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225 あきらめなければ助けてやる
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ゲンジは勇太のテストを受ける気分で、歌おうとしている。
リーフカフェの中。開店から1時間弱。
それでもテーブル席には20人が座り、テイクアウトの商品を買いに来た12人のお客さんもいる。
女性からの注目を一斉に浴びている。
頭が真っ白になった。
最近は、それなりにクラスや学校で注目されている。清潔にしたら、希少な男子ということで声をかけられる。
かなり人と話せるようになった。
けれど進歩していないとゲンジは思った。
メイちゃんに助けられたとき、ヤマモトタロウに睨まれて固まった。
ヤマモトはメイちゃんの印象を良くするためなのか、行事の時に頼まれれば教室の前に出て挨拶するようになった。
ゲンジも2学期の終わりに、ひと言を頼まれたが尻込みした。
改めて、そういうものから逃げてきた自分を後悔する。
♩♪♪♪♩♪♪♩
とっくに勇太のギターは前奏部分を終えている。そのまんま、もう3小節くらい先を弾いている。
ゲンジは声が出ない。メイちゃんと一緒に放課後に歌ってきたカオルのテーマソング。歌詞も完璧に覚えたのに、足がすくんでいる。
不合格だ。涙が出そうだ。
けれど勇太は何事もなかったかのように呼びかける。
「ほれゲンジ、落ち着け。次はうまく入れ。導入部分で合図する」
「え?」
「失敗したらやり直したいって言え。逃げるな。そしたら助ける」
♩♪♪♪♪♩♩♪♪
勇太は話ながら、適当に音を鳴らしている。お客さんも、そういう演出かと見ている。
勇太は今、この歌を贈ったカオルの顔を思い浮かべている。
「お姉さん達が目の前にいるけど、失敗しても誰もお前をとがめたりしない。おいゲンジ」
ゲンジは勇太の顔を見た。
「お前だけはメイちゃんの顔を思い浮かべろ」
「は、はい!」
パンッ、とギターの木の部分を勇太がたたいて鳴らした。
「♪♩♪あきらめない君は♪♪♩♪」
今度は歌えた。声は震えているゲンジ。声はまだ小さい。
だけど一小節ごとに音量は上がっていく。
歌はうまいけど素人レベル。ギターも普通。
スマホを向けたお客さんの大半は純子&風花の演奏も、ここで聞いている。レベルは数段落ちる。
けれど必死なゲンジの歌が、女性達の心に響く。
ゲンジは、目の前を気にしていない。メイちゃんの笑顔だけを思い浮かべている。
真剣に話を聞いてくれるメイちゃん。
震えながら目の前で庇ってくれたメイちゃん。
「♩♩僕は君の後ろ姿を♪♪♪♪」
サビの部分から、勇太も加わった。勇太の横でゲンジの姉3人も加わった。
ゲンジ姉達は、勇太の女神印な歌を直撃で浴びた。
この効果で高揚感マックスになり、姉3人の声に艶が乗った。
「♪♪♪♩頑張ろう♩♪♩₤」
お客さんから、惜しみ無い拍手が送られた。
たった1曲で、ゲンジは汗びっしょり。
だけど達成感はある。
姉3人を見ると顔が紅潮している。
「ゲンジ、もう1曲くらい、いっとくか?」
「・・はい。じゃあ、『泳ぐ君と僕とのバラッド』でお願いします」
「お、生意気なやつだな。もうリクエストか?」
あくまで厳しいお兄ちゃん目線。マウンテンゴリラだ。
「お願いします!」
それには答えず、勇太はイントロを弾き始めた。
♩♪♩♪♪♩♩
イントロに混じって、勇太の声が聞こえてきた。
ぼそっ「ギリ合格」
「・・・え?」
♪♩♪♪♪♪♪
「ほら、また歌い始めのとこ逃してるぞ」
「あ、すみません」
「どうする」
「もう一回トライさせて下さい」
「よっし、オッケー」
♪♪♩♪♪♪♪♩♩♪
メイちゃんは、冬季講座を受けていてリアルタイムで見ていなかった。
けれど休み時間、友人からタブレットで録画を見せられた。
歌い出す直前『お前だけはメイちゃんの顔を思い浮かべろ』『は、はい!』勇太とゲンジの声が入っていた。
ゲンジの気持ちは分かった。いや、もう知っていた。
正直、まだ勇太への恋心は消え去っていない。
それに自分が、再び希少な男子から好かれるなんて信じられなかった。だから戸惑っている。
この世界、成熟した女性なら迷わず飛び付くチャンスが来た。
けれどメイちゃんは、そこまで達観していない。
塾の廊下、友人に囲まれて顔を赤くしている。
いや、それ以上の問題が発生しているぞ、勇太。
東京に向かうリニアモーターカーのグリーン車。伊集院君が、配信された光景を見ている。
そして焦っている。
「ゆ、勇太君、僕と一緒に歌ったときより生き生きしていないかい・・。僕が一番の友達だよね」
返事をしない録画映像に向かって、必死に呼びかけている。
リーフカフェの中。開店から1時間弱。
それでもテーブル席には20人が座り、テイクアウトの商品を買いに来た12人のお客さんもいる。
女性からの注目を一斉に浴びている。
頭が真っ白になった。
最近は、それなりにクラスや学校で注目されている。清潔にしたら、希少な男子ということで声をかけられる。
かなり人と話せるようになった。
けれど進歩していないとゲンジは思った。
メイちゃんに助けられたとき、ヤマモトタロウに睨まれて固まった。
ヤマモトはメイちゃんの印象を良くするためなのか、行事の時に頼まれれば教室の前に出て挨拶するようになった。
ゲンジも2学期の終わりに、ひと言を頼まれたが尻込みした。
改めて、そういうものから逃げてきた自分を後悔する。
♩♪♪♪♩♪♪♩
とっくに勇太のギターは前奏部分を終えている。そのまんま、もう3小節くらい先を弾いている。
ゲンジは声が出ない。メイちゃんと一緒に放課後に歌ってきたカオルのテーマソング。歌詞も完璧に覚えたのに、足がすくんでいる。
不合格だ。涙が出そうだ。
けれど勇太は何事もなかったかのように呼びかける。
「ほれゲンジ、落ち着け。次はうまく入れ。導入部分で合図する」
「え?」
「失敗したらやり直したいって言え。逃げるな。そしたら助ける」
♩♪♪♪♪♩♩♪♪
勇太は話ながら、適当に音を鳴らしている。お客さんも、そういう演出かと見ている。
勇太は今、この歌を贈ったカオルの顔を思い浮かべている。
「お姉さん達が目の前にいるけど、失敗しても誰もお前をとがめたりしない。おいゲンジ」
ゲンジは勇太の顔を見た。
「お前だけはメイちゃんの顔を思い浮かべろ」
「は、はい!」
パンッ、とギターの木の部分を勇太がたたいて鳴らした。
「♪♩♪あきらめない君は♪♪♩♪」
今度は歌えた。声は震えているゲンジ。声はまだ小さい。
だけど一小節ごとに音量は上がっていく。
歌はうまいけど素人レベル。ギターも普通。
スマホを向けたお客さんの大半は純子&風花の演奏も、ここで聞いている。レベルは数段落ちる。
けれど必死なゲンジの歌が、女性達の心に響く。
ゲンジは、目の前を気にしていない。メイちゃんの笑顔だけを思い浮かべている。
真剣に話を聞いてくれるメイちゃん。
震えながら目の前で庇ってくれたメイちゃん。
「♩♩僕は君の後ろ姿を♪♪♪♪」
サビの部分から、勇太も加わった。勇太の横でゲンジの姉3人も加わった。
ゲンジ姉達は、勇太の女神印な歌を直撃で浴びた。
この効果で高揚感マックスになり、姉3人の声に艶が乗った。
「♪♪♪♩頑張ろう♩♪♩₤」
お客さんから、惜しみ無い拍手が送られた。
たった1曲で、ゲンジは汗びっしょり。
だけど達成感はある。
姉3人を見ると顔が紅潮している。
「ゲンジ、もう1曲くらい、いっとくか?」
「・・はい。じゃあ、『泳ぐ君と僕とのバラッド』でお願いします」
「お、生意気なやつだな。もうリクエストか?」
あくまで厳しいお兄ちゃん目線。マウンテンゴリラだ。
「お願いします!」
それには答えず、勇太はイントロを弾き始めた。
♩♪♩♪♪♩♩
イントロに混じって、勇太の声が聞こえてきた。
ぼそっ「ギリ合格」
「・・・え?」
♪♩♪♪♪♪♪
「ほら、また歌い始めのとこ逃してるぞ」
「あ、すみません」
「どうする」
「もう一回トライさせて下さい」
「よっし、オッケー」
♪♪♩♪♪♪♪♩♩♪
メイちゃんは、冬季講座を受けていてリアルタイムで見ていなかった。
けれど休み時間、友人からタブレットで録画を見せられた。
歌い出す直前『お前だけはメイちゃんの顔を思い浮かべろ』『は、はい!』勇太とゲンジの声が入っていた。
ゲンジの気持ちは分かった。いや、もう知っていた。
正直、まだ勇太への恋心は消え去っていない。
それに自分が、再び希少な男子から好かれるなんて信じられなかった。だから戸惑っている。
この世界、成熟した女性なら迷わず飛び付くチャンスが来た。
けれどメイちゃんは、そこまで達観していない。
塾の廊下、友人に囲まれて顔を赤くしている。
いや、それ以上の問題が発生しているぞ、勇太。
東京に向かうリニアモーターカーのグリーン車。伊集院君が、配信された光景を見ている。
そして焦っている。
「ゆ、勇太君、僕と一緒に歌ったときより生き生きしていないかい・・。僕が一番の友達だよね」
返事をしない録画映像に向かって、必死に呼びかけている。
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