元アラフィフ男の異世界転生記 〜新しい家族とともに異世界を謳歌する〜

あかいとまと

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第49話:闇が還る場所

第49話:闇が還る場所

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 ルミナの誕生がもたらした静寂

 ルミナが世界へ一歩踏み出したあと、星の道には深い静寂が訪れた。

 風が止まり、  
 星の粒がゆっくりと落ち、  
 空間そのものが呼吸を忘れたように静まる。

 その中心に――  
 闇のシュウが立っていた。

 ルミナの誕生を見届けた彼は、胸の奥に残る痛みを押さえたまま、動けずにいた。

(……俺が捨てたものが……  
 こんなにも柔らかく、  
 こんなにも温かい形で……  
 生まれ直すなんて……)

 胸が軋む。  
 けれど、その痛みは“拒絶”ではなく、“理解”に近かった。

 闇のシュウの身体が、  
 ゆっくりと揺らぎ始めた。

 輪郭が薄くなり、  
 影がほどけ、  
 星の粒が混じり始める。

 ネロが気づき、叫ぶ。

「兄ちゃん⋯⋯!  
 闇の兄ちゃんが⋯⋯!」

 リオが眉をひそめる。

「兄さん⋯⋯あれ⋯⋯“消える”んじゃなくて⋯⋯」

 アレンが静かに言った。

「“還ろうとしている”んだ」

 シュウは一歩前に出た。

「⋯⋯闇の俺⋯⋯」

 闇のシュウは、  
 その声にゆっくりと顔を上げた。



「⋯⋯俺は⋯⋯ずっと⋯⋯
 お前の“影”でいることに⋯⋯
 納得していなかった」

 その声は、  
 初めて“弱さ”を含んでいた。

「お前が選んだ未来を⋯⋯
 俺は選べなかった。  
 だから⋯⋯俺は⋯⋯
 “行き場を失ったもの”になった」

 胸を押さえ、苦しそうに息を吐く。

「だが⋯⋯ルミナを見て⋯⋯
 分かったんだ」

 闇のシュウは、  
 ルミナが立っていた場所を見つめた。

「お前が選んだ未来は⋯⋯ 
 俺が否定した未来より⋯⋯
 ずっと⋯⋯美しかった」

 その言葉は、  
 闇のシュウが初めて“自分を認めた”瞬間だった。

 シュウは静かに言った。

「⋯⋯お前は俺の影じゃない。  
 俺の“もう一つの選択”だ」

 闇のシュウの瞳が揺れる。

「⋯⋯俺が⋯⋯?」

「そうだ。  
 お前がいたから、  
 俺は迷い、悩み、  
 そして“選べた”。  
 お前がいなかったら⋯⋯
 俺はここまで来られなかった」

 闇のシュウは、  
 その言葉を胸に受け止めるようにゆっくりと目を閉じた。

「⋯⋯なら⋯⋯
 俺は⋯⋯もう⋯⋯
 “影”でいる必要はないんだな⋯⋯」

 その声は、どこか安堵していた。

 闇のシュウの身体が、さらに薄く、柔らかく揺らぐ。

 星の粒が混じり、光と闇が溶け合うように彼の輪郭がほどけていく。

「⋯⋯タチバナ⋯⋯シュウ⋯⋯
 俺は⋯⋯お前の中に⋯⋯戻る」

 その言葉は、  
 “敗北”ではなく、  
 “帰還”だった。

 闇のシュウは、  
 ゆっくりとシュウへ歩み寄った。

 一歩ごとに、  
 影が光に溶け、  
 星の粒が舞い上がる。

 そして――  
 シュウの胸に手を触れた。

「⋯⋯ありがとう⋯⋯
 俺を⋯⋯見捨てなかった⋯⋯」

 その瞬間、  
 闇のシュウの身体が光に包まれ、星の粒となってシュウの胸へ吸い込まれていく。

 痛みはない。  
 ただ、温かい。

 まるで――  
 長い旅を終えた影が、  
 ようやく“帰る場所”を見つけたように。



 光が収まったとき、  
 そこにはもう“闇のシュウ”の姿はなかった。

 だが、  
 シュウの胸の奥には、確かに“何か”が戻ってきていた。

 ネロが小さく呟く。

「⋯⋯兄ちゃん⋯⋯
 なんか⋯⋯前より⋯⋯
 優しい光になった⋯⋯」

 リオが頷く。

「兄さん⋯⋯
 影も光も⋯⋯全部⋯⋯兄さんなんだね⋯⋯」

 アレンは静かに言った。

「これで⋯⋯お前は本当の意味で“ひとつ”になった」

 シュウは胸に手を当て、  
 静かに目を閉じた。

(⋯⋯ありがとう、もう一人の俺⋯⋯これからは一緒に⋯⋯生きていこう)



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