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7.ショタとて侮るべからず、です
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人間界と魔界ってやつは、決定的に違ってたり、ほとんど同じってワケじゃ無くて。
言わば、他国同士で文化が違うのと同じなんだろう。
そこには良さも違いも悪さも、混在している。
「へーっ、凄い!」
ケルタが声を上げた。
「おいおい。あんまりデカい声出すなよ」
……奴らにバレちまうだろ。
暗にそう仄めかすと、彼は少しだけ悪びれた顔をして舌を小さく出す。
その顔が、可愛く見えなくもない。
―――僕はふと、妹のミラを思い出した。
兄を売っ払った、極悪な女だが。
あれでも、幼い頃は可愛かったんだがなぁ。
「ハァ……」
「どうしたの? ルベル」
深いため息を吐く僕を、心配そうに覗き込む褐色の少年。
人懐こい表情。ますます、在りし日の妹の姿を彷彿させた。
「僕には妹がいてさぁ」
「へーっ、きっと綺麗な人なんだろうね。だってルベルはこんなに男前だもん」
「お、男前?」
久しぶりに言われた。
ここの所。可愛いだの、女みたいだの。男として扱われた事が無かったからだ。
好みのタイプの娘は、イカれた腐女子だし。
「そうか、男前か……ケルタ。お前良い奴だな!」
僕、こんな弟欲しかったなぁ。
人間ってのはゲンキンなもので、こうなると先程までの警戒心は霧散してしまっていた。
「へへっ。よく分かんないけど。オレは一人っ子だから、ルベルみたいなお兄さんが居たら良かったな」
「ケルタ、お前って奴は……!」
嬉しいことを言ってくれるじゃないかよ。
普段なら、鼻で笑うような台詞だ。
でも、この状況なら話は別。最早、僕の目には彼は可愛い弟に見える。
「あのさ、ルベルって……女の子とキス、した事ある?」
「キスぅ?」
当たり前だろう。
僕を誰だと思ってんだ。
ルベル・カントールだぜ! 前世は7股して、5人の女に殺された男。
どれだけの女のファーストキスを、奪ってきたと思ってんだ。
……とドヤ顔で語ってしまえば。
「おぉっ、さすがルベル! 凄いッ」
賞賛の声が返ってくる。
「まー、女なんてのはな。共感だよ。話をひたすら、ウンウンって聞いて『凄いね』『さすがだね』って褒めてやりゃあ……」
「へーっ、さすがだ」
……あぁっ、キラキラとした羨望の目が心地好い。
僕は、いつしか得意げに少年に向かって女の子の口説き方をレクチャーしていた。
「あのさぁ、ルベル」
「ん。なんだ?」
「すごく勉強になったよ! だからさ」
「ん、どうし……」
―――ベッドがまた軋みを上げ、同時に背中に感じた小さな衝撃。
……気がつけば、僕はその清潔で心地よいシーツに横たわっている。
「え゙」
「今度は、実地訓練させてよね」
「!?!?!?」
横たえられた記憶すらないままに、僕の上にケルタが乗っていた。
「な、な、な……ッ!?」
「慌ててる。可愛い」
「け、ケルタ!? ど、どうして……!」
さっきまで、僕の可愛い弟分だったじゃないか!
少年は、相変わらず無邪気とも邪悪ともつかない笑みを浮かべて言った。
「ルベルの言うことって、本当だったんだね! ……『凄い』『さすが』って褒めまくれば、簡単に墜ちてくれるんだもの」
「ま、まさか、お前……えっ、ちょっ」
「ごめんね。嘘ついてた。オレ、アンタのこと男前って言ったけど……やっぱり『可愛い』だったよ」
「可愛くなんかっ……!」
「あはは、怒っちゃったね」
……身体が、ビクともしない。
体重かけられていると言っても、この体格差だぞ。
なのに、何故。
手を触れられてない両腕まで、動かない。
「くそっ、拘束魔法か!」
「うん。そのベッドに掛けといたよ……横になったら発動するんだ」
「どういうつもりだよッ、許さんぞ!」
「『どういうつもり』って ……アンタを、オレのモノにするつもりだけど?」
「!?」
それってつまり。
嫌な予感に、喉が引き攣れる。
まさかこのまま、レイプされるってことじゃぁ……。
恐怖と、怒りで頭の芯が焼き切れそうな感覚で身震いした。
「せ、性奴隷だからか。僕が」
だから好きにしていいと?
悔しくて歯噛みする僕に、彼は軽く首を横に振って答えた。
「違う違う。まさかアンタ、分かってないの? 自分が何者かって。どうして皆がアンタを欲しがるのか」
「どういう事だ……」
僕は僕だ。
こう言いたくはないが、魔法使いとか魔物とかでなく平凡な。
少し剣の腕に覚えがあるレベルの人間の男。
それがなんで。
「チッ……訳わかんない事言ってんじゃないッ、このクソガキッ!」
唯一自由になる、瞳で彼を睨みつけ怒鳴り付ける。
だって僕は、自身の運命に悲観するほど悲劇のヒーローでもヒロインでもないから。
……こうなったら、徹底的に抗ってやるッッ!
とは言っても。
いくら懸命に動かそうとしても、手足はまるで見えない鎖に繋がれたみたいに重い。
暴れれば暴れるほど、それはまるで意志を持っているかのように、いっそう絡みついてくる。
「くそぉぉッ、この野郎! 離しやがれ、ガキのクセに」
「……ガキじゃないぜ、こいつは」
「!?」
思わぬ所から声がした。
驚いて、その方向に視線を走らせる。
すると―――。
「よぉ、ケルタ」
「……エト、様」
部屋の入口。
壁に寄りかかり、のんびりと声を掛けたのは魔王の息子だった。
対するケルタは、先程の余裕の表情とは一転。
険しい顔で睨みつけている。
「俺にもよく分かんねぇけどさぁ」
エトは、そう呟くとゆっくりとベッドに近付いてくる。
……迫るような緊張感。
それはこの二人だけでなく、拘束された僕自身も感じていた。
「この喧嘩は、なんだか買わないといけねぇ気がするんだよな……ケルタ、お前もだろ?」
そう問われた少年は。
「まぁ、そうですね。でも」
と、口元だけ薄く笑い言葉を次ぐ。
「……エト様とて、手加減はしませんよ?」
―――少年の顔が、歪んだ。
言わば、他国同士で文化が違うのと同じなんだろう。
そこには良さも違いも悪さも、混在している。
「へーっ、凄い!」
ケルタが声を上げた。
「おいおい。あんまりデカい声出すなよ」
……奴らにバレちまうだろ。
暗にそう仄めかすと、彼は少しだけ悪びれた顔をして舌を小さく出す。
その顔が、可愛く見えなくもない。
―――僕はふと、妹のミラを思い出した。
兄を売っ払った、極悪な女だが。
あれでも、幼い頃は可愛かったんだがなぁ。
「ハァ……」
「どうしたの? ルベル」
深いため息を吐く僕を、心配そうに覗き込む褐色の少年。
人懐こい表情。ますます、在りし日の妹の姿を彷彿させた。
「僕には妹がいてさぁ」
「へーっ、きっと綺麗な人なんだろうね。だってルベルはこんなに男前だもん」
「お、男前?」
久しぶりに言われた。
ここの所。可愛いだの、女みたいだの。男として扱われた事が無かったからだ。
好みのタイプの娘は、イカれた腐女子だし。
「そうか、男前か……ケルタ。お前良い奴だな!」
僕、こんな弟欲しかったなぁ。
人間ってのはゲンキンなもので、こうなると先程までの警戒心は霧散してしまっていた。
「へへっ。よく分かんないけど。オレは一人っ子だから、ルベルみたいなお兄さんが居たら良かったな」
「ケルタ、お前って奴は……!」
嬉しいことを言ってくれるじゃないかよ。
普段なら、鼻で笑うような台詞だ。
でも、この状況なら話は別。最早、僕の目には彼は可愛い弟に見える。
「あのさ、ルベルって……女の子とキス、した事ある?」
「キスぅ?」
当たり前だろう。
僕を誰だと思ってんだ。
ルベル・カントールだぜ! 前世は7股して、5人の女に殺された男。
どれだけの女のファーストキスを、奪ってきたと思ってんだ。
……とドヤ顔で語ってしまえば。
「おぉっ、さすがルベル! 凄いッ」
賞賛の声が返ってくる。
「まー、女なんてのはな。共感だよ。話をひたすら、ウンウンって聞いて『凄いね』『さすがだね』って褒めてやりゃあ……」
「へーっ、さすがだ」
……あぁっ、キラキラとした羨望の目が心地好い。
僕は、いつしか得意げに少年に向かって女の子の口説き方をレクチャーしていた。
「あのさぁ、ルベル」
「ん。なんだ?」
「すごく勉強になったよ! だからさ」
「ん、どうし……」
―――ベッドがまた軋みを上げ、同時に背中に感じた小さな衝撃。
……気がつけば、僕はその清潔で心地よいシーツに横たわっている。
「え゙」
「今度は、実地訓練させてよね」
「!?!?!?」
横たえられた記憶すらないままに、僕の上にケルタが乗っていた。
「な、な、な……ッ!?」
「慌ててる。可愛い」
「け、ケルタ!? ど、どうして……!」
さっきまで、僕の可愛い弟分だったじゃないか!
少年は、相変わらず無邪気とも邪悪ともつかない笑みを浮かべて言った。
「ルベルの言うことって、本当だったんだね! ……『凄い』『さすが』って褒めまくれば、簡単に墜ちてくれるんだもの」
「ま、まさか、お前……えっ、ちょっ」
「ごめんね。嘘ついてた。オレ、アンタのこと男前って言ったけど……やっぱり『可愛い』だったよ」
「可愛くなんかっ……!」
「あはは、怒っちゃったね」
……身体が、ビクともしない。
体重かけられていると言っても、この体格差だぞ。
なのに、何故。
手を触れられてない両腕まで、動かない。
「くそっ、拘束魔法か!」
「うん。そのベッドに掛けといたよ……横になったら発動するんだ」
「どういうつもりだよッ、許さんぞ!」
「『どういうつもり』って ……アンタを、オレのモノにするつもりだけど?」
「!?」
それってつまり。
嫌な予感に、喉が引き攣れる。
まさかこのまま、レイプされるってことじゃぁ……。
恐怖と、怒りで頭の芯が焼き切れそうな感覚で身震いした。
「せ、性奴隷だからか。僕が」
だから好きにしていいと?
悔しくて歯噛みする僕に、彼は軽く首を横に振って答えた。
「違う違う。まさかアンタ、分かってないの? 自分が何者かって。どうして皆がアンタを欲しがるのか」
「どういう事だ……」
僕は僕だ。
こう言いたくはないが、魔法使いとか魔物とかでなく平凡な。
少し剣の腕に覚えがあるレベルの人間の男。
それがなんで。
「チッ……訳わかんない事言ってんじゃないッ、このクソガキッ!」
唯一自由になる、瞳で彼を睨みつけ怒鳴り付ける。
だって僕は、自身の運命に悲観するほど悲劇のヒーローでもヒロインでもないから。
……こうなったら、徹底的に抗ってやるッッ!
とは言っても。
いくら懸命に動かそうとしても、手足はまるで見えない鎖に繋がれたみたいに重い。
暴れれば暴れるほど、それはまるで意志を持っているかのように、いっそう絡みついてくる。
「くそぉぉッ、この野郎! 離しやがれ、ガキのクセに」
「……ガキじゃないぜ、こいつは」
「!?」
思わぬ所から声がした。
驚いて、その方向に視線を走らせる。
すると―――。
「よぉ、ケルタ」
「……エト、様」
部屋の入口。
壁に寄りかかり、のんびりと声を掛けたのは魔王の息子だった。
対するケルタは、先程の余裕の表情とは一転。
険しい顔で睨みつけている。
「俺にもよく分かんねぇけどさぁ」
エトは、そう呟くとゆっくりとベッドに近付いてくる。
……迫るような緊張感。
それはこの二人だけでなく、拘束された僕自身も感じていた。
「この喧嘩は、なんだか買わないといけねぇ気がするんだよな……ケルタ、お前もだろ?」
そう問われた少年は。
「まぁ、そうですね。でも」
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