モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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235 続きのその後◇純子とタロウ君◇

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◇純子◇

「ごめん!」

ヤマモトタロウ君は、私の幼馴染みの勇太の話を振ったからって謝った。

「い、いえいえ、何の布石も置いてなかったし・・。私も話してなかったんだから、仕方ないって」

タロウ君は、私の顔を見て安心したと思う。

「そっか~、幼馴染みか」
「うん・・」


少し沈黙して、タロウ君が意外なことを口に出した。

「坂元君のこと、好きだったんだね・・。けど残念ながら坂元君と花木さんは付き合ってたんだよね」

「悪い?」
突然の無神経な物言いに、ちょっとむっとした。

けど、タロウ君は動じない。

「悪くない。むしろ、俺の状況と似てるとこあって共感したよ」
「共感?」

「覚えてないと思うけど、俺って幼馴染みの2人と一緒に高校に通ってたんだ」

「覚えてるよ。話題にならないから、どうしてだろうと思ってた」

「幼馴染みって男と女でさ・・俺・・女の方に告白する前に失恋した」

私と似たようなパターンだった。

彼の幼馴染みは山咲メイさんと、冬木ゲンジさん。

タロウ君に言わせると、メイさんがモブ顔でゲンジさんは顔まずまずでも陰キャ。

メイさんに気弱なゲンジさんがくっついてる感じだったそうだ。

ただゲンジさんは、小学生の時からメイさんだけ見ていた。

中学生までのタロウ君は、色々と世話を焼くメイさんが煩わしかった。

けれど小さな頃から一緒に遊んだゲンジさんも含め、2人に愛着はあった。

高校でタロウ君はモテ始めた。少し上から目線で幼馴染みに接したけど、メイさんの態度は変わらなかった。

つっけんどんにしても、熱があるときなど、辛いときほど気付いてくれた。

やがて、近くにいすぎて分からなかったメイさんの優しさを知った。

サッカーをやって人気もあったタロウ君は、メイさんの笑顔を褒めてみた。それで他の女子が喜んだから。

「俺もまさか、それが失敗だとは思わなかったんだよ~」

いきなり泣き真似をしたタロウ君。そのときは、ん?って感じ。

高2の秋、メイさんがゲンジさんの手を引いて、タロウ君の前に現れた。

『たろちゃん、ゲンちゃんに告白してOKしてもらった』

『・・え』

『たろちゃんが笑顔を褒めてくれたから、ゲンちゃんに対して、ちょっと自信が持てた。後押ししてくれて、ありがとう』
『たろう、お前のおかげ。・・感謝してる』

メイさんは過去イチでキラキラした笑顔だったそうだ。ライバルのゲンジさんには感謝された。


「あの笑顔、絶対に俺が引き出したんだよ。なのに向けた相手はゲンジだよ。俺のショック分かる?純子ちゃん」

私はは目が点になった。さっきまで泣いていたことを忘れた。

タロウ君の口調も軽くて、身ぶり手ぶりも大げさ。泣き真似までしていた。

「うわ、それって自爆だよ、タロウ君」
「だろ、その上に彼女できたらダブルデートしようだって!」

「無意識に追い打ち・・」

「そこに目撃者までいて、俺の顔、能面みたくなったららしいよ」

「ぷっ」

「あ、俺の悲恋話を打ち明けてるのに、ひでえ」

「いえ、あは、あはは」

私、まさか笑えると思ってなかった。

勇太のことは悲しい。だけどまた、タロウ君が悲しみを半減させてくれた。


◆夏の終わり。

「私は、ツンデレで失敗。ツンてしる間にふたりが付き合い出したの」

「うわ、純子ちゃんは出遅れたんだ」
「デレの出番がいまだにないよ」

「お~、よしよし」

◆秋のなかば。

「たろう君って、高校時代は俺様キャラっぽかったって信じられないね」
「どうして?」

「なんて言うか、優しさがにじみ出てる時がある」
「そりゃ、自分の間抜けで失恋してるし。変わろうと思うでしょ」

「あはは、そりゃそうか。私も同じだ」

◆秋の終わり。

「タロウ君、クリスマスイブ、どうするの」
「喫茶店でバイト」

「・・終わったあとは?」
「別に予定はないよ。聞くなよ」

「じゃあ、ご飯食べに行こう」
「モデル仲間とのパーティー誘われたって言ってなかった?」
「誘われたよ」

「じゃあ、俺のバイトとパーティーが終わったあとに合流? 予定なかったから嬉しいな」

「・・いいえ。パーティーは断ったよ」

「・・・なぜ?」

仕事絡みのパーティーなら参加するしかない。けれど今回は違う。もう私の中では、タロウ君は貴重だ。

タイミングが合う人。

勇太のことだけじゃない。仕事で嫌なことがあったとき、会いたいと思ったら不思議とタロウ君が暇だったりする。

そして同じ痛みを知っていて、私の悲しみも理解してくれた。


「仕事のあとなら、まだいい。だけどパーティーで遊んだあと・・、ついでにタロウ君に会う。そう思われるの・・、なんか嫌だった。ただ、それだけ」

「・・それだけって・・それがでかいよ」

タロウ君が満面の笑顔になった。

「俺、本当に嬉しい」

大切な人になりつつある。

タロウ君に断られたら、ひとりの聖夜でいいやと思っていた。

私、意外に重い女だ。


とにかく勇太とルナさんのように素直になれた。

勇太のことがきっかけで出会い、勇太話からタロウ君と一気に距離が縮まった。

不思議な縁だ。

お正月は、ふたりとも帰省する。

私がヤマモトタロウ君の地元で合流する。

そして山咲メイさん、冬木ゲンジさんと会う。

それはダブルデートなのだろうか。

そしてタロウ君は私のことをなんと紹介してくれるのだろうか。


すべてはクリスマス次第。



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