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339 伊集院君の家族が増えるが
伊集院君は楽しかった。
世界柔道の最終日。柔道連盟会長の鬼塚一子に頼み込んで、ギャラはゼロに近い感じで勇太とセットの仕事をねじ込んだ。
男性護衛官の5人を振り回してしまったけど、勇太と一緒に会場を駆け回った。
試合を終えた日本人選手、ベスト4に残った選手に話を聞いたりした。勇太が抱えた選手に、そのままマイクを向けてみたりした。
伊集院君は、こういうのにもあこがれていた。
『●●選手、お疲れ様でした』から入るけれど、勇太はその後がアドリブだらけだった。
57キロ級の決勝でハナダヨウコが優勢勝ちした。
「ハナダ選手おめでとうございます」
「ありがとー、ふたりとも」
「ねえねえハナダさん、伊集院君に何かリクエストある」
「ええ、いいのかな」
「無茶ぶりでなければ、俺が頼んであげるって」
「まじですか、勇太君」
伊集院君も笑顔で頷いた。
「…あの、ふたり一緒にヨウコおめでとうって、言って欲しい~」
伊集院君と勇太は目配せして、両側から彼女を抱えた。
「きゃっ」そして耳元で同時にささやいた。
「ヨウコ、おめでとう」「ヨウコ、優勝おめでとー」
会場中がきゃー、きゃーと沸いた。
「…柔道やっててよかった」
残る72キロ級、81キロ超級でも、ふたりでハグ、頬ふにふにをやった。
81キロ超級はカナダのマリアン選手92キロが優勝。勇太を抱えて振り回す一幕もあったが、勇太は平然としていた。
そのまま伊集院君がインタビューに入りった。
「コングラチュレーション、マリアン」
「アリガトデース、ハンサムボーイ」
「いや、俺をシカトしないでよ、ふたりとも」
「ユータ、カナダにツレテカエッテ、イイデスカ?」
「オッケー、マリアン」
「オーイエー!」
「こらこら、勝手に決めないでよ」
ハプニングだらけだったけど伊集院君は心から笑えた。
伊集院君が、今日の仕事に期待していた通りだった。
中学時代からイベント系の仕事、テレビの仕事も引き受けている。婚約者ズの仕事の手伝いにもなるし不満はない。
ただ、希少な男子の上に婚約者の家の力が大きすぎて、準備万端、セリフと進行も完璧に整えられて迎えられていた。
周囲に気を使われすぎて相手も決められたセリフしか言わない。自分もそれを逸脱できない。
女性主導の社会で大事にしてもらえるし、これでいいと思っていた。けれど勇太と絡み初めて少し気持ちが変わった。
閉会式でメダルのプレゼンテーターまでやって、ひとつの希望が叶った。
伊集院君としては感慨深い。
年度が変わっても学校行事で勇太と関われるけど、公的な仕事では恐らく高校在学中は最後。
彼は政略婚約者との大きな仕事は2年先まで予約が入っている。インターハイ期間など、勇太が柔道の大会に行くときは日本にいないときさえある。
◆◆◆
夜は、柔道関係者との大々的な打ち上げになった、勇太は打ち上げが終了して伊集院君と身内だけで話そうと言われた。
普通にお店に入ると騒ぎになるから、やはり静かなラウンジの部屋を貸し切った。
勇太側は勇太、ルナ、純子、麗子。
伊集院君は政略婚約者2人。
「勇太君、実は予定を早めて登美子さんと籍を入れることになったんだ」
茶道の家元の跡継ぎ、足利登美子21歳が顔を赤くしている。横にはメディア系に顔が利く婚約者・新田藤さん。
「あれ、伊集院君の結婚は高校卒業まで待つんじゃ」
「勇太、きっとアレだよ」
「アレ?」
嫁ズはピンときたが勇太だけが分からない。
「登美子さんに子供ができたんだ」
「あ、パパになるんだ、おめでとう」
「ありがとう、だけど、外野がうるさくなってね…」
伊集院君の政略婚約者は4人。登美子さんの妊娠が分かって華道、要するに文化系の家は一安心。
だけど政治、経済、メディア系の婚約者親族がプレッシャーをかけてくるとか。
「新田さんも、早く子供作れってうるさく言われるんですか?」
「かなりですね。すごいですよ~」
パラ高婚約者3人も含めて、伊集院ファミリーも全員が仲良し。
先に妊娠した登美子さんを祝福してねぎらうし、嫉妬とか対抗心もない。
けれど家柄もよく目立つ伊集院君のところに『政略的に嫁を送り込んだ』と思っている親族。マウント合戦を続けている。
「せっかく赤ちゃんがお腹に宿ったことより、他の婚約者より先に妊娠したことしか褒めてくれないお母様にも幻滅ですね」
ため息を吐く登美子さん。
さすがの伊集院君も、4人の婚約者を同時に妊娠させることはできなかった。
勇太は中世ナーロッパを舞台にした異世界ファンタジー小説の王族もので、こんな場面があったと思った。
王子の正室、側室、愛妾の、誰に最初に子供ができるとかでもめる話だ。
「そういや、ここって俺からすれば異世界だった。こういう問題が発生することもアリか」
やはり、単純な勇太だ。
後日、伊集院君は政略婚約者の家の意見を無視して、婚約者7人と同時に籍を入れる。
「子供ができた登美子さんはもちろん、全員を守るために頑張るよ、勇太君」
「うん、伊集院君は常に俺の上を行くよね~。カッコいいよ」
こうして『伊集院村』は勇太村より先に稼働することになる。
世界柔道の最終日。柔道連盟会長の鬼塚一子に頼み込んで、ギャラはゼロに近い感じで勇太とセットの仕事をねじ込んだ。
男性護衛官の5人を振り回してしまったけど、勇太と一緒に会場を駆け回った。
試合を終えた日本人選手、ベスト4に残った選手に話を聞いたりした。勇太が抱えた選手に、そのままマイクを向けてみたりした。
伊集院君は、こういうのにもあこがれていた。
『●●選手、お疲れ様でした』から入るけれど、勇太はその後がアドリブだらけだった。
57キロ級の決勝でハナダヨウコが優勢勝ちした。
「ハナダ選手おめでとうございます」
「ありがとー、ふたりとも」
「ねえねえハナダさん、伊集院君に何かリクエストある」
「ええ、いいのかな」
「無茶ぶりでなければ、俺が頼んであげるって」
「まじですか、勇太君」
伊集院君も笑顔で頷いた。
「…あの、ふたり一緒にヨウコおめでとうって、言って欲しい~」
伊集院君と勇太は目配せして、両側から彼女を抱えた。
「きゃっ」そして耳元で同時にささやいた。
「ヨウコ、おめでとう」「ヨウコ、優勝おめでとー」
会場中がきゃー、きゃーと沸いた。
「…柔道やっててよかった」
残る72キロ級、81キロ超級でも、ふたりでハグ、頬ふにふにをやった。
81キロ超級はカナダのマリアン選手92キロが優勝。勇太を抱えて振り回す一幕もあったが、勇太は平然としていた。
そのまま伊集院君がインタビューに入りった。
「コングラチュレーション、マリアン」
「アリガトデース、ハンサムボーイ」
「いや、俺をシカトしないでよ、ふたりとも」
「ユータ、カナダにツレテカエッテ、イイデスカ?」
「オッケー、マリアン」
「オーイエー!」
「こらこら、勝手に決めないでよ」
ハプニングだらけだったけど伊集院君は心から笑えた。
伊集院君が、今日の仕事に期待していた通りだった。
中学時代からイベント系の仕事、テレビの仕事も引き受けている。婚約者ズの仕事の手伝いにもなるし不満はない。
ただ、希少な男子の上に婚約者の家の力が大きすぎて、準備万端、セリフと進行も完璧に整えられて迎えられていた。
周囲に気を使われすぎて相手も決められたセリフしか言わない。自分もそれを逸脱できない。
女性主導の社会で大事にしてもらえるし、これでいいと思っていた。けれど勇太と絡み初めて少し気持ちが変わった。
閉会式でメダルのプレゼンテーターまでやって、ひとつの希望が叶った。
伊集院君としては感慨深い。
年度が変わっても学校行事で勇太と関われるけど、公的な仕事では恐らく高校在学中は最後。
彼は政略婚約者との大きな仕事は2年先まで予約が入っている。インターハイ期間など、勇太が柔道の大会に行くときは日本にいないときさえある。
◆◆◆
夜は、柔道関係者との大々的な打ち上げになった、勇太は打ち上げが終了して伊集院君と身内だけで話そうと言われた。
普通にお店に入ると騒ぎになるから、やはり静かなラウンジの部屋を貸し切った。
勇太側は勇太、ルナ、純子、麗子。
伊集院君は政略婚約者2人。
「勇太君、実は予定を早めて登美子さんと籍を入れることになったんだ」
茶道の家元の跡継ぎ、足利登美子21歳が顔を赤くしている。横にはメディア系に顔が利く婚約者・新田藤さん。
「あれ、伊集院君の結婚は高校卒業まで待つんじゃ」
「勇太、きっとアレだよ」
「アレ?」
嫁ズはピンときたが勇太だけが分からない。
「登美子さんに子供ができたんだ」
「あ、パパになるんだ、おめでとう」
「ありがとう、だけど、外野がうるさくなってね…」
伊集院君の政略婚約者は4人。登美子さんの妊娠が分かって華道、要するに文化系の家は一安心。
だけど政治、経済、メディア系の婚約者親族がプレッシャーをかけてくるとか。
「新田さんも、早く子供作れってうるさく言われるんですか?」
「かなりですね。すごいですよ~」
パラ高婚約者3人も含めて、伊集院ファミリーも全員が仲良し。
先に妊娠した登美子さんを祝福してねぎらうし、嫉妬とか対抗心もない。
けれど家柄もよく目立つ伊集院君のところに『政略的に嫁を送り込んだ』と思っている親族。マウント合戦を続けている。
「せっかく赤ちゃんがお腹に宿ったことより、他の婚約者より先に妊娠したことしか褒めてくれないお母様にも幻滅ですね」
ため息を吐く登美子さん。
さすがの伊集院君も、4人の婚約者を同時に妊娠させることはできなかった。
勇太は中世ナーロッパを舞台にした異世界ファンタジー小説の王族もので、こんな場面があったと思った。
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やはり、単純な勇太だ。
後日、伊集院君は政略婚約者の家の意見を無視して、婚約者7人と同時に籍を入れる。
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