モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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236 勇太が去って約8ヶ月後の世界◇伊集院君とルナ◇

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勇太の前世世界。

勇太の家にみんなで集まる前の日、12月29日。

花木ルナは、伊集院君と待ち合わせているコーヒーチェーン店に向かっていた。

最寄り駅から歩いて10分。駐車場付きの郊外によくあるお店だ。

ルナは大人びていた。少しウエーブがかかった髪。メガネも外してコンタクトレンズにした。

・・おしゃれに気を使ったのは勇太が倒れてから。病院のベッドの中で綺麗になったと言ってくれた。笑顔を見せてくれた。

だから、少しでも喜んでくれるように努力した。


コーヒーチェーン店に入ると、身長が180センチまで伸びたハンサム伊集院君が座っていた。

2人は21歳になった。どちらも大学3年だ。ルナは地元の大学。伊集院君は県外から帰省中だ。

「お待たせ伊集院君。元気そうだね」
「久しぶり。ルナも、元気を取り戻したみたいだね」

「少しだけ、癒やしになってくれる人ができたからね」
「ルナと彼らは、いい関係なんだね」

「伊集院君の彼女さんは元気?」
「知ってるだろ。元気すぎるくらいだよ。もうちょっとしたら来るよ」

「ふふ、久しぶりだから楽しみ」

ふたりは付き合っていない。お互いにその気がないことも確認している。


伊集院君はルナを気遣ってきたが、それは純粋な友情。

彼は中学時代も、高校生になっても、寄り添う勇太とルナが好きだった。

高校時代はルナのことを目で追った。周囲にはルナが好きだと誤解された。

けれど一連の行動は、ルナのことを気遣ってくれと勇太に頼まれたから。

勇太が元気だった頃もその後も、伊集院君は美形であるため、女子にルナのことを色恋沙汰と直結させて聞かれてきた。

否定するのも疲れた。

高2のときには、あるカップルの女子の方が色目を使ってきた。男子に理不尽に切れられたこともあった。

辟易した。

勇太&ルナと一緒にいると絶対にそんなことは起こらなかった。普通に接してくれるふたりが大切だった。

一時は自分がルナに恋しているかと勘違いした。

けれど、皮肉にも勇太が病魔に侵されて気持ちに気付いた。

勇太にルナを託されたけれど、伊集院君の願いは勇太の回復だった。

勇太が奇跡を起こしてルナを幸せにすることを願った。

勇太がギリギリで学校に通えた高1の冬、雪が降った。

伊集院君と今川薫で支えて、校庭のベンチに勇太を座らせた。横にルナが座った。

寄り添う2人を見て、とても綺麗だと思った。

勇太にはルナのことを頼まれた。OKと返事したけれど、恋人同士だったことはない。

高校卒業までに女の子とは3人と付き合った。深入りすることなく終ってしまった。


「中3のときの夏祭り、みんなで行ったよな」
「勇太ってはしゃいじゃって、迷子になりそうだった」

「あいつらしいよな~」
「そうだよね」

たまに会うと勇太の話ばかりしている。悲しいけれど勇太を忘れたくない。

いいトライアングルを作っていた。一辺が欠けたけれどルナと伊集院君の大事な世界だ。

しばらく経つと、伊集院君の待ち人が来た。

「おっす光輝、ルナ」
「ようハルネ」
「ハルネ、久しぶり。遅かったね」

「おう。高校時代の柔道仲間の会合だ。そこで光輝のこと聞かれまくって足止め食らってたんだ」

「遅刻の原因って俺のせいなの?」

「そう言ってるだろ。そっちが無駄にハンサムだから、アタイが絡まれるんだよ」

「無駄にって、ひどいな~」
「アタイは、おめえの人間性だけあればいいんだよ」

「なんとか言ってよ、ルナ」

ふたりのやり取りにルナが笑っている。

伊集院光輝君のお相手は、桜塚ハルネ。

パラレル世界では今川カオルの先輩で茶薔薇学園柔道部の元部長だ。

この世界ではルナや伊集院君と同級生。他校生だけどルナとは柔道を通じて面識があった。

そして本来のハルネらしく硬派だ。


伊集院君とハルネの馴れ初めは、混んだ電車の中のできごと。

大学1年の春。大学に通うため移り住んだ街。電車の中で伊集院君は高校時代の顔見知りを見つけた。

今川薫、花木ルナの柔道を応援しに行って、印象が残っていた他校の同級生。

『伊集院だな。アタイは桜塚だ。おめえ顔はいいがな・・』
『顔がどうかした?』

『柔道が強そうじゃねえな』
『ぷっ、なにそれ』

その会話で覚えていた。

身長171センチ。短髪でジーパンに上ジャージ着用。ポケットに手を入れてシートにどっしりと座っていた。

ご老人が電車に乗ってきた。

伊集院君が見ていると、彼女は誰よりも早く立ち上がった。

「どうぞ、おばあちゃん」
「あ、ごめんなさいね、お兄さん」

「おに・・あ・・うん、どういたしまして」


「ぷぷっ」

思わず伊集院君は笑ってしまった。

ギギキと音を立ててハルネの首が後ろを向いた。

「ご、ごめん」

「てめ・・あれ? 伊集院だったよな。なんでこんなとこに」

「久しぶり桜塚さん。俺、大学でこっち来たの」
「アタイもだ。奇遇だな」

同じ大学だった。

笑ったお詫びにご飯を付き合えと言われ、定食屋を探してカツ丼を食べた。

それから交流が始まった。

教師を目指すハルネは人の面倒見が良かった。そして面食いでもなかった。

伊集院君は、久しぶりに付き合いやすい異性を見つけた。


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