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113 肉じゃが食べる?
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勇太は、パラレル父さんの周防風花を家に招くことにした。
勇太の周囲はざわついている。
ルナやカオルとは、表向きは『再会』。だけど2人と仲がいい人間すら、勇太と2人が旧知の仲だったと知らなかった。
過去に少し接点があったのを覚えているカオルでさえ、単なる知り合い以下だったと白状している。
なのに勇太が、いきなり人前で距離を詰めている。そして、あれよあれよというまに、2人が勇太の婚約者になっている。
そんないきさつがあるせいで、勇太に注目している女性は、風花が次の勇太の彼女候補だと思っている。
風花としては、そんな余裕はない。
大学3年生。組んでいたバンドが解散して、就職も考えねばならない時期。先が見えないときに降って沸いたチャンス。
絶対に売れる勇太作詞作曲の歌を風花&純子として提供してもらえる。
ただし、最初の契約は1年間の期間限定。
1年後、プロとして認められるかどうか風花の勝負の年になる。
将来がかかっているから、色恋沙汰よりも優先するものがある。曲の制作活動で昼夜問わず動いている。留年も覚悟だ。
確かに噂のエロカワ男子・勇太は魅力的。だけど勇太は、真剣に自分のことを考えて向き合ってくれる。だから、それに応えたい。
一緒にいると、歌った直後の勇太からいい匂いがする。たまに、むらっとする程度だ。
9月20日の金曜日の夕方。
風花はレコード会社の人とスタジオで曲作りを進めている。
強烈な忙しさでも、勇太のおかげで順調だ。
午後6時。
風花は、今日は初めて勇太の家に行く。自分に似た嫁の梓、その母親の葉子さんが待っていてくれる。
そしてルナ、純子の似ていない双子と、今川カオル、臼鳥麗子と一緒にご飯を食べる。
勇太に誘ってもらって、すごく楽しみにしている。
「あ、初めてお邪魔するのに手ぶらだ」
せめてアイスでも買っていくかと、コンビニに寄った。
そのとき、風花は知らない女の人に声をかけられた。
「梓・・じゃないね」
◆◆
勇太は梓達と一緒に風花を招く準備をしていた。
勇太はシーフードカレー、梓は唐揚げ。ルナ、純子、麗子も料理の腕は確か、というかカオル以外でご飯を作った。
勇太がシーフードカレーを選んだのは、前世の父親の唯一の得意料理だったから。
「梓~、腹へったあ~」
「カオルちゃん、たった今、パン食べたでしょ」
「柔道の練習のあとは、いくらでも入るんだよ~」
「みんな揃うまで我慢して」
ピンポ~ンとチャイムが鳴った。
「あ、葉子義母さんかな、風花さんかな」
玄関に勇太が行ってみると、葉子と風花が一緒にいた。
「あれ?2人一緒だ」
「ただいまー」
「おじゃましま~す」
コンビニでばったり会って、梓そっくりの風花に葉子が声をかけたという。
葉子の手には、ビールがたくさん入った袋がぶら下がっている。
「いやあ、今日は成人した風花ちゃんがいるから、ビールもアリかなって、えへへ」
「ま、私も多少は飲めるからね」
で、家に帰ってきても、なんだか葉子と風花が和気あいあいと話をしている。
「いただきま~す。うまい!」
物怖じしない風花は、あっという間に坂元家に集まった人間と打ち解けた。
「風花ちゃんは、食べ物は何が好きなの」
「う~ん。和食とかいいけど、1人だとコンビニとかで済ましちゃいますね」
「煮物とかは」
「いいっすね~」
「じゃあ、肉じゃが食べる?」
葉子と風花が目を合わせて、微笑み会っている。どちらもビールのせいなのか頬が赤い。
「何度もお邪魔するのも悪いかな」
「また来なさいよ。得意だから作ってあげる。彼女と別れて暇もあるし、遠慮しなさんな」
「あらら~、じゃあ遠慮しませんよ」
勇太は、そうかと思った。
肉じゃがは偶然だけど、別に風花と梓が異母姉妹だと明かす必要もない。
前世のパラレル人物の性根が似ているなら、パラレル母さん葉子とパラレル父さん風花が、なんとなく気が合っても不思議ではない。
前世の坂元葉子は普通校から大学に行った。周防風太は、早く就職するために工業高校に行って地元企業で働いた。
たまに葉子が風太にご飯を振る舞うだけの関係から、進展しないけど後退もしない。
だけど必ず、定期的に会っていた。
そんな緩やかな関係から、正式に付き合うまで何年もかかったと聞いた。
目の前では、風花が葉子のリクエストで得意な曲を弾いている。
パラレル葉子31歳、風花は21歳と、10歳の年の差がある。梓とカオルの時のように、お互いの背中に電気が流れたような出会いではない。
だけど、周りを安心させてくれる穏やかな空気が流れている。
風花と梓に血の繋がりがあることを早く教えなきゃとか、余計なことで焦る必要もなかった。
2人を見ていると、きっと時間が経てば、収まるところに収まる気がしてきた。
勇太の周囲はざわついている。
ルナやカオルとは、表向きは『再会』。だけど2人と仲がいい人間すら、勇太と2人が旧知の仲だったと知らなかった。
過去に少し接点があったのを覚えているカオルでさえ、単なる知り合い以下だったと白状している。
なのに勇太が、いきなり人前で距離を詰めている。そして、あれよあれよというまに、2人が勇太の婚約者になっている。
そんないきさつがあるせいで、勇太に注目している女性は、風花が次の勇太の彼女候補だと思っている。
風花としては、そんな余裕はない。
大学3年生。組んでいたバンドが解散して、就職も考えねばならない時期。先が見えないときに降って沸いたチャンス。
絶対に売れる勇太作詞作曲の歌を風花&純子として提供してもらえる。
ただし、最初の契約は1年間の期間限定。
1年後、プロとして認められるかどうか風花の勝負の年になる。
将来がかかっているから、色恋沙汰よりも優先するものがある。曲の制作活動で昼夜問わず動いている。留年も覚悟だ。
確かに噂のエロカワ男子・勇太は魅力的。だけど勇太は、真剣に自分のことを考えて向き合ってくれる。だから、それに応えたい。
一緒にいると、歌った直後の勇太からいい匂いがする。たまに、むらっとする程度だ。
9月20日の金曜日の夕方。
風花はレコード会社の人とスタジオで曲作りを進めている。
強烈な忙しさでも、勇太のおかげで順調だ。
午後6時。
風花は、今日は初めて勇太の家に行く。自分に似た嫁の梓、その母親の葉子さんが待っていてくれる。
そしてルナ、純子の似ていない双子と、今川カオル、臼鳥麗子と一緒にご飯を食べる。
勇太に誘ってもらって、すごく楽しみにしている。
「あ、初めてお邪魔するのに手ぶらだ」
せめてアイスでも買っていくかと、コンビニに寄った。
そのとき、風花は知らない女の人に声をかけられた。
「梓・・じゃないね」
◆◆
勇太は梓達と一緒に風花を招く準備をしていた。
勇太はシーフードカレー、梓は唐揚げ。ルナ、純子、麗子も料理の腕は確か、というかカオル以外でご飯を作った。
勇太がシーフードカレーを選んだのは、前世の父親の唯一の得意料理だったから。
「梓~、腹へったあ~」
「カオルちゃん、たった今、パン食べたでしょ」
「柔道の練習のあとは、いくらでも入るんだよ~」
「みんな揃うまで我慢して」
ピンポ~ンとチャイムが鳴った。
「あ、葉子義母さんかな、風花さんかな」
玄関に勇太が行ってみると、葉子と風花が一緒にいた。
「あれ?2人一緒だ」
「ただいまー」
「おじゃましま~す」
コンビニでばったり会って、梓そっくりの風花に葉子が声をかけたという。
葉子の手には、ビールがたくさん入った袋がぶら下がっている。
「いやあ、今日は成人した風花ちゃんがいるから、ビールもアリかなって、えへへ」
「ま、私も多少は飲めるからね」
で、家に帰ってきても、なんだか葉子と風花が和気あいあいと話をしている。
「いただきま~す。うまい!」
物怖じしない風花は、あっという間に坂元家に集まった人間と打ち解けた。
「風花ちゃんは、食べ物は何が好きなの」
「う~ん。和食とかいいけど、1人だとコンビニとかで済ましちゃいますね」
「煮物とかは」
「いいっすね~」
「じゃあ、肉じゃが食べる?」
葉子と風花が目を合わせて、微笑み会っている。どちらもビールのせいなのか頬が赤い。
「何度もお邪魔するのも悪いかな」
「また来なさいよ。得意だから作ってあげる。彼女と別れて暇もあるし、遠慮しなさんな」
「あらら~、じゃあ遠慮しませんよ」
勇太は、そうかと思った。
肉じゃがは偶然だけど、別に風花と梓が異母姉妹だと明かす必要もない。
前世のパラレル人物の性根が似ているなら、パラレル母さん葉子とパラレル父さん風花が、なんとなく気が合っても不思議ではない。
前世の坂元葉子は普通校から大学に行った。周防風太は、早く就職するために工業高校に行って地元企業で働いた。
たまに葉子が風太にご飯を振る舞うだけの関係から、進展しないけど後退もしない。
だけど必ず、定期的に会っていた。
そんな緩やかな関係から、正式に付き合うまで何年もかかったと聞いた。
目の前では、風花が葉子のリクエストで得意な曲を弾いている。
パラレル葉子31歳、風花は21歳と、10歳の年の差がある。梓とカオルの時のように、お互いの背中に電気が流れたような出会いではない。
だけど、周りを安心させてくれる穏やかな空気が流れている。
風花と梓に血の繋がりがあることを早く教えなきゃとか、余計なことで焦る必要もなかった。
2人を見ていると、きっと時間が経てば、収まるところに収まる気がしてきた。
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