元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第9話:禁止令

第9話:禁止令

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    ある日の昼下がり。  

    空は青く、風は穏やかで、木々の葉が微かに揺れる音が、屋敷の静けさをより一層際立たせていた。  

    俺、シュウ・タチバナは、15歳の肉体に宿った元55歳のおっさん。
    前世では甥っ子を一人で育て上げ、社会の荒波にも揉まれ、子供の教育にはそれなりの自信を持っていた。  

    だが、この異世界に転生してからというもの、俺の「教育者としての矜持」は、度々試されている。  

    特に、今こうして囲炉裏端で寝転がっている二人の青年に対しては、正直、頭を抱える日々が続いている。  

    ――フェイとアレン。  

    銀髪の騎士団長フェイは18歳。
    真面目で責任感が強く、戦闘能力も高く、俺の事を「シュウ様」と呼んで敬ってくれる。  

    一方、エレスティア王国の第1王子アレンは20歳。
    優秀な魔導士でありながら、どこか抜けているところがあり、俺の事を「シュウ」と呼び捨てにし、気軽に肩を叩いてくる。  

    二人とも、俺を慕い、俺の屋敷に身を寄せ、今は俺の「教育」を受けている身。  

    だが…… 。 

    その手が、また股間を弄っていた。  

「こらっ、お前ら! 幾ら暇だからって股間を弄くり回してんじゃねーよ!」  

    俺は思わず声を荒げた。  

    二人はびくりと体を震わせ、ゆっくりと手を離したが、顔にはまったく反省の色はない。  

「え~、いいじゃん。子供たちも外にいるんだし」  

    と、アレンがのんびりと肩をすくめる。  

「そうだ。それだけ何もする事が無いって事だよ」  

    と、フェイも平然と返す。  

「なら、部屋でやれよ!」  

「でも、ここが一番リラックスできるし⋯⋯」  

「⋯⋯お前ら、本当に常識ないな」  

    俺は額に手を当て、深くため息をついた。  

    だが、その瞬間。  

「シュウ兄ちゃん、どうしたの?」  

    窓の外から、茶髪で翡翠色の瞳を持つネロが顔を出した。
    10歳の少年。
    未来を見通す「予知眼」を持つが、まだまだ精神は幼く、好奇心旺盛。  

「あっ、またフェイさんとアレンさん、チンポを触ってるよ」  

    と、リオも続く。
    11歳の黒狼族の獣人。
    黒髪に茶色の瞳。
    耳と尻尾が生えていて、走るのが速い。
    俺の事を「兄さん」と呼ぶ。  

「この間もさ、皆んなでお風呂に入ってた時、フェイさんとアレンさん、勃起したチンポから白いオシッコを漏らしてたんだよ」  

    ――――!?  

    俺はその言葉に、思わず目を見開いた。  

「お前ら⋯⋯! あれだけ約束してたのに、子供たちの前でやったのか!?」  

    声は怒りに震える。  

    二人は慌てて股間から手を離し、顔を真っ赤にして立ち上がった。  

「そ、それは⋯⋯その⋯⋯」  

「誤解です! というか、それは⋯⋯」  

「誤解じゃねーよ! 白いオシッコって何だよ! ネロとリオに何を植え付けたと思ってる!」  

「す、すみません⋯⋯!」  

「申し訳ありません、シュウ様⋯⋯!」  

    二人は頭を下げ、そのまま階段を駆け上がり、2階の自室へと逃げ込んでいった。  

     ――――。  

    俺は大きく息を吐き、膝をついた。  

「⋯⋯まずいな。これはまずい。子供たちに変な知識を植え付けたら、あとで大変だ」  

    ネロとリオはまだ年頃。
    性教育は避けて通れない。
    だが、こんな形で知るなんて⋯⋯。  

「ねぇ、シュウ兄ちゃん。あの2人病気なの? 何で白いオシッコが出るの?」  

    ネロが真剣な顔で尋ねる。  

「そう。しかもネバネバしてるの」  

    リオも補足する。  

    俺は一瞬、どう返すか迷った。  

    ――でも、もう知られてしまった以上、誤魔化すのは逆効果だ。  

    俺は膝をついたまま、二人の目を見つめた。  

「⋯⋯ネロ、リオ。あのね。フェイさんとアレンさんが出してた『白いオシッコ』は、病気じゃない。あれは、男の人が感じたときに、体から出る『精液』っていうものなんだ」  

「精液⋯⋯?」  

「うん。男の人の体には、大人になると、ある時期から、股間にある『チンポ』から、気持ちよくなったときに白くてネバネバした液体が出るようになる。あれは、赤ちゃんを作るための『種』なんだよ」  

「赤ちゃんを作る⋯⋯?」  

「そう。女の子と結ばれて、赤ちゃんを授かるための、大切な液体。だから、病気でも、汚いものでもない。ただ⋯⋯」  

    俺は少し間を置き、真剣な顔で続けた。  

「それを、誰かの前で出したり、見せたりするのは、大人として、とても失礼な行為なんだ。特に、子供の前でやるのは、絶対にダメ。理解できる?」  

    二人は真剣な顔でうなずいた。  

「うん⋯⋯」  

「兄さん、フェイさんたち、悪いことしてたんだね」  

「うん。だから、これからは、ちゃんとルールを決めようと思う」  

    俺は立ち上がり、屋敷の中へと戻った。  

    そして、階段を上り、フェイとアレンの部屋の前で立ち止まる。  

「出てこい」  

「は、はい⋯⋯!」  

    二人は恐る恐るドアを開け、顔を出した。  

「座れ」  

    俺の怒気の混ざった声に、二人は廊下に正座する。  

「お前ら、俺が何を言ってたか覚えてるか?」  

「⋯⋯性行為は、相手がいて、プライベートな場所で、大人としての責任を持って行うもの⋯⋯」  

    と、フェイが震える声で答える。  

「その通り。なのに、なぜ子供たちの前で、オナニーなんかしてた?」  

「⋯⋯すみません。つい⋯⋯」  

「つい、じゃねーよ。お前ら、騎士団長と王子だろうが。その立場で、子供たちに変なものを見せるなんて、許されないことだ」  

    二人は頭を深く下げた。  

「⋯⋯これから、俺は、明確なルールを定める」  

    俺は立ち上がり、二人を見下ろした。  

「オナニー禁止令。  

    屋敷内、特に子供たちがいる前では、絶対に股間を触るな。  
    部屋の中でも、音を立ててはいけない。  
    そして、絶対に、誰かに見せたり、話題にしたりするな。  
    これを破った場合――即、この屋敷から出て行ってもらう。  
    いいな?」  

    二人は顔を青くして、震える声で答えた。  

「は、はい⋯⋯!」  

「⋯⋯シュウ様、本当に出て行かなければなりませんか?」  

「ああ。俺は冗談を言ってない。お前らがこの屋敷にいるのは、俺の好意だ。それを踏みにじるなら、もう関係ない」  

    二人は深く頭を下げ、それ以上何も言わなかった。  

    ――――。  

    それから10日間。  

    屋敷は異様なほど静かだった。  

    フェイとアレンは、明らかにイライラしている。  

    食事中も、視線が泳いでいる。  

    訓練中も、集中力が散漫。  

    夜になると、部屋から微かに呻き声が聞こえるが、すぐに我に返って静かになる。  

    ――我慢している。  

    俺はそれを理解していた。  

    だが、これは教育の一環。  

    自制心を鍛えるための試練だ。  

    そして、10日目の夜。  

    二人は、俺の部屋の前で、震える手でノックをした。  

「⋯⋯入っていいか」  

    アレンの声。  

「ああ」  

    二人はゆっくりと入ってきて、俺の前に正座した。  

「⋯⋯シュウ様」  

「シュウ」  

「⋯⋯我慢できなくなりました」  

    フェイが、涙目で言った。  

「毎晩、夢で見てしまって⋯⋯体が熱くて⋯⋯もう⋯⋯はち切れそうなんです!」  

    アレンも、顔を赤くしてうなずく。  

「俺もだ⋯⋯10日間、本当に辛かった。でも、約束は守った。だから⋯⋯」  

「⋯⋯一つだけ、条件を出す」  

    俺は静かに言った。  

「10日に1度、許可を取れば、出していい。  
    ただし、絶対に音を立てず、誰にも見せず、後片付けは完璧にすること。  
    そして、絶対に子供たちの前では、その話題を出さないこと。  
    これだけ守れば、俺は目をつぶる」  

    二人は目を輝かせた。  

「本当ですか!?」  

「ああ。ただし、もう一つ、俺からのプレゼントがある」  

    俺は机の引き出しを開け、中から一つのアイテムを取り出した。  

    それは――ティンガ。  

    地球のオナホール。  

    白いシリコン製で、内部はリアルな感触を再現。  

「これ⋯⋯何ですか?」  

「お前らが我慢するための、代替品だ。これを使えば、手でやるよりずっと気持ちいい。そして、音も抑えられる。清潔にもできる」  

    二人は目を丸くした。  

「⋯⋯シュウ様、これは一体⋯⋯」  

「地球の技術だ。お前らが我慢できるように、俺が用意した。ただし、これも、ルール違反したら即没収。そして、屋敷追放だ」  

「は、はい! 絶対に守ります!」  

    二人は涙を浮かべながら、ティンガを大切そうに抱きしめた。  

    ――――。  

    それから数日。  

    屋敷は少しずつ、平穏を取り戻した。  

    フェイとアレンは、10日に1度の許可日になると、静かに部屋にこもり、ティンガを使って発散するようになった。  

    音はまったく聞こえない。  

    子供たちにも、変な話題は出てこない。  

    そして、ある日。  

「シュウ兄ちゃん」  

    ネロが、真剣な顔で俺を呼んだ。  

「なんだい?」  

「フェイさんとアレンさん、最近、変だよ」  

「変って?」  

「⋯⋯夜になると、部屋から変な音がする。でも、全然、白いオシッコの話題が出ない。それに、顔色がいいし、笑ってるし⋯⋯」  

「⋯⋯なるほど」  

    俺は内心、笑った。  

    ――効果は抜群だな。  

「ネロ、あれはね⋯⋯」  

    俺は少し考えて、微笑んだ。  

「大人の男の人が、ストレスを解消するための、秘密の儀式なんだよ」  

「秘密の儀式⋯⋯?」  

「うん。だから、絶対に覗いちゃダメだよ。大人の世界の、神聖な時間なんだ」  

「⋯⋯へぇ⋯⋯神聖な時間か」  

    ネロは納得したようにうなずいた。  

    リオも、「兄さん、それって、俺たちもいつかできるの?」と聞いてきた。  

「うん。大人になったらね。でも、それまでは、別のことでストレスを解消しなきゃ。例えば⋯⋯勉強とか、訓練とか」  

「⋯⋯勉強はいやだ」  

「訓練は好きだけど、それだけじゃ足りない」  

「⋯⋯将来、お前らにも、俺が同じプレゼントをあげるよ」  

「えっ!?」  

「秘密の儀式の道具、だ」  

    二人は顔を赤くして、慌てて顔を背けた。  

    ――――。  

    夜。  

    俺は自分の部屋で、日記を書いている。  

『今日も、無事に一日が終わった。  

    フェイとアレンも、少しずつ大人の自覚を持ち始めたようだ。  
    オナニー禁止令は、一見過酷に見えるが、自制心を育てるには最適だった。  
    そして、ティンガの導入――これは正解だった。  
    地球の技術が、異世界の性教育に貢献するとはな。  
    ⋯⋯俺も、昔の甥っ子の教育で、似たようなことで悩んだっけ。  
    あの時も、正直に話して、道具を渡して、ルールを決めた。  
    結果、甥っ子は立派な大人になった。  
    ⋯⋯お前らも、きっとそうなるだろう。  
    だが、一つだけ――。  
    ネロとリオには、まだ早すぎる。  
    未来の予知眼や、狼族の本能が、性の知識と混ざったら、危険すぎる。  
    もう少し、子供のままでいてほしい。  
    だから、俺はこれからも、兄として、教育者として、見守っていく。  
    ――そして、必要なら、また『禁止』を下すだろう。  
    だが、その先に、『許可』があることも、ちゃんと教えてやる。  
    それが、俺の役目だ。』  

    ――――。  

    翌朝。  

    フェイとアレンは、朝食の席で、静かに笑っていた。  

「⋯⋯シュウ様」  

「あぁ?」  

「⋯⋯ありがとう。あなたのおかげで、俺たちは、少し大人になった気がします」  

「⋯⋯俺もだ。初めて、自制の意味がわかった」  

    俺は、二人を見つめ、小さくうなずいた。  

「⋯⋯次は、相手を見つけることだな」  

「えっ!?」  

「⋯⋯まだ早いよ!」  

    二人は慌てて顔を赤くした。  

    ――――。  

    俺は、コーヒーカップを口に運びながら、内心で笑った。  

    教育は、まだ終わってない。
    だが、少しずつ、進んでいる。


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