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11ルナのための嘘
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前世で坂元勇太、花木ルナが親しくなったきっかけは、1学年下で勇太の幼馴染みの山根純子。
同じ合気道道場に通っていた勇太と純子。
勇太が中2の春、道場の帰りに純子が足をひねった。
たまたま通りかかったのが中1から勇太とクラスメイトだったルナ。
勇太が純子をおぶって、ルナが2人の荷物を持った。
純子を送った帰り、勇太とルナは初めて2人だけで話した。
ルナがとても嬉しそうだった。
話してみると勇太の予想以上に、ルナは明るかった。
そして波長が合った。
地味な2人は、小高い丘の不人気な公園、神社の境内、目立たない場所で自分達だけの言葉を紡いだ。
1年10か月後、2人は正式に付き合い始めた。
純子はすでに、ルナを勇太と同じように慕うようになっていた。2人で純子のところに行った。
『まだ付き合ってなかったのかよ』とあきれながらも、祝福してくれた。
そんな前世を勇太は思い出した。
その純子とルナがこの世界では双子。そして陽と陰の存在になっている。
◆
午後9時。
閉店したリーフカフェの前、テラス席を作る場所。壁を背にして勇太とルナは2人で並んだ。
明るい噴水前に行こうと勇太が提案したが、少しでも落ち着けるとこがいいと、ルナが言った。
勇太はルナらしいと思った。そして、彼女はあのルナじゃない、パラレルルナだと頭を振った。
「ありがとう坂元君、付き合ってくれて」
「いや、俺も花木さんと話したかった」
「ふふ。昨日、助けてくれたとき・・。あのときの言ってくれた言葉で、分からないこと・・あったの」
「なにかな?」
「わ、私達って・・、どこかで・・会ったことあるのかな・・」
昨日は前世ルナに別れを告げたつもり。
だけど、このルナに愛の告白めいたことを言ってしまった。
ルナは不安そうで、だけど期待したような目をしている。
無理もないと、勇太は思う。
梓に聞いたパラレルルナは、昨日の冤罪といい、ろくな目にあっていない。それも1度や2度じゃない。
心の拠り所が必要だと思った。自分なら、なれる気がする。
ルナと別人でも突き放せない。
だから、彼女のために嘘を言う。
中身は変える。女神絡みの真実が何よりも嘘臭い。
「俺ら、過去に会ってるよ」
「そうなんだ!」
ルナの表情が、いきなり明るくなった。そして、勇太が知っているルナの顔になり、勇太はドキッとした。
「俺は太って根暗だったし、そっちは認識してなかったと思うよ」
「え~、けれど、あんな風に男の子から言ってもらえるくらいの出会いでしょ」
「あ~、忘れてるんだ」
「ごめ~ん」
「ひでえな~。じゃあ学校に一緒に行ったりしながら思い出してよ。まずLIME交換」
「え、は、はい」
「ははは。緊張しないでよ。俺、モテないし。イケメンじゃないんだし」
「う~ん、昨日から考えてるのに、坂元君のこと思いだせな~い」
ルナが頭をぶん、と振った。ボブカットの髪の毛が揺れるのを見て、勇太の胸がトクン、と鳴った。
「私って馬鹿だな~」
ぼそっ。「・・ルナだ」
「坂元君って、なんで・・」
ルナは、いつも言葉を探していた。
「う~ん、何て言うか」
顎に手を当てて、目を上の方に向けてた。
「あ!いや~、違うな~」
右手の人差し指で、ピンクの唇を触る。
勇太は、にやけてしまった。次も予測がつく。
「あ、そうだ」
右手で左手の手のひらをポンと叩いて、いい言葉、浮かびました。
「改心したんだね。家のお店の手伝いするし、優しくなってるし、すごいね」
結局は、ストレートなのだ。
「サンキュー、ルナ。お前って、相変わらず俺を褒めてくれるんだな」
「ただ、思ったこと言っただけだよ」
「そんでも嬉しい。ルナって、人のいいとこ探す天才だよな」
「へへへ、なんか初めて、そんな風に言ってもらえた」
「え~、みんな見る目ねえなあ~」
「え、褒められると嬉しい・・あれ?」
「・・あっ」
「あれれ・・ルナって」
「ごめん花木さん、名前で呼んじゃった」
まるで、前世でルナと付き合う前、仲を深めていったときのようだ。
つい、勇太は気安く返事してしまった。しくじったと思った。
もう2度と味わえないと思っていた空気に、つい気が緩んでしまった。
「あ、あの、坂元君が不快でないならルナで」
「じゃ、じゃあさ、こっちも勇太で頼む」
少し潤んだ目でルナが勇太を見つめている。
「あ、この感じって・・」
勇太は、この顔を思い出した。
前世の中2、初めて勇太とルナが2人だけで話した日の目だ。
なぜ、そんな顔をしたか、ルナがあとで教えてくれた。
ルナに友人はいたが、本当に噛み合う人がいなくて悩んでいた。
そんな時期だった。
それが中2の春、勇太と出会って解消された。
そして、他の人間との人間関係も、彼を通してスムーズになった。
初めて勇太と話し込んだルナは感じた。
『見つけられた』
前世ルナは、真っ赤な顔で教えてくれた。
そして勇太以外にモテたりした。
だから、勇太は病気で絶望したとき、ルナが孤独になる心配はないと思って別れを告げた。
パラレルルナは勇太から見ると、前世ルナに根本的な部分が似すぎている。
今、勇太は、パラレルルナが寂しそうな理由が分かった気がする。
前世ルナにとっての、前世勇太に当たる人物を見つけられていなかった。
ルナの孤独感を感じ取ってしまった。
ルナに拒絶されなければ、一緒にいようと思っている。
パラレルルナも、気持ちは同じだ。
勇太の近くにいたい。
しかしルナは、それは難しいと考えている。
この勇太を見つけてしまった。彼女もまた、心が大きく動き出している。
しかし勇太は遠い存在になる気がする。顔は普通でも、エロ可愛くてモテる要素だらけ。
ここは1対12の世界。
暗がりで話していたのに、男子の声に人が集まりだしている。
勇太と自分に、交互に視線を送っている女性も多くいる。
地味子と呼ばれる自分を相手にしてくれる理由は初回特典。
頭を打って気持ちが変化した勇太が、最初に助けた相手だからだろう。
美女が勇太の周りに増えた頃には、自分なんて見向きもしないだろう。
だから、気持ちの歯止めが利く今のうちに離れるしかない。
そしてルナが悲しそうに目を伏せた。
勇太は、ルナのことだけは敏感だった。こんな目をしたルナを見逃さなかった。
「勇太君、私、帰る・・え・・」
言い終わる前に、勇太がルナの手をつかんだ。
ルナは驚いた。
勇太が、潤んだ目で自分を見つめている。
「ルナ、今のルナは幸せなのか?」
「え、大丈夫だよ」
ルナは目をそらした。口ごもっている。
嘘が下手なとこまで、ルナは共通している。
勇太はルナを引き寄せた。
そして抱き締めた。
勇太は感極まってしまった。
このルナを幸せにしても、泣かせたルナには気持ちは届かない。
だけど、目の前のルナを放っておけない。
腕の中に、もう触れ合えないと思っていたルナがいる。
同じ合気道道場に通っていた勇太と純子。
勇太が中2の春、道場の帰りに純子が足をひねった。
たまたま通りかかったのが中1から勇太とクラスメイトだったルナ。
勇太が純子をおぶって、ルナが2人の荷物を持った。
純子を送った帰り、勇太とルナは初めて2人だけで話した。
ルナがとても嬉しそうだった。
話してみると勇太の予想以上に、ルナは明るかった。
そして波長が合った。
地味な2人は、小高い丘の不人気な公園、神社の境内、目立たない場所で自分達だけの言葉を紡いだ。
1年10か月後、2人は正式に付き合い始めた。
純子はすでに、ルナを勇太と同じように慕うようになっていた。2人で純子のところに行った。
『まだ付き合ってなかったのかよ』とあきれながらも、祝福してくれた。
そんな前世を勇太は思い出した。
その純子とルナがこの世界では双子。そして陽と陰の存在になっている。
◆
午後9時。
閉店したリーフカフェの前、テラス席を作る場所。壁を背にして勇太とルナは2人で並んだ。
明るい噴水前に行こうと勇太が提案したが、少しでも落ち着けるとこがいいと、ルナが言った。
勇太はルナらしいと思った。そして、彼女はあのルナじゃない、パラレルルナだと頭を振った。
「ありがとう坂元君、付き合ってくれて」
「いや、俺も花木さんと話したかった」
「ふふ。昨日、助けてくれたとき・・。あのときの言ってくれた言葉で、分からないこと・・あったの」
「なにかな?」
「わ、私達って・・、どこかで・・会ったことあるのかな・・」
昨日は前世ルナに別れを告げたつもり。
だけど、このルナに愛の告白めいたことを言ってしまった。
ルナは不安そうで、だけど期待したような目をしている。
無理もないと、勇太は思う。
梓に聞いたパラレルルナは、昨日の冤罪といい、ろくな目にあっていない。それも1度や2度じゃない。
心の拠り所が必要だと思った。自分なら、なれる気がする。
ルナと別人でも突き放せない。
だから、彼女のために嘘を言う。
中身は変える。女神絡みの真実が何よりも嘘臭い。
「俺ら、過去に会ってるよ」
「そうなんだ!」
ルナの表情が、いきなり明るくなった。そして、勇太が知っているルナの顔になり、勇太はドキッとした。
「俺は太って根暗だったし、そっちは認識してなかったと思うよ」
「え~、けれど、あんな風に男の子から言ってもらえるくらいの出会いでしょ」
「あ~、忘れてるんだ」
「ごめ~ん」
「ひでえな~。じゃあ学校に一緒に行ったりしながら思い出してよ。まずLIME交換」
「え、は、はい」
「ははは。緊張しないでよ。俺、モテないし。イケメンじゃないんだし」
「う~ん、昨日から考えてるのに、坂元君のこと思いだせな~い」
ルナが頭をぶん、と振った。ボブカットの髪の毛が揺れるのを見て、勇太の胸がトクン、と鳴った。
「私って馬鹿だな~」
ぼそっ。「・・ルナだ」
「坂元君って、なんで・・」
ルナは、いつも言葉を探していた。
「う~ん、何て言うか」
顎に手を当てて、目を上の方に向けてた。
「あ!いや~、違うな~」
右手の人差し指で、ピンクの唇を触る。
勇太は、にやけてしまった。次も予測がつく。
「あ、そうだ」
右手で左手の手のひらをポンと叩いて、いい言葉、浮かびました。
「改心したんだね。家のお店の手伝いするし、優しくなってるし、すごいね」
結局は、ストレートなのだ。
「サンキュー、ルナ。お前って、相変わらず俺を褒めてくれるんだな」
「ただ、思ったこと言っただけだよ」
「そんでも嬉しい。ルナって、人のいいとこ探す天才だよな」
「へへへ、なんか初めて、そんな風に言ってもらえた」
「え~、みんな見る目ねえなあ~」
「え、褒められると嬉しい・・あれ?」
「・・あっ」
「あれれ・・ルナって」
「ごめん花木さん、名前で呼んじゃった」
まるで、前世でルナと付き合う前、仲を深めていったときのようだ。
つい、勇太は気安く返事してしまった。しくじったと思った。
もう2度と味わえないと思っていた空気に、つい気が緩んでしまった。
「あ、あの、坂元君が不快でないならルナで」
「じゃ、じゃあさ、こっちも勇太で頼む」
少し潤んだ目でルナが勇太を見つめている。
「あ、この感じって・・」
勇太は、この顔を思い出した。
前世の中2、初めて勇太とルナが2人だけで話した日の目だ。
なぜ、そんな顔をしたか、ルナがあとで教えてくれた。
ルナに友人はいたが、本当に噛み合う人がいなくて悩んでいた。
そんな時期だった。
それが中2の春、勇太と出会って解消された。
そして、他の人間との人間関係も、彼を通してスムーズになった。
初めて勇太と話し込んだルナは感じた。
『見つけられた』
前世ルナは、真っ赤な顔で教えてくれた。
そして勇太以外にモテたりした。
だから、勇太は病気で絶望したとき、ルナが孤独になる心配はないと思って別れを告げた。
パラレルルナは勇太から見ると、前世ルナに根本的な部分が似すぎている。
今、勇太は、パラレルルナが寂しそうな理由が分かった気がする。
前世ルナにとっての、前世勇太に当たる人物を見つけられていなかった。
ルナの孤独感を感じ取ってしまった。
ルナに拒絶されなければ、一緒にいようと思っている。
パラレルルナも、気持ちは同じだ。
勇太の近くにいたい。
しかしルナは、それは難しいと考えている。
この勇太を見つけてしまった。彼女もまた、心が大きく動き出している。
しかし勇太は遠い存在になる気がする。顔は普通でも、エロ可愛くてモテる要素だらけ。
ここは1対12の世界。
暗がりで話していたのに、男子の声に人が集まりだしている。
勇太と自分に、交互に視線を送っている女性も多くいる。
地味子と呼ばれる自分を相手にしてくれる理由は初回特典。
頭を打って気持ちが変化した勇太が、最初に助けた相手だからだろう。
美女が勇太の周りに増えた頃には、自分なんて見向きもしないだろう。
だから、気持ちの歯止めが利く今のうちに離れるしかない。
そしてルナが悲しそうに目を伏せた。
勇太は、ルナのことだけは敏感だった。こんな目をしたルナを見逃さなかった。
「勇太君、私、帰る・・え・・」
言い終わる前に、勇太がルナの手をつかんだ。
ルナは驚いた。
勇太が、潤んだ目で自分を見つめている。
「ルナ、今のルナは幸せなのか?」
「え、大丈夫だよ」
ルナは目をそらした。口ごもっている。
嘘が下手なとこまで、ルナは共通している。
勇太はルナを引き寄せた。
そして抱き締めた。
勇太は感極まってしまった。
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