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1 なにもいらん、このまま送ってくれ
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◇坂元勇太◇
え~と、今の状況。
俺は死んだと思ったら、女神様に謝られてる。
察しが悪い、繊細なツンデレを理解できない、大ざっぱ。
そんなこと言われる俺だけど、さすがに自分の病気には気付いた。
顔は平凡。モブ顔と言われも、そこそこ明るい性格。そのまんま脳天気に高校生になったんだ。
同じ高校に進んだ女子・花木ルナと中2から大の仲良し。勝算200パーセントで高校合格と同時に告白した。
その日にキスしたのが人生の頂点だった。
16歳になった6月、何にもないとこで派手に転んだ。そっから難病発覚。
彼女のルナ、幼馴染みの山根純子、親友・今川薫が何回も励ましてくれた。
回復の見込みがないのが解ったとき、彼女のルナと別れた。泣かれてしまった。
人を遠ざけたけど、元カノ・ルナと親友薫だけはギリギリまで来てくれた。
親友は男同士、気持ちの支えになってくれた。
まあ、色々と他人に世話になって、愛情ももらえた。
自分でも遅すぎと思ったけれど、心から人に感謝できるようになった。
少しずつ衰弱して、手足が動かなくなる病気。最後はチューブに繋がれて、両親と年が離れた妹・梓に看取られた。
坂元勇太、享年21歳。
で、死んだ直後に白い部屋に召喚された。
「すみません、間違ってあなたの寿命を奪ってしまいました」
まさかの、おっちょこちょい女神様のようだ。胸はないが北欧系美人である。
おかしいと思った。健康だけが取り柄だった俺が、ある日いきなり難病にかかった。
俺は誰かの代わりに死んだようだ。
「それって元に戻せるんですか?」
「はい!」
マジか、またルナに会える。
「本当は亡くなるはずだった人と寿命を取り替えて、あなたが死んだ瞬間に戻せます」
俺は奇跡的に息を吹き返し、劇的に回復。代わりに、その人が亡くなるそうだ。
「えええ・・。誰か代わりに死ぬの? ちなみに、相手はどんなやつですかね」
「はい、この方です」
何もない空間に立体モニターが浮かんだ。
桜色の頬にポニーテールの、あどけない笑顔。
おい、梓だよ。俺の大事な妹じゃねえかよ。
高校生になったばかり。俺の病室に通って成長する姿を見せてくれた。
俺が病気にかからなかったら、梓が死んでたってことか・・
そういや梓、喘息とか色々抱えてたのに、俺が倒れたと同時にピタリと治った。
「・・残念だけど、受け入れます。いや、むしろ間違ってくれて、ありがとうごさいます」
「え、怒らないんですか?」
「俺の妹なんです。俺が身代わりになった相手。だから、結果オーライってことで」
「それでは、あなたは現世に戻れませんよ」
「ははは、しゃ~ないっすね・・はは」
「むむむ・・」
代案を出された。どのみち俺は、現世に戻らないなら浮遊霊の道しか残されてない。
女神様、ここで俺を放り出したら、全能の神様からキッツイお仕置きを受けるようだ。
「パラレルワールドに、あなたと似た魂の人がいて、息を引き取りました。その方と入れ替わってもらいます」
年齢は17歳で高2。
ハンサムにしてくれて、女が多い世界に送ってくれるそうだ。
だから、普通にしてれば男がモテるとか。
まさに神の力だ。
「ん?神の力・・」
「どうかなさいました?」
「女神様、俺は健康なら今のままでいいです。代わりに聞きたいことあります」
聞きたいこととは、俺の能力アップをするためのエネルギーのこと。
神力というらしい。
俺は新しい人生をやり直せるなら、今のスペックでいい。
その神力を転化して、生前の俺が迷惑をかけた両親と妹のために使ってもらうことをお願いした。
ズバリ金だ。
特に妹なんて、小さい頃は体が弱くて遠出してない。
健康になった後は俺が倒れて、満足に家族で過ごせてない。
それに、難病には医療費優遇の制度もあったとはいえ、父母にも見えない支出も相当あったはず。
宝くじでも当ててもらい、幸せの足掛かりにしてもらおう。
「しかし・・」
「いいっすよ。ここからの人生は、妹の身代わりになった俺への、ご褒美みたいなもんと思いますから」
「ではせめて、残った神力で、健康体のスキルを付けておきます」
「おっ、ありがとうごさいます」
今から行く世界の説明。歴史は違うが、俺が過ごした日本と類似している。そして年号も令和6年。
俺は生まれ育った街に送られる。
「では、あなたに幸多かれと祈っております」
「はい、女神様もお元気で~」
「何もかも奪ってしまったお詫びです。せめて、これくらい付けましょう」
最後に女神様がほっぺにキスしてくれた。これでひとつ、スキルが追加されるそうだ。
チートではない。身体の回復力、魅力が少し上がるそうだ。
元の世界との違いもインプットしてくれた。現地で確かめる。
今度は普通に生きたい。
今の家族や、最期まで支えてくれた人たち、別れるのは名残惜しい。
代わりに新天地で、新しい家族や仲間を大切に生きよう。
ルナ、必ず幸せになってくれって祈りながら意識を手放した。
◇◇◇◇◇
目が覚めた。
「ここは、病院か・・えええええ?」
異世界の乗り移りで良くある、病院で目覚めるヤツだ。
左側の側頭部がムチャ痛い。それは良くないけど、今はいい。
ストレッチャーに乗せられ、横に4人の女性がいる。
一番近くには看護師さん。巨乳で色白。
見たことがない人だ。それは違う世界に送られたから当然だ。
残る3人はというと。
闘病生活を始めたときから世話になった女医さん、確か41歳。
そして・・・
妹の梓と、母親の葉子。
「あ、あれれ。単なる生き返り?」
「ユウ兄ちゃん!」
「勇太君!」
「手術室に運ぶ前に、患者さんが劇的に持ち直しました!」
「頭が割れてたぞ、どうなっている」
女神様、どういうこと?
え~と、今の状況。
俺は死んだと思ったら、女神様に謝られてる。
察しが悪い、繊細なツンデレを理解できない、大ざっぱ。
そんなこと言われる俺だけど、さすがに自分の病気には気付いた。
顔は平凡。モブ顔と言われも、そこそこ明るい性格。そのまんま脳天気に高校生になったんだ。
同じ高校に進んだ女子・花木ルナと中2から大の仲良し。勝算200パーセントで高校合格と同時に告白した。
その日にキスしたのが人生の頂点だった。
16歳になった6月、何にもないとこで派手に転んだ。そっから難病発覚。
彼女のルナ、幼馴染みの山根純子、親友・今川薫が何回も励ましてくれた。
回復の見込みがないのが解ったとき、彼女のルナと別れた。泣かれてしまった。
人を遠ざけたけど、元カノ・ルナと親友薫だけはギリギリまで来てくれた。
親友は男同士、気持ちの支えになってくれた。
まあ、色々と他人に世話になって、愛情ももらえた。
自分でも遅すぎと思ったけれど、心から人に感謝できるようになった。
少しずつ衰弱して、手足が動かなくなる病気。最後はチューブに繋がれて、両親と年が離れた妹・梓に看取られた。
坂元勇太、享年21歳。
で、死んだ直後に白い部屋に召喚された。
「すみません、間違ってあなたの寿命を奪ってしまいました」
まさかの、おっちょこちょい女神様のようだ。胸はないが北欧系美人である。
おかしいと思った。健康だけが取り柄だった俺が、ある日いきなり難病にかかった。
俺は誰かの代わりに死んだようだ。
「それって元に戻せるんですか?」
「はい!」
マジか、またルナに会える。
「本当は亡くなるはずだった人と寿命を取り替えて、あなたが死んだ瞬間に戻せます」
俺は奇跡的に息を吹き返し、劇的に回復。代わりに、その人が亡くなるそうだ。
「えええ・・。誰か代わりに死ぬの? ちなみに、相手はどんなやつですかね」
「はい、この方です」
何もない空間に立体モニターが浮かんだ。
桜色の頬にポニーテールの、あどけない笑顔。
おい、梓だよ。俺の大事な妹じゃねえかよ。
高校生になったばかり。俺の病室に通って成長する姿を見せてくれた。
俺が病気にかからなかったら、梓が死んでたってことか・・
そういや梓、喘息とか色々抱えてたのに、俺が倒れたと同時にピタリと治った。
「・・残念だけど、受け入れます。いや、むしろ間違ってくれて、ありがとうごさいます」
「え、怒らないんですか?」
「俺の妹なんです。俺が身代わりになった相手。だから、結果オーライってことで」
「それでは、あなたは現世に戻れませんよ」
「ははは、しゃ~ないっすね・・はは」
「むむむ・・」
代案を出された。どのみち俺は、現世に戻らないなら浮遊霊の道しか残されてない。
女神様、ここで俺を放り出したら、全能の神様からキッツイお仕置きを受けるようだ。
「パラレルワールドに、あなたと似た魂の人がいて、息を引き取りました。その方と入れ替わってもらいます」
年齢は17歳で高2。
ハンサムにしてくれて、女が多い世界に送ってくれるそうだ。
だから、普通にしてれば男がモテるとか。
まさに神の力だ。
「ん?神の力・・」
「どうかなさいました?」
「女神様、俺は健康なら今のままでいいです。代わりに聞きたいことあります」
聞きたいこととは、俺の能力アップをするためのエネルギーのこと。
神力というらしい。
俺は新しい人生をやり直せるなら、今のスペックでいい。
その神力を転化して、生前の俺が迷惑をかけた両親と妹のために使ってもらうことをお願いした。
ズバリ金だ。
特に妹なんて、小さい頃は体が弱くて遠出してない。
健康になった後は俺が倒れて、満足に家族で過ごせてない。
それに、難病には医療費優遇の制度もあったとはいえ、父母にも見えない支出も相当あったはず。
宝くじでも当ててもらい、幸せの足掛かりにしてもらおう。
「しかし・・」
「いいっすよ。ここからの人生は、妹の身代わりになった俺への、ご褒美みたいなもんと思いますから」
「ではせめて、残った神力で、健康体のスキルを付けておきます」
「おっ、ありがとうごさいます」
今から行く世界の説明。歴史は違うが、俺が過ごした日本と類似している。そして年号も令和6年。
俺は生まれ育った街に送られる。
「では、あなたに幸多かれと祈っております」
「はい、女神様もお元気で~」
「何もかも奪ってしまったお詫びです。せめて、これくらい付けましょう」
最後に女神様がほっぺにキスしてくれた。これでひとつ、スキルが追加されるそうだ。
チートではない。身体の回復力、魅力が少し上がるそうだ。
元の世界との違いもインプットしてくれた。現地で確かめる。
今度は普通に生きたい。
今の家族や、最期まで支えてくれた人たち、別れるのは名残惜しい。
代わりに新天地で、新しい家族や仲間を大切に生きよう。
ルナ、必ず幸せになってくれって祈りながら意識を手放した。
◇◇◇◇◇
目が覚めた。
「ここは、病院か・・えええええ?」
異世界の乗り移りで良くある、病院で目覚めるヤツだ。
左側の側頭部がムチャ痛い。それは良くないけど、今はいい。
ストレッチャーに乗せられ、横に4人の女性がいる。
一番近くには看護師さん。巨乳で色白。
見たことがない人だ。それは違う世界に送られたから当然だ。
残る3人はというと。
闘病生活を始めたときから世話になった女医さん、確か41歳。
そして・・・
妹の梓と、母親の葉子。
「あ、あれれ。単なる生き返り?」
「ユウ兄ちゃん!」
「勇太君!」
「手術室に運ぶ前に、患者さんが劇的に持ち直しました!」
「頭が割れてたぞ、どうなっている」
女神様、どういうこと?
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