モブ顔の俺が男女比１対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

189 医療の進歩の分野が違うパラレル世界

梓の異母姉妹でもある間門由乃が、血液の大変な病気にかかっていた。

勇太の前世なら、かなり際どい病気。ほんの50年前までは、ほぼ助からないと言われていた。

勇太はあせった。

「勇太君、心配してくれるのはありがたいけど落ち着いて」
「け、けど、悪性って・・」

由乃を生んだ香里奈さんが、説明してくれた。条件さえ満たせば、現代医療を持って完治する。

入院は放射線治療をせずに済んだ場合は最短で２か月。

香里奈は大丈夫と言いながら、すごく不安な顔。勇太が知りたい話でもあるし、話せば意外と落ち着いたりする。

勇太は最小限の相づちを打ちながら、香里奈の話を聞いた。


こちらの世界では血液の病気に関しては、勇太の前世よりも格段に研究が進んでいた。

理由はふたつ。どちらも男女比が狂ったことが影響している。

①まず、血液自体の研究が進んでいる。

それは男女比１対12だから。同じ男子に起因する異母姉妹が沢山いる世界。

パラレル世界の中世ヨーロッパ貴族、各国の小さな村で近親婚の形が増えてしまった。

ヨーロッパの近親婚で有名なハプスブルク家で起こった、遺伝子的脆弱化のようなことが各地で起こった。

なので原山良作の村でやっていたように、離れた村と提携した遺伝子的管理を行う地域も出てきた。

女性による地位が低い男子の支配である。

拘束されて種馬にされた男子からしたら最悪な形。

でも管理することで、ひとりの男子から起因する兄妹や従姉弟で結婚することを避けられた。

さらに疫病発生から何年たっても、男女比が１対１に戻ることがなかった。

なので、体の中のどこかに男女比１対12の因子が組み込まれたと考える人が出てきた。

それに合わせて、遺伝子工学の元となる理論も早くに確立。試行錯誤する研究者も出始めた。

パラレル世界では、人類存続のために解体学が急速に発展した。

こちらの世界でも顕微鏡が発明された。

だけど疫病の影響で１７2１年と勇太の前世より40年ほど遅い。工学に強い男子が減ったせいで、こちらの技術は発達が遅い。

そこから血液の成分を分析し、今でも男女比１対１に戻す方法が探られている。

研究者の数は、勇太には分からないが元の世界の２・４倍もいる。

なので、血液型のさらに先の区分けも勇太前世よりも細分化されている。


②これは血の病気が男子の方が多いから。

そう言われても勇太には今更比較できない。しかし、この世界の男子が重病にかかる割合だけで見ると、明かに血液の病気が発症率が高い。

男女比１対12では、種の存続のために男子を死なせてはならない。

ひどい話では男子１人の重婚家庭で女子１人の病気は、家庭の存続に大きな影響はない。女の人には、ホントに申し訳ない。

しかし男子１人、特に原山良作や間門陽介のように妻２桁の男子が、若くして倒れていたら、何十人という子供が産まれてこなくなる。

２人は合わせて66人の子供がいる。

だから男性医療の専門家もいる。超エリートといわれる。

もちろん、男子との婚姻率は高い。

研究の初期段階では、血液の病気には、血縁者からの血を輸血する方法が考えられた。

失敗を重ねて、A、B、AB、Oの４つの血液型以外にも『型』があることが早くから知られた。

パラレル日本で研究が本格化したのは昭和30年代後半だけど、外国では20世紀初頭から行われていた。

「だから、適合した上でシンクロ率が高い人から骨髄移植さえできれば、早ければ４ヶ月で完治状態に持っていける」

「早い・・」

勇太は、前世で難病になった。だから生き残りたくてネット上の医師による最新報告なども探していた。

骨髄移植、血清治療、ステロイド製剤などなど、そのうち自分にも適する治療法ができないかと、発症から２年間は調べまくっていた。

やがて、あきらめたが・・


骨髄移植という言葉を聞いて、前世でも血液の病気には有効な治療法だと知っていた。

それがパラレル世界では数歩先を行っているなら、由乃は治るはず。姉妹が25人もいるし、ドナーになれる人が簡単に見つかる可能性がある。

希望が持てると思った勇太だった。