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239 勇太が去って約8か月後の世界◇ルナと古川舞◇
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勇太前世の12月29日。
伊集院君とルナが会った。
伊集院君は付き合っている桜塚ハルネが迎えに来た。
ルナの待ち人が来たが、小さな女の子だった。古川舞という小学2年生の女の子だ。
「ルナちゃん、お待たせ~」
「舞ちゃん、お父さんは?」
「すぐそこの角のとこ。車の中で待ってるよ」
そして伊集院君&ハルネと別れた。
ルナは舞と手を繋いで、待っている車に乗り込んだ。
「リョウジさん、お待たせしました」
今のルナは、古川リョウジ、舞の親子と親交がある。
出会いは、7月10日。午後2時。
ルナはひとりで勇太の墓前に参っていた。完全な夏日で熱中症アラートが出ていた。
勇太は長い闘病生活の末に逝った。
ルナは覚悟する時間は十分にあったと思っていた。だから、葬儀で棺にすがって泣き崩れてから、泣いていない。
だけど悲しい。
もう1時間も墓の前に佇んでいた。汗びっしょりだけど、もう少しここにいようと思った。
隣のお墓にもお参りに来た人がいた。
「あのこと、お母さんに教えてあげるの・・」
可愛い女の子が花を持って、アラサー世代に見える男性と手を繋いでいる。
お互いに軽く会釈した。
少しだけ話が聞こえてきた。ここで眠るのは女の子の母親で、男性の妻のようだ。
ルナは、さすがに去ろうと思って立ち上がった。けれど、膝がカクンと落ちた。
「あ、危ない!」
目の前が暗くなりそうだったとき、何かに支えられた。
熱中症だった。
ルナは、勇太が逝く寸前に言った。
『来世があったら、絶対に私が探し出してあげる』
勇太に聞こえていたのかどうか分からない。
勇太はネット小説を読んで、異世界転生して健康になったらいいなと漏らした。同時に、ルナがいない世界は嫌だなと言ってくれた。
このまんま倒れて、異世界に行けたら勇太を探そう。
そんなことを考えたが、大した症状でもなかった。
この親子に介抱され、娘さんから水筒に入った冷たい水を飲ませてもらった。
ルナの母親に連絡して迎えに来てもらった。それまで親子が一緒にいてくれて、別れ際に連絡先を交換した。
それからの縁だ。
1週間後、大学が終わったあとにお礼をしようと思って連絡した。
なんとなく、同じ痛みを知るものの匂い。
介抱してもらうときに、舞の母親・茜さんのことを聞いた。1年間の闘病生活の末に昨年6月10日に亡くなっていた。
お父さんのリョウジさんが勤める会社の近くでお菓子を渡して帰ろうと思ったが、待ち合わせの場所には舞もいた。
それから舞はルナに積極的に連絡してきた。
舞は母親に料理を教えてもらう前に、断念するしかなかった。だからルナに教えて欲しいとか、色々と口実を作った。
古川リョウジの親は隣街にいる。だけど舞はルナを求めた。
舞は気が強い。だから学校でも同情されるのが嫌だった。
ルナも似たような感覚。
だからリョウジを含めた3人で共感できる関係が良かった。
そして3人は不思議な感覚に包まれることがあった。
ルナとリョウジ、ルナと舞。知り合って期間が短いし、ふたりだと会話がギクシャクすることもある。
だけど3人になると話題は尽きない。舞の母親のこと、勇太のことも話題にのぼる。
この3人なら笑顔で話せるのだ。
リョウジ31歳。舞は8歳。ルナ21歳。
普通ならルナの親や兄達が何か口出ししたくなる関係性。
だけど家族は勇太を失ったルナの悲しみを知っている。
そしてリョウジと舞が必ずセット。ルナも気晴らしできればと見守っている。
ルナも、もう子供でもない。
その秋の日、リョウジが仕事で遠出して遅かった。ルナは舞のところで、一緒にご飯を作って食べた。
「ルナちゃん。オムライスできた」
「どれどれ、美味しい」
「やった。うん、お母さんの味とは違うけど美味しい」
「じゃあ、舞ちゃんの味だね」
「ねえルナちゃん」
「なに?」
「ごめんね、たくさん電話したり、来てもらったりして・・」
「いいよ。私もひとりだと勇太のことばかり考えるから」
「・・私も一緒。お父さんが遅い夜、ひとりだとお母さんのこと考える」
他の人には、こんなことは言えない。だけどルナと舞は、素直に悲しいことを悲しいと言える。
同情もないから、苛立ちも涙もない。
まるで友人のような関係。
だから父親とのリョウジとも色恋沙汰に繋がりそうなムードもない。
まるで勇太と舞の母親が会わせてくれたような、傷を癒していけるトライアングル。
伊集院君とルナが会った。
伊集院君は付き合っている桜塚ハルネが迎えに来た。
ルナの待ち人が来たが、小さな女の子だった。古川舞という小学2年生の女の子だ。
「ルナちゃん、お待たせ~」
「舞ちゃん、お父さんは?」
「すぐそこの角のとこ。車の中で待ってるよ」
そして伊集院君&ハルネと別れた。
ルナは舞と手を繋いで、待っている車に乗り込んだ。
「リョウジさん、お待たせしました」
今のルナは、古川リョウジ、舞の親子と親交がある。
出会いは、7月10日。午後2時。
ルナはひとりで勇太の墓前に参っていた。完全な夏日で熱中症アラートが出ていた。
勇太は長い闘病生活の末に逝った。
ルナは覚悟する時間は十分にあったと思っていた。だから、葬儀で棺にすがって泣き崩れてから、泣いていない。
だけど悲しい。
もう1時間も墓の前に佇んでいた。汗びっしょりだけど、もう少しここにいようと思った。
隣のお墓にもお参りに来た人がいた。
「あのこと、お母さんに教えてあげるの・・」
可愛い女の子が花を持って、アラサー世代に見える男性と手を繋いでいる。
お互いに軽く会釈した。
少しだけ話が聞こえてきた。ここで眠るのは女の子の母親で、男性の妻のようだ。
ルナは、さすがに去ろうと思って立ち上がった。けれど、膝がカクンと落ちた。
「あ、危ない!」
目の前が暗くなりそうだったとき、何かに支えられた。
熱中症だった。
ルナは、勇太が逝く寸前に言った。
『来世があったら、絶対に私が探し出してあげる』
勇太に聞こえていたのかどうか分からない。
勇太はネット小説を読んで、異世界転生して健康になったらいいなと漏らした。同時に、ルナがいない世界は嫌だなと言ってくれた。
このまんま倒れて、異世界に行けたら勇太を探そう。
そんなことを考えたが、大した症状でもなかった。
この親子に介抱され、娘さんから水筒に入った冷たい水を飲ませてもらった。
ルナの母親に連絡して迎えに来てもらった。それまで親子が一緒にいてくれて、別れ際に連絡先を交換した。
それからの縁だ。
1週間後、大学が終わったあとにお礼をしようと思って連絡した。
なんとなく、同じ痛みを知るものの匂い。
介抱してもらうときに、舞の母親・茜さんのことを聞いた。1年間の闘病生活の末に昨年6月10日に亡くなっていた。
お父さんのリョウジさんが勤める会社の近くでお菓子を渡して帰ろうと思ったが、待ち合わせの場所には舞もいた。
それから舞はルナに積極的に連絡してきた。
舞は母親に料理を教えてもらう前に、断念するしかなかった。だからルナに教えて欲しいとか、色々と口実を作った。
古川リョウジの親は隣街にいる。だけど舞はルナを求めた。
舞は気が強い。だから学校でも同情されるのが嫌だった。
ルナも似たような感覚。
だからリョウジを含めた3人で共感できる関係が良かった。
そして3人は不思議な感覚に包まれることがあった。
ルナとリョウジ、ルナと舞。知り合って期間が短いし、ふたりだと会話がギクシャクすることもある。
だけど3人になると話題は尽きない。舞の母親のこと、勇太のことも話題にのぼる。
この3人なら笑顔で話せるのだ。
リョウジ31歳。舞は8歳。ルナ21歳。
普通ならルナの親や兄達が何か口出ししたくなる関係性。
だけど家族は勇太を失ったルナの悲しみを知っている。
そしてリョウジと舞が必ずセット。ルナも気晴らしできればと見守っている。
ルナも、もう子供でもない。
その秋の日、リョウジが仕事で遠出して遅かった。ルナは舞のところで、一緒にご飯を作って食べた。
「ルナちゃん。オムライスできた」
「どれどれ、美味しい」
「やった。うん、お母さんの味とは違うけど美味しい」
「じゃあ、舞ちゃんの味だね」
「ねえルナちゃん」
「なに?」
「ごめんね、たくさん電話したり、来てもらったりして・・」
「いいよ。私もひとりだと勇太のことばかり考えるから」
「・・私も一緒。お父さんが遅い夜、ひとりだとお母さんのこと考える」
他の人には、こんなことは言えない。だけどルナと舞は、素直に悲しいことを悲しいと言える。
同情もないから、苛立ちも涙もない。
まるで友人のような関係。
だから父親とのリョウジとも色恋沙汰に繋がりそうなムードもない。
まるで勇太と舞の母親が会わせてくれたような、傷を癒していけるトライアングル。
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