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159 梓のお父さんに会いに行こう
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10月25日、金曜日の午後4時。
吉田真子の気持ちが分かっていない勇太は、相変わらずの平常心で過ごしている。
今日の勇太は妻の梓、義母の葉子と車に乗ってお出掛けである。
月ー木曜日登校の勇太は金曜日だからリーフカフェで2時まで働いた。
パラ高文化祭の海軍カフェを知ったお客さんから、リーフカフェでも海軍デーを作って欲しいとリクエストが多かった。
それを考えるのは後回し。
自宅から南に20キロ、梓の父親・間門陽介に会いに行く。
葉子より10歳上の41歳。
今の勇太としては初めて会う相手。やっと会えるといった感じだ。
薄手のシャツに薄手のジャケット。それなりのお金を使って小綺麗にしている。
勇太は律儀。
ルナの両親には婚約はもちろん、正式に付き合う段階で挨拶している。
ルナのお父さんには純子も世話になっているからと、何度か食事をごちそうになるくらいの交流がある。
カオルの母親4人、姉妹10人とも顔合わせをした。カオルの姉妹5人から本気か冗談か分からないアプローチもされまくっている。
なのに元が叔母である葉子の娘・梓とは入籍済みなのに、その父親に結婚の挨拶をしていない。
大きな理由は、想像通りでパラレル勇太。
梓の父親とパラレル勇太は過去に1度会っている。中1で生みの母親が亡くなって半年後。葉子の家に引き取られて、落ち着いたとみられた頃だ。
梓の父陽介も、母を亡くし葉子と梓の家族になったパラレル勇太を力付けようという気持ち。
だから、わざわざ妻のうち2人を伴って葉子の家に来てくれた。
なのにパラレル勇太は陽介の妻・彩奈から相当額の小遣いまでもらったのに、ろくなお礼もなし。
「オバハン、誰?」
って、パラレル勇太よ、お前は何様だったのだ。
13歳の年齢を差し引いても最低だった。勇太もパラレル勇太の記憶を覗いて、嫌な気分になった。
同伴した父の妻2人が怒った。
スポーツ用品も含めた服飾を扱う会社『マカド』を動かしている、陽介ファミリーの要で彩奈と香里奈だ。
パラレル勇太は、怒った妻2人から陽介の家に来たりしないでくれと言われた。
なので7月31日、葉子が陽介に梓の結婚を報告しただけ。
後日、陽介が祝うと言ってくれたが、そこから連絡がなかった。
そもそも陽介の同居の妻10人は現代には珍しく血筋を大切にしている家の出身で、考え方も堅いらしい。
葉子が梓の父・陽介と別姓と別居を選んだのも、彼の妻達と馴染めそうになかったから。
葉子は自由な性格。守るものが多すぎる間門家の女達とは違いすぎた。
現代の男女比1対12日本では、婚姻しても親族や別居の親への顔合わせをしないことも普通になった。
男女比が狂ったと同時に、未婚の母も増えた。よほどの家格の家同士でない婚姻で儀礼的なものをしなくなった。
血脈の維持も難しくなった。
男当主なら極端な話、100人の女性をあてがえば3桁の正統な血筋の子供が作れる。
だけど女当主から派生できる、要するに産める子供の数には限界がある。
男性当主なら体が弱くても、精子を放出すればいい。周囲の手助けで子供が生まれて立派に育つ。本人はノーダメージだ。
女当主は最低限の血の継続だけでも、妊娠、出産で長い時間を取られる。その間は仕事の効率も落ちる。
医療技術が低かった昭和初期までは、妊婦の死のリスクも高かった。
女当主が一代限りでも、ケアとサポートは大変だった。
けれどパラレル世界では、一般人まで入れると99パーセントの家は女性が家長。
跡継ぎを生んで仕事をしてと、負担が大きい。体が強いことが女当主の大前提。
歪みが生じて、家の名前だけを残すために赤の他人に近い遠縁が当主になることが続いたりした。
さらに、現在は一般人の間に人工授精が増え、血脈へのこだわりが崩壊。
その流れで、婚姻時の親族などへの報告義務のようなものも薄れている。
女同士の婚姻で子供が産まれても人工受精。間違いなく片方の親の親戚とは血の繋がりがない。
陽介と夫人達の本家は、その状況の中で血を繋いできたから、うるさいのは本人以上に親戚。
葉子も夫・陽介の本家が元華族なので勘違いしている。陽介自身は華族分家の次男。陽介の妻達は、何かしらの家の三女から下ばかり。
由緒ある家と繋がりはあるが、平成にできた新興の家である。
間門の家の会社『マカド』も陽介、彩奈、香里奈で興したもの。メインは服飾関連。
扱う商品の関係で、世間の評判ひとつに売り上げが左右される。
だから世間の風向きに敏感。
人工受精世代が成人し、世の中を動かし始めた日本を肌で感じている。
それにしても、入籍から3ヶ月近く経過した今になって、葉子に夫の陽介から連絡があった。
妻達から、坂元家を家に招待してほしいとお願いされたそうだ。
意図が読めず、警戒している葉子だ。
陽介には堂々と梓の結婚を祝ってほしかった。だから、これは素直に応じた。
では妻達の狙いは?
勇太目当てでも辻褄が合わない。
間門の金があれば、由緒ある家に生まれた男子相手でも縁は結べるはず。人工受精の勇太に目を付ける必要がない。
今さらだ。勇太と陽介ハーレムの顔合わせは不安だけど、陽介には梓のため家をもらっている。
現代男子なのに、別居妻にケアしてくれる陽介に恩がある。
妻との連名でなく陽介1人の名前で呼ばれたから無視できないのだ。
相手の家に着いた。
立派な日本家屋の平屋。勇太はここって、料亭とかじゃないよねと思った。
陽介が門の前まで迎えに来てくれている。
勇太の方から挨拶した。
「以前は失礼しました。お久しぶりです、坂元勇太です。娘さんと籍を入れされてもらった報告が遅くなりました」
「う、うん。よく来たな。梓も葉子も元気そうだな」
親子の対面は無事に済みそうだった。が・・・
陽介の後ろに陽介の嫁10人、年頃の娘12人が並んでいる。
なぜか、全員が着飾っている。
吉田真子の気持ちが分かっていない勇太は、相変わらずの平常心で過ごしている。
今日の勇太は妻の梓、義母の葉子と車に乗ってお出掛けである。
月ー木曜日登校の勇太は金曜日だからリーフカフェで2時まで働いた。
パラ高文化祭の海軍カフェを知ったお客さんから、リーフカフェでも海軍デーを作って欲しいとリクエストが多かった。
それを考えるのは後回し。
自宅から南に20キロ、梓の父親・間門陽介に会いに行く。
葉子より10歳上の41歳。
今の勇太としては初めて会う相手。やっと会えるといった感じだ。
薄手のシャツに薄手のジャケット。それなりのお金を使って小綺麗にしている。
勇太は律儀。
ルナの両親には婚約はもちろん、正式に付き合う段階で挨拶している。
ルナのお父さんには純子も世話になっているからと、何度か食事をごちそうになるくらいの交流がある。
カオルの母親4人、姉妹10人とも顔合わせをした。カオルの姉妹5人から本気か冗談か分からないアプローチもされまくっている。
なのに元が叔母である葉子の娘・梓とは入籍済みなのに、その父親に結婚の挨拶をしていない。
大きな理由は、想像通りでパラレル勇太。
梓の父親とパラレル勇太は過去に1度会っている。中1で生みの母親が亡くなって半年後。葉子の家に引き取られて、落ち着いたとみられた頃だ。
梓の父陽介も、母を亡くし葉子と梓の家族になったパラレル勇太を力付けようという気持ち。
だから、わざわざ妻のうち2人を伴って葉子の家に来てくれた。
なのにパラレル勇太は陽介の妻・彩奈から相当額の小遣いまでもらったのに、ろくなお礼もなし。
「オバハン、誰?」
って、パラレル勇太よ、お前は何様だったのだ。
13歳の年齢を差し引いても最低だった。勇太もパラレル勇太の記憶を覗いて、嫌な気分になった。
同伴した父の妻2人が怒った。
スポーツ用品も含めた服飾を扱う会社『マカド』を動かしている、陽介ファミリーの要で彩奈と香里奈だ。
パラレル勇太は、怒った妻2人から陽介の家に来たりしないでくれと言われた。
なので7月31日、葉子が陽介に梓の結婚を報告しただけ。
後日、陽介が祝うと言ってくれたが、そこから連絡がなかった。
そもそも陽介の同居の妻10人は現代には珍しく血筋を大切にしている家の出身で、考え方も堅いらしい。
葉子が梓の父・陽介と別姓と別居を選んだのも、彼の妻達と馴染めそうになかったから。
葉子は自由な性格。守るものが多すぎる間門家の女達とは違いすぎた。
現代の男女比1対12日本では、婚姻しても親族や別居の親への顔合わせをしないことも普通になった。
男女比が狂ったと同時に、未婚の母も増えた。よほどの家格の家同士でない婚姻で儀礼的なものをしなくなった。
血脈の維持も難しくなった。
男当主なら極端な話、100人の女性をあてがえば3桁の正統な血筋の子供が作れる。
だけど女当主から派生できる、要するに産める子供の数には限界がある。
男性当主なら体が弱くても、精子を放出すればいい。周囲の手助けで子供が生まれて立派に育つ。本人はノーダメージだ。
女当主は最低限の血の継続だけでも、妊娠、出産で長い時間を取られる。その間は仕事の効率も落ちる。
医療技術が低かった昭和初期までは、妊婦の死のリスクも高かった。
女当主が一代限りでも、ケアとサポートは大変だった。
けれどパラレル世界では、一般人まで入れると99パーセントの家は女性が家長。
跡継ぎを生んで仕事をしてと、負担が大きい。体が強いことが女当主の大前提。
歪みが生じて、家の名前だけを残すために赤の他人に近い遠縁が当主になることが続いたりした。
さらに、現在は一般人の間に人工授精が増え、血脈へのこだわりが崩壊。
その流れで、婚姻時の親族などへの報告義務のようなものも薄れている。
女同士の婚姻で子供が産まれても人工受精。間違いなく片方の親の親戚とは血の繋がりがない。
陽介と夫人達の本家は、その状況の中で血を繋いできたから、うるさいのは本人以上に親戚。
葉子も夫・陽介の本家が元華族なので勘違いしている。陽介自身は華族分家の次男。陽介の妻達は、何かしらの家の三女から下ばかり。
由緒ある家と繋がりはあるが、平成にできた新興の家である。
間門の家の会社『マカド』も陽介、彩奈、香里奈で興したもの。メインは服飾関連。
扱う商品の関係で、世間の評判ひとつに売り上げが左右される。
だから世間の風向きに敏感。
人工受精世代が成人し、世の中を動かし始めた日本を肌で感じている。
それにしても、入籍から3ヶ月近く経過した今になって、葉子に夫の陽介から連絡があった。
妻達から、坂元家を家に招待してほしいとお願いされたそうだ。
意図が読めず、警戒している葉子だ。
陽介には堂々と梓の結婚を祝ってほしかった。だから、これは素直に応じた。
では妻達の狙いは?
勇太目当てでも辻褄が合わない。
間門の金があれば、由緒ある家に生まれた男子相手でも縁は結べるはず。人工受精の勇太に目を付ける必要がない。
今さらだ。勇太と陽介ハーレムの顔合わせは不安だけど、陽介には梓のため家をもらっている。
現代男子なのに、別居妻にケアしてくれる陽介に恩がある。
妻との連名でなく陽介1人の名前で呼ばれたから無視できないのだ。
相手の家に着いた。
立派な日本家屋の平屋。勇太はここって、料亭とかじゃないよねと思った。
陽介が門の前まで迎えに来てくれている。
勇太の方から挨拶した。
「以前は失礼しました。お久しぶりです、坂元勇太です。娘さんと籍を入れされてもらった報告が遅くなりました」
「う、うん。よく来たな。梓も葉子も元気そうだな」
親子の対面は無事に済みそうだった。が・・・
陽介の後ろに陽介の嫁10人、年頃の娘12人が並んでいる。
なぜか、全員が着飾っている。
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