元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第21話:久し振りの買い物

第21話:久し振りの買い物

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 今日は朝から空が澄み切っていて、陽の光が森の木々の間を縫ってテラスに差し込んでいた。
 ログハウスの窓を開け放つと、朝露の香りと、遠くから聞こえる小川のせせらぎが心地よく耳に届く。
 ネロがまだ寝ぼけ眼でリビングに現れ、「兄ちゃん、今日買い物行くんだっけ?」と聞いてきた。
 俺はすでに準備万端で、革のポーチに異次元収納の指輪を嵌めていた。  

「ああ、行くよ。ミラが薬に必要な材料が足りないって言ってたからな。今日は王都まで行って、まとめて仕入れてくる。お前も風呂の材料に使う魔物の牙とか、乾燥させた鱗とか、そういうの選ぶの好きだろ?」  

 ネロは目をキラリと輝かせ、「もちろん! 特にグリーンドラゴンの鱗、あの青緑の輝き、最高だもん!」と言いながら、パジャマのままテーブルにつき、ミラが淹れてくれたハーブティーを一口啜った。
 その横でリオも現れ、黒髪を乱したまま「兄さん、今日は何買うの? 俺、ブラックバットの爪が欲しい。前回の分、使い切っちゃったから」と言いながら、テーブルに置かれたパンを手に取った。  

「お前ら、また風呂場で変なことする気だろ?」と俺が笑うと、リオは顔を赤らめつつも「別に⋯⋯兄さんが許可してくれてるんだし、悪いことじゃないだろ」と言い返す。
 ネロも「フェイさんも来るし、アレン兄さんも来るし、楽しいんだもん」と平然と言い放つ。  

「ああ、わかってるよ。まあ、俺も別に構わない。ただ、今日は買い物だから、そのへんの材料もちゃんと選んでこいよ。特にミラが使う薬草関係は、品質が大事だからな」  

 ミラがキッチンから顔を出し、

「シュウ様、乾燥させたグレイウォルフの肝臓、あとダークスライムの凝縮液、あと……あとは鉱物系の魔晶石も補充しておきたいです。特に水属性と風属性の純度の高いもの。あと、できれば古代の遺跡で採れる『月の涙』っていう鉱石も⋯⋯あんまり流通してないんですけど、王都の魔法屋ならあるかもしれません」  

「了解。全部メモっておくよ」  

 朝食を終えると、全員がそれぞれの準備を始めた。
 フェイは騎士団長の鎧を着るわけにもいかず、普段使いの革のコートに身を包み、銀髪を後ろで結んでいる。
 彼も「シュウ様、今日は私も同行させていただきます。
 万が一の警備のためです」と真面目な顔で言うが、目はすでに「今日の夜の風呂」を想像しているようで、微妙に潤んでいる。  

 アレンはいつものようにだらしない格好で、「シュウ、今日は俺も行くよ。王都の酒場で新しい酒が出たって聞いたし、それも買って帰るわ」
 彼は元王子だが、今は完全に俺の家族の一員として、肩の力を抜いて暮らしている。
 ヨシュアも「シュウさん、俺も⋯⋯ちょっと外の世界を見てみたいです。オナニーのことじゃなくて、本当に」と真剣な顔で言う。
 彼はまだオナニーに慣れていないようで、風呂場に行くのも恥ずかしがっているが、俺は「無理にやらなくていい。でも、気になるなら、遠慮なく聞いてきてくれ」といつも言っている。  

「よし、全員準備できたか?」  

「はい!」  

「おっけー!」  

「シュウ様、異次元収納の容量、大丈夫ですか? 結構買うことになりますよ?」  

「大丈夫だ。あの空間、広さは無限に近いからな。気にせず買え」  

 俺は異次元収納の指輪を軽く撫でると、空間に意識を集中させた。
 ここにはすでに、前回の買い物で仕入れた魔物の骨や、乾燥させたドラゴンの翼の破片、希少な魔法書などもしまってある。
 整理は適当だが、必要なものはすぐに取り出せるように分類してある。  

 出発の合図とともに、ログハウスを後にした。
 森を抜けると、馬車を待たせておいた場所に到着。
 馬車は魔法で動くタイプで、馬はいらない。
 代わりに、小さな魔導エンジンが後部に取り付けられており、俺の魔力で動かすことができる。  

「よし、乗れ。出発だ」  

 全員が乗り込むと、馬車は静かに動き出した。
 道は舗装されており、森を抜け、草原を越えて、遠くにエレスティア王都の白亜の城壁が見えてきた。
 空には青い雲が浮かび、風が心地よく窓から吹き込む。
 ネロとリオは並んで座り、フェイは向かい側で目を閉じて瞑想しているように見えるが、時折唇を舐める仕草から、頭の中は風呂場のことばかりだとバレバレだ。
 アレンは窓の外を眺めながら、「ああ、王都か⋯⋯昔は毎日ここにいたけど、今は全然来ないな」と呟く。
 ヨシュアは「兄さんたちが暮らしてる場所の方が、なんか⋯⋯落ち着きます」と小さく笑った。  

 ミラは鞄からノートを取り出し、

「まずは薬屋から。それから魔物素材屋、鉱物屋、あと⋯⋯あ、魔法書店も寄ってください。新しい薬の処方が載った本があるらしいので」  

「了解。全部回るぞ」  

 王都に到着すると、街は活気に満ちていた。
 商人たちが露店を出し、魔法使いが浮遊する看板を掲げ、子供たちが笑いながら駆け回っている。
 俺たちの馬車が通ると、時折「あっ、あれは騎士団長のフェイ様だ!」とか「あの銀髪の人は王子様じゃ⋯⋯?」と囁き声が聞こえるが、フェイとヨシュアは特に反応せず、俺たちはそのまま薬屋へと向かった。  

 薬屋の店主は年配の男性で、ミラとは顔なじみのようだ。  

「ミラさん、久しぶりですね! 今日は何のご用ですか?」  

「グレイウォルフの肝臓、ダークスライムの凝縮液、あと水属性と風属性の魔晶石、純度の高いものを。それと⋯⋯『月の涙』、ありますか?」  

 店主は目を丸くして、「おや、『月の涙』ですか? 実は先週、冒険者ギルドから持ち込まれたばかりで⋯⋯まだ三粒しかありませんが」  

「いただけますか?」  

「もちろん、ミラさんなら特別価格で」  

 ミラは満足げに頷き、俺は異次元収納にそれらを一つずつ収納していく。
 グレイウォルフの肝臓は黒ずんだ袋に入れられており、触ると冷たい。
 ダークスライムの凝縮液は瓶詰めで、中は黒い粘液がゆらゆらと動いている。
 魔晶石は透明な箱に入れられており、水属性は瑠璃色、風属性は薄緑色で、光を受けると内部で微かに輝く。
 『月の涙』は、まるで月光を閉じ込めたような白銀の鉱石で、手に取ると心が落ち着くような気がした。  

「次は魔物素材屋だな」  

 次の店は、外観こそ地味だが、中に入ると壁一面に魔物の牙、爪、鱗、皮膚が乾燥させられてぶら下げられていた。
 匂いは独特だが、俺たちはもう慣れきっている。  

「おや、シュウ様、ネロくん、リオくん、またいらっしゃいましたか!」

 と店主が笑顔で迎えてくれる。  

「ああ、今日はまとめて仕入れに来た。グリーンドラゴンの鱗、ブラックバットの爪、あと⋯⋯レッドタイガーの牙も欲しいな。風呂場のアロマに使う」  

「承知しました! グリーンドラゴンの鱗は、先週入荷したばかりで、色がとても鮮やかですよ。ブラックバットの爪は、先端が鋭くて、触るとちょっと痛いですが⋯⋯まあ、使い方次第ですね」  

 ネロとリオは目を輝かせながら、それぞれの素材を手に取り、感触を確かめる。
 ネロは「この鱗、光の加減で虹色に見える⋯⋯これ、風呂に入れたら絶対きれいだよ!」と興奮気味。
 リオは「爪の鋭さ、最高だ⋯⋯これで風呂場の壁に刻んでもいい?」と俺に確認する。  

「ダメだ。壁はダメ。専用の木の板を用意してあるだろ?」  

「ああ⋯⋯そうだった」  

 それでも二人は満足そうに、それぞれの素材を選び、俺が異次元収納に収める。
 レッドタイガーの牙は、赤みがかった黄金色で、先端が鋭く、触ると微かに熱を持っているように感じる。
 これも風呂場のアロマに使う予定だ。  

「次は鉱物屋か」  

 鉱物屋は、まるで洞窟のような店内で、天井から吊るされた魔法灯が鉱石を照らしている。
 棚には無数の鉱石が並び、それぞれが微かに光を放っている。
 店主はマントを羽織った老人で、目が鋭い。  

「シュウ様、またいらっしゃいましたか。今日は何をお求めですか?」  

「火属性と土属性の魔晶石、あと⋯⋯古代鉱石類も見せてほしい。特に『星の欠片』と『大地の心臓』」  

「ほう、『星の欠片』ですか⋯⋯稀少品ですが、一粒だけありますよ」  

 彼は奥の棚から、小さな箱を取り出し、中には星空のように光る鉱石が一粒。
 もう一つの『大地の心臓』は、深紅の鉱石で、手に取ると鼓動のように微かに震えている。  

「これらも収納する」  

 次に魔法書店に立ち寄る。
 店内は静かで、本の匂いが漂っている。
 ミラが奥の棚を物色し、「ありました! 『古代薬学大全』と『魔物素材とその応用』、あと⋯⋯『異世界の香りとその効能』も」  

「全部買うか?」  

「はい、シュウ様。特に『異世界の香り』、風呂場のアロマに使えるかも⋯⋯」  

 ミラの顔が少し赤くなる。
 俺は笑いながら「ああ、もちろん。どんどん買っていいぞ」と言って、本も異次元収納にしまう。  

「あとは⋯⋯アレンの酒か」  

 酒屋に着くと、アレンは目を輝かせ、「シュウ、これだ! 『月光の滴』って酒、聞いたことある? 月の満ち欠けの時期にしか作れない幻の酒らしい」  

「高いぞ」  

「わかってる。でも、今日は特別だ。買わせて」  

「いいよ。ただし、風呂場で飲むのは禁止だ」  

「⋯⋯了解」  

 最後に、ヨシュアが、

「シュウさん、あの⋯⋯ちょっとだけ、街を歩いてみたいです。一人で」  

 俺は少し考え、

「わかった。ただし、危ないところには行くな。1時間後に馬車に戻ってくる約束だ。フェイ、監視は頼む」  

「承知しました、シュウ様」  

 ヨシュアは嬉しそうに頷き、一人で街へと消えていった。  

 俺たちは一旦馬車に戻り、全員の買い物が終わったことを確認。
 異次元収納には、薬草、魔物素材、鉱石、魔法書、酒⋯⋯ありとあらゆるものが詰め込まれているが、容量はまだ余裕だ。  

「よし、帰るか」  

 馬車が動き出し、王都を後にした。
 帰り道、ネロとリオは「今日の風呂、何から始める?」と盛り上がり、フェイは「まずはグリーンドラゴンの鱗から⋯⋯香りを楽しんでから、次はブラックバットの爪で⋯⋯」と呟き、アレンは「月光の滴、風呂上がりに飲むか⋯⋯」と笑う。  

ミラは、

「シュウさん、今日買った材料、全部使い切れるように頑張りますね」

 と言い、顔を赤らめた。  

 俺はテラス付きのログハウスを見ながら、心の中で笑った。  

 ――こんな毎日が、ずっと続けばいい。  

 馬車は森の中を通り、夕焼けが空を染める頃、我が家に到着した。  

 風呂場の湯気が立ち上り、今日もまた、家族の時間が始まる。


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