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美しい剣士
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近郊都市スターリジア、王都フェネラルに最も近い都市の名前だ。王都ほどではないが賑わいは凄まじく、連日多くの酒場が人で賑わうほどだ。
さらに一番活発なのがギルドで、腕に自信のあるものが常に集う場所でもある。依頼の多さ、報酬金の額にしてもかなりのものであり、各国から人が集まる場所としても有名だ。
そんなスターリジアから少しばかり離れた森の中で、一人の女性が堂々と歩いていた。基本的に都市の外に出る場合はパーティを組むことが推奨されている。
別にある程度の実力者なら問題はないが、それでも万が一が起きた時のために多人数で動くことが推奨されているというわけだ。
さて、そんな暗黙とも言える決まり事を正面から破っているこの女性……女性と言ったがもしかしたら少女にも見えるかもしれない。
腰まで伸びる漆黒の髪、その髪と同じ色の面積の少ない服を着ながらも、その上には立派な白い羽織を着込んでいる。
戦闘に特化した服のようにも見え、女の子らしく申し訳ない程度のファッション性も感じさせた。
そんな女性の前に現れたのはオオカミ型の魔物、危険度Aランクとされるブラックウルフだった。
「ふ~ん。私と同じ黒色か。親近感を感じるね。君もそうなのかい?」
女性がそう問いかけても相手は魔物、言葉が通じるわけがない。ブラックウルフは大きく遠吠えをするように吠える。するとすぐに数多くの群れが現れた。
「やれやれ、わざわざ始末されに出てくるなんて……所詮は獣か。いやすまない、君たちに知性を求めたのがそもそも間違いか」
女性は憐れみの目を獣の軍勢に向けた。ただブラックウルフたちは言葉は分からなくても、その女性に挑発されたと思ったらしい。
1匹のブラックウルフが女性に飛び掛かったが、女性は一歩も動かなかった。
「……ふっ」
ただ腰に差した細身の剣、遥か東の国では刀と呼ばれているそれの柄に触れただけ。それだけで迫る愚かな獣が血を噴いて真っ二つになった。
ブラックウルフの群れは今の光景を見て目の色を変える。だがもう遅い、この場に出てしまった時点で彼女に狩られる以外の道はないのだから。
「君たちの毛皮は高い、そして肉は調理法にもよるけどかなりの美味だ。さあ、私の……いや、マスターのために殺されてくれ」
刀を抜いた瞬間、女性の姿は消えて辺りは一瞬で血の海に染まった。
全てが終わった時、女性は刀に付いた血を拭き取り、何かを感じたのか空を見上げた。
「マスターがイチャイチャしてる気がする」
淡々とブラックウルフに語りかけていた時と違い、僅かながら嫉妬という感情を見せた女性は人間味に溢れていた。
しかし彼女は人間ではない、彼女が口にしたマスターと呼ばれた存在に生み出された四体目の人形、現状最後の生み出された最高傑作だ。
そんな彼女が腕に付けている腕輪は白銀色、それはギルドに所属する高ランク冒険者の証だ。
Eから始まりAまでが階級として存在しており、彼女は最高ランクのAランクである。人々の憧れ、嫉妬の矛先、美しい容姿に対して向けられる欲望と様々だが、彼女の存在はこのスターリジアに置いてかなり有名だ。
だが、彼女は地位にも名誉にも全く興味はない。冒険者になったのもマスターがなってみたらと言ったからに過ぎない。
スターリジアに生きる全ての冒険者の憧れである美しい女剣士はただ、主人のことばかりを考えているちょっと愛の重たい女の子なのだ。
シア、それが愛するマスターから賜った名前である。
今日の活動はこれで終わり、そう考えてシアは帰ることにした。早くマスターに会いたい、でもその前にギルドによって依頼完了の報告はしないといけない。
シアがギルドに入ると騒がしかった喧騒が一気に静まる。彼女は受付に依頼完了の報告を行い、ギルドから出ようとした時だった。
「待ってくれシアさん!」
彼はシアと同じAランクの冒険者だ。頼れる仲間たちと共に数々の依頼をこなしてきた青年だが、そんな彼はつい最近になって恋をした。その相手こそがシアだった。
「いつまでもソロは危険だろう? 僕たちのパーティに入ってほしい。そうすれば安全に……」
彼の言葉にシアは聞く耳を持たず、そのままギルドから出て行ってしまった。毎回毎回このやり取りだが、青年は全く気にした様子もない。それだけシアにお熱なわけだ。ただ、その想いもシアに一生届くことはない。それを知らないのは彼と、そしてマスターとされる存在を知らない者たち全員だった。
「ただいま、マスター」
「おかえりシア、今日も無事に帰ってきて良かったよ」
日も暮れた頃、ようやくシアが帰ってきた。いつもと同じく全く服の汚れは見えないので特に何もなかったようだ。
まあ、この子に何かがあればそれは凄まじいほどの脅威になるわけだけど、俺が知る限りこの子に傷を付けることが出来るのはリーシャくらいなものだ。
「マスター、ハグしていいかい?」
「聞く必要はないよ。ほら」
昼間にリーシャとミネットにしたからな。たぶんシアなら察してると思うけど。
「やっぱり他の三人の匂いがするね。私が最後か」
なんで匂いが分かるのか疑問だけど、もうあまり気にしないことにした。
こうやってシアが帰ってきたことでようやく俺が創造した四人が揃ったことになる。取り敢えずお腹が減ったし、リーシャが作ったご飯を食べることにしよう。
「ほら、飯の時間だぞ」
「マスターが食べさせてよ」
「自分で食べなさい」
「けち」
……そんな可愛くむくれてもダメだ。
はぁ、本当に気を張らないとすぐに言うことを聞きそうになる。リーシャにミネット同様、俺が望んだ女性像そのものだからまあ……そうなる気持ちも仕方ないんだろうけどね。
さらに一番活発なのがギルドで、腕に自信のあるものが常に集う場所でもある。依頼の多さ、報酬金の額にしてもかなりのものであり、各国から人が集まる場所としても有名だ。
そんなスターリジアから少しばかり離れた森の中で、一人の女性が堂々と歩いていた。基本的に都市の外に出る場合はパーティを組むことが推奨されている。
別にある程度の実力者なら問題はないが、それでも万が一が起きた時のために多人数で動くことが推奨されているというわけだ。
さて、そんな暗黙とも言える決まり事を正面から破っているこの女性……女性と言ったがもしかしたら少女にも見えるかもしれない。
腰まで伸びる漆黒の髪、その髪と同じ色の面積の少ない服を着ながらも、その上には立派な白い羽織を着込んでいる。
戦闘に特化した服のようにも見え、女の子らしく申し訳ない程度のファッション性も感じさせた。
そんな女性の前に現れたのはオオカミ型の魔物、危険度Aランクとされるブラックウルフだった。
「ふ~ん。私と同じ黒色か。親近感を感じるね。君もそうなのかい?」
女性がそう問いかけても相手は魔物、言葉が通じるわけがない。ブラックウルフは大きく遠吠えをするように吠える。するとすぐに数多くの群れが現れた。
「やれやれ、わざわざ始末されに出てくるなんて……所詮は獣か。いやすまない、君たちに知性を求めたのがそもそも間違いか」
女性は憐れみの目を獣の軍勢に向けた。ただブラックウルフたちは言葉は分からなくても、その女性に挑発されたと思ったらしい。
1匹のブラックウルフが女性に飛び掛かったが、女性は一歩も動かなかった。
「……ふっ」
ただ腰に差した細身の剣、遥か東の国では刀と呼ばれているそれの柄に触れただけ。それだけで迫る愚かな獣が血を噴いて真っ二つになった。
ブラックウルフの群れは今の光景を見て目の色を変える。だがもう遅い、この場に出てしまった時点で彼女に狩られる以外の道はないのだから。
「君たちの毛皮は高い、そして肉は調理法にもよるけどかなりの美味だ。さあ、私の……いや、マスターのために殺されてくれ」
刀を抜いた瞬間、女性の姿は消えて辺りは一瞬で血の海に染まった。
全てが終わった時、女性は刀に付いた血を拭き取り、何かを感じたのか空を見上げた。
「マスターがイチャイチャしてる気がする」
淡々とブラックウルフに語りかけていた時と違い、僅かながら嫉妬という感情を見せた女性は人間味に溢れていた。
しかし彼女は人間ではない、彼女が口にしたマスターと呼ばれた存在に生み出された四体目の人形、現状最後の生み出された最高傑作だ。
そんな彼女が腕に付けている腕輪は白銀色、それはギルドに所属する高ランク冒険者の証だ。
Eから始まりAまでが階級として存在しており、彼女は最高ランクのAランクである。人々の憧れ、嫉妬の矛先、美しい容姿に対して向けられる欲望と様々だが、彼女の存在はこのスターリジアに置いてかなり有名だ。
だが、彼女は地位にも名誉にも全く興味はない。冒険者になったのもマスターがなってみたらと言ったからに過ぎない。
スターリジアに生きる全ての冒険者の憧れである美しい女剣士はただ、主人のことばかりを考えているちょっと愛の重たい女の子なのだ。
シア、それが愛するマスターから賜った名前である。
今日の活動はこれで終わり、そう考えてシアは帰ることにした。早くマスターに会いたい、でもその前にギルドによって依頼完了の報告はしないといけない。
シアがギルドに入ると騒がしかった喧騒が一気に静まる。彼女は受付に依頼完了の報告を行い、ギルドから出ようとした時だった。
「待ってくれシアさん!」
彼はシアと同じAランクの冒険者だ。頼れる仲間たちと共に数々の依頼をこなしてきた青年だが、そんな彼はつい最近になって恋をした。その相手こそがシアだった。
「いつまでもソロは危険だろう? 僕たちのパーティに入ってほしい。そうすれば安全に……」
彼の言葉にシアは聞く耳を持たず、そのままギルドから出て行ってしまった。毎回毎回このやり取りだが、青年は全く気にした様子もない。それだけシアにお熱なわけだ。ただ、その想いもシアに一生届くことはない。それを知らないのは彼と、そしてマスターとされる存在を知らない者たち全員だった。
「ただいま、マスター」
「おかえりシア、今日も無事に帰ってきて良かったよ」
日も暮れた頃、ようやくシアが帰ってきた。いつもと同じく全く服の汚れは見えないので特に何もなかったようだ。
まあ、この子に何かがあればそれは凄まじいほどの脅威になるわけだけど、俺が知る限りこの子に傷を付けることが出来るのはリーシャくらいなものだ。
「マスター、ハグしていいかい?」
「聞く必要はないよ。ほら」
昼間にリーシャとミネットにしたからな。たぶんシアなら察してると思うけど。
「やっぱり他の三人の匂いがするね。私が最後か」
なんで匂いが分かるのか疑問だけど、もうあまり気にしないことにした。
こうやってシアが帰ってきたことでようやく俺が創造した四人が揃ったことになる。取り敢えずお腹が減ったし、リーシャが作ったご飯を食べることにしよう。
「ほら、飯の時間だぞ」
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