21 / 56
第21話:久し振りの買い物
第21話:久し振りの買い物
しおりを挟む
今日は朝から空が澄み切っていて、陽の光が森の木々の間を縫ってテラスに差し込んでいた。
ログハウスの窓を開け放つと、朝露の香りと、遠くから聞こえる小川のせせらぎが心地よく耳に届く。
ネロがまだ寝ぼけ眼でリビングに現れ、「兄ちゃん、今日買い物行くんだっけ?」と聞いてきた。
俺はすでに準備万端で、革のポーチに異次元収納の指輪を嵌めていた。
「ああ、行くよ。ミラが薬に必要な材料が足りないって言ってたからな。今日は王都まで行って、まとめて仕入れてくる。お前も風呂の材料に使う魔物の牙とか、乾燥させた鱗とか、そういうの選ぶの好きだろ?」
ネロは目をキラリと輝かせ、「もちろん! 特にグリーンドラゴンの鱗、あの青緑の輝き、最高だもん!」と言いながら、パジャマのままテーブルにつき、ミラが淹れてくれたハーブティーを一口啜った。
その横でリオも現れ、黒髪を乱したまま「兄さん、今日は何買うの? 俺、ブラックバットの爪が欲しい。前回の分、使い切っちゃったから」と言いながら、テーブルに置かれたパンを手に取った。
「お前ら、また風呂場で変なことする気だろ?」と俺が笑うと、リオは顔を赤らめつつも「別に⋯⋯兄さんが許可してくれてるんだし、悪いことじゃないだろ」と言い返す。
ネロも「フェイさんも来るし、アレン兄さんも来るし、楽しいんだもん」と平然と言い放つ。
「ああ、わかってるよ。まあ、俺も別に構わない。ただ、今日は買い物だから、そのへんの材料もちゃんと選んでこいよ。特にミラが使う薬草関係は、品質が大事だからな」
ミラがキッチンから顔を出し、
「シュウ様、乾燥させたグレイウォルフの肝臓、あとダークスライムの凝縮液、あと……あとは鉱物系の魔晶石も補充しておきたいです。特に水属性と風属性の純度の高いもの。あと、できれば古代の遺跡で採れる『月の涙』っていう鉱石も⋯⋯あんまり流通してないんですけど、王都の魔法屋ならあるかもしれません」
「了解。全部メモっておくよ」
朝食を終えると、全員がそれぞれの準備を始めた。
フェイは騎士団長の鎧を着るわけにもいかず、普段使いの革のコートに身を包み、銀髪を後ろで結んでいる。
彼も「シュウ様、今日は私も同行させていただきます。
万が一の警備のためです」と真面目な顔で言うが、目はすでに「今日の夜の風呂」を想像しているようで、微妙に潤んでいる。
アレンはいつものようにだらしない格好で、「シュウ、今日は俺も行くよ。王都の酒場で新しい酒が出たって聞いたし、それも買って帰るわ」
彼は元王子だが、今は完全に俺の家族の一員として、肩の力を抜いて暮らしている。
ヨシュアも「シュウさん、俺も⋯⋯ちょっと外の世界を見てみたいです。オナニーのことじゃなくて、本当に」と真剣な顔で言う。
彼はまだオナニーに慣れていないようで、風呂場に行くのも恥ずかしがっているが、俺は「無理にやらなくていい。でも、気になるなら、遠慮なく聞いてきてくれ」といつも言っている。
「よし、全員準備できたか?」
「はい!」
「おっけー!」
「シュウ様、異次元収納の容量、大丈夫ですか? 結構買うことになりますよ?」
「大丈夫だ。あの空間、広さは無限に近いからな。気にせず買え」
俺は異次元収納の指輪を軽く撫でると、空間に意識を集中させた。
ここにはすでに、前回の買い物で仕入れた魔物の骨や、乾燥させたドラゴンの翼の破片、希少な魔法書などもしまってある。
整理は適当だが、必要なものはすぐに取り出せるように分類してある。
出発の合図とともに、ログハウスを後にした。
森を抜けると、馬車を待たせておいた場所に到着。
馬車は魔法で動くタイプで、馬はいらない。
代わりに、小さな魔導エンジンが後部に取り付けられており、俺の魔力で動かすことができる。
「よし、乗れ。出発だ」
全員が乗り込むと、馬車は静かに動き出した。
道は舗装されており、森を抜け、草原を越えて、遠くにエレスティア王都の白亜の城壁が見えてきた。
空には青い雲が浮かび、風が心地よく窓から吹き込む。
ネロとリオは並んで座り、フェイは向かい側で目を閉じて瞑想しているように見えるが、時折唇を舐める仕草から、頭の中は風呂場のことばかりだとバレバレだ。
アレンは窓の外を眺めながら、「ああ、王都か⋯⋯昔は毎日ここにいたけど、今は全然来ないな」と呟く。
ヨシュアは「兄さんたちが暮らしてる場所の方が、なんか⋯⋯落ち着きます」と小さく笑った。
ミラは鞄からノートを取り出し、
「まずは薬屋から。それから魔物素材屋、鉱物屋、あと⋯⋯あ、魔法書店も寄ってください。新しい薬の処方が載った本があるらしいので」
「了解。全部回るぞ」
王都に到着すると、街は活気に満ちていた。
商人たちが露店を出し、魔法使いが浮遊する看板を掲げ、子供たちが笑いながら駆け回っている。
俺たちの馬車が通ると、時折「あっ、あれは騎士団長のフェイ様だ!」とか「あの銀髪の人は王子様じゃ⋯⋯?」と囁き声が聞こえるが、フェイとヨシュアは特に反応せず、俺たちはそのまま薬屋へと向かった。
薬屋の店主は年配の男性で、ミラとは顔なじみのようだ。
「ミラさん、久しぶりですね! 今日は何のご用ですか?」
「グレイウォルフの肝臓、ダークスライムの凝縮液、あと水属性と風属性の魔晶石、純度の高いものを。それと⋯⋯『月の涙』、ありますか?」
店主は目を丸くして、「おや、『月の涙』ですか? 実は先週、冒険者ギルドから持ち込まれたばかりで⋯⋯まだ三粒しかありませんが」
「いただけますか?」
「もちろん、ミラさんなら特別価格で」
ミラは満足げに頷き、俺は異次元収納にそれらを一つずつ収納していく。
グレイウォルフの肝臓は黒ずんだ袋に入れられており、触ると冷たい。
ダークスライムの凝縮液は瓶詰めで、中は黒い粘液がゆらゆらと動いている。
魔晶石は透明な箱に入れられており、水属性は瑠璃色、風属性は薄緑色で、光を受けると内部で微かに輝く。
『月の涙』は、まるで月光を閉じ込めたような白銀の鉱石で、手に取ると心が落ち着くような気がした。
「次は魔物素材屋だな」
次の店は、外観こそ地味だが、中に入ると壁一面に魔物の牙、爪、鱗、皮膚が乾燥させられてぶら下げられていた。
匂いは独特だが、俺たちはもう慣れきっている。
「おや、シュウ様、ネロくん、リオくん、またいらっしゃいましたか!」
と店主が笑顔で迎えてくれる。
「ああ、今日はまとめて仕入れに来た。グリーンドラゴンの鱗、ブラックバットの爪、あと⋯⋯レッドタイガーの牙も欲しいな。風呂場のアロマに使う」
「承知しました! グリーンドラゴンの鱗は、先週入荷したばかりで、色がとても鮮やかですよ。ブラックバットの爪は、先端が鋭くて、触るとちょっと痛いですが⋯⋯まあ、使い方次第ですね」
ネロとリオは目を輝かせながら、それぞれの素材を手に取り、感触を確かめる。
ネロは「この鱗、光の加減で虹色に見える⋯⋯これ、風呂に入れたら絶対きれいだよ!」と興奮気味。
リオは「爪の鋭さ、最高だ⋯⋯これで風呂場の壁に刻んでもいい?」と俺に確認する。
「ダメだ。壁はダメ。専用の木の板を用意してあるだろ?」
「ああ⋯⋯そうだった」
それでも二人は満足そうに、それぞれの素材を選び、俺が異次元収納に収める。
レッドタイガーの牙は、赤みがかった黄金色で、先端が鋭く、触ると微かに熱を持っているように感じる。
これも風呂場のアロマに使う予定だ。
「次は鉱物屋か」
鉱物屋は、まるで洞窟のような店内で、天井から吊るされた魔法灯が鉱石を照らしている。
棚には無数の鉱石が並び、それぞれが微かに光を放っている。
店主はマントを羽織った老人で、目が鋭い。
「シュウ様、またいらっしゃいましたか。今日は何をお求めですか?」
「火属性と土属性の魔晶石、あと⋯⋯古代鉱石類も見せてほしい。特に『星の欠片』と『大地の心臓』」
「ほう、『星の欠片』ですか⋯⋯稀少品ですが、一粒だけありますよ」
彼は奥の棚から、小さな箱を取り出し、中には星空のように光る鉱石が一粒。
もう一つの『大地の心臓』は、深紅の鉱石で、手に取ると鼓動のように微かに震えている。
「これらも収納する」
次に魔法書店に立ち寄る。
店内は静かで、本の匂いが漂っている。
ミラが奥の棚を物色し、「ありました! 『古代薬学大全』と『魔物素材とその応用』、あと⋯⋯『異世界の香りとその効能』も」
「全部買うか?」
「はい、シュウ様。特に『異世界の香り』、風呂場のアロマに使えるかも⋯⋯」
ミラの顔が少し赤くなる。
俺は笑いながら「ああ、もちろん。どんどん買っていいぞ」と言って、本も異次元収納にしまう。
「あとは⋯⋯アレンの酒か」
酒屋に着くと、アレンは目を輝かせ、「シュウ、これだ! 『月光の滴』って酒、聞いたことある? 月の満ち欠けの時期にしか作れない幻の酒らしい」
「高いぞ」
「わかってる。でも、今日は特別だ。買わせて」
「いいよ。ただし、風呂場で飲むのは禁止だ」
「⋯⋯了解」
最後に、ヨシュアが、
「シュウさん、あの⋯⋯ちょっとだけ、街を歩いてみたいです。一人で」
俺は少し考え、
「わかった。ただし、危ないところには行くな。1時間後に馬車に戻ってくる約束だ。フェイ、監視は頼む」
「承知しました、シュウ様」
ヨシュアは嬉しそうに頷き、一人で街へと消えていった。
俺たちは一旦馬車に戻り、全員の買い物が終わったことを確認。
異次元収納には、薬草、魔物素材、鉱石、魔法書、酒⋯⋯ありとあらゆるものが詰め込まれているが、容量はまだ余裕だ。
「よし、帰るか」
馬車が動き出し、王都を後にした。
帰り道、ネロとリオは「今日の風呂、何から始める?」と盛り上がり、フェイは「まずはグリーンドラゴンの鱗から⋯⋯香りを楽しんでから、次はブラックバットの爪で⋯⋯」と呟き、アレンは「月光の滴、風呂上がりに飲むか⋯⋯」と笑う。
ミラは、
「シュウさん、今日買った材料、全部使い切れるように頑張りますね」
と言い、顔を赤らめた。
俺はテラス付きのログハウスを見ながら、心の中で笑った。
――こんな毎日が、ずっと続けばいい。
馬車は森の中を通り、夕焼けが空を染める頃、我が家に到着した。
風呂場の湯気が立ち上り、今日もまた、家族の時間が始まる。
ログハウスの窓を開け放つと、朝露の香りと、遠くから聞こえる小川のせせらぎが心地よく耳に届く。
ネロがまだ寝ぼけ眼でリビングに現れ、「兄ちゃん、今日買い物行くんだっけ?」と聞いてきた。
俺はすでに準備万端で、革のポーチに異次元収納の指輪を嵌めていた。
「ああ、行くよ。ミラが薬に必要な材料が足りないって言ってたからな。今日は王都まで行って、まとめて仕入れてくる。お前も風呂の材料に使う魔物の牙とか、乾燥させた鱗とか、そういうの選ぶの好きだろ?」
ネロは目をキラリと輝かせ、「もちろん! 特にグリーンドラゴンの鱗、あの青緑の輝き、最高だもん!」と言いながら、パジャマのままテーブルにつき、ミラが淹れてくれたハーブティーを一口啜った。
その横でリオも現れ、黒髪を乱したまま「兄さん、今日は何買うの? 俺、ブラックバットの爪が欲しい。前回の分、使い切っちゃったから」と言いながら、テーブルに置かれたパンを手に取った。
「お前ら、また風呂場で変なことする気だろ?」と俺が笑うと、リオは顔を赤らめつつも「別に⋯⋯兄さんが許可してくれてるんだし、悪いことじゃないだろ」と言い返す。
ネロも「フェイさんも来るし、アレン兄さんも来るし、楽しいんだもん」と平然と言い放つ。
「ああ、わかってるよ。まあ、俺も別に構わない。ただ、今日は買い物だから、そのへんの材料もちゃんと選んでこいよ。特にミラが使う薬草関係は、品質が大事だからな」
ミラがキッチンから顔を出し、
「シュウ様、乾燥させたグレイウォルフの肝臓、あとダークスライムの凝縮液、あと……あとは鉱物系の魔晶石も補充しておきたいです。特に水属性と風属性の純度の高いもの。あと、できれば古代の遺跡で採れる『月の涙』っていう鉱石も⋯⋯あんまり流通してないんですけど、王都の魔法屋ならあるかもしれません」
「了解。全部メモっておくよ」
朝食を終えると、全員がそれぞれの準備を始めた。
フェイは騎士団長の鎧を着るわけにもいかず、普段使いの革のコートに身を包み、銀髪を後ろで結んでいる。
彼も「シュウ様、今日は私も同行させていただきます。
万が一の警備のためです」と真面目な顔で言うが、目はすでに「今日の夜の風呂」を想像しているようで、微妙に潤んでいる。
アレンはいつものようにだらしない格好で、「シュウ、今日は俺も行くよ。王都の酒場で新しい酒が出たって聞いたし、それも買って帰るわ」
彼は元王子だが、今は完全に俺の家族の一員として、肩の力を抜いて暮らしている。
ヨシュアも「シュウさん、俺も⋯⋯ちょっと外の世界を見てみたいです。オナニーのことじゃなくて、本当に」と真剣な顔で言う。
彼はまだオナニーに慣れていないようで、風呂場に行くのも恥ずかしがっているが、俺は「無理にやらなくていい。でも、気になるなら、遠慮なく聞いてきてくれ」といつも言っている。
「よし、全員準備できたか?」
「はい!」
「おっけー!」
「シュウ様、異次元収納の容量、大丈夫ですか? 結構買うことになりますよ?」
「大丈夫だ。あの空間、広さは無限に近いからな。気にせず買え」
俺は異次元収納の指輪を軽く撫でると、空間に意識を集中させた。
ここにはすでに、前回の買い物で仕入れた魔物の骨や、乾燥させたドラゴンの翼の破片、希少な魔法書などもしまってある。
整理は適当だが、必要なものはすぐに取り出せるように分類してある。
出発の合図とともに、ログハウスを後にした。
森を抜けると、馬車を待たせておいた場所に到着。
馬車は魔法で動くタイプで、馬はいらない。
代わりに、小さな魔導エンジンが後部に取り付けられており、俺の魔力で動かすことができる。
「よし、乗れ。出発だ」
全員が乗り込むと、馬車は静かに動き出した。
道は舗装されており、森を抜け、草原を越えて、遠くにエレスティア王都の白亜の城壁が見えてきた。
空には青い雲が浮かび、風が心地よく窓から吹き込む。
ネロとリオは並んで座り、フェイは向かい側で目を閉じて瞑想しているように見えるが、時折唇を舐める仕草から、頭の中は風呂場のことばかりだとバレバレだ。
アレンは窓の外を眺めながら、「ああ、王都か⋯⋯昔は毎日ここにいたけど、今は全然来ないな」と呟く。
ヨシュアは「兄さんたちが暮らしてる場所の方が、なんか⋯⋯落ち着きます」と小さく笑った。
ミラは鞄からノートを取り出し、
「まずは薬屋から。それから魔物素材屋、鉱物屋、あと⋯⋯あ、魔法書店も寄ってください。新しい薬の処方が載った本があるらしいので」
「了解。全部回るぞ」
王都に到着すると、街は活気に満ちていた。
商人たちが露店を出し、魔法使いが浮遊する看板を掲げ、子供たちが笑いながら駆け回っている。
俺たちの馬車が通ると、時折「あっ、あれは騎士団長のフェイ様だ!」とか「あの銀髪の人は王子様じゃ⋯⋯?」と囁き声が聞こえるが、フェイとヨシュアは特に反応せず、俺たちはそのまま薬屋へと向かった。
薬屋の店主は年配の男性で、ミラとは顔なじみのようだ。
「ミラさん、久しぶりですね! 今日は何のご用ですか?」
「グレイウォルフの肝臓、ダークスライムの凝縮液、あと水属性と風属性の魔晶石、純度の高いものを。それと⋯⋯『月の涙』、ありますか?」
店主は目を丸くして、「おや、『月の涙』ですか? 実は先週、冒険者ギルドから持ち込まれたばかりで⋯⋯まだ三粒しかありませんが」
「いただけますか?」
「もちろん、ミラさんなら特別価格で」
ミラは満足げに頷き、俺は異次元収納にそれらを一つずつ収納していく。
グレイウォルフの肝臓は黒ずんだ袋に入れられており、触ると冷たい。
ダークスライムの凝縮液は瓶詰めで、中は黒い粘液がゆらゆらと動いている。
魔晶石は透明な箱に入れられており、水属性は瑠璃色、風属性は薄緑色で、光を受けると内部で微かに輝く。
『月の涙』は、まるで月光を閉じ込めたような白銀の鉱石で、手に取ると心が落ち着くような気がした。
「次は魔物素材屋だな」
次の店は、外観こそ地味だが、中に入ると壁一面に魔物の牙、爪、鱗、皮膚が乾燥させられてぶら下げられていた。
匂いは独特だが、俺たちはもう慣れきっている。
「おや、シュウ様、ネロくん、リオくん、またいらっしゃいましたか!」
と店主が笑顔で迎えてくれる。
「ああ、今日はまとめて仕入れに来た。グリーンドラゴンの鱗、ブラックバットの爪、あと⋯⋯レッドタイガーの牙も欲しいな。風呂場のアロマに使う」
「承知しました! グリーンドラゴンの鱗は、先週入荷したばかりで、色がとても鮮やかですよ。ブラックバットの爪は、先端が鋭くて、触るとちょっと痛いですが⋯⋯まあ、使い方次第ですね」
ネロとリオは目を輝かせながら、それぞれの素材を手に取り、感触を確かめる。
ネロは「この鱗、光の加減で虹色に見える⋯⋯これ、風呂に入れたら絶対きれいだよ!」と興奮気味。
リオは「爪の鋭さ、最高だ⋯⋯これで風呂場の壁に刻んでもいい?」と俺に確認する。
「ダメだ。壁はダメ。専用の木の板を用意してあるだろ?」
「ああ⋯⋯そうだった」
それでも二人は満足そうに、それぞれの素材を選び、俺が異次元収納に収める。
レッドタイガーの牙は、赤みがかった黄金色で、先端が鋭く、触ると微かに熱を持っているように感じる。
これも風呂場のアロマに使う予定だ。
「次は鉱物屋か」
鉱物屋は、まるで洞窟のような店内で、天井から吊るされた魔法灯が鉱石を照らしている。
棚には無数の鉱石が並び、それぞれが微かに光を放っている。
店主はマントを羽織った老人で、目が鋭い。
「シュウ様、またいらっしゃいましたか。今日は何をお求めですか?」
「火属性と土属性の魔晶石、あと⋯⋯古代鉱石類も見せてほしい。特に『星の欠片』と『大地の心臓』」
「ほう、『星の欠片』ですか⋯⋯稀少品ですが、一粒だけありますよ」
彼は奥の棚から、小さな箱を取り出し、中には星空のように光る鉱石が一粒。
もう一つの『大地の心臓』は、深紅の鉱石で、手に取ると鼓動のように微かに震えている。
「これらも収納する」
次に魔法書店に立ち寄る。
店内は静かで、本の匂いが漂っている。
ミラが奥の棚を物色し、「ありました! 『古代薬学大全』と『魔物素材とその応用』、あと⋯⋯『異世界の香りとその効能』も」
「全部買うか?」
「はい、シュウ様。特に『異世界の香り』、風呂場のアロマに使えるかも⋯⋯」
ミラの顔が少し赤くなる。
俺は笑いながら「ああ、もちろん。どんどん買っていいぞ」と言って、本も異次元収納にしまう。
「あとは⋯⋯アレンの酒か」
酒屋に着くと、アレンは目を輝かせ、「シュウ、これだ! 『月光の滴』って酒、聞いたことある? 月の満ち欠けの時期にしか作れない幻の酒らしい」
「高いぞ」
「わかってる。でも、今日は特別だ。買わせて」
「いいよ。ただし、風呂場で飲むのは禁止だ」
「⋯⋯了解」
最後に、ヨシュアが、
「シュウさん、あの⋯⋯ちょっとだけ、街を歩いてみたいです。一人で」
俺は少し考え、
「わかった。ただし、危ないところには行くな。1時間後に馬車に戻ってくる約束だ。フェイ、監視は頼む」
「承知しました、シュウ様」
ヨシュアは嬉しそうに頷き、一人で街へと消えていった。
俺たちは一旦馬車に戻り、全員の買い物が終わったことを確認。
異次元収納には、薬草、魔物素材、鉱石、魔法書、酒⋯⋯ありとあらゆるものが詰め込まれているが、容量はまだ余裕だ。
「よし、帰るか」
馬車が動き出し、王都を後にした。
帰り道、ネロとリオは「今日の風呂、何から始める?」と盛り上がり、フェイは「まずはグリーンドラゴンの鱗から⋯⋯香りを楽しんでから、次はブラックバットの爪で⋯⋯」と呟き、アレンは「月光の滴、風呂上がりに飲むか⋯⋯」と笑う。
ミラは、
「シュウさん、今日買った材料、全部使い切れるように頑張りますね」
と言い、顔を赤らめた。
俺はテラス付きのログハウスを見ながら、心の中で笑った。
――こんな毎日が、ずっと続けばいい。
馬車は森の中を通り、夕焼けが空を染める頃、我が家に到着した。
風呂場の湯気が立ち上り、今日もまた、家族の時間が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~
月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」
猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。
彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。
チート能力? 攻撃魔法?
いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。
「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」
ゴブリン相手に正座で茶を勧め、
戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、
牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。
そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……?
「野暮な振る舞いは許しません」
これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる