元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第45話:星の核が震えるとき

第45話:星の核が震えるとき

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 黒い獣が咆哮した瞬間、  
 星の道全体が大きく波打った。

 光の帯が揺れ、  
 星の粒が逆流し、  
 空間そのものが軋む。

 シュウは胸の奥で星が暴れるのを感じ、思わず膝をつきそうになった。

「っ⋯⋯く⋯⋯!」

 胸の奥が熱い。  
 痛みではない。  
 だが、心臓の奥が焼けるような熱を帯びている。

 アレンが駆け寄る。

「シュウ、無理をするな!」

「⋯⋯まだ⋯⋯いける⋯⋯」

 シュウは歯を食いしばり、立ち上がった。

 足元の光の帯が、脈動している。

 まるで――  
 星の道そのものが呼吸しているかのように。

 光が吸い込まれ、  
 光が吐き出され、  
 そのたびに空間が震える。

 ネロが息を呑んだ。

「⋯⋯兄ちゃん⋯⋯道が⋯⋯揺れてる⋯⋯」

 その声は震えていた。  
 ネロの瞳の奥で、星の線が乱れ、まるで霧の中に消えていくように揺らいでいる。

 リオが低く唸る。

「兄さんの光に⋯⋯反応してるんだ」

 アレンが目を細めた。

「星の道は、本来“選ばれた者”にしか反応しない。だが⋯⋯今のシュウは⋯⋯」

 闇のシュウが言葉を継ぐ。

「“選ばれた者”ではなく――星の道そのものに選び返されている」

 シュウは息を呑んだ。

(⋯⋯選び返されている⋯⋯? 俺が星の道を選んだんじゃなくて⋯⋯星の道が、俺を⋯⋯?)

 黒い獣は、星光を浴びるたびに形を変えていく。

 霧が渦を巻き、  
 輪郭が歪み、  
 内部で何かが蠢いている。

 ネロが額を押さえた。

「⋯⋯っ⋯⋯兄ちゃん⋯⋯視界が⋯⋯」

 ネロの瞳に映る線が、まるでノイズのように乱れている。

 リオがネロの肩を支えた。

「無理しないで。あれを見続けるのは危険」

 アレンが黒い獣を見据える。

「⋯⋯あれは、形を持とうとしている。だが、形になりきれない。だから暴れている」

 闇のシュウは、獣を見つめながら胸を押さえた。

「⋯⋯あれは⋯⋯“行き場を失ったもの”の塊だ」

 その声には、どこか自分自身を見ているような痛みがあった。

 黒い獣が咆哮するたび、闇のシュウの表情がわずかに揺れる。

 アレンが気づいたように視線を向けた。

「⋯⋯お前⋯⋯あれに⋯⋯何か感じているのか?」

 闇のシュウは答えない。  
 ただ、胸の奥を押さえたまま、黒い獣を見つめ続けていた。

 その瞳には――  
 怒りでも憎しみでもなく、  
 深い孤独の影が揺れていた。

 シュウの胸の星光が、  
 白銀から金色へ、  
 そして――淡い蒼へと変わり始めた。

 ネロが驚愕の声を上げる。

「兄ちゃん⋯⋯光が⋯⋯変わってる⋯⋯!」

 アレンが息を呑む。

「白銀は“星の守護者の光”。  
 金色は“選択の光”。  
 蒼は⋯⋯」

 闇のシュウが呟く。

「“星の道の核”の光だ⋯⋯」

 シュウは胸に手を当てた。

(⋯⋯影たちが戻ってきて⋯⋯俺の未来が増えて⋯⋯星の道が⋯⋯俺を選び返して⋯⋯この光は⋯⋯)

 胸の奥で、星が脈動する。

 黒い獣が、星光を吸い込みながら形を変えた。

 霧が渦を巻き、内部で何かが砕けるような音が響く。

 そして――  
 巨大な“口”が開いた。

 その口は、  
 星の道そのものを喰らおうとしていた。

「させるかよッ!」

 シュウが星光を放ち、獣の進路を塞ぐ。

 だが、獣は光を押し返しながら迫ってくる。

 アレンが剣を構えた。

「シュウ、右側が薄い! 俺が押さえる!」

 アレンの剣が星光を帯び、獣の腕を切り裂く。

 リオが跳躍し、星光の爪で獣の顔面を叩きつける。

 ネロが息を呑む。

「兄ちゃん⋯⋯! あれ⋯⋯“何か”が⋯⋯変わる⋯⋯!」

 ネロの瞳に映る線が、まるで霧の中に消えるように揺らいでいる。

 その瞬間――  
 星の道そのものが、声を発した。

 ――⋯⋯タチバナ⋯⋯
 ――⋯⋯シュウ⋯⋯
 ――⋯⋯エラベ⋯⋯

 シュウは息を呑んだ。

「⋯⋯今の⋯⋯声……?」

 ネロが震える声で言う。

「兄ちゃん……星の道が⋯⋯兄ちゃんに⋯⋯“選べ”って⋯⋯」

 リオが低く唸る。

「兄さん⋯⋯星の道が⋯⋯兄さんの“選択”を求めてる⋯⋯!」

 アレンが剣を構えたまま言う。

「シュウ⋯⋯星の道は“未来の流れ”そのものだ。お前の選択が⋯⋯星の未来を決める」

 闇のシュウが静かに言う。

「だが⋯⋯選び方を誤れば⋯⋯お前自身が“歪み”になる」

 シュウは、黒い獣を見据えた。

 その目の奥には――孤独と、後悔と、行き場を失った何かが渦巻いていた。

(⋯⋯こいつは⋯⋯俺の影でも、敵でもない。“行き場を失ったもの”の塊⋯⋯なら――)

 シュウは一歩前に出た。

 胸の星光が、三色に輝く。

「⋯⋯俺は――“未来を選ぶ”!」

 黒い獣が咆哮し、  
 星光と“無”が衝突した。

 星の道が裂け、  
 空間が軋み、  
 光と闇がぶつかり合う。

 そして――

 星の道の中心で、運命を決める一撃が放たれようとしていた。



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