モブ顔の俺が男女比１対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました

とみっしぇる

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258 勇太、美男子を泣かせる

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新顔の花京院夏樹を助けて、怪我を負った不知火マイコ。

マイコが来る予定だった柔道連盟の事務所まで夏樹が付いてきた。

そして夏樹がマイコに、事務所の医務室で付き添っている。

もちろん勇太もいる。鬼塚一子は、別の仕事で中座した。

やはり鬼塚はマイコの扱いが雑だ。

マイコの治療が終わり、ベンチシートに３人で座っている。

左から勇太、マイコ、夏樹。外でこの光景があれば、マイコに女子からのヘイトが集まる。

または、男子３人と間違えた腐った女子が喜ぶかだ。

勇太からしたら少し違和感がある。カオルから聞いている。

マイコは男子免疫がほぼない。だから可愛い男子が現れたら、自分が勇太に手を握られた時みたくキョドるはずだと。

『そこだけはアタイも不知火さんも同レベルだぞ。あははは』

確かにカオルとの最初の頃のスキンシップは、過剰反応が多かった。

だけど今、マイコの方から夏樹への拒絶感が出ている。

夏樹が何かしたか、マイコを傷つけることを言ったのではないかと考えている。

勇太はなんだかんだいってマイコの人間性に悪い印象はない。めんどくさいけど・・

悪意を持たないマイコに対し、愛はなくても立派な女性として見ている。カオルも柔道家として尊敬している人物だ。

そのマイコが怪我をしている。

女の子のマイコの頭に巻かれた血がにじんだ包帯。ただおろおろする、怪我の原因を作った男子・花京院夏樹。

ふたりを見て、気持ちが前世モードに入っている。

女に怪我をさせて、その後も情けないバカヤロウがいる。

まあ、この男女比１対12の世界なら普通。だけど、勇太はそんなのに納得できないテンションだ。　　

「花京院君、不知火さんにきちんとお礼は言ったか？」

「え、あ、あの」

夏樹は戸惑っている。お礼は言ったけど、言うのが遅れた。助けられた直後にはマイコ自身を警戒した。

「あ、大丈夫です勇太君。彼はきちんと言ってくれたからね」マイコの方が答えた。

夏樹は勇太の顔を見た。いきなり勇太が怒った目になっている。自分に対して。

伊集院君には言われている。勇太が嫌いなものを。

普段は温厚な勇太だけど、世話になったり、関わったりした相手を傷つける人間は許さない、と。

夏樹は勇太の苛烈な部分の映像を見ている。女の子のために戦う彼を格好いいと思った。

心を入れ替える前は最悪だったらしいが、入れ替えたあとは迷惑をかけた人間に謝って回っている。

そういう人間だから、伊集院君と友達になれた。

だから夏樹は伊集院君のところに来て、伊集院＆勇太のような友達を作れるように学ぼうとした。

なのに、嫌われることをしてしまった。目に涙がたまっている。

「うえっ、うう、ごめんなさい。助けてもらったのに態度が悪かったです・・」

夏樹は泣き出してしまった。

慌てたのはマイコだ。勇太にも会えたし、少し気持ちも落ち着いている。

「いやいや勇太君、怒らないでくれ。彼の対応は男子にしてはいい方だ。君のような神対応が珍しいのだ。それに私も色々とあって、その前からイライラしてるとこもあったんだ」

「ホント？　不知火さん」
「本当だ。今日は打ち合わせよりも、話がしたくて来たんだ」

「何の話しですか？」

「あ、その前に彼を何とかしないと」

泣いている夏樹をそのままにして、話ができない。

「・・花京院君」
「ごべんなざいー」

「不知火さんがいいって言うから、俺はもう何も言わない」

「けど不知火マイコさんは？」

夏樹は自分の両手でマイコの右手をつかんだ。

「あ、あの、あの、花京院君？」

素に戻りかけているマイコは、泣いている男子に謝られながら手を掴まれるなんて初体験。

その上に、どことなく伊集院君に似た美少年だ。

「本当にごべんなざーい。不知火さん」

「あ、ああ、あの、気にしないでくれたまえ。私はさっきから言っている通り、気にしていないから」

これ以上の謝罪は必要ないとマイコが言っても、夏樹は手を離さない。

マイコは普通に戻っていくほど困った。自分の方が力が強そうだけど、手をしっかり掴まれている。

勇太も、かなり困っている。

「・・で、不知火さん、話したいことって何ですか」

とりあえず夏樹は放置だ。

マイコは生まれて初めて男子から手を握られたまま、憧れの勇太と話をすることになった。

話は真面目。

実は進路のことで、勇太と会いたいとかいう理由ではなくパラレル体育大学に進路変更するという話だった。

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