18 / 73
18 マクハリの戦い②
しおりを挟む
街の戦闘職が太刀打ちできなかった魔族をベンが倒した。
魔装で黒ずくめになった私のサポート付きだけどね。
尖兵隊長の手下を次々と仲間の方に突き飛ばした。私のあまりの速さに誰にも見えていない。
ベンとハンナがカウンターで槍を刺した。サクサクと魔族が倒れた。
これまで、獣人を受け入れた孤児院、そこの子供達を馬鹿にしていた人たちが、彼らを見る目が変わったのが分かった。
とうとう隊長だけになった。アリアと一騎討ちだ。ただ、これまでの奴らと雰囲気と装備は違う。
隊長はレベル40。レベルはアリアが上でも剣技レベル4持ちのHP520。ステータスで上回っている。
長剣を隙なく構える隊長と2本のナイフを持つアリア。
魔装状態の私なら難なく倒せるけど、リアルタイムでアストリアに配信中。配信である限り、主役はアリアなのだ。
「アリア、サポートする」
「はい!」
姿勢を低くして走り出したアリア。並走する私はアリアと同じ姿勢で、ドロンで映して死角にいるように調整しながら動いた。
隊長はアリアに反応して剣を振った。
私はアリアが頭から両断されないように、隊長が剣を握った右手の小指を素早く握り潰した。
一連の作業タイムは0・02秒。
「ぐわっ!」。遅れて振られたアリアのナイフが、隊長の剣を弾いた。
アリアの攻撃ターンに入った。10回の追撃の末、ナイフが隊長の頬を浅く切ったけど、隊長がアリアの腹を蹴った。
アリアが後ろに2回転して着地。ふたりは離れた。
コメント欄
『うおお!』
『すげえ攻防だ』
『アリアちゃん、頑張れ』
私の動きは、画面越しに見ている人にはとらえられていない。アリアも恐らく分かってない。
態勢を立て直したアリアは再び構えた。
私が先に牽制に入った。3度のパンチの応酬のあと、隊長のパンチ、パンチ、蹴りの3連撃を食らって後ろに飛ばされた。
蹴られるとき、隊長の右足首にデタラメパワーでチョップした。金属製ブーツごと骨が割れる手応えがあった。
仰向けに倒れて、私の出番は終了。
「今だぜ、アリア」
「やあああ!」
「くそう、こんな強敵がいるとは聞いてないぞ!」
隊長はアリアの攻撃に反応できず、クリティカルヒットを食らった。そして首を押さえて膝を付いた。
「いい気になるな小娘・・私など、魔王軍では一介の雑兵に過ぎぬ。わはははは」
ぱたりと倒れた隊長だけど、何となくセリフを読んでいるような感じ。
肩で息をするアリア。
さすがに街の人間から称賛の声が上がった。
『やったあアリアちゃん』
『街の人にも認められたよね』
『すごい』
ネット民から、その数倍の称賛の嵐。
アリアはドロンの方を向いた。
「みなさんの応援のお陰で勝てました。ありがとうございます!」
期せずしてバズった。
民衆の中から、身なりのいいオジさんが前に出てきた。何だか段取りがいい。
イベント発生となると『勇者5』のシナリオが働き出すのではないかと、女神の関与を疑ってしまう。
このオッサンが代官のリンカイ男爵だ。黒髪のダンディーだ。
「き、君達は孤児院のベンとンナだな。それにアリアと、そこの黒装束の人も。街を救ってくれたのだな」
黒装束とは、結界魔装で全身ラバースーツ風に見える私のことだろう。
「君達を嫌っている街の人を救うため、隠していた力を発揮してくれたんだな。本当にありがとう」
頭を下げようとした代官をベンが止めた。
「僕らは、獣人の姉弟を孤児院に受け入れることを認めてくれた代官様に恩を返しただけさ」
「そうですよ。お陰で猫獣人の私も、無事に成長できたんです」
ベンとハンナは照れながら言った。
街の人々は誰からともなく拍手をしはじめ、街の新たな英雄を囲んだ。
配信中のアストリア人のコメント欄。
『ベン君とハンナちゃんのセリフ、かなり「勇者と5つのオーブ」こと「勇者5」のストーリーと似てるな』
『アニメは、ここで第5話が終わったよ』
『RPGの方は、これで序盤クリアだよ。ストーリー通りならね』
『数日後にベン、ハンナと別れ、勇者候補と使徒は旅に出るんだよ』
ここで詮索する前に、私から視聴者に言うことがある。
「見てくれてるアストリアのみんな」
『ん?』
『どうした改まって』
「改めて言う。みんなが助言をくれたお陰で、アリアの大切な人を守れた。そして孤児院の子供達が街の人に受け入れられた。ホント、ありがとう」
撮影用のコウモリ型魔道具ドロンに向かって頭を下げた。
『いいってことよ』
『また何か思い出したら書き込むから』
『ほら、街の人も待ってる。いってきなよ』
沿岸警備隊の建物は焼けたけど、幸いに死者ゼロ。自分が回復職だと思い出した私は、ヒール、ハイヒールで怪我人を一気に治した。
孤児院に帰ると、街の人がお礼に食べ物や寄付を持ってきてくれた。
アリアと旅立つ上で、大きな懸念材料だった孤児院のことが期せずして解決できた。
◆
そして夜中。
私は一人で海岸線を20キロ南下した。
私とアリアが巻き込まれてる状況はRPG『勇者と5つのオーブ』
その1個目のオーブを探しに行く。
オーブはどうでもいいんだけど、ネット民から気になる情報をもらった。
念のために確認しにいく。
◇聖女サラチャンネル◇
登録者数201万人
スパチャ合計406万ゴールド
魔装で黒ずくめになった私のサポート付きだけどね。
尖兵隊長の手下を次々と仲間の方に突き飛ばした。私のあまりの速さに誰にも見えていない。
ベンとハンナがカウンターで槍を刺した。サクサクと魔族が倒れた。
これまで、獣人を受け入れた孤児院、そこの子供達を馬鹿にしていた人たちが、彼らを見る目が変わったのが分かった。
とうとう隊長だけになった。アリアと一騎討ちだ。ただ、これまでの奴らと雰囲気と装備は違う。
隊長はレベル40。レベルはアリアが上でも剣技レベル4持ちのHP520。ステータスで上回っている。
長剣を隙なく構える隊長と2本のナイフを持つアリア。
魔装状態の私なら難なく倒せるけど、リアルタイムでアストリアに配信中。配信である限り、主役はアリアなのだ。
「アリア、サポートする」
「はい!」
姿勢を低くして走り出したアリア。並走する私はアリアと同じ姿勢で、ドロンで映して死角にいるように調整しながら動いた。
隊長はアリアに反応して剣を振った。
私はアリアが頭から両断されないように、隊長が剣を握った右手の小指を素早く握り潰した。
一連の作業タイムは0・02秒。
「ぐわっ!」。遅れて振られたアリアのナイフが、隊長の剣を弾いた。
アリアの攻撃ターンに入った。10回の追撃の末、ナイフが隊長の頬を浅く切ったけど、隊長がアリアの腹を蹴った。
アリアが後ろに2回転して着地。ふたりは離れた。
コメント欄
『うおお!』
『すげえ攻防だ』
『アリアちゃん、頑張れ』
私の動きは、画面越しに見ている人にはとらえられていない。アリアも恐らく分かってない。
態勢を立て直したアリアは再び構えた。
私が先に牽制に入った。3度のパンチの応酬のあと、隊長のパンチ、パンチ、蹴りの3連撃を食らって後ろに飛ばされた。
蹴られるとき、隊長の右足首にデタラメパワーでチョップした。金属製ブーツごと骨が割れる手応えがあった。
仰向けに倒れて、私の出番は終了。
「今だぜ、アリア」
「やあああ!」
「くそう、こんな強敵がいるとは聞いてないぞ!」
隊長はアリアの攻撃に反応できず、クリティカルヒットを食らった。そして首を押さえて膝を付いた。
「いい気になるな小娘・・私など、魔王軍では一介の雑兵に過ぎぬ。わはははは」
ぱたりと倒れた隊長だけど、何となくセリフを読んでいるような感じ。
肩で息をするアリア。
さすがに街の人間から称賛の声が上がった。
『やったあアリアちゃん』
『街の人にも認められたよね』
『すごい』
ネット民から、その数倍の称賛の嵐。
アリアはドロンの方を向いた。
「みなさんの応援のお陰で勝てました。ありがとうございます!」
期せずしてバズった。
民衆の中から、身なりのいいオジさんが前に出てきた。何だか段取りがいい。
イベント発生となると『勇者5』のシナリオが働き出すのではないかと、女神の関与を疑ってしまう。
このオッサンが代官のリンカイ男爵だ。黒髪のダンディーだ。
「き、君達は孤児院のベンとンナだな。それにアリアと、そこの黒装束の人も。街を救ってくれたのだな」
黒装束とは、結界魔装で全身ラバースーツ風に見える私のことだろう。
「君達を嫌っている街の人を救うため、隠していた力を発揮してくれたんだな。本当にありがとう」
頭を下げようとした代官をベンが止めた。
「僕らは、獣人の姉弟を孤児院に受け入れることを認めてくれた代官様に恩を返しただけさ」
「そうですよ。お陰で猫獣人の私も、無事に成長できたんです」
ベンとハンナは照れながら言った。
街の人々は誰からともなく拍手をしはじめ、街の新たな英雄を囲んだ。
配信中のアストリア人のコメント欄。
『ベン君とハンナちゃんのセリフ、かなり「勇者と5つのオーブ」こと「勇者5」のストーリーと似てるな』
『アニメは、ここで第5話が終わったよ』
『RPGの方は、これで序盤クリアだよ。ストーリー通りならね』
『数日後にベン、ハンナと別れ、勇者候補と使徒は旅に出るんだよ』
ここで詮索する前に、私から視聴者に言うことがある。
「見てくれてるアストリアのみんな」
『ん?』
『どうした改まって』
「改めて言う。みんなが助言をくれたお陰で、アリアの大切な人を守れた。そして孤児院の子供達が街の人に受け入れられた。ホント、ありがとう」
撮影用のコウモリ型魔道具ドロンに向かって頭を下げた。
『いいってことよ』
『また何か思い出したら書き込むから』
『ほら、街の人も待ってる。いってきなよ』
沿岸警備隊の建物は焼けたけど、幸いに死者ゼロ。自分が回復職だと思い出した私は、ヒール、ハイヒールで怪我人を一気に治した。
孤児院に帰ると、街の人がお礼に食べ物や寄付を持ってきてくれた。
アリアと旅立つ上で、大きな懸念材料だった孤児院のことが期せずして解決できた。
◆
そして夜中。
私は一人で海岸線を20キロ南下した。
私とアリアが巻き込まれてる状況はRPG『勇者と5つのオーブ』
その1個目のオーブを探しに行く。
オーブはどうでもいいんだけど、ネット民から気になる情報をもらった。
念のために確認しにいく。
◇聖女サラチャンネル◇
登録者数201万人
スパチャ合計406万ゴールド
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった!
覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。
一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。
最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる