205 / 320
205 この世界の普通の女の子◆買い物からの
しおりを挟む
吉田真子が誕生日に自分の歌を作ってもらって感無量だ。
勇太の前世のハッピバースデーを歌っただけだが、当然、この世界にはなかった。
ケーキを前にして祈ることはあっても、歌うことはないそうだ。少なくともパラレル日本では。
自分のために作ってくれたと思った真子は喜んだ。
ルナ、梓、カオルの3人には、いまだ及ばない。だけど勇太が自分に歩み寄る努力をしてくれると感じた。
「委員長、そろそろ出ようか」
「はい」
真子はルナに厳命されている。勇太が何をしてくれても、遠慮とかして余計な時間を使うなと。
希少な男子とは思えない尽くし方をしてくれるけど、ただ幸せを感じろと。
20分、勇太と手を繋いで歩いた。
視線は痛い。スマホも向けられている。同性からのヘイトを感じると、すぐに勇太がかばってくれる。
肩を抱かれて、そのたびに意識がとぷ。
原礼留駅を過ぎて、大きなデパートの陰にあるお店に入った。
勇太はルナと梓の誕生日にもアクセサリーを送っている。
今回も何か身に付けるものを贈ろうと思った。
「委員長ごめん。プレゼントを用意できてなかったから、この中から気に入ったものを探そう」
「あ、は、はい」
真子自身、おしゃれとは無縁。長女として、たくさんの妹の面倒を見る生活で培った家事スキルは高い。
勇太と急接近してから、応援してくれる妹達にファンデーションは塗られているがアクセサリーなど持っていない。
勇太には素直になれる。
「私、詳しくない。勇太君が選んでくれるものなら・・」
「うん、一緒に探そう。誕生石なんて、どうだろう」
「えと・・、すごい楽しみ」
真子の頬が緩んだ。
この世界の、12月の誕生石はダイヤモンド。勇太はいくつかの品物とにらめっこして、その一種類を選んだ。
その頃には店内外に女の子が増えている。
再び、真子の緊張マックス。
店員さんに聞かれた。
「彼氏さん、ネックレスのチェーンの長さが、色々とありますよ。合わせてみてあげては?」
気が利かない勇太に、店員さんからのアシスト?だ。
「はい、それじゃ、ここで」
勇太は真子の返事も聞かずに、椅子に座らせて後ろに回った。
「じっとしてて、委員長」
勇太の声がダイレクトに耳に響き、慣れていない勇太が自分の首に手を回すけど指が首に当たる。
最初は短いチェーン。ギリギリ届くが、うまく付けられない。勇太の指が真子の首を這い続ける。
「ごめん、もうちょっとだから」
ざわざわしている。
「あれ?委員長、こことこれをくっ付けるんだよね。見て」
夢中になった勇太が、後ろから真子の首に手を回して、ネックレスの継ぎ目を見せてくる。
真子が後ろから抱き締められて、右耳に勇太の唇が当たりそうになっている。
首筋を愛撫されながら右耳を甘噛みされている感じ。同性からの羨望の眼差し。そして向けられるスマホ。
顔が燃えるように熱い。
「はう・・」
はっきり言おう。真子は昇天してしまった。
顔は真っ赤、下はびしょびしょ。これ、な~んだ?
本日、何度目かとなる気絶状態。
『あの顔・・』
『気絶だよね』
『婚約者なのにウブすぎだよね・・』
見ているギャラリーも驚いている。
後ろに倒れてきたけれど、勇太がしっかりキャッチ。
ようやく買い物が終わった。
気を取り戻した真子は、満面の笑顔だ。
「ありがとう勇太君。私、嬉しすぎです」
やっと、にっこりと微笑むことができた真子。
午後7時半。
「さ~て、あとは晩御飯だね」
「ああ、それなんですが・・」
これだけでも十分に勇太を堪能できた真子。
「勇太君のファミリーとして周りに認めてもらえたし、その初誕生日はみんなでお祝いしてもらいたいな・・なんて」
ファミリーのグループにLIMEにチャットすると、みんな近くにいた。
真子が嘉菜と最初にご飯を食べたメキシカンレストランに行きたいと言った。
それをLIMEに放り込むと、みんな来ると返事が来た。
嘉菜、ルナ、カオル&梓は当たり前。
風花のお見舞いから帰ってきた純子&麗子も合流する。
なぜか、まだ勇太の嫁枠ではない長谷川三姉妹も参加だ。
キヨミ『乱入』
チャットでも口数が少ないキヨミだ。
◆
勇太と真子で、先にお店に入った。サルサソースたっぷりのタコスをつまんでいる。
真子は、ほんの数時間だけど、メンタル的には怒涛の誕生日だったと思い返している。
にへへ、と頬を緩めながら、勇太が辛いタコスを口に入れるところを見ている。
勇太は暖房が効いた店内で薄いシャツにボタン2個明け。
そして勇太が、真子の左肩が触れあうくらいの距離で座っている。
「これ辛い!」
「え?」
勇太が唇を尖らせている。
「俺の唇、腫れてない?」
「どれど・・れ・・」
魔が差した。いや、嫁枠だから問題ない。思考の乱流。
ちゅっ。真子も唇を尖らせると、柔らかなものが触れた。
「あっ・・ははは」勇太が笑ってくれた。
真子はタコスを食べてない。なのにサルサソースが唇に付いていて、ジンジンしている。
頬が熱い。唇も熱い。
店内にいる女の人達が、ほ~う、と言っている。
勇太と自分の唇が触れ合った。大胆になれた。
ジンジンする。
自分からしたくせに、真子は意識を手放した。
ファミリーのみんながお店に来たときの真子は、だらしない顔で気絶していた。
真子はスーパーマーケットでサルサソースを見るだけで、しばらくは悶えることになる。
勇太の前世のハッピバースデーを歌っただけだが、当然、この世界にはなかった。
ケーキを前にして祈ることはあっても、歌うことはないそうだ。少なくともパラレル日本では。
自分のために作ってくれたと思った真子は喜んだ。
ルナ、梓、カオルの3人には、いまだ及ばない。だけど勇太が自分に歩み寄る努力をしてくれると感じた。
「委員長、そろそろ出ようか」
「はい」
真子はルナに厳命されている。勇太が何をしてくれても、遠慮とかして余計な時間を使うなと。
希少な男子とは思えない尽くし方をしてくれるけど、ただ幸せを感じろと。
20分、勇太と手を繋いで歩いた。
視線は痛い。スマホも向けられている。同性からのヘイトを感じると、すぐに勇太がかばってくれる。
肩を抱かれて、そのたびに意識がとぷ。
原礼留駅を過ぎて、大きなデパートの陰にあるお店に入った。
勇太はルナと梓の誕生日にもアクセサリーを送っている。
今回も何か身に付けるものを贈ろうと思った。
「委員長ごめん。プレゼントを用意できてなかったから、この中から気に入ったものを探そう」
「あ、は、はい」
真子自身、おしゃれとは無縁。長女として、たくさんの妹の面倒を見る生活で培った家事スキルは高い。
勇太と急接近してから、応援してくれる妹達にファンデーションは塗られているがアクセサリーなど持っていない。
勇太には素直になれる。
「私、詳しくない。勇太君が選んでくれるものなら・・」
「うん、一緒に探そう。誕生石なんて、どうだろう」
「えと・・、すごい楽しみ」
真子の頬が緩んだ。
この世界の、12月の誕生石はダイヤモンド。勇太はいくつかの品物とにらめっこして、その一種類を選んだ。
その頃には店内外に女の子が増えている。
再び、真子の緊張マックス。
店員さんに聞かれた。
「彼氏さん、ネックレスのチェーンの長さが、色々とありますよ。合わせてみてあげては?」
気が利かない勇太に、店員さんからのアシスト?だ。
「はい、それじゃ、ここで」
勇太は真子の返事も聞かずに、椅子に座らせて後ろに回った。
「じっとしてて、委員長」
勇太の声がダイレクトに耳に響き、慣れていない勇太が自分の首に手を回すけど指が首に当たる。
最初は短いチェーン。ギリギリ届くが、うまく付けられない。勇太の指が真子の首を這い続ける。
「ごめん、もうちょっとだから」
ざわざわしている。
「あれ?委員長、こことこれをくっ付けるんだよね。見て」
夢中になった勇太が、後ろから真子の首に手を回して、ネックレスの継ぎ目を見せてくる。
真子が後ろから抱き締められて、右耳に勇太の唇が当たりそうになっている。
首筋を愛撫されながら右耳を甘噛みされている感じ。同性からの羨望の眼差し。そして向けられるスマホ。
顔が燃えるように熱い。
「はう・・」
はっきり言おう。真子は昇天してしまった。
顔は真っ赤、下はびしょびしょ。これ、な~んだ?
本日、何度目かとなる気絶状態。
『あの顔・・』
『気絶だよね』
『婚約者なのにウブすぎだよね・・』
見ているギャラリーも驚いている。
後ろに倒れてきたけれど、勇太がしっかりキャッチ。
ようやく買い物が終わった。
気を取り戻した真子は、満面の笑顔だ。
「ありがとう勇太君。私、嬉しすぎです」
やっと、にっこりと微笑むことができた真子。
午後7時半。
「さ~て、あとは晩御飯だね」
「ああ、それなんですが・・」
これだけでも十分に勇太を堪能できた真子。
「勇太君のファミリーとして周りに認めてもらえたし、その初誕生日はみんなでお祝いしてもらいたいな・・なんて」
ファミリーのグループにLIMEにチャットすると、みんな近くにいた。
真子が嘉菜と最初にご飯を食べたメキシカンレストランに行きたいと言った。
それをLIMEに放り込むと、みんな来ると返事が来た。
嘉菜、ルナ、カオル&梓は当たり前。
風花のお見舞いから帰ってきた純子&麗子も合流する。
なぜか、まだ勇太の嫁枠ではない長谷川三姉妹も参加だ。
キヨミ『乱入』
チャットでも口数が少ないキヨミだ。
◆
勇太と真子で、先にお店に入った。サルサソースたっぷりのタコスをつまんでいる。
真子は、ほんの数時間だけど、メンタル的には怒涛の誕生日だったと思い返している。
にへへ、と頬を緩めながら、勇太が辛いタコスを口に入れるところを見ている。
勇太は暖房が効いた店内で薄いシャツにボタン2個明け。
そして勇太が、真子の左肩が触れあうくらいの距離で座っている。
「これ辛い!」
「え?」
勇太が唇を尖らせている。
「俺の唇、腫れてない?」
「どれど・・れ・・」
魔が差した。いや、嫁枠だから問題ない。思考の乱流。
ちゅっ。真子も唇を尖らせると、柔らかなものが触れた。
「あっ・・ははは」勇太が笑ってくれた。
真子はタコスを食べてない。なのにサルサソースが唇に付いていて、ジンジンしている。
頬が熱い。唇も熱い。
店内にいる女の人達が、ほ~う、と言っている。
勇太と自分の唇が触れ合った。大胆になれた。
ジンジンする。
自分からしたくせに、真子は意識を手放した。
ファミリーのみんながお店に来たときの真子は、だらしない顔で気絶していた。
真子はスーパーマーケットでサルサソースを見るだけで、しばらくは悶えることになる。
41
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる