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アキラ篇 (1)
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アキラがミロを次に見かけたとき、ミロは一人で新宿の高層ビル街の中庭を急ぎ足で歩いていた。憂鬱そうな顔をして、左手で小型タブレットを神経質そうに操作している。そういえばミロは左利きだったな、とアキラは思い出す。日防軍の軍服を着ていた。
「ミロ!」
と声をかけると、彼女は立ち止まり、右を見て次に左を見る。ようやくアキラを認めると、ミロの瞳が大きく見開かれた。アキラは、ゆっくりとミロに向かって歩いていく。
「…藤永ミロ、だよね?」
ミロは言葉を失ったままだ。
「藤永少尉…いや…」
襟元の階級章の星の数は一つだが、ラインが示しているのは尉官ではなく佐官だった。
「まさか、藤永少佐?」
「……ええ」
とミロはようやく答えた。戸惑ったときに、少し首を傾げる癖は変わっていないな、とアキラは思う。
「俺のこと、覚えてる?」
「アキラ……どうしてここに…」
「…プルデュー・ファーマの社員なんだ。ミロちゃんのあの件があった後、すぐに俺は『ホーム』から出ていったの、覚えてる?」
そうだ。アキラは、あの後すぐに彼の父親がホームに迎えに来たのだ。
「俺の親父の気が変わったんだ…『ホーム』なんてものはインチキだって…それで…」
ミロにとって、アキラはホームで気を許せるほとんど唯一の友人だった。ミロが脱走したあの日、ホームに戻る前、ミロは初めてアキラと一夜を共にした。その後も、トオルの目を盗み、ホームの空き部屋で何度も愛し合っていた。そのアキラが、目の前に出現した。思いがけないことではあったが、ミロは自分の気持が制御不能なほど揺れ動いていることに気づいた。それは、ミロの感情が予想外に追い詰められていることでもあった。
忍と橘家の娘との縁談が持ち上がっていることは、ミロの耳にも入っていた。ゴシップメディアは、忍と橘理子の容姿をことさらに取り上げ、社会派のメディアは「軍産複合体の一家による国家支配」を批判的に論じていた。ミロは、忍に正面切って尋ねる勇気はなかったし、そんなことができる立場に自分がいるとも思っていなかった。
「ミロちゃん、今日の夜あいてる? 食事しよう」
アキラは、ミロがただならぬ様子であることをすぐに察知した。
「…ええ」
ミロとアキラの関係は、その夜から再開した。アキラは、元々裕福な家庭の出身で、家族そろって「ホーム」へ入信したが、途中で父親の気が変わった…というあまり例のない家庭でもあった。ホームの方針では、来るものは拒まないが去る者も追わない。「ホーム」とは、表向きは新興宗教の体裁をとりながら、その実は軍用生体研究を目的とした施設であり、法律上は軍用施設である。
アキラは三鷹に自宅を所有していたから、ミロは自分のフォードを運転してアキラの家に通った。アキラは、昔と同じようにどこまでも優しくミロを愛してくれた。
アキラは、ミロの性器を舐めるのがとても好きだ。ホームにいた頃から。何も言われなければ、1時間でも2時間でも舐め続けられる。ミロをベッドに押し倒し、長い脚を折り曲げて開脚させる。どうしようもないほど恥ずかしい姿勢だが、アキラがミロの性器に顔を埋めて執拗な愛撫を始めると、ミロは間もなく我を失い、悦びの声を上げ始める。アキラは、しかもとても上手だった。ミロは、アキラの口の愛撫だけで何度も絶頂に達した。
アキラは、やがて荒い息を吐きながら、
「ミロちゃん、着けないでいれてもいい?」
と以前と同じ質問をミロにした。
「…着けて。お願い」
ミロがコンドームを付けずに性交するのは忍だけであり、同様に忍もコンドーム無しで愛し合うのはミロだけだ。この暗黙の了解は、二人の間に横たわる一つの信頼の証だった。
アキラは、素直にサイドボードからコンドームを取り出すと、器用に口で封を切り自分で着ける。そのままミロの性器に押し当てるとミロは耐えきれずに自分から腰を浮かせてアキラを迎え入れようとした。
「ミロ!」
と声をかけると、彼女は立ち止まり、右を見て次に左を見る。ようやくアキラを認めると、ミロの瞳が大きく見開かれた。アキラは、ゆっくりとミロに向かって歩いていく。
「…藤永ミロ、だよね?」
ミロは言葉を失ったままだ。
「藤永少尉…いや…」
襟元の階級章の星の数は一つだが、ラインが示しているのは尉官ではなく佐官だった。
「まさか、藤永少佐?」
「……ええ」
とミロはようやく答えた。戸惑ったときに、少し首を傾げる癖は変わっていないな、とアキラは思う。
「俺のこと、覚えてる?」
「アキラ……どうしてここに…」
「…プルデュー・ファーマの社員なんだ。ミロちゃんのあの件があった後、すぐに俺は『ホーム』から出ていったの、覚えてる?」
そうだ。アキラは、あの後すぐに彼の父親がホームに迎えに来たのだ。
「俺の親父の気が変わったんだ…『ホーム』なんてものはインチキだって…それで…」
ミロにとって、アキラはホームで気を許せるほとんど唯一の友人だった。ミロが脱走したあの日、ホームに戻る前、ミロは初めてアキラと一夜を共にした。その後も、トオルの目を盗み、ホームの空き部屋で何度も愛し合っていた。そのアキラが、目の前に出現した。思いがけないことではあったが、ミロは自分の気持が制御不能なほど揺れ動いていることに気づいた。それは、ミロの感情が予想外に追い詰められていることでもあった。
忍と橘家の娘との縁談が持ち上がっていることは、ミロの耳にも入っていた。ゴシップメディアは、忍と橘理子の容姿をことさらに取り上げ、社会派のメディアは「軍産複合体の一家による国家支配」を批判的に論じていた。ミロは、忍に正面切って尋ねる勇気はなかったし、そんなことができる立場に自分がいるとも思っていなかった。
「ミロちゃん、今日の夜あいてる? 食事しよう」
アキラは、ミロがただならぬ様子であることをすぐに察知した。
「…ええ」
ミロとアキラの関係は、その夜から再開した。アキラは、元々裕福な家庭の出身で、家族そろって「ホーム」へ入信したが、途中で父親の気が変わった…というあまり例のない家庭でもあった。ホームの方針では、来るものは拒まないが去る者も追わない。「ホーム」とは、表向きは新興宗教の体裁をとりながら、その実は軍用生体研究を目的とした施設であり、法律上は軍用施設である。
アキラは三鷹に自宅を所有していたから、ミロは自分のフォードを運転してアキラの家に通った。アキラは、昔と同じようにどこまでも優しくミロを愛してくれた。
アキラは、ミロの性器を舐めるのがとても好きだ。ホームにいた頃から。何も言われなければ、1時間でも2時間でも舐め続けられる。ミロをベッドに押し倒し、長い脚を折り曲げて開脚させる。どうしようもないほど恥ずかしい姿勢だが、アキラがミロの性器に顔を埋めて執拗な愛撫を始めると、ミロは間もなく我を失い、悦びの声を上げ始める。アキラは、しかもとても上手だった。ミロは、アキラの口の愛撫だけで何度も絶頂に達した。
アキラは、やがて荒い息を吐きながら、
「ミロちゃん、着けないでいれてもいい?」
と以前と同じ質問をミロにした。
「…着けて。お願い」
ミロがコンドームを付けずに性交するのは忍だけであり、同様に忍もコンドーム無しで愛し合うのはミロだけだ。この暗黙の了解は、二人の間に横たわる一つの信頼の証だった。
アキラは、素直にサイドボードからコンドームを取り出すと、器用に口で封を切り自分で着ける。そのままミロの性器に押し当てるとミロは耐えきれずに自分から腰を浮かせてアキラを迎え入れようとした。
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