9 / 13
悪役令嬢は目が覚める
しおりを挟むあれから、王子とは何回も会うようになった。
お城に行くこともあれば、家に招待する事もあって、最初に比べると大分仲良くなれてると思う。
あと、これが1番驚きなんだけど、お城に通ううちにリリアさんとすれ違う事があって、以前なら有り得ない事に2人で話すようになった。
このリリアさん、本当に素敵な人で、精神年齢は私の方が上の筈なのにお姉さんみたいに包容力があって、優しくて!可愛くて!綺麗で!もう今では大好きだ!!
身分の差から私の事はモーガス様と読んでいるけど、いつか「セリアちゃん」と呼んでもらうのが夢だ!
そして、今日も王子に招待してもらってお城に向かっている所だ。
(まさかこんな事になるなんてなぁ…)
最初はどうやって婚約破棄を穏便に済ませようか考えてたけど、今では王子と定期的にお茶をする仲にまでなった。
最近では、大分お互いの事を知れてると思う。
「ふふっ今日は何のお話をしようかな」
浮かれすぎるのは良くないって分かってるんだけど、ニヤニヤが止まらない。
お城に着いたと私に伝えようとした御者に怪しげな目で見られたのは言うまでもない。
(私、絶対に変なやつだって思われてるんだろうな…)
お城に着くと、いつもの応接間に向かう。
付き添いはいなくても分かるので、王子を呼びに行ってもらった。
あと少しで応接間という所で誰かの話し声が聞こえてきた。
(あ、この声リリアさんーー!)
話し掛けようと思ったけど、誰かと話していたので邪魔しちゃ悪いと離れようとした時ーー
「分かってるよ、フォレスター嬢」
王子の声だ。
(なんだ、王子なら一緒に応接間まで行こう)
ついでに、リリアさんも一緒にお茶しないかなと思い、2人に声を掛けようとした。
でも、出来なかった。
「本当に分かっているんですか?」
「はいはい、分かってるよ。でもこれだけは譲れないな」
「殿下ばかり、ずるいですよ」
「俺の特権だよ」
(…えっ……)
楽しそうに親しげな会話をする2人。
リカルド王子ってこんな話し方だった?
自分の事俺なんて言ってた?
リリアさん…だから?
そう気付いた時、私はその場から逃げ出した。
急いで馬車に乗って屋敷に戻ると、自分の部屋に駆け込んだ。
扉を閉めると、走った疲れからかズルズルと座り込んでしまう。
「私…馬鹿だ」
何を調子に乗って、ちょっと話したくらいで浮かれてたんだろう。
頑張れば、婚約破棄されないんじゃないかって、リカルド王子と一緒に居られるんじゃないかって思っちゃってた。
身の程知らずにも程がある。
きっと、あの王子が本当の素のリカルド王子なんだろう。
何も珍しい事じゃない。王族の人間それも第1王子なんだ、周りに隙を見せないようにとか、威厳の為にとか、理由は色々あるんだろう。
私が知ってるのは完璧な理想その物の王子様って感じだった。
でも、本当は結構親しみやすい感じだったんだなぁ。まさか、自分の事俺って言ってるとはびっくりしたけど、案外似合ってるのかも。
なんていうか、こう、お兄ちゃんって言葉が似合う感じの面倒みの良さそうな感じだった。
(あ、でも、あの無邪気な感じの笑顔は私も見た事あるな…)
なんて、私とリリアさんじゃ全く別物だろうけど。
大体、私も私だよね。
リリアさんと王子応援するって言ってたのに、3人でお茶しようかななんて、空気読めなさすぎる。完璧に邪魔者じゃん。恥ずかしすぎる。
まあでも良かった、完璧にハマる前で。
今ならまだ、引き返せるよ、大丈夫。
簡単な事だよ、あれは信用した特別な人にだけ見せる本当のリカルド王子。
リリアさんは特別で、私はそうじゃなかった。
分かりきってる事だよ、私が勝手に1人でドキドキしてただけ。
王子に迷惑掛ける前で良かった。
大丈夫、全然大丈夫。
だって、私はセリア・モーガス。悪役令嬢なんだよ?こんな事でいちいち狼狽えたりしない。
ちゃんと、2人を応援する。
走ったから、少し胸が苦しいけど
「大丈夫ーー」
私は自分にそう言い聞かせて、頬を伝うものは無視したーーー
0
あなたにおすすめの小説
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる