転生して性奴隷♂魔王の息子と暴れてきます(仮)

田中 乃那加

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19.友情を育んでるつもりで、なんか別のモノ育んでない?

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 風が吹けば土埃が立つ。
 乾燥した大地なら尚更だ。

「稽古、しようぜ」

 先日とは打って変わって、エトが黒剣を手に笑う。

「ふん。精々、手加減するな」

 僕はこの数日で、幾分か手に馴染んだ剣を握る。
 
 ―――僕と彼の間には、友人とも言える関係が構築されていた。
 
 僕は、勉強が苦手な彼と共に学ぶ。
 オーガやグール、ドワーフ等。
 種族によって大きく違う言語や文化を、だ。

 新しい知識に、僕は夢中になれた。さらにエトの『モチベーション』とやらになったらしい。
 
 対して、彼は僕に剣の稽古を付けてくれる。
 悔しいが実力は、あっちが上だ。
 体格や、元々の才能があるからだろう。しかし、僕だって諦めない。

 諦めたらそこで試合終了、ってあの人も言ってただろう?

「しない……本気でいくから」

 そして静寂。
 張り詰めた空気が、ピリピリと心地好い。

 剣を構え、互いに隙を伺う。
 ……ここは正面突破を行くか。いや、弾かれるのは必至。

「ッ!」

 先に動いたのは彼だ。
 腕力にモノ言わせ、思い切り押し切るつもりか。
 
 ―――迫る切っ先は眼前。
 避ける? 
 ……僕は、そのまま突っ込む!

「!?」
 
 明らかにたじろぐ瞳に、気を良くしつつ。
 懐に入り込んで、斬り込む。

「うお、危ねぇッ!?」

 間一髪。
 頭上を跳躍で、超える影。
地を踏み身を翻す。

 振り返れば。
 ……既に、数メートル先に着地していた。

「む、向かって来る奴があるかよ!」
「へぇ。思ったより俊敏なんだな」

 改めて見合う。
 次は僕が動いた―――。

 ……カンカンカンカンッ。

 小気味の良い、金属音が響く。
 僕の切り付けを全て受けて、弾いた。
 弾く、打つ、そして弾く。
 切っ先の応酬。

 絡む視線。
 熱を帯び……いや、色っぽい話じゃあなくて。

「!」

 ……空いた胴に、素早く刃先を滑らせる。 
 俊敏に、捩られた身体。
 僅かな切れ込みを残し、再び空いた間合い。

「っと、やるなぁ」
「ボヤボヤしてんじゃあないぞ」
「この服、気に入ってたのに」
「女みたいな事言うなよ」
「だな……ッ」
「!!」

 ―――今度は向こうが、切り付けて来る。

 金属音。散る火花。
 一撃一撃が、重い。

「っ……ぐッ」

 徐々に、削られる。
 切り込めば、薙ぎ払われた。
 反動に、地を踏む。

 押されているのが、分かった。
 
「くそっ」

 一際大きな、打撃音を立てて。
 ガード付近で受けた。
 力任せに弾く。
 そのまま、重心を下に。姿勢を低く。

 地が抉れ。砂が舞う。
 剣で足払う。
 水平に切り込む。滑る刃。
 
「っ、おっと」

 奴の巨体がヒラリと浮く。
 まるで舞うように、剣先を超える。
 
 ……その瞬間を待っていた。

 身を翻し、逃げ場のない彼に刃を―――。




「及第点」
「!?」
「まぁ悪くはないぜ」
「チッ……」

 ―――逃げ場が無いのは、僕だった。
 
 喉元。
 突き付けられた、刃先。
 対して僕の剣は、空を切っている。

「やっぱり、君には適わないな」

 外された剣先を目で追いながら、ため息をつく。

 ……腹立たしいが、仕方ない。
 パワーも俊敏さも、他諸々。
 僕の腕は、その足元にも及ばない。

「いや、強いよ。ルベルは」

 剣を慎重に扱いながら、彼は言った。
 
「だけど強いて言えば。その剣、お前には重過ぎる」
「そうか?」

 自身の手の剣を見る。
 なるべく、手に合ったモノを選んだつもりだが。

「身長、体格。腕力を考えれば、もう少し小振りなのが良いぜ。途中でへばってただろ?」
「ゔっ」

 ……バレてたか。
 そんな顔をする僕に、彼は軽く頷いて。

「お前の武器。その体格を生かしたスピードと、隙を突くのが上手い所だな」
「スピードなら、君の方が……」
「だから、その剣じゃ重いんだ。ルベルの特長が発揮できてない。いいか、剣術はそこから大事だぜ」
「うぅむ、なるほど」

 素直に頷く。
 とても合点のいく説明だからだ。

「それにしても、俺をここまで本気にさせたのはルベルだけだ」
「それは……剣術の先生としての、褒め言葉?」

 冷やかすように言って、先程切りつけた身体を指でなぞる。
 
「ちょ、揶揄うなよ。ったく。小悪魔か、お前は」
「小悪魔ァ? ハハッ……惑わしてやろうか」
「もう充分に」
「へぇ? 初耳」
「耳にタコができるくらい、の間違いだろーが」
「違いないな」
「だろぉ?」

 なんて、軽口まで叩き合えるようになった。

 ―――この前まで。
 アイツは僕を女のように扱い、それに嫌悪していた。
 そこには、対等な人間としての関係は無かったから。
 奴隷という身分だからか、と苦々しく思っていたんだ。
 それが僕の、大きな劣等感コンプレックスだと言える。

 ……でも、与え与えられる関係になった。 
 ここで初めて、僕らはその身分や立場を忘れた友人となる。

 エトは、僕を必要以上に女扱いしなくなったし。 
 そうなれば、僕だって彼を拒む理由はない。 
 元々、悪いヤツではないのだ。

「やっべ。えらく汚したな」

 洗濯係ランドリーメイドのペンナに、また嫌味言われちまうだろう。 

「俺なんて、破けちまってる。どーすんだよ、これ」
「自業自得だろ」
「いやいや、ルベルがやったんだっての!」
「避け切れ無かった、君が悪い」
「えぇぇぇ」

 ゴーゴンの血を引く彼女。
 ……機嫌を損ねると、すぐ人を石にしようとしてくるから困るんだよなァ。
 
「大人しく君だけ、石になってろよ」
「ひでぇな、おい!?」
 
 そんな事を喚きながら、僕らは城へ戻ろうと歩き出した。

「あ、おい。ルベル」
「?」
「ちょっと動くなよ」
「ん……ッ!?」

 突然、眼前に迫るイケメン顔。
 思わず息が止まり、反射的に仰け反る。

「ほら動くな」
「え゙……あ、うん」

 後頭部をガッシリ掴まれて、逃げる事も叶わない。
 今にもキスしそうな距離。
 鼻先が触れて、吐息がかかる。
 
「え、エト!?」
「もう少し、ジッとしてな」

 真剣な声。
 さっきまでの、バカ言ってる時とは大違い。

 ……こんなに、いい男だったか!?
 この煩い雑音はなんだ。あー。もしかして、僕の心臓の音?

「ん、もうちょっと」
「!?!?!?!?」

 さらに数ミリ。
 近付けばそれだけ、体温も心拍数も上がるのが分かる。

 しかもさっきまでの稽古で、汗だくのはずだ。
 なのに汗臭くなるどころか、甘くもあり爽やかでもあるこの香り。

 ……な、な、な、なんでコイツ。こんなにイイ匂いしてんだよ。童貞のくせに!

「ルベル」
「あ、あァ!?」
「怒んなよ」
「お、お、怒って、ないッ!」

 ヤバいヤバいヤバいッ!!
 今の僕、すごく動揺してる……。
 
 付き合うようになってから、数週間。
 こうやって触れてきた事って、あっただろうか?
 久しぶりに見る、至近距離のコイツ。
 胸が、苦しくて仕方ない……なにこれ、気色悪ぃ。
 
 ―――こんな、無様な僕に置き去りに。

「……よし、取れたぜ」
「え?」

 その言葉と共に、さっさと離れて行く。
 軽い喪失感めいたものを感じて、僕は思わず彼を見上げた。

「ほら、コレ」
「た……種?」
「そ。アラウネの種だ」

 それは奇妙な形の種子。
 心無しか、胎児に似ている。
 
 ……人型の根を持つ、薬草の一種。
 女性の形をしていて、喋る。
 しかも姦しいので、有名だ。

「お前の首元に付いてた。これ、城に持ち帰ったらメイド長ハウスキーパーに、ドヤされるぜ」
 
 おどけた様子で肩を竦める彼に、僕は無言で頷いた。

 確かに、そう。
 繁殖能力が高く、あっという間にうるさい妖精で一杯になる。
 こんなの、ドヤされるくらいで済むかどうか……。

「行こうぜ」
「……」

 僕の返事も聞かずに、エトは背を向けた。
 確実に遠くなる、僕らの距離。

 ……あぁ、なんで。
 
「待て」

 呼び止めたのは、僕。
 立ち止まった、彼。

 でも、振り向いてはくれない。

「エト」
「……んー?」

 少し間の空いた、生返事。
 何故だか、僕の心を苛立たせた。

「僕の事……どう、思ってる」

 何故こんなこと、聞いちまうんだ!?
 まるで、面倒臭い女みたいじゃないか。
 
「ルベル?」
「こ、答えろよ」

 ……カッコ悪く、声震えてるクセに。

 男なんか、友情以外で触れられるのは御免だった。
 なのに。
 どうして。

「俺は……」

 それでも、彼は振り向かない。

「こっち見ろッ。バカ!」

 遂に我慢出来なくなった。
 怒鳴りつけて、手を伸ばした―――時だった。

「っ!」
「な、何だ今のッ!?」

 凄ましい音。爆発だ。
 轟音とも言うべきか。
 
 ……当然、脊椎反射的に音の出処を探す。
 黒い煙。 
 そう遠くない空に、上がっていた。

「城の方だッ!」
「行くぞ……っ」

 僕達は、顔を見合わせること無く走り出した―――。

 

 
 
 
 
 
 
 



 

 
 

 


 


 
 
 



 







 
 
 
 
 



 


 
 
 
 
 


 



 
 

 


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