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145 パラレル昭和男子
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パラレル勇太が勘違いした原因のひとつが、目の前のハーレムお爺ちゃん。
原山良作72歳。妻は16人で子供は30人ジャストで息子が3人。孫とひ孫も沢山いる昭和のハーレム野郎だ。
パラレル勇太の生家から約5キロ、同じ海辺の街に住んでいる。
10歳で原山と出会った勇太は感化された。
数少ない男子同士。特にパラレル勇太の周りには同世代の男子が少なかった。
「女にガツンと言うときは言うんだ。せっかく男が生きやすい時代になったんだ。自分の思い通りにすりゃいいんだ」
この辺りで会うたびに何度も言われて、その気になってしまった。
原山に悪気はなかった。身長175センチと当時の男子としては大きく、彫りの深いハンサムだった片鱗がある。
昭和27年生まれ。
こちらの世界でも起こった第二次世界大戦から7年後。アメリカ軍女性司令官のマッカーサーコらの調査と判断により、パラレル日本が勝戦国の分割統治を免れて、法が変わってから6年。
国自体も変わり、男子を巡る制度も変わり始めていた。
簡単に言えば江戸時代から続き、慣例として残っていた身分制度の縛りのようなものがなくなった。
厚生省の男子保護課、労働省の男子労働監察課の監視網が出来上がった。女子主導の、男子を使った強制的な子作りができなくなった。
江戸時代の貧しい農村に生まれた男子、明治~昭和初期の下層とみなされた家に生まれた男子は自由がなかった。
人口維持のため、次から次に場所を移動して、指定された村や町で一定数の女子を妊娠させられた。
そして時期が来ると自分の子を置き去りに、次の場所に移動させられた。
愛した女がいても引き離され、生まれた子供の成長を見守ることが許されない男子が日本に多勢いた。
男子が少ないから全員が優遇される?冗談ではない。人口維持が優先なのだ。
戦後は、この点が変わった。特に下層と言われる家で生まれた男子の大半が保護された。
自由を得た。
女子は働き者が多いし、男子全員が自分の裁量で嫁の数を決めることができるようになった。
男女比が狂って340年、パラレル日本の男子全体に自由が与えられた。現代日本の当たり前ができて、意外に歴史が浅いのである。
複数の妻や恋人、子供12人という暗黙のノルマはあったが、強制ではなかった。
人工授精も研究段階の時代。
原山は男子全体が一気に優遇された時期に青春時代を過ごした人間。そして原山自身も頑張った。
周りのモテない系の男子でも、3人は嫁がいた。そして外で子作りを頼まれた。
少し頭が良かったりすると、子作りだけ頼まれて謝礼をもらっているやつもいた。
いや、謝礼は江戸時代から当たり前だったけど、本人に確実に渡るようになったのは戦後の話だ。
男子の扱いが変わっていった時代の原山が、勇太に自分の世代の成功例を教え続けた。
超、男子売り手市場の時代。
原山は失敗例も言った。「自分と生きてくれる女は宝物だ。優しく、そして感謝しろよ」とも言ったけど、パラレル勇太に面倒そうな話は響かなかった。
パラレル勇太が生まれる頃に人工授精が確立。横暴男子には見切りを付け、女性同士の結婚も増えた。
完全な『男子の売り手市場』ではなくなった令和時代に、パラレル勇太はパラレルな昭和の格好いいお爺さんに出会ってしまった。
パラレル勇太自身、かなり勘違いをした。媚びを売らない、それなら態度が悪くていい。そんな判断をしてしまった。
で、高校ではクラスメイトの女子に超塩対応。臼鳥麗子にフラれたとき、みんなのうっぷんが表に現れてシカトされた。
ぼそっ。「ううーん、これは同情すべき点なのか、バカと笑うべきなのか・・」
自分のことだけに情けなさも倍増だ。
「ルナ、俺って、まともかな」
「え、どういう意味で?」
「ルナや、周りの女の子に嫌な思いをさせてないかな」
「大丈夫だよ。私の友人のリコもお金の面を解決できて、勇太には大感謝だって」
「純子達もかな」
「もちろん」
「なあルナ」
「どうしたの勇太」
「ルナと仲良くなる前、階段から落ちる前の俺は本当に最低だった」
パラレル勇太のことである。けれどやっぱり、パラレル人物である以上、自分も危ない要素を持っていると思っている。
「だから、俺がおかしくなったら遠慮なく・・」
「うん、投げ飛ばしてあげる」
「だな、柔道じゃまだまだルナの方が強いもんな」
「勇太・・」
「うん?」
「もう私は勇太が大好きだよ。きっと、性格が私が知らない元の勇太に戻っても好きだよ」
勇太がどんな風になっても勇太を見捨てないということ。
近くの席の原山老人が勇太に気付いた。
ぱあっと、笑顔になった。
「はっ、誰かと思えば勇太じゃねえか。いい男になりやがったな」
「あ、どうも、お久しぶりです」
心の中では初めましてと言っておいた。
「それに、いい女連れてるな。うらやましいぜ」
「私達というものがありながら」
「うらやましい?」
「良作さん、孫世代ですよ、下手すればひ孫」
「良ちゃん、なんですって」
「あなた!」
「誰が鬼嫁ですって」
「うへええぇぇ」
原山老人の失言が、その場で大炎上した。
これも長年連れ添った昭和ハーレムの特徴なのだろうか。
どっちの世界でも、最終的には女が強いようだ。
原山良作72歳。妻は16人で子供は30人ジャストで息子が3人。孫とひ孫も沢山いる昭和のハーレム野郎だ。
パラレル勇太の生家から約5キロ、同じ海辺の街に住んでいる。
10歳で原山と出会った勇太は感化された。
数少ない男子同士。特にパラレル勇太の周りには同世代の男子が少なかった。
「女にガツンと言うときは言うんだ。せっかく男が生きやすい時代になったんだ。自分の思い通りにすりゃいいんだ」
この辺りで会うたびに何度も言われて、その気になってしまった。
原山に悪気はなかった。身長175センチと当時の男子としては大きく、彫りの深いハンサムだった片鱗がある。
昭和27年生まれ。
こちらの世界でも起こった第二次世界大戦から7年後。アメリカ軍女性司令官のマッカーサーコらの調査と判断により、パラレル日本が勝戦国の分割統治を免れて、法が変わってから6年。
国自体も変わり、男子を巡る制度も変わり始めていた。
簡単に言えば江戸時代から続き、慣例として残っていた身分制度の縛りのようなものがなくなった。
厚生省の男子保護課、労働省の男子労働監察課の監視網が出来上がった。女子主導の、男子を使った強制的な子作りができなくなった。
江戸時代の貧しい農村に生まれた男子、明治~昭和初期の下層とみなされた家に生まれた男子は自由がなかった。
人口維持のため、次から次に場所を移動して、指定された村や町で一定数の女子を妊娠させられた。
そして時期が来ると自分の子を置き去りに、次の場所に移動させられた。
愛した女がいても引き離され、生まれた子供の成長を見守ることが許されない男子が日本に多勢いた。
男子が少ないから全員が優遇される?冗談ではない。人口維持が優先なのだ。
戦後は、この点が変わった。特に下層と言われる家で生まれた男子の大半が保護された。
自由を得た。
女子は働き者が多いし、男子全員が自分の裁量で嫁の数を決めることができるようになった。
男女比が狂って340年、パラレル日本の男子全体に自由が与えられた。現代日本の当たり前ができて、意外に歴史が浅いのである。
複数の妻や恋人、子供12人という暗黙のノルマはあったが、強制ではなかった。
人工授精も研究段階の時代。
原山は男子全体が一気に優遇された時期に青春時代を過ごした人間。そして原山自身も頑張った。
周りのモテない系の男子でも、3人は嫁がいた。そして外で子作りを頼まれた。
少し頭が良かったりすると、子作りだけ頼まれて謝礼をもらっているやつもいた。
いや、謝礼は江戸時代から当たり前だったけど、本人に確実に渡るようになったのは戦後の話だ。
男子の扱いが変わっていった時代の原山が、勇太に自分の世代の成功例を教え続けた。
超、男子売り手市場の時代。
原山は失敗例も言った。「自分と生きてくれる女は宝物だ。優しく、そして感謝しろよ」とも言ったけど、パラレル勇太に面倒そうな話は響かなかった。
パラレル勇太が生まれる頃に人工授精が確立。横暴男子には見切りを付け、女性同士の結婚も増えた。
完全な『男子の売り手市場』ではなくなった令和時代に、パラレル勇太はパラレルな昭和の格好いいお爺さんに出会ってしまった。
パラレル勇太自身、かなり勘違いをした。媚びを売らない、それなら態度が悪くていい。そんな判断をしてしまった。
で、高校ではクラスメイトの女子に超塩対応。臼鳥麗子にフラれたとき、みんなのうっぷんが表に現れてシカトされた。
ぼそっ。「ううーん、これは同情すべき点なのか、バカと笑うべきなのか・・」
自分のことだけに情けなさも倍増だ。
「ルナ、俺って、まともかな」
「え、どういう意味で?」
「ルナや、周りの女の子に嫌な思いをさせてないかな」
「大丈夫だよ。私の友人のリコもお金の面を解決できて、勇太には大感謝だって」
「純子達もかな」
「もちろん」
「なあルナ」
「どうしたの勇太」
「ルナと仲良くなる前、階段から落ちる前の俺は本当に最低だった」
パラレル勇太のことである。けれどやっぱり、パラレル人物である以上、自分も危ない要素を持っていると思っている。
「だから、俺がおかしくなったら遠慮なく・・」
「うん、投げ飛ばしてあげる」
「だな、柔道じゃまだまだルナの方が強いもんな」
「勇太・・」
「うん?」
「もう私は勇太が大好きだよ。きっと、性格が私が知らない元の勇太に戻っても好きだよ」
勇太がどんな風になっても勇太を見捨てないということ。
近くの席の原山老人が勇太に気付いた。
ぱあっと、笑顔になった。
「はっ、誰かと思えば勇太じゃねえか。いい男になりやがったな」
「あ、どうも、お久しぶりです」
心の中では初めましてと言っておいた。
「それに、いい女連れてるな。うらやましいぜ」
「私達というものがありながら」
「うらやましい?」
「良作さん、孫世代ですよ、下手すればひ孫」
「良ちゃん、なんですって」
「あなた!」
「誰が鬼嫁ですって」
「うへええぇぇ」
原山老人の失言が、その場で大炎上した。
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どっちの世界でも、最終的には女が強いようだ。
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