110 / 320
110 前世の家族を想う詩
しおりを挟む
ギタリスト風花と知り合った。
勇太の中では、パラレル父さんと断定している。
食事が終わり、勇太、純子、風花で近くの公園に出た。
繁華街の近くで、公園にはプチイベント用の小ステージがある。
「純子、風花さん、暗くなってきたけど、まだいいかな。女の子を、こんな時間まで引っ張って悪いんだけど」
「いや、私も純子ちゃんも女だから問題ない。むしろ男子の勇太君が危険な時間帯でしょ」
「風花さん、勇太君って、たまに変なこと言うんだよ」
「優しいけど、勇太君って魔性の男だな~」
そう、また貞操観念の逆転を忘れかけていた勇太だった。
「まあ、そこは気にしないで。風花さんに弾いてもらいたい曲があるんだ。こんなの。♩♪♩♩♪」
前世の『きっと会える』という再会を願う歌を口ずさんだ。
「ん、こうかな」
ポロ~んとギターを鳴らす風花と、それを聞いてリズムを取る勇太。
「ごめん風花さん、今のところ、もう一回」
「うん、勇太君には、こんな感じが合うかな」
「あ、そっちがいいね~」
繁華街近くにある公園。ギターの音と勇太の声を聞きつけて、女の子が集まって来た。
あっという間に20人。スマホも早くもセットされ、集まった人を見て、さらに女の子が増えている。
「あ、エロカワさんだ」
「もしかして、勇太君のゲリラライブ」
「純子ちゃんとギターの人もいるよ」
「外でやるんだ。ラッキー」
「なんか聞いたことないフレーズ。新曲っぽい」
「どうも~。これから僕がこの2人に楽曲を提供することになりました。純子&風花さんでユニットを作ります」
パチパチパチパチと拍手を貰った。
「何曲か歌ってもらいますが、最初だけ僕が、できたてホヤホヤの曲を披露しまーす!」
どんどんギャラリーが増えている。
「いくよ!」
風花が、一回だけ強く弦を弾いて、スタートの合図。みんなが静かになった。
静かに風花の指が動き出した。
「♩♪♪♪♩♪♩♩」
「またねと~♪♩♩告げた君の♩♪♪♪」
1度聴いただけで、風花はイントロを奏でてくれた。
前世の風太と比べると技術は風花の方が格段に上。だけど、なぜか父親の音色を思い出した。
勇太が、子供の頃から何度となく聴かされた歌だ。
前世の父親・風太が妻の葉子に、最初に聴かせた曲。
歌の歌詞は、ずっと離れてたけど、会えると信じていた。そんな構成だ。
歌いながら勇太は2年前を思い出した。
前世で当時19歳だった勇太は、もう歩くことはできなかった。最後かもしれない一時帰宅で病院を出て、自宅で家族と食卓を囲んだ。
梓と葉子がご飯を作り、2人が見えるテーブルに勇太と風太が向かい合って座っていた。
以前なら普通だったけど、この時には特別になってしまった家族の団欒。
葉子と梓が明るく弾んだ声を出していた。固形物は食べられなくなっていた勇太だったけど、好きな物が目の前に並んでいって喜んだ。
そして父・風太が、この歌を口ずさんでいた。
勇太も途切れ途切れの声で、一緒に歌っていた。
視力だけは正常だった勇太は、背を向けて料理を作っていた葉子が、肩を震わせながら嗚咽していたのを覚えている。
風花と知り合った。前世の家族のパラレル人物は父、母、妹に該当する人を3人とも見つけた。
だけど今現在の、あちらの世界のことを考えると胸が締め付けられる。あっちでは、家族の食卓から勇太が欠けてしまった。
あちらの世界を自分が旅立って、もうすぐ4か月。みんな笑えているだろうかと思う。
一緒懸命に育ててくれたのに、親孝行もできなかった。
複雑な気持ちが女神印の響く声に乗ってしまった。
サビを歌うときには声が震えた。純子がコーラス、風花がギターアレンジでフォローしてくれた。
歌が終わったとき、いつの間にか人だかりができていた。そして沢山の拍手をもらった。
泣いてくれる女の子もたくさんいた。
勇太の中では、パラレル父さんと断定している。
食事が終わり、勇太、純子、風花で近くの公園に出た。
繁華街の近くで、公園にはプチイベント用の小ステージがある。
「純子、風花さん、暗くなってきたけど、まだいいかな。女の子を、こんな時間まで引っ張って悪いんだけど」
「いや、私も純子ちゃんも女だから問題ない。むしろ男子の勇太君が危険な時間帯でしょ」
「風花さん、勇太君って、たまに変なこと言うんだよ」
「優しいけど、勇太君って魔性の男だな~」
そう、また貞操観念の逆転を忘れかけていた勇太だった。
「まあ、そこは気にしないで。風花さんに弾いてもらいたい曲があるんだ。こんなの。♩♪♩♩♪」
前世の『きっと会える』という再会を願う歌を口ずさんだ。
「ん、こうかな」
ポロ~んとギターを鳴らす風花と、それを聞いてリズムを取る勇太。
「ごめん風花さん、今のところ、もう一回」
「うん、勇太君には、こんな感じが合うかな」
「あ、そっちがいいね~」
繁華街近くにある公園。ギターの音と勇太の声を聞きつけて、女の子が集まって来た。
あっという間に20人。スマホも早くもセットされ、集まった人を見て、さらに女の子が増えている。
「あ、エロカワさんだ」
「もしかして、勇太君のゲリラライブ」
「純子ちゃんとギターの人もいるよ」
「外でやるんだ。ラッキー」
「なんか聞いたことないフレーズ。新曲っぽい」
「どうも~。これから僕がこの2人に楽曲を提供することになりました。純子&風花さんでユニットを作ります」
パチパチパチパチと拍手を貰った。
「何曲か歌ってもらいますが、最初だけ僕が、できたてホヤホヤの曲を披露しまーす!」
どんどんギャラリーが増えている。
「いくよ!」
風花が、一回だけ強く弦を弾いて、スタートの合図。みんなが静かになった。
静かに風花の指が動き出した。
「♩♪♪♪♩♪♩♩」
「またねと~♪♩♩告げた君の♩♪♪♪」
1度聴いただけで、風花はイントロを奏でてくれた。
前世の風太と比べると技術は風花の方が格段に上。だけど、なぜか父親の音色を思い出した。
勇太が、子供の頃から何度となく聴かされた歌だ。
前世の父親・風太が妻の葉子に、最初に聴かせた曲。
歌の歌詞は、ずっと離れてたけど、会えると信じていた。そんな構成だ。
歌いながら勇太は2年前を思い出した。
前世で当時19歳だった勇太は、もう歩くことはできなかった。最後かもしれない一時帰宅で病院を出て、自宅で家族と食卓を囲んだ。
梓と葉子がご飯を作り、2人が見えるテーブルに勇太と風太が向かい合って座っていた。
以前なら普通だったけど、この時には特別になってしまった家族の団欒。
葉子と梓が明るく弾んだ声を出していた。固形物は食べられなくなっていた勇太だったけど、好きな物が目の前に並んでいって喜んだ。
そして父・風太が、この歌を口ずさんでいた。
勇太も途切れ途切れの声で、一緒に歌っていた。
視力だけは正常だった勇太は、背を向けて料理を作っていた葉子が、肩を震わせながら嗚咽していたのを覚えている。
風花と知り合った。前世の家族のパラレル人物は父、母、妹に該当する人を3人とも見つけた。
だけど今現在の、あちらの世界のことを考えると胸が締め付けられる。あっちでは、家族の食卓から勇太が欠けてしまった。
あちらの世界を自分が旅立って、もうすぐ4か月。みんな笑えているだろうかと思う。
一緒懸命に育ててくれたのに、親孝行もできなかった。
複雑な気持ちが女神印の響く声に乗ってしまった。
サビを歌うときには声が震えた。純子がコーラス、風花がギターアレンジでフォローしてくれた。
歌が終わったとき、いつの間にか人だかりができていた。そして沢山の拍手をもらった。
泣いてくれる女の子もたくさんいた。
70
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる