モブ顔の俺が男女比１対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

121 試合の合間のリクエスト

勇太らパラ高の初戦は１回戦でも早い方だった。そして次の試合は２回戦でも最後の方。

要するに、ここだけ１時間近く時間が空く。

すると、こうなる。

「ゆ、勇太、なんだか女の子が集まってきてるよ」
「なんでだろ、ルナ」

「ああ、他校の子に聞かれたっすけど、勇太先輩が普通に運動するとこ見たいそうです」

そうなのである。勇太が柔道をやってイメージアップに役立っているが、触発されているのは女子だけ。

女子を性欲だらけの危険な生き物だと思っている男子が多く、勇太を物好きだととらえるやつが大半。

あの伊集院君さえも、運動はガードマン付きの安全な場所でしかやらない。

やっぱり男子が運動に目覚めることはなく、ガチに運動する男子が珍しいままなのだ。

勇太は、公の場ではインターハイの地区予選で２日間しか柔道着を披露していない。

「まあいいや。ルナ、ウオーミングアップに付き合ってよ」
「うん」

１回戦、羽交い締めのような寝技で負けた勇太は、怪我がないかのチェックも兼ねて、ルナと背中を合わせてペアストレッチから始めた。

おおおーと歓声が上がる。

「勇太、いくよ。うんしょっと」
「ふうー」

背筋の筋肉を伸ばしたり戻りたりすると、柔道着の前がぱくぱく開閉する。

おおおーと再び歓声が上がる。

さすがに、ルナの顔も赤くなってきた。


そして、第1試合を終えた茶薔薇の仲間とともに、カオルが来た。試合は完勝。

「お疲れカオル。あっさり勝ったってな」
「ああ、それよか・・」

今回、勇太は選手として大会に参加している。

しかし女の子達は、インターハイの応援に行ってサービスしまくりの勇太をネット見て、ここに来ている。

やっぱり、カオルが頼まれた。柔道界ではカオルは有名人だし、知り合いも多いのだ。

「お嫁さんから頼んでよ」。そう言われ、すごく背中がむずかゆい。

勇太がルナの方を見ると、ルナも期待している。

インターハイの試合前に、前世の今川薫が好きだった歌を歌った。勇太は、また同じ歌にした。

柔道女子からのリクエストが、やたらと多いのだ。

この歌は、純子&風花にも提供するし、勇太が歌うバージョンも発売される。

勇太はためらったが、ルナ達のためにもと勧められて、その気になってしまった。

勇太が歌うセレクト曲は３曲。カオル、ルナ、梓、個々のための曲だ。

純子と麗子のやつは、正式に付き合うことになれば作る。

今から歌うのは、柔道を頑張るカオルへの応援歌。曲名は『僕は見ている』にした。

ルナに向けた『月が眠る静かな夜』、梓のための『一緒にいようね』も、風花とレコード会社の人達で煮詰めてくれている。

勇太は夜中時間を使えるメリットがあり、ボイストレーニングもやっている。

女神印の響く声もあり、ライブ向きだと言われたりする。

純子や風花と歌うようになって、人前で歌うのが以前よりも楽しくなった。

「じゃあ、ここはみんなのためにだな」

♪♪♩♩♪♪

サビになると、女の子達が一緒に歌い出した。今やこの歌はカオル、すなわち柔道女子の応援歌として扱われている。

「♪♪♩♪♪♩♪♪♩♩♪♪♩、頑張れ♩♪♪♩戦う君のことを♪♩♪♪♩」

歌が終わると、みんなで拍手した。

いいシーンかもしれないが、まだ大会中だぞと言いたい。

◆
試合は２回戦から勇太も勝った。寝技の攻防に持ち込まれてばかりだったが、最終的には勝った。

２回戦の相手が興奮しすぎて鼻血を流す一幕もあった。けがをさせたと勘違いした勇太が背負って、医務に駆け込むと歓声が起こった。


茶薔薇学園も無傷で勝ち上がり、いよいよ準決勝。

パラレル高校VS茶薔薇学園。

残念なことに茶薔薇絶対優勢だけど、ものすごく注目のカードだ。

その前に作戦会議。

茶薔薇の主将はカオル。これは固定すると宣言されている。

「ルナ、カオル戦でいいのか」
「うん、むしろやらせて。インターハイ予選のリベンジとはいかなくても、頑張ってみたい」

茶薔薇側は先鋒が田中ツバキ主将。普段から勇太と茶薔薇柔道部は練習しているから、この試合前だけはじゃんけん大会が起こらなかった。

ルナ部長率いるパラ高柔道部、最初の大きな壁が立ちはだかる。