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86 執事カフェといえば、これでしょう
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パラレル秋葉原の執事カフェに現れた勇太。
自分の出現で、せっかくの中世貴族なムードを壊して申し訳ないと謝った。
「いえいえ、リアル男性カフェ店員の勇太さんに来店していただいてうれしいです。ほら、他のお客さんも歓迎ですよ」
みんな、素に戻って同意してくれた。
身長175センチ、前髪長めの男装麗人オスカルさんに接客してもらっている。
参考になることもあるかと思い、声をかけたらテーブルの横に召し使いのように立ってくれた。
きりっとしてスーツ着用。他の4人の店員さんもビシッとしる。
できる執事という感じ。ぶっちゃけ勇太よりも格好いい。
「ルナ、リーフカフェの俺って、ここの人に比べたら店員レベル低いよな・・」
「うーん、今のままでいいんじゃない?」
「そうかなあ」
ルナは優しい顔になって、ゆっくり話し出した。
「大丈夫だよ。お客さんに愛されてるし」
勇太の手に、ルナは自分の手を乗せた。
「そうですね。ネットで見ていますけど、私達では作れない優しい雰囲気が勇太さんの魅力ですよ」
「ありがと。まあ、ハンサムでもない俺が燕尾服を着て、執事姿になることもないか」
「ん?勇太、執事って男女比が狂う前のヨーロッパに、ほんの一時期あった男性の職業って聞いてるけど・・」
「勇太さん、リアルな執事業は男性減少とともになくなったので、服装に関しては研究されていません。燕尾服とはなんですか」
ルナが不思議そうな顔になり、オスカルさんには質問された。
「あ、そうか」
目を輝かせるオスカルを見て、ようやく勇太は気付いた。
前世の執事といえば、漫画や小説でも燕尾服とか後ろが長めの背広みたいなやつとか、独特の格好で表現されていた。
だけど、それは男子独特の服装。
この男女比が狂った世界では、男性の服は上質だけどニーズが少ないから多様化していない。
女性用スーツの応用から男性用スーツもある。けれど男性オリジナルは前世と違って進歩していない。
学生生活をしていて最たるものは、詰め襟学生服が存在しない。
前世で元になったパラレル旧日本軍の男性が着た陸軍、海軍の服もない。昭和の軍人の服装は、同盟を組んだパラレルドイツ軍の様式である。
勇太は前世の燕尾服や、フロックコートとかの歴史が、意外に古くないとだけ知っている。
要するに、1600年代初頭に女子主導となった世界では発展していないのだ。
せっかくの執事カフェ。前世で女子にウケていたコスチュームがないのはいかんだろと思い、オスカルさんに紙と鉛筆を貸してもらった。
「ほうほう、スーツの後ろ側を下に伸ばすのですか。この燕尾服というのは、後ろが分かれてますね。なるほどツバメですか」
「イメージ沸きました?」
「優雅な服装で、誰かに仕える者を周囲にアピールするのですね」
「勇太、この服も歌みたいに思いついたの」
「あ、まあね・・・」
「すごい才能だよ、勇太!」
純粋なルナの目を見た。前世既存物へのパクリに対する罪悪感を感じる勇太である。
「素晴らしいですね。勇太さん、このメモをお借りしていいですか」
オスカルさんは、控室に飛び込んでいった。
この店ではお客さんが持ち込んだ生地を使って、女性服の簡易なカスタマイズをしたりする。それが売りのひとつだそうだ。
そのために、店の奥にあるミシンでオスカルさんが今、服を改造している。
その間、勇太とルナは放置された訳ではなく、他のスタッフやお客さんと楽しくおしゃべりをした。
◆
「できました!」
30分後、燕尾服や、ナントカコートようなサンプルが1着ずつ出来上がった。
服と生地を継いだのだが、継ぎ目がデザインの一部のように工夫してあって、よくできている。
いきなり才能がある人に、会ってしまったようだ。
オスカルさんと、他のスタッフが着ると、お客さんから称賛の声が上がった。
男性ビジネスマンという感じだった女子2人が、まさにお姫様の従者という感じになった。
なるほど、礼をしたり、膝を折ったりしたとき、謙虚に見えた上で優雅に映る服装のようだ。
「勇太さん、謝礼は払うので、この服を仕立てる権利が欲しいのですが・・」
「無料でいいです。どうぞ」
「え、そんな簡単に?」
勇太は、大元が自分の発案でもないし、服の形状なんていずれは誰かが考えつくと思っている。
それに、ルナが欲を出さない勇太を、優しい目でみていてくれる。
そしていいことを思いついた。
「オスカルさん、じゃあ、こんなの作ってください。それがアイデア料ってことで」
さらさらさらと、勇太は、簡単な絵を描いた。
「なにかビシッとして、力強いというか・・。作ってみたいですね」
デザインは詰襟学生服の裾が少し長い感じ。基調は白に統一して4着を頼んだ。
何かのイベントのときに、勇太、ルナ、梓、カオルで着てみようと思い付いた。
無茶ぶりしたが、オスカルさんがふたつ返事でオーケーした。
材料費は出すつもりだ。
オスカルさんこと山田依子はデザイナーを目指している専門学校の生徒。執事カフェでアルバイトしながら、腕を磨いているそうだ。
連絡先を交換し、おいしいパフェの店を紹介してもらってルナと行くことにした。
自分の出現で、せっかくの中世貴族なムードを壊して申し訳ないと謝った。
「いえいえ、リアル男性カフェ店員の勇太さんに来店していただいてうれしいです。ほら、他のお客さんも歓迎ですよ」
みんな、素に戻って同意してくれた。
身長175センチ、前髪長めの男装麗人オスカルさんに接客してもらっている。
参考になることもあるかと思い、声をかけたらテーブルの横に召し使いのように立ってくれた。
きりっとしてスーツ着用。他の4人の店員さんもビシッとしる。
できる執事という感じ。ぶっちゃけ勇太よりも格好いい。
「ルナ、リーフカフェの俺って、ここの人に比べたら店員レベル低いよな・・」
「うーん、今のままでいいんじゃない?」
「そうかなあ」
ルナは優しい顔になって、ゆっくり話し出した。
「大丈夫だよ。お客さんに愛されてるし」
勇太の手に、ルナは自分の手を乗せた。
「そうですね。ネットで見ていますけど、私達では作れない優しい雰囲気が勇太さんの魅力ですよ」
「ありがと。まあ、ハンサムでもない俺が燕尾服を着て、執事姿になることもないか」
「ん?勇太、執事って男女比が狂う前のヨーロッパに、ほんの一時期あった男性の職業って聞いてるけど・・」
「勇太さん、リアルな執事業は男性減少とともになくなったので、服装に関しては研究されていません。燕尾服とはなんですか」
ルナが不思議そうな顔になり、オスカルさんには質問された。
「あ、そうか」
目を輝かせるオスカルを見て、ようやく勇太は気付いた。
前世の執事といえば、漫画や小説でも燕尾服とか後ろが長めの背広みたいなやつとか、独特の格好で表現されていた。
だけど、それは男子独特の服装。
この男女比が狂った世界では、男性の服は上質だけどニーズが少ないから多様化していない。
女性用スーツの応用から男性用スーツもある。けれど男性オリジナルは前世と違って進歩していない。
学生生活をしていて最たるものは、詰め襟学生服が存在しない。
前世で元になったパラレル旧日本軍の男性が着た陸軍、海軍の服もない。昭和の軍人の服装は、同盟を組んだパラレルドイツ軍の様式である。
勇太は前世の燕尾服や、フロックコートとかの歴史が、意外に古くないとだけ知っている。
要するに、1600年代初頭に女子主導となった世界では発展していないのだ。
せっかくの執事カフェ。前世で女子にウケていたコスチュームがないのはいかんだろと思い、オスカルさんに紙と鉛筆を貸してもらった。
「ほうほう、スーツの後ろ側を下に伸ばすのですか。この燕尾服というのは、後ろが分かれてますね。なるほどツバメですか」
「イメージ沸きました?」
「優雅な服装で、誰かに仕える者を周囲にアピールするのですね」
「勇太、この服も歌みたいに思いついたの」
「あ、まあね・・・」
「すごい才能だよ、勇太!」
純粋なルナの目を見た。前世既存物へのパクリに対する罪悪感を感じる勇太である。
「素晴らしいですね。勇太さん、このメモをお借りしていいですか」
オスカルさんは、控室に飛び込んでいった。
この店ではお客さんが持ち込んだ生地を使って、女性服の簡易なカスタマイズをしたりする。それが売りのひとつだそうだ。
そのために、店の奥にあるミシンでオスカルさんが今、服を改造している。
その間、勇太とルナは放置された訳ではなく、他のスタッフやお客さんと楽しくおしゃべりをした。
◆
「できました!」
30分後、燕尾服や、ナントカコートようなサンプルが1着ずつ出来上がった。
服と生地を継いだのだが、継ぎ目がデザインの一部のように工夫してあって、よくできている。
いきなり才能がある人に、会ってしまったようだ。
オスカルさんと、他のスタッフが着ると、お客さんから称賛の声が上がった。
男性ビジネスマンという感じだった女子2人が、まさにお姫様の従者という感じになった。
なるほど、礼をしたり、膝を折ったりしたとき、謙虚に見えた上で優雅に映る服装のようだ。
「勇太さん、謝礼は払うので、この服を仕立てる権利が欲しいのですが・・」
「無料でいいです。どうぞ」
「え、そんな簡単に?」
勇太は、大元が自分の発案でもないし、服の形状なんていずれは誰かが考えつくと思っている。
それに、ルナが欲を出さない勇太を、優しい目でみていてくれる。
そしていいことを思いついた。
「オスカルさん、じゃあ、こんなの作ってください。それがアイデア料ってことで」
さらさらさらと、勇太は、簡単な絵を描いた。
「なにかビシッとして、力強いというか・・。作ってみたいですね」
デザインは詰襟学生服の裾が少し長い感じ。基調は白に統一して4着を頼んだ。
何かのイベントのときに、勇太、ルナ、梓、カオルで着てみようと思い付いた。
無茶ぶりしたが、オスカルさんがふたつ返事でオーケーした。
材料費は出すつもりだ。
オスカルさんこと山田依子はデザイナーを目指している専門学校の生徒。執事カフェでアルバイトしながら、腕を磨いているそうだ。
連絡先を交換し、おいしいパフェの店を紹介してもらってルナと行くことにした。
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