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198 男子の全開サポートが正解だと限らない世界
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12月12日。
純子&風花のCDが発売される日が来た。
発売イベントをパラレル駅近くの大きな商業施設でやっている。
もちろん純子がメイン。そして相棒の風花はドナー手術をしたばかりで入院中。
ギタリストは風花の代わりの人がいる。
今日はCDに収録された3曲を披露する。
カオル、ルナ、梓のテーマソングとして勇太が作ったことになっている、前世パクり曲だ。
代役ギタリストさんは風花のテーマソング『ひとりじゃない』を弾きたいといったが、勇太も純子もこれだけは断った。
その曲は風花だけのもの。
人前では、風花がギターを奏でて勇太か純子が歌う。それ以外の形は取っていない。
今回の勇太は歌わない。それを言うと300人くらい集まってくれたお客さんから残念そうな声がもれた。
「ええー、勇太君の演奏か歌声を聞きたかったな」
「期待してたのにー」
「ははは。今日の僕は純子達のサポートでーす。代わりにクッキーのプレゼントがありますので、よければ持って帰って下さーーい」
これはこれで沸いた。
けれど、希少の男子の勇太が歌えば、こんな面倒なことをしなくてもウケるのは間違いなし。
では、なぜこの形にしたか。
これは伊集院君にダメ出しをされたから。
最初にショッピングモールで風花の代役を務めたあと、伊集院君と学校で会った。
「勇太君、僕が強制することではないけど、あまり前面に出ない方がいい」
「え、そうなの?」
伊集院君の友情たっぷりな、素直で大切なアドバイスだった。
ダメ出しの理由は風花のため。居場所がなくなったり、ヘイトが集まったりしないため。
勇太がショッピングモールで頑張りすぎたから、純子&風花は純子しかいないのに盛り上がりすぎた。
「勇太君、きついことを言うけど、女の子の立場を考えてあげないと。僕ら男子は、女子12人に対して1人しかいない。だから女子の代役をすればウケる。だけど、相手が大事な人なら、その後を考えて動くべきだよ」
「・・あ、そうだった」
人前で気分よく歌った勇太。純子やルナと場を盛り上げて風花不在で空いた穴を塞いだつもりだった。
けれど純子&風花のダブルキャストが本来の姿だったことを考えると、伊集院君から見たら不合格なのだ。
風花の必要性を、見に来た人達に感じさせなくしてしまった。
勇太は、1回目の助っ人行動は『助っ人』としては大失敗だったと自覚した。
ここは女子主導の世界。男子は一時のカンフル剤になれるけど、大きな問題を根本から解決する力がない世界。
だから、ハイスペックであっても伊集院君が最低限しか前に出ないのだと勇太は気付いた。
勇太との友情が絡むときだけが別。そこは素直に17歳の男子なれるのだ。
勇太は立ち上がって、素直に頭を下げた。
「1回目で教えてくれてありがとう、伊集院君。今度から大事なことを頭に入れて行動するよ」
「勇太君、意見を聞いてくれてありがとう。僕は仲間のために頑張る君を応援しているからね」
伊集院君も立ち上がって一歩近付いた。勇太と握手した。
『握手じゃなくて、ハグだろ』。クラスの腐った女子から、小さな声が聞こえてきた。
◆
そしてもうひとつのダメ出しもきつかった。
問題の提起のようなものだから、勇太の未来の嫁・吉田真子や2年3組のクラスメイトも集まってきた。
ショッピングモールの勇太は、風花がドナーになったことを強調した。
周防風花は、いいことをした。間門由乃も助かりそうで、それはいい。
だけど普通の患者やドナーに比べたら恵まれすぎている。
由乃は間門家の力を使ってもらった。今回は大きな個人病院を動かしてスピード解決に持ち込んだ。
風花も色んなものを捨てることを覚悟したが、間門のツテと財力、そして勇太のサポートで大きく巻き返せる可能性がある。
彼女らが悪い訳ではない。周囲に恵まれた結果であり、非公式で少数の人しか知らなくても姉妹の絆がある。
だけど普通は、由乃と同じ病気の人は時間が足りず生存率が下がっていく。
今現在も、死の恐怖と戦いながらドナーを待っている人もいる。
伊集院君は、婚約者の関係で小児医療施設のボランティアなどにも関わることがある。多くはないけれど。辛い子供達も見ている。
その子達のことを考えると、今回の勇太の行動に賛同できない。
伊集院君は風花に今回の問題を真っ先に相談された。由乃と風花が名乗れない異母姉妹というのも知った。
だからサポートとアドバイスに徹している。
今回は、姉妹と公に言えない部分がマイナスに働く。
風花には、ドナーに応じず歌手として売り出す選択肢があった。それは瞬間最大風速は激しいけど、未来が不確定な道。
対してドナー協力は目の前の御馳走は消える。代わりに『マカド』という企業が長くバックに付いてくれる。なにせ副社長と専務の間に生まれた娘を助けるのだから。
利益目的。
孤高感、陰があるイメージに人気者出ている風花。余計なヘイトが集まる可能性もある。
「ごめんね勇太君、きついことを言って」
「いや、それを言ってくれなかったら、俺は無神経な善意を垂れ流してたと思う」
なので伊集院君は、本日の純子&風花のCD発売記念イベントにも顔を出さない。他も加わらない。
本音は勇太が絡むから、一緒にお助けマンをやってみたかった。
クリスマスの子供向けチャリティーイベントだけは、風花の代役かサポートになる勇太らとともに参加する。
事情のある子供達を招く。だからプレゼントを用意する。
伊集院君は優しきスーパーマンなのだ。
純子&風花のCDが発売される日が来た。
発売イベントをパラレル駅近くの大きな商業施設でやっている。
もちろん純子がメイン。そして相棒の風花はドナー手術をしたばかりで入院中。
ギタリストは風花の代わりの人がいる。
今日はCDに収録された3曲を披露する。
カオル、ルナ、梓のテーマソングとして勇太が作ったことになっている、前世パクり曲だ。
代役ギタリストさんは風花のテーマソング『ひとりじゃない』を弾きたいといったが、勇太も純子もこれだけは断った。
その曲は風花だけのもの。
人前では、風花がギターを奏でて勇太か純子が歌う。それ以外の形は取っていない。
今回の勇太は歌わない。それを言うと300人くらい集まってくれたお客さんから残念そうな声がもれた。
「ええー、勇太君の演奏か歌声を聞きたかったな」
「期待してたのにー」
「ははは。今日の僕は純子達のサポートでーす。代わりにクッキーのプレゼントがありますので、よければ持って帰って下さーーい」
これはこれで沸いた。
けれど、希少の男子の勇太が歌えば、こんな面倒なことをしなくてもウケるのは間違いなし。
では、なぜこの形にしたか。
これは伊集院君にダメ出しをされたから。
最初にショッピングモールで風花の代役を務めたあと、伊集院君と学校で会った。
「勇太君、僕が強制することではないけど、あまり前面に出ない方がいい」
「え、そうなの?」
伊集院君の友情たっぷりな、素直で大切なアドバイスだった。
ダメ出しの理由は風花のため。居場所がなくなったり、ヘイトが集まったりしないため。
勇太がショッピングモールで頑張りすぎたから、純子&風花は純子しかいないのに盛り上がりすぎた。
「勇太君、きついことを言うけど、女の子の立場を考えてあげないと。僕ら男子は、女子12人に対して1人しかいない。だから女子の代役をすればウケる。だけど、相手が大事な人なら、その後を考えて動くべきだよ」
「・・あ、そうだった」
人前で気分よく歌った勇太。純子やルナと場を盛り上げて風花不在で空いた穴を塞いだつもりだった。
けれど純子&風花のダブルキャストが本来の姿だったことを考えると、伊集院君から見たら不合格なのだ。
風花の必要性を、見に来た人達に感じさせなくしてしまった。
勇太は、1回目の助っ人行動は『助っ人』としては大失敗だったと自覚した。
ここは女子主導の世界。男子は一時のカンフル剤になれるけど、大きな問題を根本から解決する力がない世界。
だから、ハイスペックであっても伊集院君が最低限しか前に出ないのだと勇太は気付いた。
勇太との友情が絡むときだけが別。そこは素直に17歳の男子なれるのだ。
勇太は立ち上がって、素直に頭を下げた。
「1回目で教えてくれてありがとう、伊集院君。今度から大事なことを頭に入れて行動するよ」
「勇太君、意見を聞いてくれてありがとう。僕は仲間のために頑張る君を応援しているからね」
伊集院君も立ち上がって一歩近付いた。勇太と握手した。
『握手じゃなくて、ハグだろ』。クラスの腐った女子から、小さな声が聞こえてきた。
◆
そしてもうひとつのダメ出しもきつかった。
問題の提起のようなものだから、勇太の未来の嫁・吉田真子や2年3組のクラスメイトも集まってきた。
ショッピングモールの勇太は、風花がドナーになったことを強調した。
周防風花は、いいことをした。間門由乃も助かりそうで、それはいい。
だけど普通の患者やドナーに比べたら恵まれすぎている。
由乃は間門家の力を使ってもらった。今回は大きな個人病院を動かしてスピード解決に持ち込んだ。
風花も色んなものを捨てることを覚悟したが、間門のツテと財力、そして勇太のサポートで大きく巻き返せる可能性がある。
彼女らが悪い訳ではない。周囲に恵まれた結果であり、非公式で少数の人しか知らなくても姉妹の絆がある。
だけど普通は、由乃と同じ病気の人は時間が足りず生存率が下がっていく。
今現在も、死の恐怖と戦いながらドナーを待っている人もいる。
伊集院君は、婚約者の関係で小児医療施設のボランティアなどにも関わることがある。多くはないけれど。辛い子供達も見ている。
その子達のことを考えると、今回の勇太の行動に賛同できない。
伊集院君は風花に今回の問題を真っ先に相談された。由乃と風花が名乗れない異母姉妹というのも知った。
だからサポートとアドバイスに徹している。
今回は、姉妹と公に言えない部分がマイナスに働く。
風花には、ドナーに応じず歌手として売り出す選択肢があった。それは瞬間最大風速は激しいけど、未来が不確定な道。
対してドナー協力は目の前の御馳走は消える。代わりに『マカド』という企業が長くバックに付いてくれる。なにせ副社長と専務の間に生まれた娘を助けるのだから。
利益目的。
孤高感、陰があるイメージに人気者出ている風花。余計なヘイトが集まる可能性もある。
「ごめんね勇太君、きついことを言って」
「いや、それを言ってくれなかったら、俺は無神経な善意を垂れ流してたと思う」
なので伊集院君は、本日の純子&風花のCD発売記念イベントにも顔を出さない。他も加わらない。
本音は勇太が絡むから、一緒にお助けマンをやってみたかった。
クリスマスの子供向けチャリティーイベントだけは、風花の代役かサポートになる勇太らとともに参加する。
事情のある子供達を招く。だからプレゼントを用意する。
伊集院君は優しきスーパーマンなのだ。
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