モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

文字の大きさ
37 / 320

37 お前ら、梓とカオルに何をした

しおりを挟む
梓が、男子3人にいいがかりをつけられた。そしてその男の1人に髪をつかまれた。

そのとき現れて、男の手を止めたのはカオルだった。

県の最終予選に向けた柔道の練習帰り。勇太にリーフカフェに寄ってくれと言われ、来てみるとトラブルが起こっていた。

日曜日の午後4時、噴水公園前。繁華街も近く、男子絡みのトラブルに人が集まってきた。

「どけよ女。文句言いたいのは、そっちのカフェ店員の方だ」

「うっさい、お前らこそどっか行け」。カオルは喧嘩腰である。

「なによあんた、そういえばその顔・・」

取り巻き女子の1人が、にやりと笑った。

「あんた、柔道の有名人だよね。こんなとこで暴力事件を起こしたら、ヤバイっしょ」
「そうなんか、いいこと聞いたぜ。ほら殴ってみろよ、ゴリラ女」

とたんに相手が強気になった。

「・・くそ」

「離せよ!」

男は自分が梓の髪をつかんだことを棚にあげて、カオルの手を強く振り払った。

ギャラリーも、男子3人が絡むトラブルに前に出にくい。

ぼそっ。「安心しろ梓、おめえだけには手を出させん」
「・・カオルちゃん」

梓を後ろにかばい、殴られることも覚悟したカオルだったが、今度こそ真打ち登場。


「やめろ、お前ら!」


カフェの常連さんが、梓が悪そうな奴らに囲まれていると知らせてくれた。勇太は店員の格好のまま飛んできた。

勇太が駆けてきた。

そしてカオルの横を通り過ぎ、カオルと梓を背中で守るように立った。

頭の、髪を引っ張られたところを押さえる梓を見た。

「何した!」

拳を固めて、梓の髪の毛を引っ張った男に近付こうとした勇太。

「やめろ勇太!」

何が起こるか察したカオルが、一流アスリートの反射神経を生かし、勇太のシャツの背中をつかんだ。

ガクンと止まった勇太のシャツは、後ろから引っ張られボタンが全部弾けとんだ。

シャツの前面がはだけたことも、裾が飛び出たとこも構わず『敵』を睨んでいる。

勇太は梓の髪をつかんでいた男をグーで殴ろうとしていた。ギリでカオルが止めたが、みんなおののいている。

もう少しで殴られるとこだった男は、硬直している。

「止めるなカオル。あいつら許さねえ。てめえら、俺の妹に何をした!」

「落ち着け勇太!」

血が昇っていた勇太だが、試合を控えたカオルに迷惑はかけられない。

それを思い出した。

「カオル、大丈夫だ」
「ホントだな、勇太」

「あ、ああスマンかったカオル、止めてくれてありがとうな。ふー」

落ち着きはしたが、勇太の息は荒い。そして敵視した10人を睨んでいる。

厚くなってきた胸板が露出している。

取り囲んだギャラリー女子は、勇太の胸板を凝視している。

動画も撮られている。

相手は1ヵ所に固まった。だけど、その10人より勇太1人の怒気の方が押している。

カオルと梓を下がらせて、一歩前に出た。

「勇太、ヤバいときはアタイも加勢するぞ」

「カオル、梓を連れてカフェに行っててくれ」
「けど・・」

「避難しろ。可愛い女に喧嘩させられるか」

「え、え、え?」

可愛い女? 勇太の目を見たカオルの頭が瞬時に沸騰した。

敵視した相手に勇太は向き直った。

「おいお前ら・・。梓とカオルに何をしようとした・・おい、なんか言えっ!」


重低音が噴水広場に、波のように広がった。

ギャラリーはざわついた。女子はみんな顔が赤い。勇太が怒りととも声を響かせるのは2度目だ。

数が少ない男子は基本的に温室育ちのこの世界。

相手の1番大きな男も、男同士で本気の殴り合いなどしたことはない。

勇太の目を見て怖くなってきた。

一気に風向きが変わった。

勇太は、この界隈では有名になっている。

170センチのモブ顔でもエロ可愛い。

温厚で、何時間働いても笑顔を絶やさない、稀少なカフェ店員。しかし今は真逆。

仲間の危機に、むき出しの怒りを発している。

勇太は妹と言ったが、梓は従妹である。そしてカオルは可愛くない。

色々と間違っているけど、そこは誰も突っ込めない。そして目が離せない。

「・・ユウ兄ちゃん」
「勇太・・」

勇太は2人を庇うように立っている。


梓は快感に震えている。

才賀ヨータローに馬鹿にされたルナのため、勇太が怒った場面をネットでは見ていた。

格好いいと思った。

梓はルナがうらやましかった。

ルナ、梓、カオルで勇太の話をしたとき、ルナはその時のことを思い出して、うっとりしていた。

確かにこれは・・と梓は思う。

男子が自分達のために戦おうとしてくれている。

横を見るとカオルも女の子の顔になっている。

梓とカオルを羨望の眼差しで見ている人がたくさんいる。

確かに、これは嬉しすぎる。

この世界で優しい男は、それなりにいる。

だけど、こんなに胸の奥まで声を響かせてくれる人は他にいない。

あと2ヶ月もしないうちに、この人のお嫁さんになるんだと思うと、味わったことがない快感が沸いてきた。

そして横にはカオルがいる。

再会して10日程度だけど、惹かれていく相手。

大好きなカオルに庇われ、そのカオルと一緒に大好きな勇太に助けられた。

暴力はいけない。かなりピンチだった。だけど不謹慎と言われても、ぞくぞくしている。

梓は、ついさっきまで感じていたルナ、カオルより一歩遅れたような引け目がなくなった。

自分も勇太の『特別』なんだと心から思えた。


「ちっ、行くぞ」

1番大きな男が後ろを向くと、みんな逃げるように付いていった。



一難去って、リーフカフェに3人で戻った。

「勇太、あのまんま馬鹿どもを逃がして良かったんか」

「まあ、大丈夫だよ」
「ホントか?」

「実はパラ高の1年や3年の人たち、ここの客さんなんかが、危ない人が俺に近付いたりすると教えてくれるんだ」

パラ高で、勇太の非公式ファンクラブがてきている。

パラレル勇太が迷惑をかけた人物に謝って回っているとき、勇太が謝罪対象でもない人と握手してハグしたりした。

その女子らが、行為を勇太の優しさと受け取った。ルナと勇太の見守り隊のような役割を勝手にやっている。

校外までメンバーが広がった公式ファンクラブ。342人の代表格となったパラ3年の郷田が、情報を取りまとめ、一括して勇太にLIMEを送ってくる。

仕事は早い。

すでに勇太に届いたLIMEには、勇太が敵認定した男子3人の名前が書き込んである。

勇太が希望するなら、先ほどの動画を10人の名前入りで晒すとメッセージが来た。

晒すのは保留にしてもらったが、援軍ができていた。

このあたりは、勇太に追い風が吹いている。


コーヒーチェーン店の男子3人は、もう出勤しなかった。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...