モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

文字の大きさ
226 / 320

226 彼女になってほしい人がいる

しおりを挟む
12月29日のリーフカフェ。午前10時半過ぎ。

勇太のギターで冬木ゲンジが歌ったミニライブ。

ゲンジの姉3人も協力して4曲も披露した。

最後の曲、ルナのテーマソングを披露したときにはカフェの中が満タンになった。

「♪♩♪月が眠る♪♪♪静かな夜に♩♩♩♩」

♩♪♪♪♪♪

梓とルナのテーマソングを連続で歌い、拍手に次ぐ拍手だ。

「朝から聞いてもらって、ありがとうございま~す!」

勇太は頭を下げた。ゲンジも倣って礼をした。

「ほらゲンジ、俺らの下手なライブに拍手くれたお姉さんに何か言え」

「あ、あの、え~と、みなさんのお陰で、楽しく歌えました。あ、ありがとうございます」

ゲンジの中3スマイルに、お姉さん方の胸がキュンとした。


歌? レベルは低い。

だけど男子ボーカルと男子ギターは、リーフカフェならではのオリジナル。

男子がボーカルや楽器をひくハーレムバンドは、高校生や大学生がやっている。けれどまず、男子ひとりで女子多数の形。

男子が2人もいるバンドはごく少数。だって男女比1対12の上に人前で音楽をやれる男子は少ない。

先月、勇太&伊集院君で久々に歌ったときは土曜日の午後4時。カフェの周囲が不味いことになった。

今日はゲンジという新顔が加わっただけで盛況。午前中だけど冬休み中。高校生を中心にゲンジに注目が集まっている。

『新顔よ、ゲンジ君だって』
『勇太君プロデュースの男性歌手?』
『すごい、御披露目ライブに遭遇できたの?』
『もしかして、ここに伊集院君が加わる日も来るのかな』

勇太はゲンジに度胸を付けさせようとしただけ。

だけどゲンジの女受けが思ったより良くて、ちょっとどころではない反応がある。

勇太はカフェオーナー葉子の方を見た。親指を立てて『息子よ、グッジョブ』と言っている。

いきなり店は売上倍増だ。


勇太は、とりあえずゲンジ達にパイプ椅子を用意して店の隅に座らせた。

ゲンジのお姉さん達も頑張ってくれたし、カフェラテとゴブリンパンを用意。

そして3人のリクエストに応えて、クッキーのあ~ん、ぱくから頬ふにふにをしてあげた。

3人は子猫が目を細めたような笑顔になった。テイクアウトの行列に並んだ女性から羨ましそうな目で見られていた。

勇太は、カフェの女性客に囲まれるゲンジを見た。

「ゲンジ君だよね」
「はい」

「彼女は何人いるの?」
「お姉さんも立候補したいな」
「年上はアリ?」
「もう初セック●は済ませた?」

勇太はゲンジにグイグイいく女性客に驚きもするが、ルナに言わせるとこれが普通らしい。

「か、か、彼女はいません」

「え?」「そうなの?」「それじゃ・・」


ゲンジは言葉に詰まっている。だけど逃げたら、元に戻ると思った。

「す、すみません。彼女になって欲しい人はいます」

ゲンジは顔が真っ赤だ。本人からしたら、やっと言えた。

「あの、これから用事がありますので、すみません」

ゲンジは姉3人を促して帰るという。

「さかも・・いえ、勇太さん」

「ん? ゲンジ、どうした。ちっと待ってろ」

勇太は接客中だ。

「勇太君、ほらゲンジ君が呼んでるよ」

「いいんですよ、ミキさん。いつもカフェに来ていただくお客さんを優先して当然ですから」

「ええ~、嬉しいな~」

勇太の誠実な接客を学んでいたはずなのに、ゲンジは失敗した。

けれど、こういうところが自分と本当のモテ男の違いだと思った。

とりあえず自分にマイナス5点。そして女性客に謝った。

「は~い、ホットラテ入りま~す。で、どうしたゲンジ」

「こ、これからメイちゃんに会いに行きます」

いきなりゲンジの宣言。勇太は微笑んだ。

「おう、頑張ってこい」

「はい!」

ゲンジは店を出た。

メイちゃんと会って、何をするのかなんて聞かない。そこから先は本人達次第。

告白でもいい。何でもいい。今日のゲンジならメイちゃんが傷付かないことを考えて、接してくれると思える。

ミニライブ効果で店は忙しい。勇太は接客に集中し始めた。

伊集院君からLIMEが入っていた。

伊集院『ゲンジ君とは友達になったのかい?』

勇太『違うかな。あえて言うなら弟子?』

多忙な中で軽く返事したけど、伊集院君は再び動揺した。

「・・勇太君、友達と弟子は、どちらが上なんだい?」

◆◆
勢いが付いたゲンジは地元に戻る電車に乗っている。

護衛役の姉3人には、パラレル市で食事もせず帰ることを謝った。

だけど姉達は、勇太の頬ふにふに、出演料代わりのクッキー、ゴブリンパン、カフェの無料券を持たされご満悦だ。


ゲンジはとにかく今、メイちゃんに会いたい。

確かメイちゃんの塾は、今日は昼まで。終わったら会って欲しいとLIMEを入れた。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...