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76 カオルも、カオルの仲間も素敵だ
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勇太は真剣な柔道観戦である。
周りの女子は勇太8、柔道2くらいの感じで見ている。
インターハイの柔道試合会場は勇太を見に来た人も多いが、その勇太が真剣に応援している。どうしても、同じ方向を向いてしまう。
団体戦の準決勝。県予選と同じ勝ち抜き戦。
相手は新潟代表のエチゴニシキ高校。中重量級2人にプラスして、重量級個人戦の優勝候補が3人もいる団体戦の有力ナンバーワン高だ。
対して茶薔薇は中量級が主力。どうしてもハンデがある。
茶薔薇の大将はカオルだったが、相手の重量級3人を残してカオルに回った。
勇太から見てカオルは格好良かった。
敵の中堅を転ばせて有効。押さえ込んで1本。ただ、使った時間は4分30秒。
副将にも勝てたが、有効ひとつの優勢勝ち。要するに、5分のフルタイムを戦うことになった。
これから敵の大将戦。10分近く強敵と戦ったあとのカオルの額から、滝のような汗が流れていた。
「カオルちゃーん!」
「カオルー、あと1勝!」
梓とルナが必死に声を出した。
そして、勇太も負けじと声を出すため、息を吸い込んだ。
「カオール!がんばれーーー!」
一瞬の沈黙。
カオルが立ち止まった。
そして、ゆっくり振り返った。勇太の声が響いたのだろうか。
カオルは勇太、梓、ルナの3人を見て、汗だらけの顔に生気が戻った。ちょっと笑顔を見せてから、、真剣な表情に戻った。
そして前を向いた。
女神印の響く声が、やっと純粋に役立った。
ただ、周囲が・・
ルナ、梓は勇太の声にもゾクゾクしたが、カオルへの応援をするため集中している。
勇太の周りにいた女子達は違う。勇太の声で腰が砕けている子もいる。濡れている。
女子達は不謹慎だと思いながら、濡れている。
勇太は、歌ったり怒りに乗せて声を響かせたことがある。
今のは質が違う。
カオルへのエール、そして愛情をたっぷりに感情を乗せている。
至近距離にいた女子達22人は、みんな高校生。そのうちに男性と最後まで経験があるのは1人だけ。男子と親しく話したことがあるのが、4人。
みんな、勇太に愛をささやかれているような感覚に見舞われている。
大将戦が始まった。
カオルは健闘した。だけど1分もすると疲労の影響が出てきた。相手は身長182センチ。84キロ級の個人戦優勝候補。万全の状態でも勝てるかどうか分からない。
開始2分。カオルは技をかけようとした相手の足を払った。
有効。
だが、そこまでだった。
体重差を生かした寝技の攻防で体力を奪われ、開始4分で引き付けられ内股を食らった。
「技あり!」
必死に巻き返そうとしたカオルだったが、時間切れ。優勢負けで茶薔薇学園は負けた。
勇太達3人が茶薔薇学園のとこに行ったとき、みんなが泣いていた。
「すびばぜーん、先輩たちの最後の試合だったのにい」
「カオル、お前に負担かけた私達のせいだ」
泣くカオル。そして、チームメイトも涙していた。
「そうだ、お前は2人抜いてくれた」
「ごめん、カオル」
「私達が不甲斐なかった」
桜塚部長は采配ミスだとみんなに謝っていた。一緒に考えた顧問の先生も、謝っていた。
勇太は、この光景を見て心からいいなと思った。
負けて悲しいカオル達には申し訳ないけれど、同性で切磋琢磨してきた人間同士の純粋な涙。
勇太には、もう望めない光景なんだなと少しだけ感じた。そしてルナ、梓、カオルを見て、そんなことを考えるなんて人間って贅沢なんだなと苦笑いしそうになった。
茶薔薇が控え室代わりに使っている通路スペースに人が集まってきた。
なぜかテレビカメラが回っていたが、茶薔薇も注目の強豪校。インターハイの特集でも放映するのだろうと思った。
「みなさん、お疲れ様でした」
「・・勇太君」
桜塚部長が、むっちゃ泣いていた。
采配も勝負の行方を左右する勝ち抜き戦の敗戦。勇太が観戦していミスは感じなかった、部長としての責任感からだろう。
ルナと梓に、背中を軽くたたかれた。
分かっていた。促されるまま桜塚部長の前に行った。しかし断られた。
「私はまだ、個人戦が残ってる。それよりキクタを慰めてくれ」
勇太は素直に応じた。言葉は荒いときもあるが、優しい人だと思った。
「うっ、うっ、ありがとう勇太君」
「・・お疲れ様でした、キクタさん」
これが高校最後の試合になった先輩を勇太はぎゅっと抱き締めた。
太めでも、汗だくも気にしない。
この世界ではめったにない光景。うるっとする女子もたくさんいる。
勇太は知らない。この光景が、かなりの回数、ネットだけでなくテレビで流れた。
周りの女子は勇太8、柔道2くらいの感じで見ている。
インターハイの柔道試合会場は勇太を見に来た人も多いが、その勇太が真剣に応援している。どうしても、同じ方向を向いてしまう。
団体戦の準決勝。県予選と同じ勝ち抜き戦。
相手は新潟代表のエチゴニシキ高校。中重量級2人にプラスして、重量級個人戦の優勝候補が3人もいる団体戦の有力ナンバーワン高だ。
対して茶薔薇は中量級が主力。どうしてもハンデがある。
茶薔薇の大将はカオルだったが、相手の重量級3人を残してカオルに回った。
勇太から見てカオルは格好良かった。
敵の中堅を転ばせて有効。押さえ込んで1本。ただ、使った時間は4分30秒。
副将にも勝てたが、有効ひとつの優勢勝ち。要するに、5分のフルタイムを戦うことになった。
これから敵の大将戦。10分近く強敵と戦ったあとのカオルの額から、滝のような汗が流れていた。
「カオルちゃーん!」
「カオルー、あと1勝!」
梓とルナが必死に声を出した。
そして、勇太も負けじと声を出すため、息を吸い込んだ。
「カオール!がんばれーーー!」
一瞬の沈黙。
カオルが立ち止まった。
そして、ゆっくり振り返った。勇太の声が響いたのだろうか。
カオルは勇太、梓、ルナの3人を見て、汗だらけの顔に生気が戻った。ちょっと笑顔を見せてから、、真剣な表情に戻った。
そして前を向いた。
女神印の響く声が、やっと純粋に役立った。
ただ、周囲が・・
ルナ、梓は勇太の声にもゾクゾクしたが、カオルへの応援をするため集中している。
勇太の周りにいた女子達は違う。勇太の声で腰が砕けている子もいる。濡れている。
女子達は不謹慎だと思いながら、濡れている。
勇太は、歌ったり怒りに乗せて声を響かせたことがある。
今のは質が違う。
カオルへのエール、そして愛情をたっぷりに感情を乗せている。
至近距離にいた女子達22人は、みんな高校生。そのうちに男性と最後まで経験があるのは1人だけ。男子と親しく話したことがあるのが、4人。
みんな、勇太に愛をささやかれているような感覚に見舞われている。
大将戦が始まった。
カオルは健闘した。だけど1分もすると疲労の影響が出てきた。相手は身長182センチ。84キロ級の個人戦優勝候補。万全の状態でも勝てるかどうか分からない。
開始2分。カオルは技をかけようとした相手の足を払った。
有効。
だが、そこまでだった。
体重差を生かした寝技の攻防で体力を奪われ、開始4分で引き付けられ内股を食らった。
「技あり!」
必死に巻き返そうとしたカオルだったが、時間切れ。優勢負けで茶薔薇学園は負けた。
勇太達3人が茶薔薇学園のとこに行ったとき、みんなが泣いていた。
「すびばぜーん、先輩たちの最後の試合だったのにい」
「カオル、お前に負担かけた私達のせいだ」
泣くカオル。そして、チームメイトも涙していた。
「そうだ、お前は2人抜いてくれた」
「ごめん、カオル」
「私達が不甲斐なかった」
桜塚部長は采配ミスだとみんなに謝っていた。一緒に考えた顧問の先生も、謝っていた。
勇太は、この光景を見て心からいいなと思った。
負けて悲しいカオル達には申し訳ないけれど、同性で切磋琢磨してきた人間同士の純粋な涙。
勇太には、もう望めない光景なんだなと少しだけ感じた。そしてルナ、梓、カオルを見て、そんなことを考えるなんて人間って贅沢なんだなと苦笑いしそうになった。
茶薔薇が控え室代わりに使っている通路スペースに人が集まってきた。
なぜかテレビカメラが回っていたが、茶薔薇も注目の強豪校。インターハイの特集でも放映するのだろうと思った。
「みなさん、お疲れ様でした」
「・・勇太君」
桜塚部長が、むっちゃ泣いていた。
采配も勝負の行方を左右する勝ち抜き戦の敗戦。勇太が観戦していミスは感じなかった、部長としての責任感からだろう。
ルナと梓に、背中を軽くたたかれた。
分かっていた。促されるまま桜塚部長の前に行った。しかし断られた。
「私はまだ、個人戦が残ってる。それよりキクタを慰めてくれ」
勇太は素直に応じた。言葉は荒いときもあるが、優しい人だと思った。
「うっ、うっ、ありがとう勇太君」
「・・お疲れ様でした、キクタさん」
これが高校最後の試合になった先輩を勇太はぎゅっと抱き締めた。
太めでも、汗だくも気にしない。
この世界ではめったにない光景。うるっとする女子もたくさんいる。
勇太は知らない。この光景が、かなりの回数、ネットだけでなくテレビで流れた。
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