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47 幼馴染みのイメージのまんまだ
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7月9日。パラレルルナと初めて2人きりで話してから2ヶ月。
ルナの双子の妹・純子が、2ヶ月前のルナと同じく閉店後のリーフカフェに現れた。
勇太は警戒している。
人の話は鵜呑みにできないが、ルナと仲がいい人間ほど、勇太が純子に接触しないことを願っていた。
ルナに近付いた人間は男女問わず、大半が純子に乗り換えていくという。
今、純子との距離は5メートル。
カフェの壁の近くに立っている純子は、道行く人から死角となって見えにくい。
どうしようかと迷っていた勇太だけど気付いた。パラレル純子が、それ以上は近付いて来ない。
「いきなりでごめん。迷惑かかるから、離れてるからさ」
謙虚だ。グイグイ来ると聞いていた純子像とはえらく違う。
「あの・・」
「ん?」
「私、評判悪いの知ってるでしょ」
「?」
●ックスクイーンと呼ばれていることかと勇太は思った。確かに勇太の前世だとんでもない女。
だけど梓によると、この世界では一種のステイタスのようだ。
「ああ、その顔。最近のことは、あんまり知らないのね」
「・・うん」
「とりあえず、頼みたいことあるの。ルナお姉ちゃんのことなんだ」
「なに、花木さん」
今はルナお姉ちゃん、前世はルナさん。言い方は違うが、前世の純子とニュアンスまでそっくり。
ルナと勇太が急接近してから1年後、純子がルナを慕いだした頃を思い出した。
「迷惑かけてきた私が言うのもおかしいけど、ルナお姉ちゃんこと、お願い。それから・・」
勇太は思った。この表情。前世の純子が勇太の病気のことを知ったときと、そっくり。
すごく申し訳なさそうだ。
勇太が勝手に作り上げていたパラレル純子のイメージだと、自分に会ったら希少な男を前に嫌らしい笑いを浮かべる。
または、ルナに敵対意識を燃やす。
どちらかと思っていた。
「坂元君とお姉ちゃんの前に現れたりしない。今までごめんって、伝えて」
こじれすぎて、自分で言いにくい言葉なんだろう。
けれど、『純子』の言葉として勇太だけには、すんなり入ってきた。
だからこそ・・
ますます勇太は分からなくなってきた。
評判を聞いたパラレル純子とは違いすぎる。そして前世純子のイメージに近付きすぎる。
『邪魔しないよ。お幸せに』
勇太とルナが付き合い始めたとき、純子に言われた。なぜかパラレル純子のセリフで、これを思い出した。
ニュアンスに、なんと言うか愛情を感じる。
つい勇太は、警戒心を解いてしまった。
「純子、いや花木さんって、噂のキャラと違うな」
「ふふ、悪女みたいの考えてた?」
「うん。けど違った。俺の中の、1番キレイな純子だ・・」
簡単に心のバリケードが外れて、名前で呼びかけてしまった。それ以上に、意味ありげになってしまった。
「え? 坂元君・・」
前世は幼馴染み、今世では順調にいけばルナを通じて義理の妹になる相手。
ルナに謝罪したいのだろうか。やっぱり姉妹で仲良くして欲しいという思いが湧いて来た。
「ちょっと話さないか、じゅ、いや花木さん」
「え、なんで」
「ルナの妹だからね。仲良くできた方が、ルナも嬉しいかなって」
「けど、2人きりで誤解されたら・・」
勇太は純子を待たせて、LIMEのグループチャットをした。メンバーは、ルナ、梓、カオル。
『ルナの妹の純子と会ったから、ちょっと話す。人通りもあるリーフカフェの前』
梓が率先して、一夫多妻の勇太の家族を作るために努力してくれる。だから誠実でありたい。
梓『純子さんによろしく』
ルナ『わかった。純子に優しくしてね』
カオル『アタイに許可なんかいらねーよ。けど知らせてくれてサンキュー』
「花木さん、ルナ達は信用してくれるから問題ないよ。何かあったの」
「なんで、わざわさ?」
「なんとなくかな。本気でルナに悪かったって思ってるよね。間違ってたかな」
前世純子は、勇太が表情で情報を読み取れる、数少ない人間の1人だった。
純子は驚いている。ルナに嫌な目をみせてきた自分に、勇太は優しい。評判以上だ。
勇太は前世で純子との付き合いは長かった。
申し訳なさそうな表情が、胸の奥底に響いてしまった。前世と今世でシンクロしてしまった。
前世の、もう勇太が知ることができない話がある。
根が鈍感な勇太が理解してやれなかった、純子の恋心のことだ。
◇◇◇
前世では、坂元勇太の1学年下に山根純子がいた。
初めて会ったのは勇太3歳、純子が2歳。家が近く、母親同士が仲良くなったのがきっかけだ。
男勝りな子供時代の純子と、付き合いがいい勇太は仲良しだった。合気道も一緒に習った。
勇太が5歳のときに梓が生まれ、2人は梓のお兄ちゃん、お姉ちゃんという感じで育った。
そのまま成長したが、勇太が中2のとき転機があった。
純子が足を捻挫し、勇太と偶然に通りかかったルナで助けた。
勇太とルナはお互いに惹かれていった。
純子の中の勇太もアホな幼馴染みから頼れる男子に昇格した。その感情がなにか分からないまま、勇太との接し方に変化があった。
純子は学校や合気道道場で、よりによって勇太が理解できないツンデレ気味のアプローチをしていた。
自分でも、ツンツンしたりするのは、訳が分からなかった。
整いすぎた容姿の純子は、目立ちすぎた。気恥ずかしくなって迷走した。勇太も、最近は機嫌が悪いなー、くらいの感じで話を合わせていた。
逆にルナと勇太は、季節外れの海岸、神社の裏、丘の上の寂れた公園で仲を深めた。
派手さも何もない。だけどほんの少しずつ、自分が好きな目の前の相手に誠実に言葉を贈った。
ルナと勇太の出会いから1年後、純子は見てしまった。夕方の海岸線を2人で歩いていた。
手はつないでいないが、手の甲が触れるほどの距離。
すごく柔らかな笑顔の2人。どうみても両想いだ。
その時、純子はショックを受けた。
ルナの双子の妹・純子が、2ヶ月前のルナと同じく閉店後のリーフカフェに現れた。
勇太は警戒している。
人の話は鵜呑みにできないが、ルナと仲がいい人間ほど、勇太が純子に接触しないことを願っていた。
ルナに近付いた人間は男女問わず、大半が純子に乗り換えていくという。
今、純子との距離は5メートル。
カフェの壁の近くに立っている純子は、道行く人から死角となって見えにくい。
どうしようかと迷っていた勇太だけど気付いた。パラレル純子が、それ以上は近付いて来ない。
「いきなりでごめん。迷惑かかるから、離れてるからさ」
謙虚だ。グイグイ来ると聞いていた純子像とはえらく違う。
「あの・・」
「ん?」
「私、評判悪いの知ってるでしょ」
「?」
●ックスクイーンと呼ばれていることかと勇太は思った。確かに勇太の前世だとんでもない女。
だけど梓によると、この世界では一種のステイタスのようだ。
「ああ、その顔。最近のことは、あんまり知らないのね」
「・・うん」
「とりあえず、頼みたいことあるの。ルナお姉ちゃんのことなんだ」
「なに、花木さん」
今はルナお姉ちゃん、前世はルナさん。言い方は違うが、前世の純子とニュアンスまでそっくり。
ルナと勇太が急接近してから1年後、純子がルナを慕いだした頃を思い出した。
「迷惑かけてきた私が言うのもおかしいけど、ルナお姉ちゃんこと、お願い。それから・・」
勇太は思った。この表情。前世の純子が勇太の病気のことを知ったときと、そっくり。
すごく申し訳なさそうだ。
勇太が勝手に作り上げていたパラレル純子のイメージだと、自分に会ったら希少な男を前に嫌らしい笑いを浮かべる。
または、ルナに敵対意識を燃やす。
どちらかと思っていた。
「坂元君とお姉ちゃんの前に現れたりしない。今までごめんって、伝えて」
こじれすぎて、自分で言いにくい言葉なんだろう。
けれど、『純子』の言葉として勇太だけには、すんなり入ってきた。
だからこそ・・
ますます勇太は分からなくなってきた。
評判を聞いたパラレル純子とは違いすぎる。そして前世純子のイメージに近付きすぎる。
『邪魔しないよ。お幸せに』
勇太とルナが付き合い始めたとき、純子に言われた。なぜかパラレル純子のセリフで、これを思い出した。
ニュアンスに、なんと言うか愛情を感じる。
つい勇太は、警戒心を解いてしまった。
「純子、いや花木さんって、噂のキャラと違うな」
「ふふ、悪女みたいの考えてた?」
「うん。けど違った。俺の中の、1番キレイな純子だ・・」
簡単に心のバリケードが外れて、名前で呼びかけてしまった。それ以上に、意味ありげになってしまった。
「え? 坂元君・・」
前世は幼馴染み、今世では順調にいけばルナを通じて義理の妹になる相手。
ルナに謝罪したいのだろうか。やっぱり姉妹で仲良くして欲しいという思いが湧いて来た。
「ちょっと話さないか、じゅ、いや花木さん」
「え、なんで」
「ルナの妹だからね。仲良くできた方が、ルナも嬉しいかなって」
「けど、2人きりで誤解されたら・・」
勇太は純子を待たせて、LIMEのグループチャットをした。メンバーは、ルナ、梓、カオル。
『ルナの妹の純子と会ったから、ちょっと話す。人通りもあるリーフカフェの前』
梓が率先して、一夫多妻の勇太の家族を作るために努力してくれる。だから誠実でありたい。
梓『純子さんによろしく』
ルナ『わかった。純子に優しくしてね』
カオル『アタイに許可なんかいらねーよ。けど知らせてくれてサンキュー』
「花木さん、ルナ達は信用してくれるから問題ないよ。何かあったの」
「なんで、わざわさ?」
「なんとなくかな。本気でルナに悪かったって思ってるよね。間違ってたかな」
前世純子は、勇太が表情で情報を読み取れる、数少ない人間の1人だった。
純子は驚いている。ルナに嫌な目をみせてきた自分に、勇太は優しい。評判以上だ。
勇太は前世で純子との付き合いは長かった。
申し訳なさそうな表情が、胸の奥底に響いてしまった。前世と今世でシンクロしてしまった。
前世の、もう勇太が知ることができない話がある。
根が鈍感な勇太が理解してやれなかった、純子の恋心のことだ。
◇◇◇
前世では、坂元勇太の1学年下に山根純子がいた。
初めて会ったのは勇太3歳、純子が2歳。家が近く、母親同士が仲良くなったのがきっかけだ。
男勝りな子供時代の純子と、付き合いがいい勇太は仲良しだった。合気道も一緒に習った。
勇太が5歳のときに梓が生まれ、2人は梓のお兄ちゃん、お姉ちゃんという感じで育った。
そのまま成長したが、勇太が中2のとき転機があった。
純子が足を捻挫し、勇太と偶然に通りかかったルナで助けた。
勇太とルナはお互いに惹かれていった。
純子の中の勇太もアホな幼馴染みから頼れる男子に昇格した。その感情がなにか分からないまま、勇太との接し方に変化があった。
純子は学校や合気道道場で、よりによって勇太が理解できないツンデレ気味のアプローチをしていた。
自分でも、ツンツンしたりするのは、訳が分からなかった。
整いすぎた容姿の純子は、目立ちすぎた。気恥ずかしくなって迷走した。勇太も、最近は機嫌が悪いなー、くらいの感じで話を合わせていた。
逆にルナと勇太は、季節外れの海岸、神社の裏、丘の上の寂れた公園で仲を深めた。
派手さも何もない。だけどほんの少しずつ、自分が好きな目の前の相手に誠実に言葉を贈った。
ルナと勇太の出会いから1年後、純子は見てしまった。夕方の海岸線を2人で歩いていた。
手はつないでいないが、手の甲が触れるほどの距離。
すごく柔らかな笑顔の2人。どうみても両想いだ。
その時、純子はショックを受けた。
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