モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

文字の大きさ
66 / 320

66 ルナと初のデート

しおりを挟む
7月25日。

ルナのことで重大なことを忘れていた。

いつも一緒にいるが、買い物に行ったり映画を見に行ったりとか、普通のカップルのようなことをしていない。

「い、いえ、な、なんか勇太といるだけで、普通のデートなんか吹き飛ぶようなインパクトがあることばかりだから、別にいいよ」
「けどさ・・」

「男子にプロポーズされて、誕生プレゼントもらったり、エッチしたり、普通の女の子が経験してないことばかりだよ。十分にすごいよ」

前世でも幼馴染みの純子に、『ルナさんと、きちんとデートした?』と冷たい声で聞かれたことがある。今世でも気が利かない自分に反省する勇太だ。

そういう訳で次の日にお出かけすることになった。

ルナが梓にLIMEしたそうだ。

梓から勇太のところにパラレル山のロープウエーから夜景コース、今の人気映画など、ピックアップして送られてきた。

勇太はいまだに、この辺りの女の子達の感覚が不思議だ。

ルナ、梓は確実に嫁にする。そこにカオルまで加わったら、嫁が3人になりそう。カオルに関しては梓から、当たり前みたいに言われている。

どこのジゴロだよ、くらいの感覚だ。

だけど勇太の感覚に反して、3人が連携を取っている。お互いに足を引っ張るわけではなくて、その時に勇太と一緒にいる女の子が、より楽しめるように考えている。

そこに変な意図も悪意もなくガチだから不思議でたまらない。

色んなモノが前世そっくりなパラレルワールド。だけど、やっぱり異世界なのだ。

◆◆
次の日はルナと待ち合わせた。

梓の時と同じで、花を一輪持って駅で待った。これは梓が本当に嬉しかったから、ルナにもしてあげたらと言われた。

「ルナ、今日は来てくれてありがとう。はい」

「わあ、花なんて初めてもらった。うれしい。うふふ」

今日の勇太は上は白いポロシャツ1枚。ルナは青のワンピース。

今日はすごくオーソドックスにいこうということになった。まず映画。

オール女性キャストのハリウッダ映画。神秘の遺跡を発掘するやつだ。

同じ映画館で18歳男優主演の青春映画も上映されていた。そこも人気があるが客層は中学生まで。

高校生になると、さすがに男優の大根役者ぶりに気付く。それで高校になると卒業する女の子が大半だそうだ。

見方を変えると、男子の研鑽不足が目立つ世界である。

同じ理由で男性歌手も少ない。

「・・あれ、伊集院君って、もしかして奇跡の存在?」

今ごろになって、同姓の友人の凄さが、今まで考えていたより5段階上だと感じている勇太だった。

上映まであと30分。飲み物の販売コーナーに並んでいる。かなり注目されている。

「そういえばルナ、こんなメロディー知ってる?」

勇太は前世のクラシックの旋律を口ずさんだ。

やっぱりざわっとした。

前世では楽譜進行の、ひとつの極みと言われていた、パッヘルベルの『カノン』のフレーズを口ずさんだ。

「あ、クラシックの『シャロン』だね」

曲名は違っても、同じ法則で名曲を作った音楽家がいたと思った。しかし・・

「男子が一気に減少した直後、パッヘルベルコって女性作曲家が作ったんだよね」

あとで検索したら、パッヘルベルコの肖像画は、単なる縦巻きロールのオバサンだった。

女性に注目されたけれど、ルナの格好を見るときちんと理解してくれた感じ。

正式なデートをしている2人に突貫してくる無粋な人はいない。

この辺りは男子に取って都市部の方がいいそうだ。

田舎の方が男子の危険度が上がる。普段は男を見て過ごしていないヤンキー女子とかがいて、女連れでも男子にちょっかいをかけてくるらしい。

防犯という名目でスマホを向けてくる人が沢山いるのは、日常と化している。

映画のあとは、ルナのリクエストでパスタの店。次がプリクラ。

バスに乗って、標高623メートルのパラレル山のふもとへ。売店で名物のパラアイスを食べたあと、ロープウエーで8合目まで上がった。

終点駅横にある展望テラスの柵の前に並んで、市内を見渡している。

夕日で空が赤くなり始めている。

名前はパラレル市だけど、勇太が前世で住んでいた街にも見える。

体がギリギリ動いた頃、親に車を出してもらい山の展望台まで登った。

そのときは父、母、梓、そしてルナもいた。みんなに労られながら杖を付いて、ゆっくり歩いた。

すごく綺麗な景色が心に染みすぎて、涙がこぼれてしまった記憶がある。


今は、穏やかな気持ちで景色を見ることができる。そして横にはルナがいる。夕日に照らされた顔が可愛い。

ルナに肩をくっつけた。

「ルナ、一緒にここに来れてよかった」
「ふふ。私も勇太がいてくれて嬉しい」

そして・・。

そして、どちらともなくキスしそうになったのだけど。はっとして後ろを見ると・・

きゃっと、女性達の声。幼児からお年寄りまで、みんな勇太とルナを見ている。

「・・あはは」「い、いい天気ですよねー」

小学生くらいの女の子が言った。

「あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、もう少しでチューするとだったよね。ね、ね」

赤面するふたりだったが、顔を見合わせて笑った。


ルナが思い出に残る1日だったと言ってくれて、勇太は満足だった。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...