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161 梓のお姉ちゃんは、マジな純情派
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間門嘉菜は、大ファンになった坂元勇太に1人目の嫁がいることを把握した。
だけど調べた時点では、自分と嫁の梓が異母姉妹だと知らなかった。
ネットでチェックしたときも梓を他人と思っていた。
名前に心当たりもない。幸せそうな梓を映像で見て、いいな~と思っただけ。
最後に見たのは5年前。ちょっと見たきりだから顔も一致しなかった。
勇太を見るだけで幸せだった。姉妹や学友が『推し』とかいう言葉を使っていた。
「私のも、それに該当するんでしょうか・・」
勉強の合間、ひとりで呟いて笑ったりしていた。
そして、パラ高文化祭に行ったとき、流れが変わった。
10月13日。パラ高文化祭2日目の海軍カフェを訪れた。リーフカフェで知り合った同じ高3の他校生2人組が誘ってくれた。
そこで思わぬ出来事が・・
突然始まった海軍サプライズの『貴様、それでも軍人か』系企画。
ネットで告知はあって、嘉菜も知っていた。
たまたまその時の客だった嘉菜の前に勇太、梓、ルナが白い詰め襟服で迫ってきた。
いきなり梓とルナに両脇を抱えられて立たされた。戸惑っていると、ルナが口火を切って寸劇が始まった。
「坂元大尉、こやつです」
「ほう、この女か」
「!!!あ、あの 」
「貴様が我が艦・蜃気楼に潜り込んだスパイだったか。なかなかの美人だな」
脳内で美人だな、だけ切り取った嘉菜が真っ赤になった。
「エゲレス、ロシヤ、どちらの手の者だ」
「・・・は、はう」
「何だ、早く答えろ」
「・・」
「む、早くしろ」
「・・・」
何度もやって、勇太のサディストキャラも磨きがかかってきた。嘉菜はパニックになってしまった。すると耳元に口を寄せた勇太の声が響いた。
「貴様、だんまりか。いい度胸だ。お仕置きが必要だな。口を開けろ・・」
「は、う、あ・・」。ドキドキが激しすぎて嘉菜のキャパをオーバーした。
本当はここで、勇太から口にクッキーを放り込まれる演出だった。
だけど嘉菜は、驚きすぎてて少し涙が出てしまった。
本当は嬉しいのに。
「ああっ、ごめんなさい。やりすぎました」
勇太が慌てて涙を拭いてくれた。
涙は止まったけど、顔が火照って勇太に心配された。すごく優しかった。
パラレル世界では珍しい恋愛に控えめな乙女。それまで己を律してきたのに、胸の高鳴りを止められなかった。
梓が、勇太やルナと一緒に謝りにきてくれた。
そのとき梓を正面から見て凝視してしまった。
リーフカフェでも何度か見た子。あれ?と感じた。
なぜか前から知っている気がした。
連れてきてくれた2人に羨ましがられた。話は盛り上がったけど、あの女の子が気になっていた。
5時に家に帰って父の部屋に入る許可をもらった。
父・陽介は部屋に同居、別居の娘計26人の写真を飾っているはず。
写真を見せてもらうと、一枚の写真にパラ高で見た勇太の嫁が写っていた。
そこで梓が父の誕生パーティーで見た異母姉妹の成長した姿だと確信した。
何も知らない嘉菜は、目の前が明るくなった。
もしかしたら、勇太に近付けると思った。
希望が湧いた。
嘉菜は、母親達が勇太に付き合いの制限をかけていることを知らなかった。
なぜ坂元家と没交渉なのかと思いつつも、梓が自分の異母姉妹であるうれしさの方が勝っていた。
父陽介は別居の家族のことも大事にしているのを知っている。
勇太に会いに行っても緊張して、ほとんど話せていない。
けれどこれからは、親族として繋がりがあるのだから堂々と勇太に会えると思った。
来月の自分の18歳の誕生日に来てもらいたい。会社のテーマソングを依頼して、交渉と称して会食するのもいい。
仕事絡みなら冷静に話せる。勇太と1対1で会話ができる。
初恋。少し暴走気味となった。
早速、夕食後に両親に坂元梓との顔繋ぎを頼もうと思った。
嘉菜は親に我が儘を言ったことがない。
母親から会社を引き継ぎ親姉妹を幸せにするため、小さな頃から努力してきた。時として自分を殺してきた。
それを当たり前と思えるほどの責任感もある。
親11人にも太鼓判を押された。
年上、年下に関係なく姉妹から認められてもなお、努力を怠らない。
経営を学ぶため、来年からアメリカ留学も決まっている。
「ねえお父さん、お母さん達、お願いがあるんです」
親の前で満面の笑顔を見せた。
親の期待に応えようと、いつも張り詰めて生きてきた嘉菜。めったに笑顔は見せなくなっていた。
最近では陽介や実母彩奈も、心配していたほどだ。
そんな嘉菜から笑顔のお願い。
親達は中身も聞かずにOKと返事した。
ところが・・
内容を聞いた父陽介、生みの母彩奈、他の母親も気まずい顔をした。
問うと、葉子、梓のラインだけは、間門家と溝がある。勇太個人に関しては縁切り状態だという。
辛うじて父陽介だけが葉子、梓と縁を繋いでいた。
そういえば父親の誕生パーティーでさえ4~5年は梓を見た覚えがない。
きっと出席を断っている。
実母の彩奈が最終決断を下していると思う。何か事情があったのだろう。
だけど勇太を拒絶した間門家に妻の梓が怒っていないはずがないと考えた。
嘉菜が間門の家の人間だと知れば、勇太と梓の両方に嫌われると思ってしまった。
けれど自分は間門の次期当主。
解決策は簡単に浮かんだ。楽勝だ。
なかったことにすればいい。
自分を律することにした。
そして表情を消した。
だけど調べた時点では、自分と嫁の梓が異母姉妹だと知らなかった。
ネットでチェックしたときも梓を他人と思っていた。
名前に心当たりもない。幸せそうな梓を映像で見て、いいな~と思っただけ。
最後に見たのは5年前。ちょっと見たきりだから顔も一致しなかった。
勇太を見るだけで幸せだった。姉妹や学友が『推し』とかいう言葉を使っていた。
「私のも、それに該当するんでしょうか・・」
勉強の合間、ひとりで呟いて笑ったりしていた。
そして、パラ高文化祭に行ったとき、流れが変わった。
10月13日。パラ高文化祭2日目の海軍カフェを訪れた。リーフカフェで知り合った同じ高3の他校生2人組が誘ってくれた。
そこで思わぬ出来事が・・
突然始まった海軍サプライズの『貴様、それでも軍人か』系企画。
ネットで告知はあって、嘉菜も知っていた。
たまたまその時の客だった嘉菜の前に勇太、梓、ルナが白い詰め襟服で迫ってきた。
いきなり梓とルナに両脇を抱えられて立たされた。戸惑っていると、ルナが口火を切って寸劇が始まった。
「坂元大尉、こやつです」
「ほう、この女か」
「!!!あ、あの 」
「貴様が我が艦・蜃気楼に潜り込んだスパイだったか。なかなかの美人だな」
脳内で美人だな、だけ切り取った嘉菜が真っ赤になった。
「エゲレス、ロシヤ、どちらの手の者だ」
「・・・は、はう」
「何だ、早く答えろ」
「・・」
「む、早くしろ」
「・・・」
何度もやって、勇太のサディストキャラも磨きがかかってきた。嘉菜はパニックになってしまった。すると耳元に口を寄せた勇太の声が響いた。
「貴様、だんまりか。いい度胸だ。お仕置きが必要だな。口を開けろ・・」
「は、う、あ・・」。ドキドキが激しすぎて嘉菜のキャパをオーバーした。
本当はここで、勇太から口にクッキーを放り込まれる演出だった。
だけど嘉菜は、驚きすぎてて少し涙が出てしまった。
本当は嬉しいのに。
「ああっ、ごめんなさい。やりすぎました」
勇太が慌てて涙を拭いてくれた。
涙は止まったけど、顔が火照って勇太に心配された。すごく優しかった。
パラレル世界では珍しい恋愛に控えめな乙女。それまで己を律してきたのに、胸の高鳴りを止められなかった。
梓が、勇太やルナと一緒に謝りにきてくれた。
そのとき梓を正面から見て凝視してしまった。
リーフカフェでも何度か見た子。あれ?と感じた。
なぜか前から知っている気がした。
連れてきてくれた2人に羨ましがられた。話は盛り上がったけど、あの女の子が気になっていた。
5時に家に帰って父の部屋に入る許可をもらった。
父・陽介は部屋に同居、別居の娘計26人の写真を飾っているはず。
写真を見せてもらうと、一枚の写真にパラ高で見た勇太の嫁が写っていた。
そこで梓が父の誕生パーティーで見た異母姉妹の成長した姿だと確信した。
何も知らない嘉菜は、目の前が明るくなった。
もしかしたら、勇太に近付けると思った。
希望が湧いた。
嘉菜は、母親達が勇太に付き合いの制限をかけていることを知らなかった。
なぜ坂元家と没交渉なのかと思いつつも、梓が自分の異母姉妹であるうれしさの方が勝っていた。
父陽介は別居の家族のことも大事にしているのを知っている。
勇太に会いに行っても緊張して、ほとんど話せていない。
けれどこれからは、親族として繋がりがあるのだから堂々と勇太に会えると思った。
来月の自分の18歳の誕生日に来てもらいたい。会社のテーマソングを依頼して、交渉と称して会食するのもいい。
仕事絡みなら冷静に話せる。勇太と1対1で会話ができる。
初恋。少し暴走気味となった。
早速、夕食後に両親に坂元梓との顔繋ぎを頼もうと思った。
嘉菜は親に我が儘を言ったことがない。
母親から会社を引き継ぎ親姉妹を幸せにするため、小さな頃から努力してきた。時として自分を殺してきた。
それを当たり前と思えるほどの責任感もある。
親11人にも太鼓判を押された。
年上、年下に関係なく姉妹から認められてもなお、努力を怠らない。
経営を学ぶため、来年からアメリカ留学も決まっている。
「ねえお父さん、お母さん達、お願いがあるんです」
親の前で満面の笑顔を見せた。
親の期待に応えようと、いつも張り詰めて生きてきた嘉菜。めったに笑顔は見せなくなっていた。
最近では陽介や実母彩奈も、心配していたほどだ。
そんな嘉菜から笑顔のお願い。
親達は中身も聞かずにOKと返事した。
ところが・・
内容を聞いた父陽介、生みの母彩奈、他の母親も気まずい顔をした。
問うと、葉子、梓のラインだけは、間門家と溝がある。勇太個人に関しては縁切り状態だという。
辛うじて父陽介だけが葉子、梓と縁を繋いでいた。
そういえば父親の誕生パーティーでさえ4~5年は梓を見た覚えがない。
きっと出席を断っている。
実母の彩奈が最終決断を下していると思う。何か事情があったのだろう。
だけど勇太を拒絶した間門家に妻の梓が怒っていないはずがないと考えた。
嘉菜が間門の家の人間だと知れば、勇太と梓の両方に嫌われると思ってしまった。
けれど自分は間門の次期当主。
解決策は簡単に浮かんだ。楽勝だ。
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自分を律することにした。
そして表情を消した。
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