演奏したり、歌ったりする女の子がたくさんいる。
なんだか前日ともムードが違う。ちょっと予想外だ。
ここは武道館だけでなく、野球ほか色々な競技施設がある。だけど音楽堂はないと聞いている。
なのに、広い駐車場のスペースが、別のイベント会場のようになっている。
♪♬♩♪♬♩♬♪♬♪♪
「明日香さ~ん、聞いて下さ~い」
「勇太く~ん」
「いっきますよ~」
それぞれ楽器を手にした女の子達が演奏を始めた。これは周辺の音楽で有名になりたい女子達が口コミで集まった。
ポイントは中戸明日香。
勇太は歌を人に作ってあげているけど、ファミリー絡みで限定されていた。嫁ズでない風花も勇太の義母葉子と籍を入れる間柄。
それが、初の例外を作ったという話が聞こえてきた。曲を渡した理由も、ただ純子&風花が世話になったという程度。
アメリカで売れているABシスターズが直接勇太に曲の提供を頼みに来ても断った。なのに一介の助っ人を優先している。
明日香には同業者からの目が向いている。
勇太の心に響く演奏や歌を披露できれば、自分も曲を作ってもらえるんじゃないかと期待する子もいる。
また明日香が提供される曲がバンド形式にも向いていという噂がある。そこで勇太に起用してもらえないかと期待する。
情報は鬼塚一子のSNSから漏れた。新曲を中戸明日香が披露するとき、ルナが今回限定で最初の数秒間だけ前奏を演奏すると告知した。
音楽女子が『ルナさんもギターやるんですか?』と鬼塚に質問メールを送ると、鬼塚は答えた。
『いんや、ルナちゃんはキーボード。そういう曲だよ』と。
サプライズのはずの情報、だだ漏れ。
鬼塚は策略家の反面、うっかりさんでもある。
明日香は武者震いした。
「よ~し。演奏まで時間もあるし、知らない誰かと一緒にセッションして気持ちを高めてみるか」
「お、やる気ですね」
「もちろんですよ、勇太君。君にもらったチャンスを最大限に生かさないとね」
「ですね~」
「私達もサポート頑張ります」
「頑張って下さい」
「よっしゃ、その意気だね!」
勇太、純子、梓、風花が次々とエールを贈った。
「メンタル強い・・」
ルナが珍しく、青い顔になっている。
「どうしたルナ」
「ほんの少しキーボードを弾くだけだから気軽に引き受けたけど、思った以上に柔道女子以外からの注目が・・」
勇太が提供した前世パクリの『S』が作った曲。最初の導入部分の3秒だけ、今回限定でルナのキーボードが入る。
失敗しても柔道女子なら笑ってリスタートさせてくれると思ったが、ムードが違う。
柔道の大会だけど、閉会式まで一般客の観戦は自由。本気で音楽をやっている、この場に詰めかけている人が見に来る。
「大丈夫だよ、ルナ」
「な、なにが?」
「失敗しても、俺が一緒に謝ってあげるよ」
「ホント?」
「うん、本当に」
「じゃあ、頑張る」
これはこれで、ギャラリー女子を刺激した。
勇太自身は、この状況を楽しんでいる。色んな人の生演奏を聴ける。
その中で、ふと耳に入ってきたメロディがあった。
♩♪♬♪♪♪♩
サビの部分だけを思い出していた前世のヒット曲に似ている。思い出せなかった、前半部分そっくりのフレーズを3人組が歌っていた。
「♪♩♪♩そんなときは~!!!♬♪♪」
期待したサビが大きく違った。
トーンダウンした。聞き入っていたのに、盛り上がりに欠けていた。
思わず「惜しい!」と声に出した勇太。
喧噪の中なのに、パワーアップした女神印の響く声は相手に届いた。そのせいで演奏が止まった。
「え」「勇太さんがダメって・・」「ああ、やっぱり・・」
演奏を中断させてしまった。大学生3人も、何か足りないと感じているようだ。
「やべ・・」勇太は何か言わないといけない。
「いやあ、ケチつけてごめんなさい。みなさんの歌を聞いてたら、続くフレーズが勝手に浮かんだもので・・。中断させて申し訳ない」
バンド名を『cooL』と聞いて、勇太は驚いた。
歌が似ているはずだ。
勇太前世でも、その歌は『cooL』という3人組が作ったもの。目の前の3人は、その人達のパラレル人物だったのだ。
ぼそっ。「ある意味、作った本人の歌だもんな。似てて当たり前か」
結局、勇太は3人に、こんなフレーズもあるんじゃないかと提案しだ。
「このフレーズは3人の歌を聞いたからこそ浮かびました。なので、使えるなら遠慮なく使って下さい」
売り出すときに勇太の名前を出してもいいけど、利益に関しては勇太は主張しないと約束した。
ルナ達も、周囲の女の子達も拍手して、3人は大いに喜んでくれた。
勇太自身はパクリそうになった歌を、事故寸前で本人達に返した気分。そもそも8割方は完成していた。
むしろ、ほっとしている。
ぼそっ。「今回の歌を公表してたら、努力して作った人達に迷惑かけるとこだった・・」
勇太前世と色々なものの時系列が微妙にずれているパラレル世界。
前世の平成後期から令和の新しい歌は、今後のパラレル世界で生まれる可能性があると思うべき。
だからパクるのは古めの歌にしようと誓った。
ここで『cooL』の3人も閃き、曲は格段にレベルが上がった。勇太的には才能ある人だと確信しているから当たり前のことだけど、前世絡みの事情なんて誰も知らない。
勇太は人の才能を見いだすことに関しても、天才的だと勘違いされることになる。
30
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる