モブ顔の俺が男女比１対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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224 勇太は『妹の兄』としては目が肥えた男

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12月29日。開店前のリーフカフェ。

勇太は異母兄として、メイちゃんを好きなゲンジを応援するか迷っている。

兄が妹の思い出を語る歌をゲンジに歌わせてみる。３か月後のメイちゃんの卒業式。

ゲンジがひとりでやれないなら、勇太から贈る。ゲンジには介入させない。

護衛で付いてきたゲンジの姉３人にも協力させる。

もう一度勇太が歌って、スマホ撮影。姉の１人がキーボードを弾けるので演奏できそうだという。

特訓するでも、やめるでもいいと勇太は言った。

ハッキリしないから好感度は下がった。

◆
リーフカフェの開店が近付き、一度はゲンジ達を外に出した。そして１時間後に再び来いと言った。

そして開店。ゲンジら４人が再び現れた。

「おいゲンジ、こっち」
「は、はい！」

カフェの奥の、たまにステージになるスペースに呼ばれた。

ゲンジとその姉３人は、冬木君呼びからゲンジ呼びになった勇太にビビった。

これは勇太的には当たり前。

勇太は『お兄ちゃん視線』に切り替わっている。

前世では勇太の妹は５歳下の梓だった。その梓を大切にしていた。

梓が好きになったのは勇太の親友の今川薫。

巨漢で柔道が強くて、勇太よりも頭がいい文武両道タイプ。その上に歌もうまかった。そして梓を優しく受け入れた。

だから前世を去る前に梓を薫に託せた。

勇太は『妹』の恋愛事情に目が肥えているのだ。

だから、今世の妹メイちゃんの彼氏候補に厳しい目を向けている。

はっきり言って目の前のゲンジが頼りない。

勇太自身がハイスペックでなかったし、多くはゲンジに求めない。

だけど今のゲンジがメイちゃんだけを見て求愛すると、確実にメイちゃんにヘイトが集まる。

この男女比１対12世界では女子が自分で戦って愛を勝ち取る。その前提条件は、女性から男子にアプローチするから。

現在、メイちゃんに、その気はない。

メイちゃんをゲンジが守る気もないのに気持ちを垂れ流されたら、迷惑なだけである。

そうなるなら、考えていることを実行する。

メイちゃんの笑顔が可愛いいと勇太に話す伊集院君に、メイちゃんのことを相談しようかと思う。

メイちゃんの気持ちを確かめていないのに悪いけど、兄としては妹を守れる相手が一番なのだ。

ただゲンジも放っておけない。ゲンジに少なくない恩も感じる。

勇太に失恋して堅くなったメイちゃんの心が、目の前の情けない男子のお陰で柔らかくなった気もする。

けれど今のゲンジはダメ。

メイちゃんは、勇太ファミリーの一員だと思われている。ヘイトもたまにあるけど、伊集院君が気にかけているから実害はない。

それに関して勇太は責任を持って守る気でいる。

勇太、伊集院君を相手に目立ったメイちゃんが冬木ゲンジを独占すると、何かしら悪影響があるだろうというのが梓の意見。

たとえゲンジの片想いから始まっていても、悪意を食らうのはメイちゃん。

発端を作ったのが勇太自身だとか今更反省する気もない。

今のメイちゃんを守れない人間、すなわちゲンジを認めるわけにはいかない。

完全にお兄ちゃんモードに入っている。

複雑なのだ。

ダメと思っていても、男女比１対12の世界でモテ始めているのに、モブ顔の異母妹だけを見てくれるところは好感が持てる。

せめて最初に度胸を付けさせたい。

リーフカフェの中は、早くも賑わっている。

カフェのお客さんは20人。テイクアウトの人も並んでいる。

「ゲンジ、カオルのテーマソングは歌えるか？」
「はい、坂元さん、あの歌が一番好きです」

「俺のことは勇太でいい。歌え」

「は？」

いきなり勇太はギターを持った。

一瞬、お客さんがザワッとして拍手した。それは、たまに勇太がやるミニライブ。

普段から風花と始めたりして好評だ。

「みなさん、下手なギターですけどいいですか？」

「オッケー」
「勇太君のギターも味かあって好きだよ～」
「ゲリラライブだ。ラッキー」

「じゃあ今日は、趣向を変えて、新しい知り合いに歌ってもらいます」

「え？」

ゲンジと姉達が声を出した。

「１曲目のメインボーカルは冬木ゲンジ、コーラスはそのお姉さん達です。ゲンジ、自分のタイミングで始めろ」

♩♪♪♩♪

勇太は素人だけど、それなりに上達したギターを奏で始めた。

「え、え、え」

ゲンジは固まっている。

「伊集院君は、ここでいきなり歌ってくれたぞ。お前はどうする、リタイアか？」

ゲンジは勇太の方を見た。勇太の目が優しくない。

「・・あ、俺って坂元さんが怒ることやってる」

馬鹿ではなかった。

まともに他人と話せなかった自分の言葉を途切れさせず、楽しく会話させてくれた初めての女の子。

そのメイちゃんを好きになった。

メイちゃんは注目されている。

彼女でもないのに、彼女になる気もないのに、ヤマトモタロウから守ってくれた。

そのせいでヤマモトの彼女３人、その親しい女子から睨まれている。

問題が起こらないのは、メイちゃんを守る人達に坂元勇太、その友人の伊集院光輝がいるから。

その２人は中学生から見ても脅威だ。

坂元勇太の方は、嫁や婚約者を傷つけた男子に２度も殴りかかっている。

新しい嫁を守るために、経歴に傷を付けてまで調停で敗けを選んだ。

そんな人間が、可愛がっている・・恐らく本当の妹を、守らないはずがない。

勇太は歌えとだけ言った。

けれどゲンジからしたら、勇太が応援してくれるか、見放すか、一発勝負で試していると感じている。

実際にヤマモトとトラブルになりかけたときのゲンジは腰砕けだった。

それは勇太に伝わっているのかも知れない。

男女比１対12でも女の人を大切にする勇太が、『２度目』を許すとは思わない。

ゲンジは覚悟もへったくれもない。

「う、歌います」

初めて勇気を振り絞った。

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