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面接
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### 面接
「マサシ、明日はオレの紹介した編集者との面接があるんだから今晩は早く寝ろよ?」
夕食を摂った後でカズがマサシに言った。
「いちおう、オレが紹介者だし、お前は実力があるから大丈夫だとは思うが、デッサン画とかを持って行けよ」
「わかった、今晩は早く寝る。だけど、デッサン画ってどれを持って行けばいいと思う?」
風呂から上がったばかりでタオルで髪を拭きながらマサシが聞く。
「う~ん⋯⋯お前の書いたものならどれでも大丈夫だと思うけど、想像画で描いたものなんかどうだ? あれ、けっこうセンス良かったぞ」
カズがそう言うと、
「あぁ、あれ」
マサシはタオルを頭に巻いたまま、ぼんやりと自分の部屋のドアを見つめた。
カズの言葉が頭の中で反響している。
――想像画。
あのとき、何気なく描いた一枚が、カズの目に留まったのか。
彼は部屋に戻ると、机の引き出しをゆっくりと開けた。
中にはスケッチブックが何冊か重なっていて、その下に、一枚だけ、折りたたまれた紙が挟まっていた。
白い紙の端は少し黄ばんでいて、角が丸みを帯びている。
まるで、記憶の隅にしまいこんでいた何かが、今、ようやく呼び戻されるように。
マサシはそれをそっと取り出した。
広げると、そこには、誰も見たことのない風景が描かれていた。
空は紫と青のグラデーションで、地平線の向こうには、歪んだ塔が幾つもそびえている。
塔の先端は星のように光を放ち、地面には、まるで生き物のようにうねる線が走っている。
中央には、一人の人物が立っていた。
顔ははっきりと描かれていない。
ただ、風にひるがえるコートの裾と、手に持った、鍵のようなものを握る指先だけが、丁寧に描き込まれていた。
――これは、あの日の夢。
マサシは、ある夜、不思議な夢を見た。
誰かが彼を呼んでいる。
名前も知らない声が、遠くから、しかし確かに、彼の名を呼んでいる。
目が覚めたとき、その風景が頭の中に焼きついていて、彼は寝ぼけたまま、鉛筆を手に取った。
描き終えると、なぜか胸がすっとした。
でも、その絵は、誰にも見せなかった。
自分でも、なぜ描いたのか、よくわからなかったからだ。
「想像画⋯⋯か」
マサシは紙を手に、窓の外を見た。
夜の空には、月が半分ほど浮かんでいた。
静けさが、部屋の中に満ちていく。
カズの言葉を思い出す。
「お前は実力があるから大丈夫だとは思うが」
――でも、本当にそうだろうか。
マサシは、自分の才能に自信が持てないでいた。
美大には合格はしてはいるが、就職活動はうまくいかず、今はアルバイトをしながら、ポートフォリオを完成させようとしている最中だ。
出版社の面接は、彼にとって、初めての真剣なチャンスだった。
カズが編集者に紹介してくれたのは、マンガ家志望の彼にとって、まさに救いの手だった。
でも、その手を掴むには、自分自身が、自分を信じなければならない。
彼は再びスケッチブックを取り出し、過去に描いた作品を一枚ずつ見直した。
風景画、人物画、クロッキー⋯⋯どれも技術的には悪くない。
でも、どれも「何かが足りない」気がする。
感情がこもっていない。
誰かの目に留まるような、心を揺さぶる「何か」が、どこかに欠けている。
――でも、あの想像画には、あった。
不思議と、あの一枚だけは、見るたびに胸が締めつけられるような感覚になる。
まるで、描いたのは自分なのに、その絵が自分を超えて、どこか別の世界とつながっているような気がする。
「これを持っていくか⋯⋯」
マサシは、そっとその紙をクリアファイルに挟んだ。
明日の面接に、この一枚を。
翌朝、マサシは少し早めに家を出た。
空はまだ薄っすらと青みがかっていて、街灯がぽつぽつと灯っている。
カバンの中に、スケッチブックと、あの想像画を入れ、彼は駅に向かって歩いた。
面接会場は、古いビルの出版社。
エレベーターを降りると、すぐに「たちばな書房」と書かれた木製の看板が目に入った。
ドアを開けると、受付に座った女性がにこやかに微笑んだ。
「マサシさんですね? お待ちしておりました。編集長の多田が、もう準備できていますよ」
「は、はい⋯⋯ありがとうございます」
声が少し震えた。
手のひらに、じんわりと汗がにじむ。
カバンの中のファイルを、ぎゅっと握りしめる。
奥の会議室に入ると、窓際の席に、眼鏡をかけた中年男性が座っていた。
グレーがかった髪を短く刈り込み、ネクタイの結び目は少し緩んでいる。
でも、その目は鋭く、マサシの顔を見るなり、じっと観察するような視線を送ってきた。
「多田です。カズくんから、君の話を聞いていましたよ。『才能がある』って、随分褒めてましたね」
「あ、あの⋯⋯ありがとうございます。紹介してもらって、本当に⋯⋯」
「緊張してますか? 大丈夫、リラックスして。僕らは、絵を通して、君の『声』を聞きたいだけですから」
多田編集長の言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
「では、まずはポートフォリオを見せてもらいましょうか」
マサシはカバンからスケッチブックを取り出し、テーブルの上に置いた。
手が少し震える。
でも、深呼吸をして、ページをめくっていく。
風景画、人物画、構図の練習⋯⋯。
多田編集長は、一枚一枚、じっくりと見ていった。
無言の時間が続く。
マサシは、その沈黙に耐えながら、編集長の表情をうかがう。
やがて、スケッチブックの最後に、マサシは想像画の入ったファイルを差し出した。
「これ⋯⋯は、ちょっと、変わったものなんですけど⋯⋯」
多田編集長は、ファイルを受け取り、中身を静かに取り出した。
そして――その絵を見た瞬間、彼の表情が、わずかに動いた。
眉が上がり、眼鏡の奥の目が、一瞬、大きく見開かれた。
それから、彼は絵を手に取り、少し傾けて光にかざしたかと思うと、静かに言った。
「⋯⋯これは、君が描いたのか?」
「はい。夢で見た風景を、そのまま描いただけなんです。特に意味は⋯⋯」
「意味がないからこそ、価値があるんだよ」
多田編集長は、絵をテーブルに置き、マサシの目を見つめた。
「君の他の作品は、技術的には申し分ない。でも、どれも『正解』を描こうとしている。教科書通りの美しさ。でも、これは違う。これは……『声』がある。誰かが、遠くから、君に語りかけているような、そんな感覚だ」
マサシは言葉を失った。
「マンガってな、技術よりも、まず『世界観』が大事なんだ。読者がその世界に吸い込まれるかどうか。君のこの絵には、それが備わっている。まるで、別の次元の扉が、一枚の紙の向こうに開いているみたいだ」
多田編集長は、少し笑った。
「カズくんが『センスがある』って言ってたけど、それ以上のものを感じるよ。これは、才能じゃなくて、『使命』なのかもしれないな」
その言葉に、マサシの胸が、ずきんと鳴った。
使命――?
そんな大それた言葉を、自分に当てはめるなんて、考えたこともなかった。
ただ、描きたくて、夢の続きを確かめたくて、鉛筆を走らせただけだ。
でも、もしかしたら―― 。
もしかしたら、あの夢は、偶然じゃないのかもしれない。
「君、この絵の続きを描いてみないか?」
多田編集長の言葉に、マサシは顔を上げた。
「続き⋯⋯ですか?」
「ああ。この風景の先に、何があるのか。あの人物は誰なのか。鍵は、何を開くのか。君がその世界を、マンガという形で、語ってみてくれないか?」
マサシの頭の中に、ふと、夢の断片がよみがえる。
塔から流れる光の糸。
風に舞う声。
そして、遠くから聞こえる、名前のない呼び声。
――マサシ。
「⋯⋯わかりました」
彼は、小さく、でもはっきりと言った。
「描きます。この世界の続きを、ちゃんと形にしてみます」
多田編集長は満足そうに頷いた。
「楽しみだ。君の『声』が、読者の心に届く日が来るかもしれないな」
面接を終え、外に出たとき、空はすっかり明るくなっていた。
風が頬を撫でて通り過ぎる。
マサシは、カバンの中のファイルに手をやり、ふと笑った。
カズの言葉を思い出した。
「お前は実力があるから大丈夫だとは思うが」
――いや、実力だけじゃない。
きっと、心の奥底にある、誰にも言えなかった想い。
夢の中で見た、見知らぬ世界への憧れ。
それらすべてが、絵になったんだ。
彼は歩きながら、心の中で決めた。
――これから、毎日描く。
あの塔の向こうに何があるのか、あの人物が何を語ろうとしているのか、自分自身の手で、確かめてみよう。
そしていつか――。
誰かの心にも、その風景が、届きますように。
まずはカズからマンガの描き方を習おう。
一世を風靡したカズのマンガ家としての実力ならば、自分の才能を伸ばしてくれるかも知れない。
今は小説家だけの活動で、マンガ家としては引退をしてしまっているが、カズの実力ならば問題ないだろう。
「よし、カズからマンガの描き方を習おう」
マサシはそう決心すると、マンションに向かって帰宅を始めた。
「マサシ、明日はオレの紹介した編集者との面接があるんだから今晩は早く寝ろよ?」
夕食を摂った後でカズがマサシに言った。
「いちおう、オレが紹介者だし、お前は実力があるから大丈夫だとは思うが、デッサン画とかを持って行けよ」
「わかった、今晩は早く寝る。だけど、デッサン画ってどれを持って行けばいいと思う?」
風呂から上がったばかりでタオルで髪を拭きながらマサシが聞く。
「う~ん⋯⋯お前の書いたものならどれでも大丈夫だと思うけど、想像画で描いたものなんかどうだ? あれ、けっこうセンス良かったぞ」
カズがそう言うと、
「あぁ、あれ」
マサシはタオルを頭に巻いたまま、ぼんやりと自分の部屋のドアを見つめた。
カズの言葉が頭の中で反響している。
――想像画。
あのとき、何気なく描いた一枚が、カズの目に留まったのか。
彼は部屋に戻ると、机の引き出しをゆっくりと開けた。
中にはスケッチブックが何冊か重なっていて、その下に、一枚だけ、折りたたまれた紙が挟まっていた。
白い紙の端は少し黄ばんでいて、角が丸みを帯びている。
まるで、記憶の隅にしまいこんでいた何かが、今、ようやく呼び戻されるように。
マサシはそれをそっと取り出した。
広げると、そこには、誰も見たことのない風景が描かれていた。
空は紫と青のグラデーションで、地平線の向こうには、歪んだ塔が幾つもそびえている。
塔の先端は星のように光を放ち、地面には、まるで生き物のようにうねる線が走っている。
中央には、一人の人物が立っていた。
顔ははっきりと描かれていない。
ただ、風にひるがえるコートの裾と、手に持った、鍵のようなものを握る指先だけが、丁寧に描き込まれていた。
――これは、あの日の夢。
マサシは、ある夜、不思議な夢を見た。
誰かが彼を呼んでいる。
名前も知らない声が、遠くから、しかし確かに、彼の名を呼んでいる。
目が覚めたとき、その風景が頭の中に焼きついていて、彼は寝ぼけたまま、鉛筆を手に取った。
描き終えると、なぜか胸がすっとした。
でも、その絵は、誰にも見せなかった。
自分でも、なぜ描いたのか、よくわからなかったからだ。
「想像画⋯⋯か」
マサシは紙を手に、窓の外を見た。
夜の空には、月が半分ほど浮かんでいた。
静けさが、部屋の中に満ちていく。
カズの言葉を思い出す。
「お前は実力があるから大丈夫だとは思うが」
――でも、本当にそうだろうか。
マサシは、自分の才能に自信が持てないでいた。
美大には合格はしてはいるが、就職活動はうまくいかず、今はアルバイトをしながら、ポートフォリオを完成させようとしている最中だ。
出版社の面接は、彼にとって、初めての真剣なチャンスだった。
カズが編集者に紹介してくれたのは、マンガ家志望の彼にとって、まさに救いの手だった。
でも、その手を掴むには、自分自身が、自分を信じなければならない。
彼は再びスケッチブックを取り出し、過去に描いた作品を一枚ずつ見直した。
風景画、人物画、クロッキー⋯⋯どれも技術的には悪くない。
でも、どれも「何かが足りない」気がする。
感情がこもっていない。
誰かの目に留まるような、心を揺さぶる「何か」が、どこかに欠けている。
――でも、あの想像画には、あった。
不思議と、あの一枚だけは、見るたびに胸が締めつけられるような感覚になる。
まるで、描いたのは自分なのに、その絵が自分を超えて、どこか別の世界とつながっているような気がする。
「これを持っていくか⋯⋯」
マサシは、そっとその紙をクリアファイルに挟んだ。
明日の面接に、この一枚を。
翌朝、マサシは少し早めに家を出た。
空はまだ薄っすらと青みがかっていて、街灯がぽつぽつと灯っている。
カバンの中に、スケッチブックと、あの想像画を入れ、彼は駅に向かって歩いた。
面接会場は、古いビルの出版社。
エレベーターを降りると、すぐに「たちばな書房」と書かれた木製の看板が目に入った。
ドアを開けると、受付に座った女性がにこやかに微笑んだ。
「マサシさんですね? お待ちしておりました。編集長の多田が、もう準備できていますよ」
「は、はい⋯⋯ありがとうございます」
声が少し震えた。
手のひらに、じんわりと汗がにじむ。
カバンの中のファイルを、ぎゅっと握りしめる。
奥の会議室に入ると、窓際の席に、眼鏡をかけた中年男性が座っていた。
グレーがかった髪を短く刈り込み、ネクタイの結び目は少し緩んでいる。
でも、その目は鋭く、マサシの顔を見るなり、じっと観察するような視線を送ってきた。
「多田です。カズくんから、君の話を聞いていましたよ。『才能がある』って、随分褒めてましたね」
「あ、あの⋯⋯ありがとうございます。紹介してもらって、本当に⋯⋯」
「緊張してますか? 大丈夫、リラックスして。僕らは、絵を通して、君の『声』を聞きたいだけですから」
多田編集長の言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
「では、まずはポートフォリオを見せてもらいましょうか」
マサシはカバンからスケッチブックを取り出し、テーブルの上に置いた。
手が少し震える。
でも、深呼吸をして、ページをめくっていく。
風景画、人物画、構図の練習⋯⋯。
多田編集長は、一枚一枚、じっくりと見ていった。
無言の時間が続く。
マサシは、その沈黙に耐えながら、編集長の表情をうかがう。
やがて、スケッチブックの最後に、マサシは想像画の入ったファイルを差し出した。
「これ⋯⋯は、ちょっと、変わったものなんですけど⋯⋯」
多田編集長は、ファイルを受け取り、中身を静かに取り出した。
そして――その絵を見た瞬間、彼の表情が、わずかに動いた。
眉が上がり、眼鏡の奥の目が、一瞬、大きく見開かれた。
それから、彼は絵を手に取り、少し傾けて光にかざしたかと思うと、静かに言った。
「⋯⋯これは、君が描いたのか?」
「はい。夢で見た風景を、そのまま描いただけなんです。特に意味は⋯⋯」
「意味がないからこそ、価値があるんだよ」
多田編集長は、絵をテーブルに置き、マサシの目を見つめた。
「君の他の作品は、技術的には申し分ない。でも、どれも『正解』を描こうとしている。教科書通りの美しさ。でも、これは違う。これは……『声』がある。誰かが、遠くから、君に語りかけているような、そんな感覚だ」
マサシは言葉を失った。
「マンガってな、技術よりも、まず『世界観』が大事なんだ。読者がその世界に吸い込まれるかどうか。君のこの絵には、それが備わっている。まるで、別の次元の扉が、一枚の紙の向こうに開いているみたいだ」
多田編集長は、少し笑った。
「カズくんが『センスがある』って言ってたけど、それ以上のものを感じるよ。これは、才能じゃなくて、『使命』なのかもしれないな」
その言葉に、マサシの胸が、ずきんと鳴った。
使命――?
そんな大それた言葉を、自分に当てはめるなんて、考えたこともなかった。
ただ、描きたくて、夢の続きを確かめたくて、鉛筆を走らせただけだ。
でも、もしかしたら―― 。
もしかしたら、あの夢は、偶然じゃないのかもしれない。
「君、この絵の続きを描いてみないか?」
多田編集長の言葉に、マサシは顔を上げた。
「続き⋯⋯ですか?」
「ああ。この風景の先に、何があるのか。あの人物は誰なのか。鍵は、何を開くのか。君がその世界を、マンガという形で、語ってみてくれないか?」
マサシの頭の中に、ふと、夢の断片がよみがえる。
塔から流れる光の糸。
風に舞う声。
そして、遠くから聞こえる、名前のない呼び声。
――マサシ。
「⋯⋯わかりました」
彼は、小さく、でもはっきりと言った。
「描きます。この世界の続きを、ちゃんと形にしてみます」
多田編集長は満足そうに頷いた。
「楽しみだ。君の『声』が、読者の心に届く日が来るかもしれないな」
面接を終え、外に出たとき、空はすっかり明るくなっていた。
風が頬を撫でて通り過ぎる。
マサシは、カバンの中のファイルに手をやり、ふと笑った。
カズの言葉を思い出した。
「お前は実力があるから大丈夫だとは思うが」
――いや、実力だけじゃない。
きっと、心の奥底にある、誰にも言えなかった想い。
夢の中で見た、見知らぬ世界への憧れ。
それらすべてが、絵になったんだ。
彼は歩きながら、心の中で決めた。
――これから、毎日描く。
あの塔の向こうに何があるのか、あの人物が何を語ろうとしているのか、自分自身の手で、確かめてみよう。
そしていつか――。
誰かの心にも、その風景が、届きますように。
まずはカズからマンガの描き方を習おう。
一世を風靡したカズのマンガ家としての実力ならば、自分の才能を伸ばしてくれるかも知れない。
今は小説家だけの活動で、マンガ家としては引退をしてしまっているが、カズの実力ならば問題ないだろう。
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