元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第46話:星の核が開く音

第46話:星の核が開く音

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 黒い獣が咆哮した瞬間、星の道全体が深く沈むように揺れた。

 光の帯が波紋のように広がり、星の粒が逆流し、空間の奥で、何かが軋む音がした。

 それは――星の核が開き始める音だった。

 シュウは胸の奥で星が暴れるのを感じ、思わず膝をつきそうになった。

「っ⋯⋯く⋯⋯!」

 胸の奥が熱い。  
 痛みではない。  
 だが、心臓の奥が焼けるような熱を帯びている。

 アレンが駆け寄る。

「シュウ、無理をするな!」

「⋯⋯まだ⋯⋯いける⋯⋯」

 シュウは歯を食いしばり、立ち上がった。

 その瞬間、  
 星の道が――呼吸した。



 星の道の奥――  
 深い層のさらに奥で、  
 光が脈動している。

 それは、  
 星の核が“目覚めようとしている”証だった。

 シュウの胸の星光が、それに呼応するように脈動する。

「⋯⋯っ⋯⋯!」

 胸の奥が熱い。  
 焼けるような熱が、心臓の奥から広がっていく。

 ネロが駆け寄る。

「兄ちゃん⋯⋯!」

 シュウは手を上げて制した。

「大丈夫⋯⋯これは⋯⋯痛みじゃない⋯⋯」

 アレンが目を細める。

「星の核が⋯⋯お前を呼んでいる」

 リオが低く唸る。

「兄さん⋯⋯あれに触れたら⋯⋯どうなるんだ⋯⋯?」

 闇のシュウが答えた。

「“選ばれる”か⋯⋯“飲まれる”かだ」

 黒い獣が、初めて“声”を発した。

 ――⋯⋯タチバナ⋯⋯ 
 ――⋯⋯オレ⋯⋯
 ――⋯⋯ナニ⋯⋯?

 それは、言葉にならない声だった。  
 だが、確かに“問い”だった。

 シュウは息を呑んだ。

(⋯⋯問いかけている⋯⋯? 俺に……?)

 闇のシュウが低く呟く。

「⋯⋯あれは⋯⋯“自分が何なのか”を知らない」

 アレンが剣を握りしめる。

「形を持たないものが、形を求めるとき⋯⋯最も危険になる」

 リオが黒い獣を見つめる。

「兄さん⋯⋯あれ⋯⋯“寂しがってる”みたいだ⋯⋯」

 ネロが小さく頷いた。

「うん⋯⋯なんか⋯⋯泣いてるみたい⋯⋯」

 星の道の奥で、  
 光が大きく脈動した。

 ――⋯⋯タチバナ⋯⋯ 
 ――⋯⋯シュウ⋯⋯
 ――⋯⋯エラベ⋯⋯

 星の核が、  
 完全に開いた。

 光が溢れ、  
 星の道全体が震え、  
 黒い獣がその光に怯えるように後退する。

 シュウの胸の星光が、  
 三色から――ひとつの白い光へと収束した。

 アレンが息を呑む。

「⋯⋯これは⋯⋯」

 闇のシュウが呟く。

「“星の核の光”だ⋯⋯星の道の中心に立つ者だけが持つ光⋯⋯」

 リオが震える声で言う。

「兄さん⋯⋯その光⋯⋯危険だ⋯⋯でも⋯⋯綺麗だ⋯⋯」

 ネロが涙を浮かべる。

「兄ちゃん⋯⋯なんか⋯⋯遠くに行っちゃいそうで⋯⋯怖い⋯⋯」

 シュウは、三人の頭に手を置いた。

「大丈夫だ。  
 俺は行かない。  
 行く必要もない」

 そして、黒い獣を見据えた。

「――俺が選ぶのは、“ここ”だ」

 黒い獣が、再び咆哮した。

 だが、その声は先ほどまでのような怒りではない。

 迷い。  
 戸惑い。  
 そして――  
 羨望。

 シュウは一歩前に出た。

「お前は⋯⋯“行き場を失ったもの”なんだろ?」

 黒い獣が揺れる。

「⋯⋯タチバナ⋯⋯
 ⋯⋯オレ⋯⋯
 ⋯⋯ナニ⋯⋯?」

 シュウは静かに言った。

「お前は⋯⋯“俺じゃない”。でも⋯⋯“俺の一部”だ」

 黒い獣の輪郭が揺れた。

 闇のシュウが息を呑む。

「⋯⋯お前⋯⋯そんな言葉を⋯⋯」

 アレンが目を細める。

「シュウ⋯⋯それは⋯⋯危険だぞ⋯⋯」

 リオが震える声で言う。

「兄さん⋯⋯!」

 ネロが叫ぶ。

「兄ちゃん、近づいちゃ駄目⋯⋯!」

 だが、シュウは止まらなかった。

「お前は⋯⋯ 
 “捨てられた可能性”でもない。  
 ただ――  
 “行き場を失っただけ”だ」

 黒い獣が震えた。

 その震えは、  
 怒りでも恐怖でもなく――  
 泣いているようだった。



 星の核が、強く脈動した。

 ――⋯⋯タチバナ⋯⋯
 ――⋯⋯シュウ⋯⋯
 ――⋯⋯ソノセンタク⋯⋯ 
 ――⋯⋯ミトドケタ⋯⋯

 光が溢れ、  
 星の道全体が震え、  
 黒い獣の輪郭が崩れ始める。

 アレンが叫ぶ。

「シュウ! 離れろ!」

 リオが駆け寄ろうとする。

「兄さん!」

 ネロが手を伸ばす。

「兄ちゃん!」

 だが――  
 シュウは動かなかった。

「大丈夫だ。  
 これは⋯⋯“終わり”じゃない」

 黒い獣が、  
 光の中で――  
 人の形に近づいていく。



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